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2019.04.17

第57回青ヶ島村:日本一人口の少ない村に、“おじゃりやれ!”(池之沢地区の環境整備事業)

 「みどり東京・温暖化防止プロジェクト」の助成金を活用した都内62市区町村の環境事業の取り組み状況について順番に紹介する「環境事業紹介」のコーナー。第57回は、伊豆諸島の最南端、青ヶ島村で実施する、池之沢地区の環境整備事業について紹介します。
 島の人口は200人にも満たない158人で、東京都にありながら、国内で最も人口の少ない村としても知られています。ただ、近年は観光客の来島が増加傾向にあり、そんな観光客を迎えることも目的の一つとして実施している事業です。事業の概要について、これまでの取り組みとともにお聞きしましたので、ご一読ください。

 ※本記事の内容は、2019年3月取材時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。あらかじめご了承ください。

東京の秘境、日本国内で最も人口の少ない村

断崖絶壁の青ヶ島。(提供:青ヶ島村)

断崖絶壁の青ヶ島。(提供:青ヶ島村)

 青ヶ島村の公式サイトを開くと、「ここは東京都青ヶ島村無番地。日本一人口の少ない村です。二重式火山でできた世界でもめずらしい島なのです。」の文字が表示される。スキップしてトップページを表示すると、一番目立つTOPバナーに、「星の箱舟・青ヶ島 仰げば満天の星…絶海の孤島、青ヶ島へおじゃりやれ」と、青ヶ島の星の魅力を伝えるページへの誘導がある。「おじゃりやれ」とは、島言葉で「お出でください」といった意味になる。

 青ヶ島は、東京都心から南方358km、一番近い八丈島からも68km離れた洋上にあり、伊豆諸島の有人島では最南端に位置する。東京の秘境といわれるゆえんは、そのアクセスの困難さにある。直行便はなく、八丈島から船もしくはヘリコプターに乗り換えて行くしかないが、断崖絶壁で囲まれた島のため、船は少しの高波でも着岸できなくなり、就航率は50~60%にとどまる。一方、ヘリコプター「東京愛らんどシャトル」も、乗客定員はわずか9名、予約はすぐに埋まってしまう。
 面積約6km2のこの島には、108世帯の合計158人が在住(平成31年3月1日現在)し、東京都にありながら、国内で最も人口の少ない村としても知られている。緯度は九州の宮崎県とほぼ同緯度で、島全体が黒潮暖流の流れに包まれて、年間を通じて温暖な気候を呈する。
 集落は、岡部地区と呼ばれる外輪山北側の緩やかな傾斜地に集まっており、標高250~300mの比較的高所にあることから、八丈島など伊豆諸島の他の島よりも涼しく過ごせる。

島の電力消費量の削減に向けたLED照明導入促進事業

平成29年度にLED照明を導入した、保健・医療・福祉施設が一体となった複合施設「おじゃれセンター」。(提供:青ヶ島村)

平成29年度にLED照明を導入した、保健・医療・福祉施設が一体となった複合施設「おじゃれセンター」。(提供:青ヶ島村)

 平成30年度に青ヶ島で取り組んだオール東京62市区町村共同事業「みどり東京・温暖化防止プロジェクト」の助成金事業は、池之沢地区の環境整備に充てられたが、それ以前には、島の公共施設のLED照明導入促進事業が実施されてきた。
 電力供給が限られる離島だからこそ、消費電力の削減はほかの地域にも増して大きな課題といえる。昭和40年代に建築されて老朽化が進んでいた青ヶ島村庁舎は、平成23年度から段階的に改装が進められてきたが、当時はまだそれほどLED照明器具の普及が進んでいなかったこともあって、ここ数年間の助成金事業を活用して、LED照明への更新を行ってきた。一昨年度(平成29年度)は、保健・医療・福祉施設が一体となった複合施設「おじゃれセンター」の2階部分にある在宅サービスセンターの廊下や室内をLED照明に更新した。おじゃれセンターには、1階には診療所、3階には保育所が入っており、名前の通り、各施設利用者のコミュニケーションが図られ、島民の憩いの場になっている。ただ、その分電気の使用量も多いため、LED照明へと更新することによって、省エネとCO2削減の効果が期待できる。さらに、非常時には避難施設としても使われるが、消費電力が低くなったことで非常用発電機の稼働時間もより長くもつことが見込まれる。
 ここ数年間の事業により、公共施設におけるLED照明への更新は一通り完了し、平成30年度から新たに環境整備事業を開始することになったわけだ。


ひんぎゃの熱を利用した、地熱釜。(提供:青ヶ島村)

ひんぎゃの熱を利用した、地熱釜。(提供:青ヶ島村)

 なお、島の電力は昭和41年にできた東京電力青ヶ島内燃力発電所から供給されている。ディーゼルエンジンで発電機を回して発電する方式で、それ以前は電気のない生活だった。当時の暖房・調理のエネルギー源には、主に地面から噴き出してくる地熱蒸気を活用していたという。島言葉で「ひんぎゃ」と呼ばれる噴気孔は、集落のまわりにも多数あって、蒸気を噴出しているのが見られる。「火の際」を意味するこの「ひんぎゃ」の地熱を利用して、石材製の釜の中に熱気を閉じ込め、さまざまな食材を蒸し上げる地熱釜は、今なお現役で使われている。卵やじゃがいも、さつまいも、くさややプリンに赤飯まで、何でもふかせる天然の釜は、カゴに入れて40分ほど放置しておくと、ほかほかに蒸しあがる。もちろん、化石燃料を使わない自然エネルギーだから、島の自然にもやさしいエコな調理法でもある。

二重カルデラの内輪山にある椿林が観光客を迎える

平成30年度は池之沢地区で、椿林の環境整備事業を実施。(提供:青ヶ島村)

平成30年度は池之沢地区で、椿林の環境整備事業を実施。(提供:青ヶ島村)

 青ヶ島は、島公式サイトに紹介されている通り、世界的にもめずらしい二重式火山でできた島だ。火山の噴火によって、地下のマグマが大量に噴出したことで、マグマのあった地下空間が陥没してできた凹みをカルデラというが、青ヶ島では、度重なる噴火によって、カルデラ外輪山の中に内輪山(丸山)ができて、さらにその丸山の内側にもカルデラの凹みが形成された、二重カルデラになっている。丸山は、天明の大噴火(1785年)で隆起した大小二つの旧火口を持つ内輪山で、その斜面には椿の木が植林されている。丸山一周遊歩道を歩くと、季節の草花や鳥たちに出会える観光スポットの一つでもある。
 平成30年度から始めた池之沢地区の環境整備事業では、島で内輪山と呼んでいる、この丸山の椿林のまわりをきれいにするための草刈りや雑木の伐採などを行った。実際の作業は、住民に依頼して、1・2月にかけて集中的に実施。今後、長中期的に取り組みながら、徐々に広げていく予定という。
 椿林は、観光資源でもあり、近年増えてきている観光客を迎える目玉の一つにもなっている。景観伐採の意味も込めて、力を入れていく。

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