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2019.01.15

第54回多摩市:市内158店舗の協賛を得て市域全体の電力消費削減をめざす夏の温暖化対策(多摩市版クールシェア事業)

 「みどり東京・温暖化防止プロジェクト」の助成金を活用した都内62市区町村の環境事業の取り組み状況について順番に紹介する「環境事業紹介」のコーナー。第54回は、多摩市が夏に市内の協賛店舗等と連携しながら実施している多摩市版クールシェア事業の取り組みについて紹介します。
 国が推進するクールシェアの多摩市版である本事業は、趣旨に賛同する市内事業者と連携をしながら、家庭でのさらなる省エネと地球温暖防止をめざした取り組みとして、平成24年度から実施してきました。7年目の実施となった平成30年度は、158店舗の協賛を得て、8月の1か月間で実施。キャンペーン期間中には、クールシェア協賛店等への来場者にさまざまなサービスの提供を通じて、市民がエアコンを消して涼しさを共有することで地域の温暖化対策を進めるとともに、地域経済の活性化にもつなげています。
 事業の概要や背景について、担当者のお話をお聞きしましたので、ぜひご一読ください。

 ※本記事の内容は、2019年1月の掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。あらかじめご了承ください。

涼しさ(クール)を共有(シェア)し、みんなで楽しく、気持ちよく暑さを乗り切る

 クールシェアは、文字通り、涼しさ(クール)を共有(シェア)することで、個人や家庭が個々バラバラに稼働させる冷房機を止めて、みんなで集まり、楽しく、気持ちよく暑さを乗り切ろうという取り組み。東日本大震災を契機に提唱されたもので、環境省が推進する国民運動「COOL CHOICE(賢い選択)」のメニューの一つとして、多くの地域で推進されている。
 今回紹介する「多摩市版クールシェア」事業は、平成24年度に24の公共施設での実施によって開始した事業だ。平成25年度からは公共施設だけでなく事業趣旨に賛同してもらった市内の商業施設や飲食店等からの協賛により、さまざまなサービスを提供して、市民が楽しくお得に参加する仕組みをつくってきた。
 7年目となった平成30年度は、ショッピングセンターのテナント店を含む158店舗が参加。市内の主要なショッピングセンターが全て参加して実施することになり、市域全体で取り組む夏のキャンペーンとしての広がりを見せた。
 期間中の参加者、つまり協賛店舗のクールシェア特典を利用した人数は、約3万人に上る(平成28年度28,820人、平成29年度27,335人)。

 協賛店舗を訪ねると受けられる特典には、例えば「会計から10%OFF」「ミニかき氷サービス」「オリジナルグッズプレゼント」などがある。市では、それらの特典内容と各店舗の紹介、クールシェアの説明や省エネのアイデアなどを掲載した情報紙『クールシェアパスポート』を作成し、市内全戸に配布している。このパスポートを、タペストリーが掲げられている協賛店舗に行って提示すると、各店舗の特典が受けられるわけだ。
 当初の実施期間は7月1日~9月末の3か月間としていたが、協賛店舗が年々増えていったことと、冷夏の影響等で9月末になるとクールシェアという雰囲気でなくなることなどもあって、平成27年度以降は8月の1か月間に集中して実施することになった。その分、募集期間を長く取ることができるとともに、協賛店舗の特典提供の負担軽減にもつながって、より参加しやすい状況ができたといえる。

平成26年度から作成しているクールシェアパスポート。協賛店舗が増えるにしたがって、用紙のサイズや折り方を変えて対応してきた。

平成26年度から作成しているクールシェアパスポート。協賛店舗が増えるにしたがって、用紙のサイズや折り方を変えて対応してきた。

協賛店舗に配る啓発ツール(写真はタペストリーのみ)。ポスターは、中央部の白地の部分に各店舗の協賛内容を貼りつける形で共通フォーマット化している。写真のタペストリーとともに、協賛店舗に配布し、軒先に掲示してもらう。

協賛店舗に配る啓発ツール(写真はタペストリーのみ)。ポスターは、中央部の白地の部分に各店舗の協賛内容を貼りつける形で共通フォーマット化している。写真のタペストリーとともに、協賛店舗に配布し、軒先に掲示してもらう。

パスポートをカードサイズに切り取って提示することでサービスを受けられるというアイデアは協賛店舗から出た

クールシェアパスポートは、一部をカードサイズに切り取って財布などに入れて持ち歩けば、各店舗のサービスが受けられるようにしている。平成28年度から導入されたこの工夫は、協賛店舗から提案されたアイデアだった。

クールシェアパスポートは、一部をカードサイズに切り取って財布などに入れて持ち歩けば、各店舗のサービスが受けられるようにしている。平成28年度から導入されたこの工夫は、協賛店舗から提案されたアイデアだった。

 クールシェアパスポートには現在、一部を切り取りカードサイズにして、財布の中などに入れて持ち運べるようにした切り取り線がつけられている。来訪者は切り取ったカードを見せれば各店舗のサービスを受けられるため、クールシェアパスポートそのものを持ち歩かなくてもよくなり、利便性が向上した。
 「クールシェアパスポートの一部を切り取って財布の中などに入れて持ち運べるようにするというアイデアは、協賛店舗から提案されたものです。こうした意見も含めて、毎年実施期間終了後に来店者の集計とともにアンケートを取って、次年度以降の参考にしています。アンケートを通じていただくアイデアやご意見は、行政内部だけではわかりづらい第三者からの目で見たポイントとして重要と思っています」
 多摩市環境政策課の高橋正樹さんがそう説明する。

 今年度で7回目を迎え、協賛店舗でも夏の恒例イベントとして、実施を前提にした夏のセールを企画するなど、定着してきていることもうかがえる。
 アンケートを取った際、他の事業者の状況を知りたいという声もあった。クールシェアパスポートなどを通じて、各店舗が提供する特典についてはわかる。全体の集客効果も公開しているし自店の来客状況等は集計を取っているが、他店舗の状況との比較で評価できる形では開示していない。
 「協賛店舗さんとして市域全体を盛り上げていくことにはご理解いただけても、一方でそれぞれライバル関係にもあります。ショッピングセンター内の店舗同士ではある程度の情報共有や話し合いができたとしても、そこを飛び越えて何かいっしょにというのは難しいところもあります。毎年の募集時にも他店の応募状況を聞かれますから、気にされていることは確かだとは思うのですが」
 今年度、募集時のアンケート項目に、「情報の共有についてどう思いますか」といった質問項目を設けたという。表立っての改善策ではないが、来店データなどの情報を共有することで、クールシェアへの参加の効果を評価するための尺度につなげたいというねらいだ。協賛店舗の今後の広がりという意味でも、効果がわからないからと参加を見送ってきた店舗に対してより客観的なデータとして示すことができれば判断材料にもなる。そもそもの是非や公開方法など課題も多いが、十分な協議を重ねながら進めていきたいと高橋さんは話す。

クールシェアパスポートが届いていない

多摩市報に掲載された、多摩市版クールシェア事業の告知

多摩市報に掲載された、多摩市版クールシェア事業の告知※クリックで拡大表示します

 今年の夏、「クールシェアパスポートが届いていないよ」といった問い合わせの電話が例年以上に多かったという。
 クールシェアパスポートは、毎年7月下旬に全戸配布している。今年も7月20日の市報で、月明けの8月1日からクールシェアが開始することを広報して、併せてクールシェアパスポートの配布についても告知している。それに合わせて各世帯に届けるようにしているわけだ。
 ところが、それが届いていないという苦情が今年は多く寄せられ、急ぎ対応したが、こうした苦情をもらうこと自体はとても申し訳ない状況だった反面、クールシェアパスポートが届いていないと気にしてくれているということは、毎年夏場のこの時期に多摩市版クールシェアが実施されてきたこと、今年も当然やるんだろうという意識を持っていることをうかがわせる。

 「クールシェアパスポートは協賛店舗でも配っているので、店頭でももらえますし、公共施設でも限りはあるものの取り置きしています。ショッピングセンターでは各種のチラシを置くラックに入れていただいたのですが、今年はすぐになくなったという声を結構いただきました。事業者さんにとっても、市民の皆さんにとっても、クールシェアが意識の中に根付いてきている部分はあるのかなと感じたところです」

冬場の取り組みとして、省エネチャレンジコンテストを普及していきたい

省エネチャレンジコンテストの応募用紙。夏場のクールシェア事業に対して、冬場の啓発事業として実施している。今年度は、市の省エネ機器等補助金事業の交付決定者に案内を同封し、参加を呼びかけている。

省エネチャレンジコンテストの応募用紙。夏場のクールシェア事業に対して、冬場の啓発事業として実施している。今年度は、市の省エネ機器等補助金事業の交付決定者に案内を同封し、参加を呼びかけている。※クリックで拡大表示します

 クールシェアは夏場の取り組みだが、冬場にも暖房器具を共有して寒さを乗り切りつつエネルギー消費量の削減をめざすウォームシェアの取り組みをセットで実施するところもある。ただ、多摩市では少し違った形の取り組みを進めているという。
 「クールシェア事業は、サービスの提供などのご負担もあって、事業者さんの協力があって成り立つ事業です。夏場の取り組みが定着してきたから、冬場もやればいいのではと安易に考えられる状況にはありません。その代わりというわけではありませんが、これまで夏場に実施してきた省エネチャレンジコンテスト事業を昨年度から冬場に時期を移して実施しています」
 クールシェアとは手法は異なるが、暖房器具の使用などでエネルギー消費が高くなる冬場の啓発事業として、家庭の電気、ガス(都市ガス・プロパンガス)の使用量を前年同月と比較して、その削減率を競うという事業だ。応募内容をもとに書類審査を行い、削減率上位の1位から3位までを入賞者として表彰し、食事券などの副賞を贈呈する。このほか、応募者全員に参加賞として記念品を贈っている。
 平成28年度まで夏場に実施してきた同事業は、この年に参加者が倍増して50人ほどの取り組みが集まったという。その勢いで、それまで十分でなかった冬場の普及啓発事業にするべく実施時期をずらしたが、応募者は大きく減ってしまった。
 今年度(平成30年度)は、市が実施しているエネファームや太陽光発電設備の導入など省エネ機器等に対する補助金事業を通じて、交付決定した家庭に送る資料と合わせて、省エネチャレンジコンテストの案内と応募用紙を同封して送っている。省エネ機器等を導入した家庭だから、前年度比のエネルギー消費量の削減効果が十分に期待できる。

事業の目的は、あくまでも省エネと地球温暖化対策の推進にあることを意識してもらう必要はある

 これまで、クールシェアキャンペーンに関連したイベントなどは特に実施してこなかったが、今年度はじめて、オープニングイベントとして打ち水を実施した。
 「会場は床がタイル敷きの会場だったこともあって、西日が射し込んだことで気温が上がり、とても暑い日となってしまいました。前年までの状況ではそれほど暑くなるイメージがなく、夕方16時開始だったので涼しくなると予想していたのですが、ちょっと予想外の状況となり、予定よりも時間を短縮する結果となってしまいました。」
 不測の事態はあったものの、オープニングイベントとしては効果もあり、この日を皮切りにして、7年目の多摩市版クールシェア事業が始まった。

 環境・緑化フェア全体に通じることだが、イベント性やノベルティに目がいく傾向はどうしてもある。
 フェアの中でも人気が高い企画の一つに、苗木の配布があるが、もらってすぐに、会場内にも入らずに帰っていく人もいて、残念に思うと森根さんたちは言う。かさばるし、土がついていて、持ち歩いて会場内をまわるのが大変なのはわかるが、それではフェアで配っている甲斐がない。引換券を配って帰りに受け取れるようにするなど、滞留性を高める工夫について検討していきたいという。

 協賛店舗も年々増えてきて、クールシェアキャンペーンが確かに地域に根付いてきていることを感じている一方で、当面の課題としては事業目的のバランスを取りつつ、飽きを感じさせずに続けていくことにあると高橋さんは話す。
 「事業者さんにとっては、クールシェアの理念に賛同していただいているとともに、多くの市民に来店してもらうきっかけになってほしいという思いもあるのも事実です。ただ、事業の目的はあくまでも省エネと地球温暖化対策の推進にありますから、経済振興や街の賑やかしなどの側面が強くなりすぎると環境政策課の事業としてはバランスを欠いてしまいます。それとともに、また来年もやってほしいという声をいただくこともあって、期待していただけているのはうれしいのですが、同じ形で続いていけば、やればやるほど新鮮味が失われていくのは避けられません。それによって手段が目的化してしまうと、そもそもの目的が薄れていくことにもなりかねません。この事業に代わるアイデアがあるわけではありませんが、新たな事業への組み替えなども含めて、常にフレッシュ感を持ってもらえるような事業として進めていきたいと思っています」。

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