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2019.05.08

第58回羽村市:環境イベントにとどまらず、町内会のお祭りや結婚式の二次会、剣道大会などでもリユース食器を活用(リユース食器貸出事業)

 「みどり東京・温暖化防止プロジェクト」の助成金を活用した都内62市区町村の環境事業の取り組み状況について順番に紹介する「環境事業紹介」のコーナー。第58回は、羽村市のリユース食器貸出事業について紹介します。
 行政の環境イベントでリユース食器を導入するだけでなく、市内の町内会や自治会、PTAなどの団体や、個人のイベントなどで食事を出す場合にも利用できるリユース食器を市が経費を負担して無料で貸し出す制度です。平成29年度は、総数52,346個のリユース食器類が利用されたことで、使い捨て食器等の削減による推計3,692kgのCO2排出削減につながりました。
 制度の仕組みや事業のめざすところなどについて、担当者の話を聞きました。ぜひ、ご一読ください。

 ※本記事の内容は、2019年3月取材時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。あらかじめご了承ください。

町内会・自治会の小規模イベントでリユース食器の利用を呼びかけて、どんどん需要が高まってきた

 羽村市では、市内の各種団体に対して、洗って何度でも使えるリユース食器を無料で貸し出すリユース食器貸出事業を実施している。イベント主催者は、消毒・滅菌・袋封入済みで、運びやすいコンテナ入りのリユース食器を借りて、イベント当日に使い捨て食器の替わりに使い、使用後は残飯を取り除くだけで洗わずそのままコンテナに収納して返却すればよい。手間もコストもかからず、ごみも出ないため、イベント主催者にとっては全く好都合だ。
 平成29年度の貸し出し実績は、合計74回のイベントに、総数52,346個のリユース食器の貸し出しという結果だった。イベントの主体別に分類すると、半数を超える41のイベントが町内会・自治会のイベントで、行政関係のイベントが2割に当たる15、それを上回る19イベントが、個人を含む一般団体による利用だった。
 「事業を始めた平成22年度には、羽村市で毎年開催している産業祭という大規模なオープン型のイベントでリユース食器の試験的な導入をしてみました。リユース食器がどんなものか試してみようということで、食品販売ブースで使う使い捨て食器に替えてリユース食器を貸し出し、食べた後に戻してもらうという仕組みでしたが、仕切りのない公園を会場にしたオープン型のイベントだったこともあって、回収率が悪く、2割以上の食器が返却されないという燦燦たる状況でした。リユース食器を使っていること自体、あまり浸透もしていなかったこともあって、持ち帰ってしまう方も多かったようです。その反省を踏まえて、翌年度には、より小規模なクローズト型のイベントとして、町内会・自治会が主催するイベントで利用してもらえないか、協力を呼び掛けていきました。年度始めに、私たち市役所の職員が各町内会・自治会の総会をまわって利用のお願いをしたのです。地道な呼びかけが功を奏して、この年は33のイベントで27,001個の貸し出し食器をご利用いただき、非常に好評でした。以降、町内会・自治会が主催する納涼祭や盆踊り、餅つき大会、文化祭などをはじめとしてさまざまな催しで利用されるようになり、需要もどんどん高まってきています」
 羽村市環境保全課の横山拓史さんがそう説明する。

羽村市で開催するイベントに貸し出しているリユース食器。

羽村市で開催するイベントに貸し出しているリユース食器。

リユース食器の配布・返却所。

リユース食器の配布・返却所。

 現在は、町内会・自治会のイベントで知ったのをきっかけに、個人を含むさまざまな団体等による多様な催しでの利用へと広がってきている。例えば、剣道大会で使いたいとPTAからの貸し出し依頼があったり、企業の祭りでも利用してもらったり、また一般利用者からも結婚式の二次会で使えないかと問い合わせが入ったりもしている。もちろん、そうしてさまざまな機会に利用してもらい、使い捨て食器の利用を減らして、CO2排出及びごみの削減につなげていくのがそもそもの趣旨であるため、予算の範囲内で先着順に受け付けている。
 環境関連のイベントでリユース食器を使う例は全国でも少なくないが、これだけ幅広く利用される例は、リユース食器の全国組織の事例報告等でもあまり聞かれない。それだけ、羽村市民の間でリユース食器貸出事業が認知され、定着してきていることがうかがえる。リピーターとして毎年同じ時期に開催するイベントでリユース食器を活用する団体も多い。イベント担当者が変わっても、リユース食器貸出制度を活用すると便利だと引継ぎがあるという。
 無料で使える便利さが利用の動機にあることは確かだが、さまざまなイベント等で目にする機会が増えていくことで、リユース食器を使うことが当たり前という認識や感覚が広まっていくことは、脱使い捨て社会の実現に一歩前進することになる。
 平成28年度からは、運営事務局として羽村市地球温暖化対策推進協議会エコネットはむらに利用予約の受付や予約件数に基づいたリユース食器の発注と精算などの事務作業を委託し、市との共同事業として進めている。また、リユース食器の全国組織であるふうネットにも加盟して、情報共有や交換を行っている。今や、羽村市の環境施策の中でも、一角を担う主要事業の一つにまで成長してきている。

【表】平成29年度のリユース食器の貸出実績

29年度

貸出量

紛失・破損量

紛失率

参加人数

町内会・自治会
(41イベント)

22,060個

76個

0.48%

7,700人

一般団体
(19イベント)

12,476個

28個

0.27%

3,170人

行政関係
(15イベント)

17,810個

270個

3.20%

10,785人

合計74イベント

52,346個

374個

1.32%

21,655人

ごみを減らして低炭素化につなげるのが目的

羽村市におけるリユース食器貸出事業の事業スキーム。

羽村市におけるリユース食器貸出事業の事業スキーム。

 市ではリユース食器の在庫を持っているわけではない。リユース食器の推進と普及啓発を進めるNPO法人スペースふう(山梨県)や昭島市にある社会福祉法人きょうされんなどからレンタルして、使っている。使用後の洗浄・滅菌等の作業もこれら団体が担い、返却前にイベント主催者や市が洗浄等したりする必要はない。
 「現場で洗って使うのは衛生的な心配もありますし、汚れを落とすために洗ったとしても結局は2回洗うことになって、無駄なエネルギーを使います。手軽に使ってもらうためにも、現場では洗わずそのまま返却してもらい、業者さんの方で洗浄して、また再度納品してもらうというスキームで実施しています」
 イベント主催者には、来場者数の予測をもとに必要個数を試算して事前に申請してもらう。使い捨て容器を使う場合でも、購入前に必要個数を試算することになるから、新たな手間が生じるわけではない。年間のトータルでは5万個を超える貸し出しを行っているが、1回当たりだと、イベントの規模にもよるが、200~1000個ほどの間での貸し出しが多い。
 平成22年度からの貸出件数の推移は下表のとおりで、順調に伸びているのがわかる。平成29年度に倍増近く伸びているのは、予算を増やしたからだ。もともと、「みどり東京・温暖化防止プロジェクト」の助成金を財源にした事業として実施していたが、年度途中で予算を使い切ってしまうほどニーズが高く、議会でも質問が出されるなど注目も高まったことで、市費を投入して枠の拡大を図った。
 CO2排出削減だけを目的とする事業なら他にもさまざまな方法があるだろうが、もともと事業開始時に市民団体の意見も聞きながらどんな事業を実施しようかと話し合った中で、ゼロウェイスト(ごみゼロ)に向けた事業にしたいという意見があって始めたリユース食器貸出事業だったため、ごみを減らして低炭素化につなげるという考えからすると、十分に効果の見いだせる事業になっている。

【表】貸出件数等の経年変化(平成22年度~平成29年度)

年度

貸出件数

参加者数

貸出食器数

年間CO2削減量

ごみ削減量

平成22年度

2件

8,500人

20,500個

1,756.64kg-CO2

233kg

平成23年度

33件

15,480人

27,001個

1,874.95kg-CO2

316kg

平成24年度

26件

11,450人

30,390個

2,052.99kg-CO2

349kg

平成25年度

31件

18,550人

33,550個

2,101.38kg-CO2

364kg

平成26年度

41件

14,720人

32,070個

2,076.44kg-CO2

370kg

平成27年度

49件

16,230人

34,057個

2,379.66kg-CO2

382kg

平成28年度

49件

17,790人

39,065個

2,757.47kg-CO2

420kg

平成29年度

74件

21,655人

52,346個

3,692.18kg-CO2

593kg

コストの削減や負担のあり方が、第一の課題

 ニーズも高く、市民からも好評を得ているリユース食器貸出事業だが、課題も残る。大きく分類すると、コスト負担のあり方と、リユースに対する文化的な理解や行動の促進に集約される。
 リユース食器のコストでは、最初にかかる製造原価については、繰り返し使っていくことで軽減できるものの、使用時ごとに運搬・洗浄経費が発生するため、1~2円ほどで購入できる使い捨て食器に対して1回1個当たり24円ほどかかるリユース食器はどうしても高く感じられることになる。
 実際には、使い捨て食器でも廃棄に際して焼却等の処理費用がかかるが、大部分は税金で賄われるため、利用に際して直接転嫁されるコストとしては意識されにくい。
 羽村市の場合、貸出事業を通じて無料で利用してもらっているから、イベント主催者にとっては使い捨て食器を購入するよりも経費削減につながり、結果としてこれだけ利用が伸びている。すでに拡大した予算も上限まで利用されている状況で、これ以上の普及拡大はなかなか進まない。
 財源確保に加えて、コスト削減も進めている。成果を上げているのが、リユース食器の調達先の多様化だ。事業開始当初からの主な調達先となっていたのは、山梨県にあるNPO法人スペースふうだった。羽村市内もしくは西多摩地域内などより近いところから調達できれば、発注・返却にかかる配送費用が軽減できる。
 そうした中、もともと障害者雇用として昭島市内でびんの洗浄施設を運営していた社会福祉法人きょうされんが、雇用拡大策の一環としてリユース食器の導入による貸出・洗浄の事業化をめざしているとの話が舞い込む。社会福祉法人きょうされんから提携先の一つとして期待されたのが、行政による無料貸出の補助制度を持つ羽村市で、一方で羽村市にとっても昭島市内の施設からリユース食器を調達できるのはメリットになる。両者のニーズが合致して、ともに事業化をめざした協力関係ができていった。今日では、きょうされんへの発注がだいぶ増えてきて、配送費用及びそれに伴うライフサイクルCO2排出量の低減が進んでいる。
 先に紹介した通り、羽村市のリユース食器貸出事業は、市の財源を使いながらも、羽村市地球温暖化対策推進協議会エコネットはむらが運営事務局を担っており、将来的には独立事業化をめざしていくとしている。ネックになるのが、洗浄経費を含むリユース食器の価格に対して、使い捨て食器は廃棄物の処理経費が分離しているために見かけのコスト感に大きな価格差が生じていること。これを埋めるには、ごみ処理経費を振り替えられるような制度設計を構築するなど、廃棄物行政とともに公費投入の在り方を見直していくことも必要だ。

リユース食器の洗浄および検品。

リユース食器の洗浄および検品。

リユース食器の洗浄および検品。

洗浄経費をエンドユーザーに転嫁しない仕組みで、リユース容器の事業化をめざしたい

リユース食器のPRをする羽村市公式キャラクター「はむりん」

リユース食器のPRをする羽村市公式キャラクター「はむりん」

 リユース食器の取り組みを始めたそもそものねらいは、ゼロウェイスト社会をめざしてのことだったから、ごみをなくすか、または減らしていくためには、リデュース・リユースの取り組みが中核となる。さらなるリユースの拡大促進もポイントの一つで、制度の在り方検討などトップダウンの対策とともに、リユース文化の再興をめざすボトムアップの対策も必要となる。
 かつて、食器はもちろん生活で使うほとんどのものは、使い捨てることなくリユースされることの方が一般的だったといえる。量り売り商店などの小売りが中心だった時代には、容器包装も竹籠など何度も使えるものが使われていた。大量生産と大量消費による食器や容器包装の低価格化が使い捨て文化を促進し、コスト優先の中でリユース文化は失われつつある。
 ただ、近年はフードコートが全国各地で増えてきて、そうした場面でリユース食器の活用もされているし、学食や社員食堂などでもリユース食器が普通に使われているなど、リユース文化が全く廃れてしまったわけでもない。コストと手間を減らして、リユース食器の供給側とエンドユーザーとの適切なマッチングが実現できれば、現代社会に合ったリユース文化の再興が実現し得る。昨今のプラスチックごみによる海洋汚染等に対する関心や規制の高まりも、使い捨てプラスチックに対する見直しの機運を高めている。

 羽村市で今後進めていきたいことの一つとして、小売事業者によるリユース容器の活用促進を検討しているという。
 「イベント時のリユース食器は非日常の取り組みですから、リユース文化の再興を考えたときには、日常生活の中で大量に廃棄されている、スーパーなど小売りで使われている白色トレーなどの使い捨て容器がターゲットになります。そこに踏み込んでいかない限り、市民意識は変わっていかないと思うのです」
 食材でも総菜でも、たいていはトレーにのせて販売されている。リユーストレーを使っているところはあまり聞かないが、過去に東京都の補助事業で実証実験をした事例があり、事業化まではいかなかったものの、一定の成果を見せたという。リユーストレーの保管場所やカバーをどうするかなど課題も多かったが、課題が明瞭化したことは成果の一つでもある。リユーストレーの回収は顧客の囲い込みにもつながるから、小売事業者にとってもメリットがある。さらに、事業系廃棄物の場合は事業者の負担で処理されるため、処理費用をリユース食器の洗浄経費と相殺して、行政予算による補助がなくても自立的に事業化できる可能性もある。
 現在、羽村市環境保全課では、具体的な事業化に向けた構想を練っている。ハードルは多々あるものの、最初は小規模事業者の1~2店舗と手を組んで小さくスタートしていくことをめざしていきたいという。

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