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2017.06.01

第36回国立市:花と緑あふれる街並みを、市民主体で創り上げていく(花と緑のまちづくり事業)

 「みどり東京・温暖化防止プロジェクト」の助成金を活用した都内62市区町村の環境事業の取り組み状況について順番に紹介する「環境事業紹介」のコーナー。
 第36回は、国立市の「花と緑のまちづくり事業」について紹介します。同事業は、文字通り、花と緑あふれる街づくりによって街に彩りと潤いを与え、市内外から人が集まり、人と人がつながることで心の豊かさや人の温かさを感じる安心感ある都市環境の創造をめざす。大事にしているのが、“主人公は市民”という思い。
 事業の概要及びねらいについて、担当者にお話を伺いました。ぜひ、ご一読ください。

 ※本記事の内容は、2017年5月掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。あらかじめご了承ください。

市民と行政が協働するための受け皿、「くにたち花と緑のまちづくり協議会」

 国立市の「花と緑のまちづくり事業」は、平成29年度で4年目を迎える。平成25年に東京都が開催地となって第68回国民体育大会(国体)が行われたが、国立市も競技の開催があり、多くの人たちが訪れることになった。
 「国体の開催に当たって、国立市を訪れる人たちを“花と緑のあふれる街並みで迎え入れる”ことと、かつそれを“市民主体で創り上げていく”というミッションを企画しました」
 そう話すのは、国立市環境政策課花と緑と水の係の名古屋悠さん。
 市では、事業の推進母体であり、市民と行政が協働する受け皿にもなる「くにたち花と緑のまちづくり協議会」を設立し、協議会の中にテーマ別に複数の検討会を設置した。例えば、検討会の一つである「大学通り花と緑検討会」では、JR中央線の国立駅から南武線の谷保駅まで南北に伸び、国立市のウェルカムゾーンにもなっている、通称「大学通り」(東京都道146号国立停車場谷保線)の花壇を、国体に合わせて多彩な草花で彩ったという。国体終了後には、それらの花壇の管理とともに、市民ボランティアや地元商店街と行政が国体をきっかけにしてまとまりかけた機運をさらに盛り上げるという新たな問題意識も生まれ、「花と緑のまちづくり事業」がさらに推進されていくこととなった。

国立駅前からまっすぐ伸びる大学通りの花壇。片側2車線に自転車道と歩道、サクラやイチョウの並木が続く緑地帯が整備されている。国立市の中心を貫き、同市のメインストリートとして親しまれている。
国立駅前からまっすぐ伸びる大学通りの花壇。片側2車線に自転車道と歩道、サクラやイチョウの並木が続く緑地帯が整備されている。国立市の中心を貫き、同市のメインストリートとして親しまれている。

国立駅前からまっすぐ伸びる大学通りの花壇。片側2車線に自転車道と歩道、サクラやイチョウの並木が続く緑地帯が整備されている。国立市の中心を貫き、同市のメインストリートとして親しまれている。

市民委員で組織された「花と緑のまちづくり協議会」が推進母体となる

 国立市は、面積8.15km2と都内の市では狛江市に次いで2番目に小さい。その分、自然の質・量ともに豊かとはいえないが、そうした中で、大学通りの緑地帯をはじめ、市内に立地する一橋大学構内の樹林、立川崖線や青柳崖線の斜面林、多摩川や矢川の水辺に残された自然環境などが緑地として保全されてきた。これらは、先人による不断の努力によって守られてきたものであり、将来に向けて保全していくとともに、緑豊かな環境を新たに創出していくことも求められる。
 緑化の推進のため、行政主体で事業を実施すれば一時的に解決はするが、より長期的なまちづくりの視点で考えると、市民の意思決定に基づく協働の関係が必要不可欠となる。市民にも“花と緑にあふれた街並み”を創る主体として、そのプロセスに関わってもらい、さらに将来的には、花と緑にあふれた街並の中で、人と人がつながる地域づくりまでめざしたいと名古屋さんは言う。

 「花と緑のまちづくり協議会」は市民委員により構成され、市内の造園家や園芸店主、芸術家、ボランティアに興味がある人など、誰でもオープンに参加できる組織となっている。花と緑と水の係は事務局としてかかわり、全体の調整を図りながら、事業ごとの検討会が実際の活動を進めていく。毎月開催している協議会の定例会で話し合いと報告をしながら、事業の方針等を決定していく。
 「例えば、大学通り花と緑検討会は、大学通りの緑地帯に四季折々の花を咲かせて、行き交う人々の目を楽しませる花壇づくりをしています。その他、コミュニティガーデンの手法で利用頻度の少ない児童遊園や計画道路の残地等の公共空間の有効活用について検討する検討会や、市民イベントの企画・運営に特化したグループもあります。協議会メンバーが同時に個別の検討会に参加する場合もありますし、協議会には入らず検討会にだけ所属している人もいます」
 活発なグループでは、月例の定例会も開催するなど、重層的な活動が実施されているという。事務局を担当する花と緑と水の係は、日常的には公園や水路の管理をしているセクションだが、それと同じくらいの比重で、花と緑のまちづくり事業を推進している状態だという。

花と緑のまちづくり協議会の組織図

花と緑のまちづくり協議会の組織図
※クリックで拡大表示します

大学通り花と緑検討会を中心に実施した、大学通り緑地帯・夏の花植え

大学通り花と緑検討会を中心に実施した、大学通り緑地帯・夏の花植え

市民ゆかりの桜のDNAを受け継ぐ桜を接ぎ木で増やす取り組みも

 具体的な活動内容について、名古屋さんは次のように話す。
 「多様な市民イベントを用意しているのも、事業の大きな特徴の一つです。例えば、『くにたちの自然を知る・学ぶ・味わう』という連続講座は、一年を通して4~5回開催し、国立に由来する自然を実際に見て、触れて、食べてみようという趣旨のイベントを実施しています。昨年度は、ザリガニやドングリ、七草などを切り口に実施し、食育の要素も含めることで幅広い層の方からご好評をいただきました」
 コミュニティガーデンをテーマにした「めざせ!コミュニティガーデナー 連続講座」も開催した。地域住民が自律的に管理し、地域の憩いの場として整備されるコミュニティガーデンは、彩り鮮やかな季節の花を植えた花壇をつくるだけでなく、子どもたちの楽しい遊び場になったり、採れた野菜をおいしく食べたりと、さまざまな用途を持つ空間として近年注目を集めている。そんなコミュニティガーデンのさまざまな活用方法などの事例紹介をしてきた。
 環境をテーマにした音楽イベント『ACT FOR GREEN』の開催も、花と緑のまちづくり協議会の主催イベントの一つだ。市役所の隣にある芸術小ホール(収容人数約300人)を会場に、2015年、2016年と2回開催され、好評を博してきた。
 2016年のコンサートは、『花と緑について、自分たちにできることを、行動に移していこう。みんなで一緒にやろう!』をテーマに、邦楽合奏団が尺八、琴、篠笛の優雅な調べを奏でた。演奏に合わせて舞台上のスクリーンには市内の「花」・「緑」・「水」の写真が大きく写し出された。今年(2017年)も6月3日(土)に開催を予定している。

『くにたちの自然を知る・学ぶ・味わう』のドングリイベント

『くにたちの自然を知る・学ぶ・味わう』のドングリイベント

環境をテーマにした音楽イベント『ACT FOR GREEN 2016』。

環境をテーマにした音楽イベント『ACT FOR GREEN 2016』。

 桜の接ぎ木による育苗事業を検討する検討会では、市内の桜から取った枝で接ぎ木苗を育てる取り組みを開始した。もとになる桜の枝は、かつて国立駅南口にあったオオカンザクラ(大寒桜)やカンザクラ(寒桜)だ。半世紀以上前に(公財)日本花の会により植樹された2種類の桜は、中央線の高架化工事に伴って伐採されたが、その際、老木化した大学通りの桜を守るために発足したボランティア組織「くにたち桜守」によって、接ぎ木の苗木が試みられた。150本の接ぎ木を作ったうち、活着した苗木は半分以下となったが、市立小学校など市内外に移植されていった。その桜から取った枝で再び接ぎ木の苗を作って、市内に広めていこうという計画だ。
 「市民ゆかりの桜のDNAを受け継いでいる木の子孫を増やすために、東京多摩日本花の会の協力を得ながら、接ぎ木実習で作った苗木を家庭で育ててもらう里親制度の活動です。ある程度の大きさまで自宅で育てていただくことで、桜や植物への愛情を持ってもらうとともに、市内の老木の代わりに植え替えて、次世代につなげていこうという計画です。大学通りの桜並木も環境の変化などによって傷みはじめ、太い枯れ枝や大きな空洞ができていたり、コケやキノコの付着や虫の食害でできた孔も多くみられたりして、弱っている木が目立ってきています。今すぐに成果が出る話ではありませんが、長期的な視野で取り組んでいます」

桜の接ぎ木講座。里親として自宅の庭で育ててもらう。

桜の接ぎ木講座。里親として自宅の庭で育ててもらう。

環境大臣賞を受賞した、路地空間の緑化対策

 平成27年2月23日、東京都千代田区霞が関の法曹会館で、環境省主催の第9回「みどり香るまちづくり」企画コンテスト記念イベントが開催された。平成18年度に始まった同コンテストは、「かおりの樹木・草花」を用いて、良好なかおり環境を創出しようとする地域の取り組みを支援する事業で、この年の環境大臣賞として選定されたのが、花と緑のまちづくり協議会のグループ活動の一つである、路地庭・オープンガーデンづくり検討会が企画した「くにたち路地庭プロジェクト」だった。
 「住宅街の路地庭空間を緑化する取り組みで、地権者さんの了解のもと、市民のみなさんといっしょに私道のアスファルトをはがして石を敷き、草花を植えながら市民にとっての憩いの空間をつくってきました。受賞後、実際の活動開始までに一年ほどかけ、昨年4月にようやくスタートしています。市が予算をかけて、業者を雇えばすぐに着手できると思いますが、それでは表面的な目的しか達成されません。実施場所も協議会で決定して、メンバーと事務局で近隣住民への協力呼びかけもしていきます。基本的には市民主体の活動として進め、私たち花と緑と水の係は黒衣役に徹します。時間はかかりましたが、その分、手づくりで進めてきたという実感があります」

「みどり香るまちづくり」企画コンテストで環境大臣賞を受賞

「みどり香るまちづくり」企画コンテストで環境大臣賞を受賞

「くにたち路地庭プロジェクト」企画ペーパー

「くにたち路地庭プロジェクト」企画ペーパー
※クリックで拡大表示します

石畳にする基礎工事

石畳にする基礎工事

路地の路肩の石畳と香りの草花

路地の路肩の石畳と香りの草花

 「今かかわってくださっている方々は、この街をこうしたい、こうあってほしいという情熱があって参加しています。それが大学通りに向いている方もいれば、路地空間に向いている方もいますが、いずれにせよ内的・自発的なモチベーションを持っている方々が主体となるこの組織は、国立市の大きな財産だと思います。現状は個々が小さな組織で、なかなか活動に推進力を持たせられない点が課題ですが、もっと参加者や支援者が増えていってほしいと、広報、啓発の働きかけを行っているところです」
 今後は、現在の主要メンバーから、より広く面的に広げていきたいと名古屋さんは話す。
 計画やデザインは必ずしも正解があるわけではなく、実施に際しては譲り合わないといけない部分も生じてくる。特に大学通りは住民の中でも思い入れが強く、花植えはもちろん、日常的な管理をするうえでも議論になることが多いという。そんな中で試行錯誤しながら議論を深め、一歩一歩意思決定をしていくことがコミュニティの形成にもつながっていく。
 「目に見える成果はまだまだ限定的ですし、何を成果と見るか、評価が難しい面もあります。ただ、市民の方々の目線が少しずつ広がり、この事業を通して協働の輪が広がっていることを実感します。大学通りでも、昨年度初めて市内の小・中・高校の生徒さんと学校のカリキュラムとして花植えを実施することができました。先ほどお話しした七草がゆのイベントでも、講師役を市民の方が引き受け、その方が知り合いを呼んできてくれることもありました。そういった「みんなでいっしょに」という輪が広がってきているのは、やっている立場として一番うれしいことです」

花と緑のまちづくり協議会の広報誌『ACT FOR GREEN』。原稿作成からデザインまですべて市民委員の手づくりで制作している。<br>
 「ACT FOR GREEN」は、もともと協議会の発足当時に、一人ひとりが花と緑のために何かできることがないかと考えることを協議会のスローガンにしようということで始まったもの。コンサートの題目でもあり、広報誌のタイトルにもなっている。

花と緑のまちづくり協議会の広報誌『ACT FOR GREEN』。原稿作成からデザインまですべて市民委員の手づくりで制作している。
 「ACT FOR GREEN」は、もともと協議会の発足当時に、一人ひとりが花と緑のために何かできることがないかと考えることを協議会のスローガンにしようということで始まったもの。コンサートの題目でもあり、広報誌のタイトルにもなっている。


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