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第5回ECO女子のチャレンジ~エコキャンパス・プロジェクト~

エコアカデミーインタビュー6.地域の環境教育の担い手として

-エコキャンパスを地域に開放し、地域と協働しながら地球温暖化対策と自然エネルギーの普及に向けて活動されているそうですが、具体的にどのような活動がおこなわれているのでしょうか-

大学の外からのエコ施設の見学依頼が多く、勉強会、見学会など平均で月に2団体、年間ですと200から400人くらいの視察を受け入れています。高校生を対象としたオープンキャンパスを含めると、年間では2000人くらいの方をご案内しています。今ではガイドブックもでき、一巡が60分くらいで体験できる「エコキャンパス・ツアー」を開催できるまでになりました。

-子どもを対象としたワークショップもおこなっているそうですね-

「エコキャンパス研究会」が企画しているワークショップで、地域の親子を対象としています。自然観察では、ビオトープを中心に、昆虫観察や採集を体験し、生物多様性について理解を深めてもらいます。エネルギー学習では、キャンパス内のエコ設備の見学や、ミニミニ風力発電機づくりを通じた自然エネルギーを体験してもらいます。

また、キリバスでの体験をもとに、現地の高潮被害の状況や環境問題、日常生活についてパネルで紹介するとともに、「おひさまクッキング」として、簡単な工作で太陽熱を利用したソーラー・クッカーを作り、調理を体験してもらっています。

写真:親子ワークショップの様子

ビオトープを使った親子ワークショップ(自然観察)

写真:ソーラー・クッカーでの調理体験

ソーラー・クッカーでの調理体験

子どもへの環境教育は、実は社会変化のスピードと合っているような気がします。昨年の震災で、再生可能エネルギーが注目されましたが、すぐに転換できるわけではなく、徐々に制度が整い、普及していくことで社会が動いていきます。10年、20年の長期スパンですが、それを担うのは今の子どもたちなのだと考えると、子どもへの環境教育が重要であることを改めて実感します。教育というのは、すぐに成果はでませんが、地道に種をまいて育てていくようなものです。本学もそのような意味で、地域の環境教育の担い手として地域と関わっていきたいと思っています。

-地域や小学校との連携、自治体との協力など、大学と地域との連携づくりにはどのように取り組まれたのですか-

地域連携では、大学が地域へ開く、大学から地域へ働きかける、2つのアプローチがあると思います。開くという視点ではシンポジウムや公開講座、見学会やワークショップがあり、地域の方々が沢山おみえになります。一方、働きかけるという視点では、例えば水環境や交通政策の講義で自治体のさまざまな分野の専門家にご協力をいただいています。
また、地域の耕作地をお借りして農業体験の実習もおこなっています。これも大学だけでは実現できなかった試みで、自治体の職員の方が、農家の方や町内会に根気よく声をかけ、コーディネートしてくださったおかげです。

-自治体や地域との関係作りは、簡単そうで実は難しいですよね。協働のポイントはありますか-

自治体の担当の方は、転任なさるので、大学側からも働きかけて定期的な情報交換をおこない、地道な関係づくりをしています。教育はキャンパスの中だけで完結するのではなく、地域や人とのつながりによって支えられ、広がりをもつものだと思っています。また、自治体の仲介による環境インターンシップ(注13)にも学生を積極的に参加させています。実際に企業に行き、職業体験をするものですが、経験した学生は目の輝きがちがいますよね。学校と家との往復やアルバイトだけでなく、実際に社会的なことに関わることで学生の意識に変化が生まれるのだと思います。

協働とは、大学や企業の代表が会議に出席して意見交換するだけでは実現しません。自治体、地域、企業の人々が、一緒に体を動かして取り組むことが重要です。最初は子ども向けの工作教室でもいいのです。何か共通のテーマをもって一緒にやる。実践をともなった協働こそ、本物の社会的な動きにつながると思っています。

 

注釈

  • (注13)環境インターンシップ:神奈川県では、大学生や大学院生に、インターンシップ研修生として、環境配慮に積極的な企業においてその業務を体験させることにより、環境保全や環境問題の解決に必要な意欲および実践的能力を有する人材の育成を目的とした「環境インターンシップ研修」を実施している。 http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/f160198/p20329.html外部リンク
  • 参考:東京都におけるECO-TOPインターンシップ
    ECO-TOPプログラムでは、「インターンシップ」を企業、NPO、行政などさまざまな立場での多様な実習を体験する機会として位置づけ、企業、NPO、行政それぞれあるいはその連携でおこなっている。自然環境に関わる活動業務を体験し、各団体の活動に対する理念や手法、方針の違いを学ぶとともに、さまざまな組織での対応能力を養う。
    http://eco-top.jp/internship/p01.php外部リンク

―インタビューを終えて―

佐藤先生は、以前は研究者として地球環境保全に専念してこられました。その根底には、次世代のために環境を守りたい、自分にできることは何かという思いがあったそうです。研究を続けて数年後、東京農工大学時代の恩師であった本間先生から「フェリス女学院大学で環境教育に従事してみては」と、声をかけられたそうです。
理科系の研究者であるご自身にとって、文化系の女子大学は畑ちがいのようで迷いもあったそうです。しかし、フェリス女学院大学を一度訪れ、学生たちがビオトープづくりやリサイクルなどに一生懸命に取り組む姿を見て、このような学生たちとであれば、サポーターとして佐藤先生ご自身も一緒に教育にたずさわっていけると実感したそうです。
「環境教育は種まきのようなもの、すぐに結果はでません」、佐藤先生と学生たちの地道なチャレンジは、あちらこちらで芽吹き、成長していることでしょう。花開く時が楽しみに思えました。

インタビュアー 峯岸律子(みねぎしりつこ)

環境コミュニケーション・プランナー。エコをテーマに、人と人、人と技術を繋げるサポートを実践。
技術士(建設部門、日本技術士会倫理委員会)、環境カウンセラー、千葉大学園芸学部非常勤講師。

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