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第30回 できることから、ともに未来に向けて/EVIを使った森と水と空気を守る取り組み

加藤孝一(かとうこういち)

加藤孝一(かとうこういち)

1981年カルビー(株)入社。 営業、物流、マーケティング、経営企画を地域事業部で経験し1995年、本社・営業革新推進室へ異動。 1996年マーケティング企画室マネジャーを経て、2002年プロモーション革新プロジェクト・オーナー。価値(メッセージ)を伝えるプロモーションの体系としくみを構築。2005年9月CalNeCo事業部設立。 2010年8月環境貢献プラットフォーム構築に着手。2011年3月「日本の森と水と空気を守る」EVI推進協議会の活動を開始。 環境貢献と価値創造型プロモーションの融合を目指す。

森林の役割

国産材供給量と木材自給率の推移(林野庁資料をもとに加工)

【図01】国産材供給量と木材自給率の推移(林野庁資料をもとに加工)
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 北海道でホッケの漁獲量が減っています。一方、大間が北限といわれたマグロが獲れるようになりました。昨年(2013年)は、埼玉県の越谷で竜巻、伊豆大島では大型台風の被害、また都心では10月11日に気温30度を超えて観測史上最も遅い真夏日を迎えました。地球温暖化による海水温の上昇や異常気象の影響は疑いないものになっています。
 地球温暖化の防止に大きな役割を担うのが、森林のCO2吸収の機能です。全世界で陸地の3割が森林ですが、日本では国土の7割を占めます。ところが、国産木材の自給率は昭和30年の94%から、平成23年には24.6%に下降。1960年からの拡大造林政策によって収穫期を迎えている日本の木は、搬出できず収入につながらないパラドックスに陥っています。
 そこで2008年、環境省は植林や間伐1)で森林を整備し、増加したCO2吸収量を販売できる『オフセット・クレジット制度(J-Ver)』を立ち上げました。企業や生活者が排出するCO2をクレジットの購入によって穴埋め(オフセット)し、CO2削減・吸収の努力をされた方々へ資金を還流することで、その努力が実を結ぶとともに一層のCO2削減が進む枠組みができたのです。
 では、その枠組みは功を奏したのか…。2012年末のJ-Verクレジットの在庫は33万9千トン、販売数量は4万2千トン。12.5%しか売れていません。木材収入が減少する中で副収入として見込んだ人たちは完全に目論見がはずれただけでなく、クレジットの認証に関わるコンサルティング等の費用が回収できないという負荷までも負うこととなりました。

CO2の削減に向けて

EVI保有クレジットにおける都道府県カバー率。75%の都道府県から預託を受けている。

【図02】EVI保有クレジットにおける都道府県カバー率。75%の都道府県から預託を受けている。
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 今日、産業部門でのCO2削減は進み、企業は継続して努力を続けています。しかし、家庭部門ではその排出量は増え続けています。だからこそ、自らが節約し、CO2削減に向けて頑張っている人々を応援したいという想いも消費者の中で高まってきています。企業のCO2を削減しようという想いと、消費者の森を守らなければならないという想い。さらにクレジットが売れなくて困っている人たちの事情を合わせることによって日本の森林を守ることにつなげられるのではないか、3者をつなぐしくみが構築できれば様々なクレジット活用の事例が生まれ、クレジットの使い方が理解される。そして、クレジットの流通量が増えれば森林整備への資金還流が増加し、『日本の森と水と空気を守る』ことができる。そう考えて、2011年3月にEVI(Eco Value Interchange)の活動を開始しました。
 現在、EVIには全国55ヶ所の森林のクレジットが預託され、県別には75%をカバーしています。33の企業が毎月、自社の応援する森林のクレジットを購入し、企業活動で排出するCO2をオフセットしています。

消費者の環境貢献意識

 私たちは、2012年から2年連続で約400名の消費者を対象に環境に対する意識を調査してきました。
 森、河川・湖沼、土壌、大気、動物を国内外で区分して重要性を確認してみると、86.3%が日本の森林が最も重要であるとの回答でした(図03)。
 環境貢献へ参加できることでは、ボランティア32.5%、金銭や物品の寄付30.9%、環境に対する知識・情報を得る47.9%、環境貢献に結びつくサービス・商品を購入する59.8%と回答されました(図04)。
 環境貢献型商品は購入に影響を与えるかという質問には67.1%が影響すると回答。2013年は58%でしたから、1年で1割近くも購入への影響度が高まっています(図05)。
 さらに別の調査では『普段のお買い物を通して環境貢献できるのなら1割高くても買う』という人が3分の2を超えるなど、消費者の環境貢献意識は思った以上に高まっていることがわかります(図06)。
 反面、お店には普段のお買い物を通して環境貢献できる品物がありません。求められているのにその対象がないのです。

【図03】消費者アンケートの結果

【図03】消費者アンケートの結果
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【図04】消費者アンケートの結果

【図04】消費者アンケートの結果
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【図05】消費者アンケートの結果

【図05】消費者アンケートの結果
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【図06】消費者アンケートの結果

【図06】消費者アンケートの結果
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EVIでできること

 森永乳業のアイスクリーム「MOW」は2年連続で『日本の森を守ろう』キャンペーンをEVI上で展開、77万人を超える応募がありました。「MOW」のパッケージに記載されたアクセスナンバーを応募サイトに入力し、日本地図上の応援する森林を選択すると1票につき1円+αがその森林のクレジット購入に回るしくみです。
 また、9月1日・防災の日には、防災アイテムを購入すると1つにつき1円を被災地の森林のクレジットの購入に充てる、被災地の子供たちの未来の環境を守るキャンペーンを2年連続で実施しています。小売業5協会とメーカー9社のタイアップで展開し、119企業3582店舗にご参加いただき、2年続けて150万円を超える支援を行っています。

森永乳業のアイスクリーム「MOW」の『日本の森を守ろう キャンペーン』

森永乳業のアイスクリーム「MOW」の『日本の森を守ろう キャンペーン』
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小売業5協会とメーカー9社がタイアップして進める『ともに生きる! ひろげよう防災の輪! 復興支援キャンペーン』

小売業5協会とメーカー9社がタイアップして進める『ともに生きる! ひろげよう防災の輪! 復興支援キャンペーン』
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南アルプス市の『わくわくエコチャレンジ』キャンペーン

南アルプス市の『わくわくエコチャレンジ』キャンペーン
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 山梨県南アルプス市ではEVIの持つ環境家計簿機能を利用して、125世帯が電気使用量の節約に取り組んでいます。12月~2月の3か月間で前年よりも節約するとポイントが発行され、一定以上のポイントで地域振興券と交換できます。地元の商店街の買い物で使えるので、地域経済の活性化と市民によるCO2削減活動を両立できる画期的な取り組みです。

 長野県には、出荷されず廃棄されてしまうリンゴがあります。秋田県八峰町では、シイタケ生産工程から出る小ぶりなシイタケが処分費をかけて捨てられています。どちらも愛情を注いで育てたのに捨てざるを得ないのは悲しいことです。なんとか利用したいとの想いが、前者をドライフルーツに、後者は外食店でのお味噌汁の具にと有効利用する道をつなぎました。これらの未利用食材は販売されるごとに一定金額を森林(長野県有林、白神山麓八峰町有林)のクレジット購入に充て、そのクレジットにより製品を製造する上で排出するCO2を穴埋め(オフセット)するしくみを確立。未利用資源の有効利用と森林保護、加えて製造工程のCO2削減という3つを実現する取り組みが誕生しました。

長野の廃棄されていたリンゴを使ったドライフルーツ商品。

長野の廃棄されていたリンゴを使ったドライフルーツ商品。

秋田県八峰町の規格外シイタケは、外食店で味噌汁の具に有効活用される。

秋田県八峰町の規格外シイタケは、外食店で味噌汁の具に有効活用される。

 一方で、消費者の立場では皆さん、普段のお買い物を通して環境貢献したいと望まれています。大丸有エリア(大手町・丸の内・有楽町)では、お買い物の際にSUICAを利用すると1回につき1円が日本の森林整備に使われる取り組みがもうすぐスタートします。このしくみでは、購入する商品に関わらず、森林保全に寄与することができます。
 以上、様々な事例をご紹介いたしました。どの事例も経済活動と森林保護とCO2削減の三方良しを実現しています。このような取り組みが実現できる背景には全国の森林クレジットの中から支援対象を自由に選択して、取り組みをスタートできるプラットホームの存在があります。EVIはクレジットを預託する森林事業者からも、クレジットを活用したキャンペーンを企画・実施する企業からも利用料をとらない、無料のプラットホームとして開放しています。

木を使う

2013年10月に立ち上げた『森のめぐみのおとりよせ』通販サイト。

2013年10月に立ち上げた『森のめぐみのおとりよせ』通販サイト。
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 森林を守るために私たちが出来る、もうひとつのこと、それは「木を使うこと」。日本の木材でつくった製品を積極的に使うことです。間伐された木は運び出す費用が販売収益で賄えないことで、森の中に切り倒されたままになっています。私たちはそうした木を材料に、皆さんの生活シーンでご利用いただくための製品開発を行い、『森のめぐみのおとりよせ』という通販サイトを昨年10月に立ち上げました。販売価格の一部は森林支援に回ります。プラスティックやスチールの製品に替えて、国産材を使った机やイス、小物等々を使うことが、日本の森林を守ることにつながるのです。企業にも、ノベルティなどの製作の際には是非とも日本の木でつくっていただきたい。私たち日本に住む全員が消費活動の中で意識しておきたい点です。まさに『木使い(きづかい)』が必要なのです。

ともに未来に向けて

 私たちはCO2を排出しながら生活し、企業活動を行っています。自らのCO2削減と合わせて森林のクレジットを活用して穴埋め(オフセット)して温暖化を少しでも抑えていくとともに、国産材や捨てられてしまう農作物の有効利用を通して日本の森林や環境を持続的に守っていく必要があるのです。
 やがて皆さんの目の前に1つ買うと1円が森林保護に役立つ商品がポツポツと出てきます。ひとりひとりの力が大きな力になる『日本の森と水と空気を守る』活動に参加してみませんか。ともに未来に向けて。

補注

  1. 間伐:木と木の間にある木を伐採し、木の根元まで太陽光が届くようにすること。

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