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2019.07.31

第60回あきる野市:うちエコ診断の無料診断で、オーダーメイドの省エネ対策を家庭向けに提案

 「みどり東京・温暖化防止プロジェクト」の助成金を活用した都内62市区町村の環境事業の取り組み状況について順番に紹介する「環境事業紹介」のコーナー。第60回は、あきる野市で昨年(2018年)度より実施している、うちエコ診断の無料診断事業について紹介します。
 これまで、市の特徴である豊かな生物多様性保全と活用に向けた自然環境啓発事業を実施してきた同市ですが、今後は啓発事業に加え、新たに地球温暖化をテーマにしたより直接的な事業に取り組むことになりました。
 事業の概要と特徴について、担当者にお聞きしましたので、ご一読ください。

 ※本記事の内容は、2019年7月掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。あらかじめご了承ください。

家庭からのCO2排出削減の重点対策として開始した、「うちエコ診断」の無料診断事業

 あきる野市では、平成26年度から令和2年度まで7年間を計画期間とする「あきる野市地球温暖化対策地域推進計画」に基づいて、市民や事業所との協働によって市域全体での地球温暖化対策を進めている。
 近年、家庭からの温室効果ガス排出量が増加しているのは他地域と同様の傾向にあり、重点対策の一環として平成30年度から開始しているのが、市民を対象にした家庭エコ診断制度の無料受診事業だ。家庭の年間エネルギー使用量や光熱水費などの情報をもとに、専用のソフトを使って、地域の気候や各家庭のライフスタイルに合わせたオーダーメイドの省エネやCO2削減の対策について提案するこの診断制度は、「うちエコ診断」と呼ばれる。
 普及啓発を中心とした取り組みによって、地球温暖化に対する意識は向上している反面、実際のCO2削減行動としてなかなか実を結ばないのは、各家庭におけるライフスタイルが、地域や家族構成などによって多種多様であって、それぞれの家庭のエネルギー消費構造は必ずしも同一のパターンになじまず、一律の対策がないためと言える。それぞれの家庭が、エネルギー使用量やCO2排出状況等に応じた効果的な対策を講じるためには、まずは家庭ごとの現状の把握が欠かせない。「うちエコ診断」では、こうした家庭ごとの現状に即した無理のない実現可能性の高い対策を提案するため、専門のソフトを使って、CO2の排出源とその量を“見える化”して、平均的な家庭との比較によって分析する。その診断結果を用いて、環境省が認定する「うちエコ診断士」が、地球温暖化問題や省エネ機器、家庭における地球温暖化防止対策などさまざまな疑問に答えつつ、効果的な提案をしていく。
 「あきる野市では、これまで市の特徴である豊かな自然や生物多様性の保全と活用に向けた自然環境啓発事業として、市民ボランティアで組織する「自然環境調査部会」によって実施される自然環境調査事業の貴重なデータをもとにして、市民向けリーフレットなどを作成してきました。啓発事業については今後も継続していきますが、新たな取組として平成30年度からは、地球温暖化をテーマに、より直接的な対策につなげるための事業として、市民の方に「うちエコ診断」を無料で受けていただく本事業を開始して、オール東京62市区町村共同事業からの助成金を活用させていただいています」
 事業について、あきる野市環境政策課環境政策係長の松村直人さんと同係の中村大輔さんに話を伺った。

あきる野市で募集した「うちエコ診断」無料受診の広報チラシ(表・裏) あきる野市で募集した「うちエコ診断」無料受診の広報チラシ(表・裏)

あきる野市で募集した「うちエコ診断」無料受診の広報チラシ(表・裏)

「うちエコ診断」の普及の現状と戦略

「うちエコ診断」の目指す姿(平成31年3月「うちエコ診断の今後について」より引用)

「うちエコ診断」の目指す姿(平成31年3月「うちエコ診断の今後について」より引用)

 「うちエコ診断」は、環境省が平成26年度に創設した事業で、公平かつ正確なアドバイスの確保のための診断ツールの開発や、ツールを用いた診断の適切な運用が図られてきた。受診者の状況に応じてカスタマイズされた提案が従来の一律的な普及啓発に比べて高い削減効果を期待できる一方で、実際に受診している人はまだまだ限られている。「うちエコ診断」の制度運営事務局を務める一般社団法人地球温暖化防止全国ネットが取りまとめた資料によると、地球温暖化問題に関心がある人が87.9%と大半を占めるのに対して、「うちエコ診断」の受診者は現状でわずか0.2%にとどまっていることを示している。
 普及戦略として、環境省の「家庭エコ診断制度運営ガイドライン」(平成26年2月)で示されているのは、商品等の普及段階に関する「ロジャースの普及率16%の論理」に基づく考え方と認知度および受診世帯の向上だ。
 「ロジャースの普及率16%の論理」は、スタンフォード大学の社会学者エベレット.M.ロジャースによって提唱されたもので、新商品などが普及してく過程で、感度が高くいち早く新商品を見つけて購入するイノベーター(革新的採用者)と、それに次いで早い段階で購入し、他の消費者・ユーザーに影響を与えるアーリーアダプター(初期採用者)の合計が16%のラインを越えると、急激に普及していくというものだ。「うちエコ診断」でも、この16%の普及率をめざしてターゲット層やタッチポイント(効果的な接点)を設定していくこととしている。
 こうした普及過程において、行政による無料診断事業を実施することで機会提供を図っていき、普及拡大の後押しをしていこうというのが、あきる野市の「うちエコ診断」無料診断事業のねらいと言える。

「うちエコ診断」普及の課題とあきる野市の事業の仕組み

 環境省が行っている「うちエコ診断」の受診拡大に向けた課題として指摘されているのが、「診断に1時間程度かかる」「自宅に診断士を招き入れる」などだという。制度運営事務局を中心に、診断の簡易化やWEB版の診断システムの開発なども進められている。
 あきる野市の事業では、診断の所要時間は変わらないものの、自宅での診断ではなく、市役所の会議室で診断を受ける形で実施した。
 「自宅を訪問して受診する形だと抵抗感を生むことが懸念されましたので、市役所の会議室を用意しました。「うちエコ診断」は、事前・事後のアンケートに記入していただくとともに、診断にも1時間ほど拘束することになるため手間はありますが、受診された方からは、結果的に受けてよかったという声の方が多かったようです。今回受診された方はエコへの関心が高い方が多かったので、ご自分なりに結構取り組んでこられたにもかかわらず、こんなところでまだできることがあったと、気づきを得られたようでした。「うちエコ診断」の場合、これまでのデータの蓄積があるので、他の家庭と比べての提案ができるところが特徴になっています」
 「うちエコ診断」を通じて提案された内容には、節水シャワーヘッドの取り付けや古い家電製品の買換え、雨戸に貼り付ける断熱反射シート、エコドライブの推奨などがあり、これらの中でできることを取り入れた結果、診断前後の比較によるCO2削減効果は、年間の排出量に換算して、1世帯当たりの平均で539.3kg CO2、最も減った家庭では1,137kg CO2という推計値が出たという。2017年の家庭からのCO2排出量は、世帯当たりの全国平均で約4,480kg CO2(出典:温室効果ガスインベントリオフィス)だから、かなり大きな成果が見られたといえる。

市役所の会議室で実施した「うちエコ診断」 市役所の会議室で実施した「うちエコ診断」

市役所の会議室で実施した「うちエコ診断」

広報手段の強化による事業の周知をめざす

 前年度(平成30年度)の事業実施を受けて、令和元年度の事業では特に広報手段の改善を予定している。前年度は実施も広報もスケジュールが押してしまい、11月1日の広報で募集したあと、直後の12月に診断実施というタイトなスケジュールの中で実施してきた。令和元年度はより早い段階から、幾度かにわたって、広報やホームページでも周知を図っていきたいという。
 2年目の事業として、初年度の実施結果を踏まえた募集や呼びかけもできる。実際に受診した人たちからも好評を得ているので、それら生の声も盛り込んで、より具体的な広報へとつなげていく計画だ。前年度は、市の環境施策の進捗点検や環境啓発のPRに協力してもらう環境委員のメンバーにも受診を呼び掛けてきた。毎年5月に開催している環境フェスティバルでは、環境委員がブースを出展おり、今年度のブース展示では、テーマの一つとして「うちエコ診断」についてもPRしてもらった。実際に受診している人もいたので、具体的な話もできたという。
 また、町内会・自治会を通じた呼びかけも検討している。これまでにも夏の省エネについてのチラシを町内会・自治会の回覧を通じて情報発信してきたが、「うちエコ診断」のチラシも折り込んで周知を図っていくことも検討している。
 「あきる野市の地球温暖化対策については、これまで太陽光発電機器の設置補助などを実施してきました。ある程度普及の目標を達成できたこともあって、補助とは違う目線での地球温暖化対策の一環として始めたのが、「うちエコ診断」無料診断事業です。これまでのハード事業から、単なる普及啓発にとどまらないソフト面のサポートにつなげていきたいと考えています」

平成30年度の「広報あきる野」に掲載した、募集の告知(平成30年11月1日号)

平成30年度の「広報あきる野」に掲載した、募集の告知(平成30年11月1日号)

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