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2018.09.03

第51回東久留米市:清流・湧水のまちで、市民や事業者、行政の環境の取り組みをアピール(東久留米市環境フェスティバル)

 「みどり東京・温暖化防止プロジェクト」の助成金を活用した都内62市区町村の環境事業の取り組み状況について順番に紹介する「環境事業紹介」のコーナー。第51回は、東久留米市で毎年開催している「環境フェスティバル」について紹介します。
 第22回を数えることになった今年(2018年)は、「きて みて アクション 環境フェスタ」のテーマのもと、6月9日(土)・10日(日)の2日間にわたって、市庁舎1階ホールなどを会場に実施されました。天候に恵まれた初日から一転、台風の接近によって2日目の日曜日は朝から横殴りの雨となり、屋外ブースを市庁舎2階のスペースに移動しての実施、客足も伸び悩みました。
 環境フェスティバル当日の様子を取材し、実行委員長や市の担当者を始め、ブース出展者にも話をお聞きしました。ぜひご一読ください。

 ※本記事の内容は、2018年8月掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。あらかじめご了承ください。

湧水のまち・東久留米市で毎年開催している「環境フェスティバル」

 東久留米市には、黒目川・落合川・立野川を代表とする、湧き水による幾筋もの川がある。特に落合川とその源流に当たる南沢湧水群は、「落合川と南沢湧水群」として、東京都で唯一「平成の名水百選」(平成20年環境省選定)に選ばれている。
 市役所から歩いて15分ほど、南沢氷川神社を含む雑木林の保全地域から湧き出る清流は、川底に生い茂る水草をなびかせ、市街地の中を流れていく。
 川の途中、護岸フェンスを取り外した「落合川いこいの水辺」が整備されている。この「いこいの水辺」を会場として環境フェスティバル当日に計画されたのが、飛行機の牽引車の巨大なタイヤをゴムボートにして流れを下る「トムソーヤの川下り」。企画運営を担当する東久留米・川クラブでは、毎月第3土曜日に子どもたち向けの「川塾」を開催して、ごみ拾い活動や魚捕り・川虫探し、水槽を使った生きもの観察の他、不定期にゴムボート遊びも実施しているという。
 東久留米市環境フェスティバルは、毎年6月の環境月間に合わせて開催されている。メインの会場は市庁舎1階の屋内外ひろばとその奥にある市民プラザホール、向いのマンション1階に開設されているスペース105などで、今年(2018年)は、6月9日(土)と10日(日)の2日間にわたって開催された。2日目の日曜日のみ、別会場となる落合川いこいの水辺で実施される川下りは、湧水の街をまさに体感してもらうイベントとして毎年好評を博してきた、環境フェスティバルの目玉企画の一つだ。
 あいにく2018年は台風接近に伴う横殴りの雨に見舞われ、屋外イベントは中止、市役所の屋外ひろばに設置されたブーステントも2階の廊下ホールに移して、屋内のみの開催となったが、2日間を通じて、環境をテーマとした各団体・企業によるパネル展示やワークショップ、各ブースを巡るスタンプラリーなどが行われ、会場内は多くの来場者でにぎわった。

川下りが予定されていた落合川いこいの広場。今年度はあいにくの雨で中止となったが、天気がよいと多くの市民が川遊びに訪れるという。
川下りが予定されていた落合川いこいの広場。今年度はあいにくの雨で中止となったが、天気がよいと多くの市民が川遊びに訪れるという。

川下りが予定されていた落合川いこいの広場。今年度はあいにくの雨で中止となったが、天気がよいと多くの市民が川遊びに訪れるという。

市庁舎1階ホールに所狭しと並ぶ各団体・企業による展示ブース。天気がよければ屋外広場にも展示ブースが並ぶはずだった。
市庁舎1階ホールに所狭しと並ぶ各団体・企業による展示ブース。天気がよければ屋外広場にも展示ブースが並ぶはずだった。

市庁舎1階ホールに所狭しと並ぶ各団体・企業による展示ブース。天気がよければ屋外広場にも展示ブースが並ぶはずだった。

古多摩川が運んだ砂礫層が作る地下地形によって、都内最大の湧き水地帯ができた

 そんな湧水のまち・東久留米の特徴についてまとめた資料とともに説明するのが、東久留米市市民環境会議・水とみどり部会の展示ブースだ。
 「昔の多摩川は、青梅や羽村からここ東久留米を通って流れていました。12~13万年前の古多摩川です。その後、約6万年前の地殻変動で武蔵野台地が隆起したことで、古多摩川は南東に向きを変えて流れるようになっていきました。ですが、地下には古多摩川によって運ばれた砂礫層が堆積していて、今も地下水が流れています。その砂礫層の底面を調べると、ちょうど黒目川や落合川の川筋に大きな谷ができていることがわかったのです。つまり、東久留米市は地下水が集まりやすい地下の地形があることで、都内最大規模の湧水量をもつ湧き水地帯になっているのです」
 同部会では、2017年3月に「東久留米の湧水マップ」をまとめている。資料を見るだけではちょっと難しい内容も、説明してもらうとわかりやすい。
 ブースでは、「東久留米市内で湧水が出ているのを見たことがある/見たことがない」のどちらかにシールを貼り付けるアンケートも実施していた。結果は歴然、「見たことがある」欄がほとんど埋まり、「見たことがない」を圧倒していた。ほぼいつも同じ傾向になるというが、それだけ市民にとって湧水が身近になっている証といえよう。
 水とみどり部会では、湧水マップと合わせて市内の名木百選もまとめている。
 「市内の名木を公募した結果、重複を排除して244本の推薦がありました。選定委員会で厳正な選定を行い、所有者・管理者の了解を得たうえで百選として掲載しています。市報でも定期的に、写真や選定理由とともに紹介しています。東久留米市には、水もあれば木もあります。昔から水があったので、旧石器時代の遺跡もあるんですよ」

東久留米市市民環境会議水とみどり部会がまとめた「東久留米の湧水マップ」と「東久留米の名木百選」。

東久留米市市民環境会議水とみどり部会がまとめた「東久留米の湧水マップ」と「東久留米の名木百選」。

ブース内で実施したアンケート「市内で湧水が出ているのを見たことがある/見たことがない」の状況(2日目)。

ブース内で実施したアンケート「市内で湧水が出ているのを見たことがある/見たことがない」の状況(2日目)。

 少し離れた市立中央図書館のブースでは、絵地図「荒川・隅田川散策絵図」を広げて、黒目川やその支流の落合川が新河岸川に合流して、荒川に流れ込む様子を紹介していた。
 「東久留米市が登場するのはこの1ページだけと、荒川流域全体のごく一部なのですが、皆さん喜んで見ていかれます。それとこちらに貼り出している新聞記事で報道されているように、今は清流で知られる落合川も、かつては生活雑排水が流れ込んで川の水が汚れていた時代がありました。昭和40年代から60年代には都内でも汚い川として有名で、ワースト2位だったのです。当時の新聞記事を展示限りということでご了承いただき拡大コピーして張り出していますが、図書館に来てもらえれば、そんな古い新聞記事も保管していますから、調べることができます。ぜひ多くの方にご利用いただきたいですね」

13時からは、道を挟んだ向かいのスペース105でカブトムシの幼虫配布

 水とみどり部会は、東久留米市市民環境会議の3つある部会の一つとして活動している。母体の市民環境会議は、市の環境基本計画及び緑の基本計画にもとづいて、環境の保全・回復・創出に関する取り組みを推進し、市民・事業者との協力体制をつくるため、平成19年5月に公募市民によって設置された。委員は2年間の任期ごとに公募され、現在は第6期委員が活動している。
 市民環境会議の全体ブースでは、これまでの活動の経緯と役割などについて紹介。前年の環境フェスティバルで実施した、市民環境会議のロゴマークの投票結果も報告した。500票以上が投じられ、最終3案の中から選ばれたマークは、木や人、川や大地、雨などさまざまに想像できるよいシンボルになったと、同会議の座長を務める駒田智久さんが説明をする。
 前年の環境フェスティバルの開催直後にあった第6期の委員募集にも応募が殺到するのではと期待したが、残念ながら応募は芳しくなく、かつて、オール東京62市区町村共同事業の環境活動コンテスト「Earth Workers Collection」で、グランプリと準グランプリを2年続けて受賞した当時の盛況も、今は担い手不足が課題となり、5期10年を一つの区切りとして、新たな局面に向けたあり方検討を行っているという。

前年度の環境フェスティバルで投票してもらったロゴマークの3案。色違いのバリエーションを含めて、ロゴマークは現在さまざな書類に掲載して露出を図り、市民環境会議の存在をアピールしている。
前年度の環境フェスティバルで投票してもらったロゴマークの3案。色違いのバリエーションを含めて、ロゴマークは現在さまざな書類に掲載して露出を図り、市民環境会議の存在をアピールしている。

前年度の環境フェスティバルで投票してもらったロゴマークの3案。色違いのバリエーションを含めて、ロゴマークは現在さまざな書類に掲載して露出を図り、市民環境会議の存在をアピールしている。

 今回の環境フェスティバルで初めての試みとして実施されたことの一つに、市庁舎の道を挟んだ向かいにある別館のスペース105で実施した「みんなで観察生きもの広場」の企画・運営があった。
 市では、平成30年3月に第二次緑の基本計画(平成25年4月策定)の中間見直しを行っているが、その際に市内の水や緑に生息する生きものを重要視し、生物多様性地域戦略を包括する計画としても位置づけて策定された。これを受けて、今年の環境フェスティバルでも、生きものを中心テーマの一つに掲げることにしたわけだ。
 生きもの広場の企画・運営は実行委員会が担当し、水とみどり部会のメンバーが中心となって、市内の生きもの関係の団体や個人に声をかけ、東久留米の生きものを中心に展示や催しについて話し合ったという。お隣の西東京市にある多摩六都科学館から借りてきた昆虫標本を置いた背後の壁には、羽化したばかりの蝶の写真が大きく張り出されている。撮影したのは、環境フェスティバルのカメラマンとしても活躍している小松原昌男さん。借りてきたサナギの横にカメラをセットして、羽化した直後、まだ羽が乾ききっていない間にギリギリまで寄って接写したという。
 「1時間くらいは羽が乾かないので、絶対に飛べないんです。ここまで近寄って撮れることってなかなかないんですよ。1時間して乾いたら、近づくとすぐに飛んで行ってしまいますから」
 標本の隣に置かれたサナギは、標本でも抜け殻でもない、これから羽化する生きたサナギだ。触るとピクリと動くんですよと、小松原さんが教えてくれる。

 生きもの広場の入り口脇すぐのところに机を出して受付を担当しているのは、高校生ボランティアの女の子たち。来場者数をカウントするとともに、水をつけて転写する生きものシールを顔や手などに貼り付けるサービスを展開。ボランティアの配置は出席番号順に割り振られたというが、メイン会場よりもゆったりして来場者と話ができるのが楽しいと笑顔を見せる。
 午後1時からは、この会場でカブトムシの幼虫を配布するという。市内の雑木林ボランティアが保全活動の際に捕ってきた45匹ほどを腐葉土とともにプラスチック瓶に詰めて用意した。
 「お渡しする前に昆虫の種類やカブトムシの飼い方などについて話をして、家に持ち帰って飼っていただきます。暗いところに静かに置いておけば、サナギになって10日ほどで成虫が出てきます。観察したり触って遊んだりした後、死ぬ前に自然に放してもらえれば、次の世代が生まれてくれるかもしれません。ペアで飼っていれば卵を産んで殖やすこともできるのですが、1匹ずつしか差し上げられませんので…。飼育の結果については、アンケートのハガキをお渡しして、成虫になったかどうか、オス・メスどちらだったか、もし成虫にならずに死んでしまった場合、その理由はなぜだと思うか、『わからない』も含めて4択から選んでもらう簡単なアンケートです。次年度以降の参考にできればと考えています」
 生きもの広場の声掛け役で水とみどり部会の豊福正己さんがそう説明する。

別会場のスペース105では、市内の雑木林から捕ってきたカブトムシの幼虫を配布。13時からの配布に合わせて集まってきた子どもたちは、昆虫やカブトムシについてのレクチャーを聞く。地球上にいる生物の4分の3が昆虫で、約100万種もいると聞き、驚きの表情を浮かべる。
別会場のスペース105では、市内の雑木林から捕ってきたカブトムシの幼虫を配布。13時からの配布に合わせて集まってきた子どもたちは、昆虫やカブトムシについてのレクチャーを聞く。地球上にいる生物の4分の3が昆虫で、約100万種もいると聞き、驚きの表情を浮かべる。

別会場のスペース105では、市内の雑木林から捕ってきたカブトムシの幼虫を配布。13時からの配布に合わせて集まってきた子どもたちは、昆虫やカブトムシについてのレクチャーを聞く。地球上にいる生物の4分の3が昆虫で、約100万種もいると聞き、驚きの表情を浮かべる。

昆虫標本の置かれた壁には大きく引き伸ばされた蝶の写真が張り出されている。羽化直後のまだ飛べない蝶をギリギリまで寄って撮影したという。撮影した小松原昌男さんは、鱗粉の表情を撮りたいと話す。

昆虫標本の置かれた壁には大きく引き伸ばされた蝶の写真が張り出されている。羽化直後のまだ飛べない蝶をギリギリまで寄って撮影したという。撮影した小松原昌男さんは、鱗粉の表情を撮りたいと話す。

入り口前では、高校生ボランティアが来場者数をカウントしながら、水で転写するシールの貼り付けサービスを実施。

入り口前では、高校生ボランティアが来場者数をカウントしながら、水で転写するシールの貼り付けサービスを実施。

ステージでは、時間を決めて、デジカメを使った顕微鏡観察を実施

 スペース105の生きもの広場と連動した企画として、メイン会場のステージ前で実施したのが、顕微鏡モード付きのデジタルカメラを使った生きもの観察。2日間で全5回、各回5名の参加者を事前募集したこの企画は、メーカーの協力で実現したものだ。
 顕微鏡モードによるスーパーマクロ撮影では、葉っぱや花びらなどの対象物にほとんど触るくらいの距離まで接近して、最大約44倍の超拡大撮影が可能になる。これは、1㎜の被写体がモニター上で約44㎜にまで拡大表示されるということ。葉っぱの裏にびっしりと生えた細かい毛が、モニターを通して明瞭に見えてくる。おもしろいのは、水中のミジンコ。ガラスシャーレの上に垂らした水滴を覗き込むと、半透明のミジンコの体内が透けて見える。動きのある被写体は不思議さを増す。色鮮やかな花びらを拡大した子もいた。メシベには花粉が付いているのが観察できる。肉眼では見えない世界がモニターを通して広がった。

デジカメの顕微鏡モードで44倍に拡大した、生きもの観察。ステージ前にて全5回実施。
デジカメの顕微鏡モードで44倍に拡大した、生きもの観察。ステージ前にて全5回実施。

デジカメの顕微鏡モードで44倍に拡大した、生きもの観察。ステージ前にて全5回実施。

 今年度の環境フェスティバルで初となったのは、生きもの関係の企画・展示だけではない。市立小山小学校の4年生が総合的な学習の時間に取り組んだ、身の回りの環境地図「こやマップ」(東久留米市小山地域周辺の環境地図)の展示は、小学校として初めての環境フェスティバル出展だった。前年度の授業でマップを作った小学5年生たちが説明員としてブースに立ち、2クラス13班の班ごとにまとめた学習成果のマップについて説明するとともに来場者からの質問にも答えた。
 小山小学校では、環境地図教育研究会体が主催する「私たちの身のまわりの環境地図作品展」に2016年度から出品し、初参加の年に全国35校1724点の応募の中から「小山の商店街くらべ」の地図を作った班の作品が入賞。以来3年間出品し続けてきたとともに、今年度は環境フェスティバルにも初めて出展して発表機会をつくったわけだ。

小学校として初めての参加となった市立小山小学校の「こやマップ」展示。2クラス13班の子どもたちが班ごとにテーマを決めて街歩きをしながら環境地図にまとめるという学習の成果を発表した。
小学校として初めての参加となった市立小山小学校の「こやマップ」展示。2クラス13班の子どもたちが班ごとにテーマを決めて街歩きをしながら環境地図にまとめるという学習の成果を発表した。

小学校として初めての参加となった市立小山小学校の「こやマップ」展示。2クラス13班の子どもたちが班ごとにテーマを決めて街歩きをしながら環境地図にまとめるという学習の成果を発表した。

各展示ブースで、来場者とのかかわりを重視した説明を実施

 会場内の展示ブースの様子をすべて紹介するのは難しいが、これまで紹介した以外にもいくつか写真とともに紹介したい。
 市内全域ツバメの巣一斉調査の結果を張り出したのは、東久留米バードウォッチングの会。市内のツバメの巣を毎年調査しているが、会員だけでは市全域を網羅しきれないため、環境フェスティバルの来場者に呼び掛けて、パネルに貼り出した地図上にプロットした以外で見たところに色シールを貼ってもらう。

東久留米バードウォッチングの会のブースで実施した、市内全域ツバメの巣一斉調査の追加アンケート。会員が見つけた巣の位置を赤色シールで表示し、それ以外で見かけたところがあれば緑色のシールを貼り付けてもらうというもの。思った以上に、緑のシールがたくさん貼られている。
東久留米バードウォッチングの会のブースで実施した、市内全域ツバメの巣一斉調査の追加アンケート。会員が見つけた巣の位置を赤色シールで表示し、それ以外で見かけたところがあれば緑色のシールを貼り付けてもらうというもの。思った以上に、緑のシールがたくさん貼られている。

東久留米バードウォッチングの会のブースで実施した、市内全域ツバメの巣一斉調査の追加アンケート。会員が見つけた巣の位置を赤色シールで表示し、それ以外で見かけたところがあれば緑色のシールを貼り付けてもらうというもの。思った以上に、緑のシールがたくさん貼られている。

 市内に20か所ほどある緑地を舞台に、保全活動を行っているのは、東久留米自然ふれあいボランティア。都の緑地保全地域のほか、市が管理する緑地も含めて、枯れ木や折れた枝の除去、草刈りなどの手入れ作業を行っている。秋になると落ち葉を掃いて堆肥をつくるなど、周囲の市民が利用しやすい環境を作っている。
 年間通して70日近くの活動日が設定されているというから、週に1日以上、ほぼ毎週どこかしらの雑木林で保全活動をしている計算だ。毎回参加しなくても、1日だけ体験してみたり、どんなことをやっているのか覗きにきてみたりできる、「ちょこボラ企画」もある。活動日に合わせて、一番近い緑地で、はじめての参加でも“ちょこっと”気楽にボランティア体験をしてみてほしいと呼びかけるものだ。環境フェスティバルのパンフレットの裏面には、自然ふれあいボランティアを含む複数の団体で体験できる直近のちょこボラ企画の案内が掲載されている。これら以外でも、問い合わせに応じて随時案内している。各団体とも、年々会員の高齢化と次代の担い手不足が課題となっていて、対策の一環としてはじめたものでもある。ちょこボラの案内を見て活動現場を訪ねる親子も見られるというから効果もあるようだ。

 市庁舎の入り口から奥に進んだホールの中では、主に工作系のワークショップが楽しめる「手作り体験ひろば」が子どもたちを中心に賑わった。3年前の第19回に1日だけの試行ではじまったこの企画は、来場者からも好評となり、翌年度から2日間とも実施するようになった。以来、会場が窮屈になるほど人が集まっている。竹細工や木の実人形作り、鳥の折り紙ひこうき、地元産麦わらで作るヒンメリ(フィンランドの伝統的な装飾品で、麦わらに糸を通して多面体を構成し、つなぎ合わせて吊るすモビールのようなもの)などを各市民団体が企画したほか、建築業協会が丸太を切るノコギリ体験を実施した。丸太にはあらかじめガイドになる切り込みを入れてあるが、慣れないノコギリで切るのは一苦労のようだった。

ホール内の手作り体験ひろば。子どもたち中心に賑わった。
ホール内の手作り体験ひろば。子どもたち中心に賑わった。
ホール内の手作り体験ひろば。子どもたち中心に賑わった。
ホール内の手作り体験ひろば。子どもたち中心に賑わった。

ホール内の手作り体験ひろば。子どもたち中心に賑わった。

 駅前通りを挟んだ市庁舎の向かいには、イトーヨーカドーの店舗が買い物客を迎え入れている。そのイトーヨーカドーも、3年前からブースを出展するようになった。昨年度からは、店舗内にボードを設置して、フェスティバル会場で配布したラリーシートを手に、店舗内を回ってボードの文字を見つけ出す、店舗連動企画を実施している。
 ボードが設置された3か所の1つは、PETボトル自動回収機に前にあった。機械にPETボトルを投入すると、内部で粉砕し、減容して袋詰めする。PETボトルを投入するごとにポイントが貯まるから、買い物ついでに持ち込む人も多い。粉砕された回収PET素材の一部はプライベートブランドの詰め替え用ボディソープのパッケージにも利用。商品として再び店頭に戻る仕組みを整備している。
 別のラリーボードは、セブンファームやさい売り場の横に設置された。販売期限日を越えたお総菜などの食品を機械で乾燥して堆肥化し、全国11か所で展開するセブンファームで栽培する野菜の肥料に活用している。育てた野菜を店舗で販売することで資源循環の環がつながる。
 ボードに掲示したパネルでは、全国のイトーヨーカドー店舗で取り組むこれらの環境対策について解説している。

3年前から、市庁舎の向かいに建つイトーヨーカドーも出展している。隣に店舗がある立地を生かして、店舗内にラリーボードを設置し、店舗に行って探す店舗連動型の企画を実施している。
3年前から、市庁舎の向かいに建つイトーヨーカドーも出展している。隣に店舗がある立地を生かして、店舗内にラリーボードを設置し、店舗に行って探す店舗連動型の企画を実施している。

3年前から、市庁舎の向かいに建つイトーヨーカドーも出展している。隣に店舗がある立地を生かして、店舗内にラリーボードを設置し、店舗に行って探す店舗連動型の企画を実施している。

自由学園最高学部の3年の学生2名が合作した今年度の環境フェスティバルのチラシのデザイン(表)。

自由学園最高学部の3年の学生2名が合作した今年度の環境フェスティバルのチラシのデザイン(表)。

 西東京市との境に位置する自由学園は、幼稚園部から大学に相当する最高学部まで全校生徒700人ほどが通っているという。学園の中にも流れ込む立野川の最上流域にある向山緑地の自然環境保護の取り組みなどをテーマに、今回の展示では特に最近増えてきている外来種について、週1回、50年間にわたる調査等の結果を中心にまとめている。
 自由学園には、展示ブースの出展だけでなく、環境フェスティバルのポスターデザインの制作もお願いしている。第18回の環境フェスティバル当時、来場者を増やすためのアイデアとして、若い人の視点を取り入れたいという実行委員会からの協力要請で始まり、今回で5作品目となった。今年度からは、実行委員会にもオブザーバーとして出席してもらっている。自分たちが参加しているフェスティバルがどう運営されているのかを知るよい機会になると前向きに受け取ってもらっているという。

自由学園のブースでは、外来種について調べた結果などを紹介。クイズでは、これら在来生物に強い影響を与える生きものについて、4つの選択肢の中から正解と思うビンの中にビー玉を投入する方式をとった。
自由学園のブースでは、外来種について調べた結果などを紹介。クイズでは、これら在来生物に強い影響を与える生きものについて、4つの選択肢の中から正解と思うビンの中にビー玉を投入する方式をとった。

自由学園のブースでは、外来種について調べた結果などを紹介。クイズでは、これら在来生物に強い影響を与える生きものについて、4つの選択肢の中から正解と思うビンの中にビー玉を投入する方式をとった。

 これら各団体・企業等のブースを巡って、話を聞いたりクイズに答えたりしてスタンプを集めると、スタンプラリーの景品と交換できる。市内の花き農家さんの花苗ポットや何度も使える傘カバー、マイカップとして使えるタンブラーボトルなどから好きなものを選んでもらう。東日本大震災の被災地復興の一環として、宮城県、登米市から取り寄せたアクリル毛糸のエコたわしも用意している。落合川など東久留米の清流に棲息するホトケドジョウをモチーフにした東久留米発のオリジナルデザインだ。もともと海の幸(サンマやウニ、ワカメなど)をデザインしたエコたわしを作っていたが、同じサカナならぜひホトケドジョウで作ってほしいと実行委員からお願いして作ってもらっている。毎年景品として出しているもので、人気も上々だ。

スタンプラリーの景品として配っている、東久留米発のオリジナルデザイン、ホトケドジョウの編みぐるみ(エコたわし)。東日本大震災の復興支援の一環として、宮城県登米市から取り寄せている。
スタンプラリーの景品として配っている、東久留米発のオリジナルデザイン、ホトケドジョウの編みぐるみ(エコたわし)。東日本大震災の復興支援の一環として、宮城県登米市から取り寄せている。

スタンプラリーの景品として配っている、東久留米発のオリジナルデザイン、ホトケドジョウの編みぐるみ(エコたわし)。東日本大震災の復興支援の一環として、宮城県登米市から取り寄せている。

ステージ上では、スポーツインストラクターによるストレッチ体操も午前・午後の1日2回実施。シナプソロジーといって、脳を活性化しながら体をいっしょに動かしていく体操で、心身ともにリフレッシュする。
ステージ上では、スポーツインストラクターによるストレッチ体操も午前・午後の1日2回実施。シナプソロジーといって、脳を活性化しながら体をいっしょに動かしていく体操で、心身ともにリフレッシュする。

ステージ上では、スポーツインストラクターによるストレッチ体操も午前・午後の1日2回実施。シナプソロジーといって、脳を活性化しながら体をいっしょに動かしていく体操で、心身ともにリフレッシュする。

日曜日の朝には併催事業として、並木克巳市長から表彰状を手渡す環境ポスターコンクール表彰式も実施された。入賞作品には生物多様性をテーマにしたものもあり、講評では「詳しく知りたい方は各ブースを巡って話を聞いてほしい」との呼びかけもされた。
日曜日の朝には併催事業として、並木克巳市長から表彰状を手渡す環境ポスターコンクール表彰式も実施された。入賞作品には生物多様性をテーマにしたものもあり、講評では「詳しく知りたい方は各ブースを巡って話を聞いてほしい」との呼びかけもされた。

日曜日の朝には併催事業として、並木克巳市長から表彰状を手渡す環境ポスターコンクール表彰式も実施された。入賞作品には生物多様性をテーマにしたものもあり、講評では「詳しく知りたい方は各ブースを巡って話を聞いてほしい」との呼びかけもされた。

実行委員会形式で企画運営する環境フェスティバル

 環境フェスティバルは公募団体による実行委員会形式で実施している。今年度は市内ボランティア団体の代表者など16名で構成。今年のブース出展は43団体となった。
 6月の環境月間に合わせた開催だから、前年度の11月から始動して、ほぼ月1回の会議を重ねている。実行委員長は毎年選任しているが、昨年度・今年度の実行委員長を務めているのは、NPO法人東久留米の水と景観を守る会の柘植正憲さん。
 「環境フェスティバルは今回で第22回目を数えていますが、ここ3~4年で1.5倍に来場者が増えています。理由はいろいろとありますが、手作り・モノづくりや体験型を重視して、各団体とも非常にわかりやすい展示に切り替えてきたことにあります。今年はあいにく雨で中止になりましたが川下りもあるし、市庁舎の向かいの別会場では「みんなで観察生きもの広場」も実施しました。これら体験型の出し物が人を呼ぶ形になってきております。参加者アンケートにも出てきていますが、各団体のブースの説明が非常によくなってきていて、好評を博しています。一番特徴的なのは、ファミリー層の若い人たちが増えていることです。以前は60歳以上の高齢者が中心でしたが、今はだいたいフラットな参加状況になっています」
 来場者は、一昨年度が2,800人、昨年度は2,456人と、ここ数年は2日間で2千5百~3千人に迫るまで来場者が伸びてきた。今年度も土曜日はよい天気に恵まれ、出だしよく盛況となったが、一転して日曜日は雨に見舞われ、客足が鈍り、残念ながら最終的には2千人を割り込む結果となった。

 企画の内容の変化とともに、広報も強化してきたという。環境政策課の芹沢宏美さんと齊藤朋美さんは次のように話す。
 「かつては、パネル展示だけだったこともあって、小学校低学年の子どもたちには難しいということで、4~6年生分のチラシしか配っていなかったんですけど、いろいろと体験ができるということもあるので、全学年にチラシを配るようにしました。親の手にわたって、家族揃ってご来場いただく効果もあります。中学生にも、部活や塾などで忙しいだろうと送っていなかったのを、全校に送るようにしました」
 実行委員会と市が一体となって年に1度のイベントを盛り上げているのが伺える、環境フェスティバル当日の様子だった。

東久留米駅に掲示された環境フェスティバルのポスターとチラシ。エスカレーター脇など通行時に目にしやすいところに掲示された。
東久留米駅に掲示された環境フェスティバルのポスターとチラシ。エスカレーター脇など通行時に目にしやすいところに掲示された。

東久留米駅に掲示された環境フェスティバルのポスターとチラシ。エスカレーター脇など通行時に目にしやすいところに掲示された。

イベントが終了し、来場者が帰っていったあと、出展者を含む関係者全員を前に、簡単な総括をする環境フェスティバル実行委員長の柘植正憲さん。手作り体験広場の机などを撤収して組み上げたホール内の雛壇に参加者が並んで記念撮影を撮るのが恒例になっている。
イベントが終了し、来場者が帰っていったあと、出展者を含む関係者全員を前に、簡単な総括をする環境フェスティバル実行委員長の柘植正憲さん。手作り体験広場の机などを撤収して組み上げたホール内の雛壇に参加者が並んで記念撮影を撮るのが恒例になっている。

イベントが終了し、来場者が帰っていったあと、出展者を含む関係者全員を前に、簡単な総括をする環境フェスティバル実行委員長の柘植正憲さん。手作り体験広場の机などを撤収して組み上げたホール内の雛壇に参加者が並んで記念撮影を撮るのが恒例になっている。

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