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2016.02.12

第21回品川区:わ!っと感じる環境啓発や事業展開をめざす

 当プロジェクトの助成金を活用した都内62市区町村の環境事業の取り組み状況について順番に紹介する「環境事業紹介」のコーナー。第21回は、品川区が実施している3つの環境啓発事業について取り上げます。
 「エコトバコンクール」は、第二次品川区環境計画の基本目標の一つである「快適で豊かな街をみんなで伝え創り育てる」を達成するため、身近にある「大切な環境」発見プロジェクトの一環として実施するもの。集まった「エコトバ」は、区民の今後の環境保全活動につなげていくきっかけづくりとすることをねらいとしています。
 また、「サマールック・ウォームビズ」は、環境省のクールビズ・ウォームビズと同様な省エネ・節電行動の実行・啓発事業。区独自に始めたサマールックは、環境省のクールビズに先立つ平成14年度から開始しています。今年度からは、国のスーパークールビズに合わせて5月1日から10月31日まで期間を延長して実施しています。
 3つ目は、平成15年度以来毎年実施している「打ち水大作戦」。平成25年度からは区民の主体的な実施を支援するため、打ち水用品の貸し出し事業にシフトしています。
 今回は、これら3事業のそれぞれの特徴や相互の連関等について紹介するとともに、今年度実施している関連事業についても紹介します。

35文字の枠に埋まるエコのコトバを募集 ──「エコトバコンクール」

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『宿題とスイッチOFFは忘れない』(城南第二小学校 児童)
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 2016年1月5日(火)、品川区が2015年7月1日(水)から10月31日(土)までの期間に募集したエコトバコンクールの入選作が発表された。
 上の標語は、応募総数3034件の中から最優秀作品に選ばれたもの。懸垂幕を作って区役所庁舎や大井町駅前のビルに掲示する。また、最優秀賞の他、優秀賞6点とアイデア賞100点、企業賞1点について、3月30日に開催する『環境大賞記念イベント』の会場で表彰状の授与式が行われる予定だ。
 この事業では、“住みよい街しながわ”、“快適で豊かなまちをみんなで伝え創り育てる”ために、身近にある大切な環境を発見するプロジェクトとして、環境にまつわる思いや行動などを、35文字以内のコトバで表現してもらう。標語や俳句、川柳など書式は自由だ。
 「前年度から、区民の皆さんよりアイデアを募集する事業を開始しました。昨年は、環境に関するアイデアを募集「エコライフアイデアコンテスト」でしたが、今年はもう少し取り掛かりのいいものの方が参加しやすいと、環境に関する標語の募集を行いました。アイデア募集事業の第2弾です。来年度はその第3弾を募集して、3か年の事業として実施していく予定にしています」
 事業について紹介してくれたのは、環境課環境推進係の篠原啓之さんと係長の月村早木子さん。環境への興味・関心を持ってもらうためのきっかけづくりにするのが目的だ。エコライフアイデアやエコトバコンクールといった募集の内容自体は実施しながら決めたというが、複数年かけて展開していくことは当初から計画した。第二次品川区環境計画の中に、“快適で豊かなまちをみんなで伝え創り育てる”という項目が立ててあり、それを達成するための区民への啓発をねらいとする事業として位置づけている。

エコトバコンクールのポスターと、すぐに投函できるハガキ形式の応募用紙。
エコトバコンクールのポスターと、すぐに投函できるハガキ形式の応募用紙。
エコトバコンクールのポスターと、すぐに投函できるハガキ形式の応募用紙。

エコトバコンクールのポスターと、すぐに投函できるハガキ形式の応募用紙。

 単発の事業として募集するだけではなかなか集まらないため、環境課で実施している別の事業と関連させながら参加を呼び掛けたと月村さんは言う。
 「私どもの事業の中で一番大きいものは、『しながわECOフェスティバル』という、市役所前のしながわ中央公園を貸し切って行っているイベントです。多くの人が来ていただけるイベントですから、来場者に応募の呼びかけをしました。また、小学校を対象に平成15年度から実施している『しながわ家庭エコチャレンジ』でも、3・4年生向けのシートの中にエコトバコンクールの募集用紙を挟み込んで、夏休みの課題の一環として参加してもらいました。この事業は、ほぼ区内全校が参加してくれていて、低学年・中学年・高学年に分けてシートを用意しています。この中に、中学年向けの課題としてエコトバコンクール、低学年にはまた別の事業になりますが、環境絵日記の募集を呼びかけました。高学年用はシート自体が難しいのでプラスの課題はありません。そんなことで、一般の募集と、エコフェスティバルでの呼びかけ、それと小学生という三段構えの募集で呼び掛けたわけです」

 アイデアコンテスト事業として3年目となる来年度は、仮称『もったいない選手権』として、より具体的な行動につながるようなアイデア募集につなげていく計画だ。
 「アイデアコンテストは、大人より柔軟な発想を持っている小学生により関心を持ってもらいたいのです。小学校に協力を呼びかけているのもそのためです。前年度のエコライフアイデアは何か新しいアイデアを考えないと、と身構えさせてしまったところもあったようですが、言葉(エコトバ)なら“電気を消すのを気をつけよう!”などでもいいわけですから、ちょっとしたヒントさえ与えれば、子どもたちでも書きやすかったのではないかと思います。応募状況としても、前年度より増えました」
 最優秀作品を懸垂幕にして掲出するのも、端的に表現できるエコトバコンクールだからできた活用方法だったと篠原さんは言う。来年度の『もったいない選手権』は、より具体的に活用していくことを検討してきたいと月村さんも次のように話す。
 「来年のもったいない選手権はどんな内容が出てくるのか楽しみです。出てきたものによって活用の仕方を考えていきたいと思っています。今年度から、この事業とは別に『SHINAGAWAもったいない推進店』という事業を始めていまして、こちらは商店街等に参加を呼び掛けて、食品ロスをテーマに取り組んでいただけるお店を推進店として募集するものですが、『もったいない選手権』の方でも関連するようなアイデアが出てくれば、うまく活用していけると広がりが持てるのではと期待しています。とにかく、関連付けていくことが大事だと思っていますので、ただ事業を実施して終わりにはしないように心がけています」

区役所の壁に設置された懸垂幕(今回の最優秀賞作品)。

区役所の壁に設置された懸垂幕(今回の最優秀賞作品)。

国の提唱するクールビズに先立って始めた温暖化対策キャンペーン ~サマールック・ウォームビズ

 品川区の『サマールック』は、国が提唱する『クールビズ』の取り組みと同じような、夏の温暖化対策のキャンペーンとして実施している事業だ。空調機の温度設定や服装コードなどを目安として提示し、役所が率先して省エネ・節電行動をしていこうというもの。平成17年度に始まった、国のクールビズ・キャンペーンに先立つ平成14年度から開始した事業で、当時独自に考えた名称をそのまま継承している。一方、冬のキャンペーン『ウォームビズ』は国の呼びかけに対応して18年度に開始した。
 「サマールック・ウォームビズは、他の自治体と同じようにやっていますが、品川区の場合、環境課を事務局に、区内の公共施設などにも呼びかけるとともに、民間事業所にも取り組んでいただけないかとお願い文書を出して、区全体で実施しているのが特徴です。各事業所には、環境課からチラシとポスターを送って、それを掲出していただくことで、取り組みに賛同してもらっています」
 品川区では、他の事業やISO関連で昔から関わりのある約300の区内事業所には個別に案内を届けているほか、商工会議所を通じてPRもする。

 キャンペーンの取り組み期間は、サマールックキャンペーンが、チラシでは5月1日から9月30日まで、ウォームビズは11月1日から3月31日までと表示しているが、27年度から国や都が10月末まで取り組んでいることに合わせて、サマールックを10月末まで延長実施した。翌年度からは正式にチラシにも10月31日までを取り組み期間として設定し、両方を合わせると4月中を除いてシームレスな取り組みを実施することになる。

   区内全域で、継続的かつ着実な実施をめざして、より多くの事業所や区民とともに取り組めるよう、事業を推進していきたいと話す月村さんと篠原さんだ。そのためにも、なるべく多くの人の目にとまるキャッチーなチラシ・ポスターづくりを毎年心がけている。

平成27年度のサマールック及びウォームビズの啓発チラシ。

平成27年度のサマールック及びウォームビズの啓発チラシ。

平成27年度のサマールック及びウォームビズの啓発チラシ。

平成27年度のサマールック及びウォームビズの啓発チラシ。

平成27年度のサマールック及びウォームビズの啓発チラシ。裏面はエコライフチェックシートになっていて、具体的な取り組み行動の目安にしてもらう。

区民の打ち水活動を支援 ~打ち水大作戦しながわ2015

   打ち水大作戦は、毎年7月23日の大暑から8月23日の処暑までを実施期間に、区内各地域で道路に打ち水をして、気温を下げようと呼びかける事業。事業開始から10年以上が経つ。
 平成24年までは、品川区商店街連合会との連携により各商店街を会場にして、地域の子どもや高齢者も参加して区内全域で展開する「一斉打ち水イベント」を実施していたが、25年度からは打ち水用品の貸し出しをメインに、区民の自主的な打ち水活動を支援する事業にシフトチェンジした。
 「現在は、ヒシャクとオケとバケツなどを備品として60~70セットほど用意して、区民の皆様に貸出しています。数に限りがありますから、先着順で貸し出していますが、ヒシャクやオケは雰囲気を味わえると人気も上々です」
 貸し出し事業とともに打ち水活動の普及をめざして実施しているのが、打ち水の様子を写した写真を公募する『打ち水百景写真コンクール』だ。審査では、区内に本社がある光学機器メーカーの株式会社ニコンのOBにボランティアとして手伝ってもらっている。
 「毎年130ほどの応募作品が届きますから、ニコンのボランティアさんにある程度の数まで絞っていただいて、区の環境活動推進会議の委員会で最終審査を行っています。打ち水をする人たちの生き生きとした表情が撮れると、各商店街で実施している打ち水イベントの当日にはアマチュアカメラマンの方々が撮影に来られています」
 一斉イベントを実施してPRしてきたこれまでの取り組みから、打ち水用品の貸し出しによる支援事業に転換して3年目となった。その趣旨を浸透させるため、昨年度から区役所前の公園で啓発イベントを実施している。今年度は、大暑に当たる7月23日が雨となったため、翌24日に区役所前の公園(しながわ中央公園)で近隣の保育園児や一般来園者とともに打ち水イベントを実施した。
 「当日は、噴水前に並んで囲むように打ち水をしました。イベント前に測った地面の温度は38℃、場所によっては40℃を超えるところもありましたが、イベント終了後は34℃にまで下がり、子どもたちも口々に『涼しくなった』『楽しかった』と大はしゃぎでした。このイベントで使った水は、公園内にある雨水タンクの水から拝借したもので、そんなところでも節水のPRにつなげることができたと思います」
 区民が打ち水をしている風景が品川区の夏の風物詩となるように、今後もPRを行っていきたいと月村さんと篠原さんは話す。

 
打ち水オープニングイベントの様子。

打ち水オープニングイベントの様子。

7月24日に区役所前の公園(しながわ中央公園)で、近隣保育園児や一般来園者とともに実施した打ち水オープニングイベントの様子。前日23日の大暑は雨のため一日繰り下げての実施となった。

打ち水百景写真コンクールの最優秀作品。

打ち水百景写真コンクールの最優秀作品。裸足になって打ち水に興じる子どもたちの生き生きとした表情とともに、濡れた地面が涼感を誘う。

SHINAGAWA“もったいない”推進店と、しながわ環境啓発ミュージカル

 オール東京62市区町村共同事業の助成事業ではないが、環境課が今年度から始めた事業として、先に紹介した『SHINAGAWA“もったいない”推進店』の募集と、『しながわ環境啓発ミュージカル』の実施についてご紹介いただいた。
 「環境啓発ミュージカルは、平成27年度の単年度事業として、初めて実施するものです。何らかの形で環境を考えていただきたい、触れていただきたいと考えていく中で出てきたアイデアです。区内の小学生を対象に参加者を募集しまして、専門家の方にご指導いただいて、10月から3月までの間に15回のレッスンを行います。今まさに練習中で、年度末の3月30日当日に、2回公演を行います。テーマは、“これからの品川区を守るために、今私たちができること”。少しでも環境のことを考えていただくきっかけや動機づけになってほしいといった意味を込めています」
 月村さんと篠原さんはそう話す。

環境啓発ミュージカルの応募チラシ

開催案内

環境啓発ミュージカルの応募チラシ(左)と開催案内(右)。

環境啓発ミュージカルに参加する子どもたち

環境啓発ミュージカルに参加する子どもたち。3月末の本番に向けて、練習に力が入る。

 『もったいない推進店』の募集も今年から始めた事業だ。
 「“少なめ”に対応」「食べ残し削減のPR活動」「食料品販売における(量り売りやバラ売り、規格外品などの)対応」「その他独自の取り組みなど」という4項目を設定して、その1つにでも該当していれば推進店として表示ができる。
 「大盛メニューはよくありますけど、少なめメニューも簡単に取り組めます。量を減らしたヘルシー・メニューだったり、小さい器を用意したりと、そんなことでもよいのです。最初にお話ししたエコアイデアの3年目事業では『もったいない選手権』を予定していますから、よいアイデアがあれば関連して何かやっていきたいと考えています。お互いに、一つの事業が他の事業と関連付けられるかどうかと常に考えているところです」
 もったいない推進店は2015年7月から開始した事業で、現在は地道に推進店を増やしている。すでに12月末現在で34店舗が賛同の意を表しているという。

SHINAGAWA“もったいない”推進店のチラシ

SHINAGAWA“もったいない”推進店のチラシ

SHINAGAWA“もったいない”推進店のチラシ。裏面は応募用紙になっている。

もったいない推進店には、通知書などとともにステッカーを送り、店頭などに貼り出してPRにつなげてもらう

もったいない推進店には、通知書などとともにステッカーを送り、店頭などに貼り出してPRにつなげてもらう。

 品川区は、23区のなかでは、人口規模も面積も中間的と言える。そうしたなかで、地域の特徴の一つになっているのが、旧東海道の宿場街として発展した昔ながらの街並みだ。武蔵小山や戸越銀座など、有名な商店街が区内にはいくつもある。生き残りをかけて頑張っている商店も数多くある。
 「こうした商店街をまわって、商店街ごとに募集を呼びかけています。例えば、1商店街当たり5店舗くらい集まったら、次の商店街をまわるといった感じで、商店街の活性化をねらって進める事業でもあります。商店街に属していない個店についてはランダムでいいのですが、商店街についてはまとめてお願いしていくことで、少しでもお店同士がつながっていくきっかけづくりになればという意図があります」
 チラシの裏面が応募用紙になっていて、事業の紹介をしながらすぐに書き込めるつくりになっている。認定された推進店には、認定証や表示ステッカーのほか、推進店として認定された理由について書かれたチラシを作って渡している。将来的には、これらをまとめて推進店を紹介する冊子を作ってPRしていく構想もある。

   最後に、品川区が2015年からスタートさせたシティプロモーション『わ! しながわ』について、ご紹介いただいた。
 「『わ! しながわ』というのは、“品川区がこれから何かはじめるよ”、“注目してください!”と呼びかける合図のマークです。伝統が息づく暮らしと都心の魅力が共存する品川区の素顔をより多くの人に知ってもらうため、環境分野だけでなく、品川区全体での取り組みとして、つい最近はじめたばかりです」
 先に紹介した環境啓発ミュージカルのチラシの右上にも表示されているのが見て取れる。今後、『もったいない推進店』なども含めて、さまざまなところにつけて、アピールしていきたいと話す、月村さん・篠原さんだ。

『わ!しながわ』のロゴマーク

『わ!しながわ』のロゴマーク。


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