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2017.05.09

第35回杉並区:レジ袋条例に基づくレジ袋削減や燃料電池自動車の活用等を中心とした、杉並区のエコな取り組み

 「みどり東京・温暖化防止プロジェクト」の助成金を活用した都内62市区町村の環境事業の取り組み状況について順番に紹介する「環境事業紹介」のコーナー。
 第35回は、杉並区のエコな取り組みについて紹介します。取り組みの内容は、燃料電池自動車の活用や低炭素化推進機器等の導入助成、震災救援所に太陽光発電及び蓄電池の設置、自然環境調査の実施、レジ袋削減、小中学生環境サミット、そして環境活動推進センターの運営と幅広く展開しています。
 各事業の概要及びねらいについて、環境課環境活動推進係の担当者にお話を伺いました。ぜひ、ご一読ください。

 杉並区の“エコな取り組み”は多岐にわたる。具体的な取り組みとしては、リースしている燃料電池自動車を活用した区内のイベントでの乗車体験や、太陽光発電システム・太陽熱温水器などの低炭素化推進機器を導入するための補助制度の運用、区立小中学校を中心に整備している震災救援所での太陽光発電設備および蓄電池の設置、区内の野生動植物の生息・生育状況を把握するための自然環境調査の実施、全国的にも珍しい「レジ袋有料化等の取組の推進に関する条例」に基づくレジ袋削減の取り組み、小中学生環境サミットの開催及び環境活動推進センターの運営がある。
 これらの事業は、オール東京62市区町村共同事業の助成金だけでなく、区の一般財源も含めた一体的な取り組みとして進めている。以下では、杉並区環境課環境活動推進係の佐藤威係長(当時)に話を聞いた。

燃料電池自動車を活用した取り組み

 「平成28年度から新たに始めたのが、燃料電池自動車を活用した取り組みです。区では、28年10月から燃料電池自動車を公用車としてリースで導入して、次世代自動車の普及啓発にも活用しています。これまでは太陽光発電等の住宅設備の導入補助を中心とした温暖化対策を進めてきましたが、運輸部門からも2割ほどの二酸化炭素排出があり、その対策として、次世代自動車のPRを行っています。イベントでの展示などの他、区内唯一の指定教習所である(株)日通自動車学校と協定を結んでエコドライブ講習も開催しています。最初に30分ほど車と地球温暖化の関係について座学の勉強をしたあと、燃料電池自動車を実際に見てもらい、教習所の職員の運転による公道での走行体験をしてもらいます。燃料電池自動車ならではの静粛性や加速性能について実感してもらうのです。運転はできませんが、見学してもらったときに、排気ガスが出ない代わりに水がぽたぽた落ちるところも見てもらえます。そんな事業を今年1月から始めました。区内在住・在学・在勤の一般区民なら未就学児を除きどなたでもご参加いただけますし、教習所に通っている方も対象になります」
 佐藤係長はそう話す。エコドライブ講習は、29年1月に初めて実施した後、2・3月は教習所の繁忙期のため中断したが、4月からまた毎月2回ずつ実施していく予定になっている。年間十数回は実施できる見込みだ。
 区主催のイベント等での展示でも、見て・触れてもらう機会を提供している。初お披露目となったのも、28年11月に開催した区最大のお祭りである「すぎなみフェスタ」でのことだった。区民の関心も高く、啓発効果のよいツールになっていると佐藤係長は言う。

平成28年10月にリースで導入した燃料電池自動車。愛称は「H2なみすけ号」。

平成28年10月にリースで導入した燃料電池自動車。愛称は「H2なみすけ号」。

区内唯一の指定教習所と協定を結んで実施しているエコドライブ講習会での環境学習の様子。

区内唯一の指定教習所と協定を結んで実施しているエコドライブ講習会での環境学習の様子。

エコドライブ講習会での車体見学の様子。

エコドライブ講習会での車体見学の様子。

教習所内の乗車コースでの走行体験。

教習所内の乗車コースでの走行体験。

公道での走行体験。運転はできないが、静粛性や加速性能を実感できる。

公道での走行体験。運転はできないが、静粛性や加速性能を実感できる。

低炭素化推進機器等の導入助成及び電気自動車用充電設備導入助成

 太陽光発電システムや高効率給湯器などの低炭素化推進機器の導入補助は、これまでも杉並区の温暖化対策の中心的な事業になっている。平成29年度からは、遮熱塗装や窓の断熱改修も新たなメニューとして開始する。
 総額4000万円の予算の範囲で申請を受け付ける。平成29年度の助成対象種類と助成額は下表のとおり。

エコプロ2016で配布した「杉並区のエコな取り組み」について紹介する資料。
平成29年度杉並区低炭素化推進機器等導入助成【エコ住宅促進助成】のリーフレットの表紙。

平成29年度杉並区低炭素化推進機器等導入助成【エコ住宅促進助成】のリーフレットの表紙。

平成29年度杉並区電気自動車用充電設備導入助成のリーフレット(表紙)。

平成29年度杉並区電気自動車用充電設備導入助成のリーフレット(表紙)。

 なお、平成28年度には電気自動車用の充電設備の設置助成も開始した。これは、23区内では他には港区のみが実施している先駆的な助成制度だ。
 「電気自動車用の充電設備に関しては、残念ながら平成28年度は申請がありませんでした。コンセントからも充電できることもあって、まだご自宅に充電器を設置するという方はあまりいないようです。制度は、個人宅でも事業所でも申請できるようになっていて、国の助成制度と併用すれば、最大4分の3の助成により設置が可能になります」

震災救援所での太陽光発電設備および蓄電池の設置

 杉並区の震災救援所は、震災時に区内で震度5強以上の揺れを観測した際に区立の全小学校・中学校等に開設され、情報・救援物資配給など避難・救援の拠点として開放される。これらの震災救援所に、太陽光発電設備と蓄電池を設置して、自立的エネルギーを生み出すという3か年(平成27~29年度)の事業は、平成29年度に最終年度を迎えている。
 「区内の震災救援所は全小中学校を含む60数か所ありますが、平成28年度までに27施設まで整備が進み、平成29年度にも7施設の整備を予定しています。平時には発電した電力を各施設で使って、年間の電力使用量の約3~5%が節電できるとともに、二酸化炭素排出量の削減効果も期待できます。東日本大震災の教訓で、エネルギーの安定供給が大切だということもわかりましたので、災害時には昼間の発電と夜間の蓄電によって、必要最小限の電気が供給できる体制を作っていきます」
 平成29年度の事業完了によって、半分以上の救援所に施設が整備されることになる。未整備の施設は、今後改築等に合わせて設置し、将来的には全拠点での整備をめざす方針だ。
 学校を中心に設置される設備なので、児童・生徒を中心に、設備を活用した環境学習の実施も進めていきたいという。発電量のモニターも設置されているため、再生可能エネルギーや太陽光発電について学習するための素材としてはうってつけだ。学校には年度当初に周知を図り、活用について呼びかけている。

整備事業の概略。

整備事業の概略。

区内小学校に取り付けられた太陽光パネル。

区内小学校に取り付けられた太陽光パネル。

自然環境調査

 昭和60~61年度に第1次調査を実施して以来、これまで第6次にわたって、区内の自然環境の状態把握を目的に調査を実施してきたのが、「杉並区自然環境調査」である。植物、クモ類、昆虫類、鳥類について、区から委託を受けた自然保護団体のメンバーに専門調査員として協力してもらっている。自然環境調査では、詳細な調査を継続的に実施していて、区内の自然の状況を把握するための基礎データとして好評を博している。第7次の自然環境調査は、平成30年度の1か年で調査をして、平成31年度に報告書としてまとめる計画となっている。
 また、河川生物調査も実施して、底生動物や付着藻類、魚類、水草などの状況をまとめて報告書を発行している。河川生物調査は、調査専門業者への委託により、過去第7次調査まで実施してきた。

「杉並区自然環境調査報告書(第6次)」(概要版)の表紙。

「杉並区自然環境調査報告書(第6次)」(概要版)の表紙。

「すぎなみの川と生き物」第7次河川生物調査報告書(概要版)の表紙。

「すぎなみの川と生き物」第7次河川生物調査報告書(概要版)の表紙。

レジ袋条例に基づくレジ袋削減の取り組み

 杉並区の環境対策の中で特徴的なのは、「レジ袋有料化等の取組の推進に関する条例」という全国でも珍しい条例を制定しており、この条例に基づいたレジ袋削減の取り組みがなされている点である。
 「前年度のレジ袋使用量が20万枚以上の店舗などを有する事業者には、『レジ袋有料化等計画書』を提出してもらいます。レジ袋を有料化したり、マイバッグを持ってくればポイントを付与してキャッシュバックしたり、そこまではできないものの声かけ運動をしたりと、各店舗なりにできることを計画として提出していただきます」
 条例では、将来的に区内消費者の60%以上がマイバッグを持参するような地域を実現するという目標を設定している。
 平成27年度の実績によると、区内約200の対象店舗のうち43店でマイバッグ等持参率60%の目標が達成され、平均持参率は81.7%にもなる。レジ袋有料化を導入した店舗の中には、有料化によって出た差益を区に寄付しているところもあり、区ではこれらを緑化対策経費や環境教育に充当している。
 前年度の使用量が20万枚以上というのは、大手スーパーやコンビニなどのほとんどの店舗が対象になる設定だ。うち、スーパーなど買い物目的で訪れる店舗での持参率は向上している一方、手ぶらで気軽に寄っていくコンビニでの目標達成が難しくなっている。コンビニの店舗が増えてきている状況で、区全体の目標達成状況も、全体としてはやや下がり気味の傾向にある。
 事業者による計画書と削減努力に合わせて、区独自のキャンペーンも実施している。区と区内の各種団体・高校・大学等で構成する『マイバッグ推進連絡会』による、風呂敷包み講座やオリジナルマイバッグづくり、スタンプラリーなど地道な啓発活動を続けている。

小中学生環境サミットの開催

 小中学生環境サミットは、当初、中学生向けのごみ会議として始まった。各学校において環境について勉強・実践した成果を互いに発表する場となっている。
 「各校には、区民ボランティアによる環境学習コーディネーターを区から派遣して、それぞれの希望するテーマに沿った環境学習を行います。その取り組み成果を一堂に会して発表してもらう形で実施するわけです。参加校は、毎年10校ほど。継続校をベースに、入れ替わりもいくつかあります」
 事業開始の当初は「中学生ごみ会議」(平成15~21年度)としての開催で、3Rやごみ減量が主眼だった。平成22年度から26年度までは「中学生環境サミット」として環境保全全般にテーマを広げて取り組んでいた。平成27年度からは小学校も加わった「小中学生環境サミット」として同事業を発展させている。テーマの選択肢は広がっているが、扱う問題は、例えば、ペットボトルのリサイクルや、みどりと水、エネルギーの分野などを中心に、身近なテーマに絞り込んで学習する。
 環境学習コーディネーターは、打ち合わせから座学の講義、校庭などに出ての実習、さらにはまとめの学習など、多岐にわたってかかわっている。

小中学生環境サミットのパネル展示の様子。

小中学生環境サミットのパネル展示の様子。

小中学生環境サミットの発表会の様子。

小中学生環境サミットの発表会の様子。

環境活動推進センターの運営

 環境活動推進センターは、区の環境学習及び環境保全活動推進の拠点施設である。平成26年12月、荻窪駅前のあんさんぶる荻窪4階に入居していた「すぎなみ環境情報館」の閉館に伴い、高井戸に移転してリニューアルオープンした施設だ。運営はNPO法人すぎなみ環境ネットワークに委託しており、前項に紹介した小中学生環境サミットの環境学習コーディネーターの派遣も、センターを通じて行っている。
 「環境先進都市の実現をめざし、区民一人ひとりの環境配慮行動を推進し、環境情報や環境活動の場として設置した施設です。環境や省エネ、リサイクルに関する総合的な拠点として、情報の収集・提供や講座・講習会の開催など、さまざまな事業を行っています。センターには、区内で環境の活動を行っている35団体が登録していて、情報共有もしています。登録団体は会議や講座などを行う際に施設を優先使用でき、環境団体の活動拠点になっています。センター内にはNPO法人すぎなみ環境ネットワークの事務局があり、各団体と日常的にかかわっていますので、コーディネーターの派遣をするのにも把握しやすい状況になっていると言えます」
 また、区民の環境学習支援のため、測定器等の備品や環境関連図書等の貸出も行っている。

高井戸駅から徒歩2分に立地する環境活動推進センター。

高井戸駅から徒歩2分に立地する環境活動推進センター。


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