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第6回地球温暖化防止~草の根活動支援のこれから~

エコアカデミーインタビュー5.草の根活動支援のこれから

-「低炭素杯2012」、私も会場で拝見しました。様々なテーマでしたが、どの活動も地域の課題に真摯に向き合う、まさに「草の根活動」の雰囲気が伝わってきました-

「低炭素杯2012」のエントリー団体も、「うちエコ診断員」にしても、地域の課題解決には、地域のことをよく知っている地元の人間が関わることが重要です。うちエコ診断事業をスタートする際も、地域の方に関わっていただくため、人材育成から始めました。各地域センターが志願者を募集し、一定期間の研修を経て「うちエコ診断員」を認定しました。認定された方の多くは、エネルギー管理士(注11)の資格をもつ方、電気や設備関連企業の元エンジニアなど、リタイヤ世代が中心ですが、経験を活かし地域密着でご活躍いただいています。

写真:診断中の様子

窓口診断 エコ診断地域事務局で診断

写真:診断の様子

会場診断 公民館など特設会場にて対面診断

(写真:一般社団法人地球温暖化防止全国ネット提供)

-地域の課題には地域の人が関わる、大切なことですね。このような草の根活動ですが、支援に対するニーズも地域によって様々だと思うのですが-

地域の団体が集まり交流できる場を提供する、情報交換や情報発信の場をつくる、ネットワークをつくる、技術的なノウハウを指導するなど、支援の形は様々です。「低炭素杯2012」の話に戻りますが、スポンサーになってくださった企業や団体に「しかけ」があります。

-ホームセンター、ハウスメーカー、コンビニ、流通、ファーストフード、環境情報雑誌など様々ですね-

「低炭素杯2012」の資金集めで企業に営業し、何度も足を運んだところもあります。私は、もともと関西の人間なので商人気質なのでしょうか、頭を下げるのは苦になりません。
しかし、ただお金を集めているわけではありません。エントリー団体とこれら企業は協働の可能性をもっています。森林再生からは間伐材が、竹林再生からは竹が、先ほどの高校生の活動ではヨシズがあり、これら生産物を園芸資材として商品化できれば、ホームセンターで販売することができます。そして収益を資金とし自立した活動に発展することができます。また、菜の花の栽培や、廃食油からバイオディーゼル(注12)を精製する団体が、流通関係と協働すれば、配送車をバイオディーゼル車にシフトできます。これらは、ボランティア活動を次のステップ、ソーシャルビジネスへと発展させ、社会経済の中に導く支援です。グランプリや各種の賞にも「しかけ」があります。グランプリは、副賞にイギリスの環境系ソーシャルビジネス育成支援プロジェクトなどの視察、他の賞は、新聞や企業広報誌で活動紹介するなど、波及効果を狙ったものです。

-副賞であれば賞金、活動支援なら助成金や補助金などお金の方が自由度が高く、団体からのニーズとマッチするのでは-

写真:菊井氏 助成金や補助金は手っ取り早い支援です。活動報告などを通じて、助成する側と受ける側とである程度の関係はつくられますが、助成期間が完了すればその関係も途絶えてしまいます。私たちは、団体と団体、団体と企業が顔を合わせて、つながって、新しい何か生み出す、お互い手間も時間もかかって大変ですが、そういった支援をしていきたいと思っています。また、イギリスの二酸化炭素排出削減プロジェクト「Big Green Challenge」(注13)のように、優れた企画に対して出資し、潜在的な人材や力を引き出すような支援も効果的だと思っています。

私自身は、もともと兵庫県の地域センターで活動をしていたのですが、「全国ネット」の立ち上げで、各地の地域センターの活動を束ねる人材が必要という流れの中で、事務局長という大役を仰せつかりました。一昨年の春、ふるさとの関西を後に、東京に出てきて、どうにかこうにか、ようやく半年が過ぎた矢先、東日本大震災が起こりました。実は、人生二度目の大震災でした。一度目は阪神・淡路大震災です。当時は、兵庫県職員として被災がれきの処理など震災復興に携わってきました。その時、多くのボランティアや民間企業の人々が手を貸してくれました。人や企業はそれぞれ得意なことが違いますが、いっしょにやると、いろんな事ができ、大きな力になることを、身をもって経験しました。

「何かやろう」という気持ち、熱意っていうのは、本当にすごい力になる。一人一人の熱意が行動に、一人が二人、三人と団体になれば、さらに大きな力になる。人と人をつなげ、団体と団体をつなげて、束ねていくことが大切だと思っています。それには、手を使い、足を使って支援する、阪神・淡路大震災の復興活動で見てきたことです。

地球温暖化対策についても同じことが言えます。日本全国、草の根運動は、千差万別です。つなげて、束ねて、大きな力にして世の中を動かし、低炭素社会を実現する。それが目標です。

 

注釈

  • (注11)エネルギー管理士:省エネルギー法に基づく経済産業省が認定する国家資格。エネルギーを消費する設備の維持や使用方法の改善・監視を行う。
  • (注12)バイオディーゼル:植物油などバイオマス由来のバイオ燃料の一種で、軽油の代替燃料として利用する。廃食油をエステル化処理、精製する方法もある。
  • (注13)Big Green Challenge:英国NESTA(National Endowment for Science, Technology and the Arts)が実施する、低炭素地域づくりの取り組みをサポートするプロジェクト。二酸化炭素排出削減に効果的なアイデアを募集し、優れた企画上位10団体に、その企画実現のための事業費を助成するもの。
    助成金は、総額で100万ポンド。資金援助だけでなく、カウンセリングやフォローなども充実している。
    http://www.nesta.org.uk/areas_of_work/public_services_lab/big_green_challenge外部リンク

―インタビューを終えて―

「普及啓発の効果というのは、氷山の一角のようなもの、見える部分よりも水面下で支える部分が大きい。見えない部分とは、全国各地で、長年地道に継続してきた活動の技術的なノウハウ、担い手となる人材、地域で草の根活動を続ける人々との絆。こういった部分は数字で効果を示せないんですよね」と菊井先生は苦笑いをしていました。お話のそこここに、人と人、活動と活動をつなげること、手を使い、足を運ぶ支援の大切さを語っておられました。そしてそこからは、目標に向かって進む「へこたれない強さ」が伝わってきました。

インタビュアー 峯岸律子(みねぎしりつこ)

環境コミュニケーション・プランナー。エコをテーマに、人と人、人と技術を繋げるサポートを実践。
技術士(建設部門、日本技術士会倫理委員会)、環境カウンセラー、千葉大学園芸学部非常勤講師。

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