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2014.07.16

第35回「スマートシティ」プロジェクトで環境都市を目指す:オランダ、アムステルダム市

 7月、暑い夏がやってきました。エアコンによる電力消費が気になる季節でもあります。今回は、エネルギー消費やCO2排出量の削減を中心に、意欲的に環境都市を目指すオランダの首都、アムステルダム市(人口82万人)の取組み「アムステルダム・スマートシティ」プロジェクトを紹介します。

 「アムステルダム・スマートシティ」(ASC)とは、2009年にアムステルダム経済委員会、アムステルダム市、LIANDER(エネルギー供給網オペレーター企業)とKPN (固定・携帯電気通信会社)によって設立された官民共同出資のコンソーシアム(連合・組合)で、今では70以上のパートナー企業や組織が参加。新規の製品やサービス、システムの実証実験を行い、持続可能な経済投資を促すプラットフォームとして、CO2排出の削減、アムステルダム市の経済成長、住民・利用者の意識・行動の変化と住民の生活の質の向上を最終目的としています。

 2014年現在、アムステルダムでは、ASCの下で54ものパイロットプロジェクトが、市民、企業、行政、研究機関など多様なパートナーによって市内各所で実施されており、さながら新規プロジェクトのショーケースのようです。各プロジェクトはある一定期間(1~2年程度)実施された後、成果が確認されれば、フルスケールのプロジェクトとして、さらに大きなエリアで展開されていくことになっており、2025 年までに40%のCO2 排出削減、20%の再生エネルギーの導入を目標に掲げています。

 そもそも「スマートシティ」とは、確立した定義はないものの、一般的には、ICTや環境技術などの先端技術を活用して、社会・生活インフラを効率化・高度化(スマート化)することで人々がより快適に暮らせる都市や地域を指します。対象となるインフラは、エネルギーや交通システム、上下水道等のハード面に加え、仕事や暮らし、教育、医療・介護サービス、防災などのソフトなインフラも含まれます。

 アムステルダムの「スマートシティ」プロジェクトでは、スマートグリッド等の技術を活用したプロジェクトを、5つのテーマに沿って実施しています。そのテーマとは、「生活」、「仕事」、「交通」、「公共施設」、「オープンデータ」。ASCのHPにある以下の地図には、プロジェクトが実施されている場所がテーマ別のアイコンでプロットされています。また、黄色く囲った3つのエリアは特に集中してプロジェクトが行われている地区を示します(http://amsterdamsmartcity.com/)。

プロジェクトのテーマ別分布図

プロジェクトのテーマ別分布図

 では、具体的にはどんなプロジェクトが展開されているのでしょう。テーマ別にみていきます。

テーマ:生活

スマートメーター

スマートメーター

 「Geuzenveld-持続可能な地区」プロジェクト:この地区の一般家庭500軒以上にスマートメーターが配布されています。利用頻度の高い家電製品にメーターを設置することで、エネルギーの利用量を可視化でき、待機電力などの無駄を意識するようになるといいます。また、機器だけではなく、近隣住民を対象にエネルギーの効率的利用に関するセミナーを開催したり、省エネアイデアの募集をするなど、住民意識をさらに高める企画もあり、地区全体で電力消費の削減を目指しています。

テーマ:仕事

スマートワークセンター

スマートワークセンター

 「スマートワーク@IJburg」プロジェクト:毎朝の仕事への通勤による交通渋滞やそれに伴うCO2排出の緩和を目指して、スマートワークセンターを自宅近く(本プロジェクトの場合はIJburg地区)に作ったパイロットプロジェクトです。使いやすくするための様々な工夫がされており、会社に行かなくとも会議に参加できる、テレビ会議のシステムを導入することなども計画されています。この他にも、「仕事」のテーマでは、オフィスビルを対象とした「スマートビルディング」プロジェクト等があり、スマートなビルエネルギー管理システムを導入して、エネルギー消費量のデータを収集、分析、その結果に基づいて冷暖房や照明などを制御して、エネルギー消費削減に成功しています。また、データの見える化を実施することで、ビルで働く人々の意識や行動変化へとつなげています。

テーマ:交通

スマートパーキング情報

スマートパーキング情報

 「スマートパーキング」プロジェクト:このプロジェクトは、駐車場を前もって予約することを可能にしたシステムで、駐車場を探す時間とそれに伴うCO2排出や大気汚染を抑えようとするものです。民間の駐車場、公共施設の駐車場、またホテルや病院など、市内各地の駐車スペースの空き情報をスマートフォンで入手し、予約できるようにするシェア駐車のシステムです。将来的には、このシステムを利用すれば駐車料金が安くなり、支払いもオンラインできるなど、ドライバーにとってのインセンティブも考えられています。
 「交通」のテーマにおける他のプロジェクトには、各種交通手段から排出されるCO2総排出量の削減を目指した、船舶用の充電ステーションの設置やカーシェアリングシステムの構築、電気自動車や電動スクーターのための充電ポイントの設置など、移動に関するプロジェクトが実施されています。

テーマ:公共施設

ユトレヒト・ストリート

ユトレヒト・ストリート

 「気候ストリート」プロジェクト:アムステルダム市内で人気のあるショッピング・レストラン街のユトレヒト・ストリートで行われている、同地区全体の省エネを図るプロジェクトです。ショップやレストランのオーナーはスマートメーターやエネルギー消費を示すディスプレイを用い、エネルギー消費を管理するとともに、スマートプラグ※などで消費量を削減しています。また、店舗やレストランでそれを見た市民の、エネルギー意識の変革を促すことにもつながります。また、太陽エネルギーを利用した収集ごみの圧縮。街路とファサードには効率のよいLED照明の設置なども併せて実施されています。この他に「公共施設」のテーマでは、スマートな公共サービスの提供を目指して、学校や公共施設の屋根での太陽光発電、市役所やスイミングプールでのエネルギー消費の可視化、電気自動車を用いたごみの収集なども実施されています。

※スマートプラグは家電製品の電源管理を行うことができるコンセントで、普通のコンセントと家電製品との間に挟んで、家電製品の電力消費状態を検出したり、制御および遠隔操作を可能にしたりするものです。

テーマ:オープンデータ

 「エネルギー地図」プロジェクト:自分の家のある地区では、あるいは近隣の商業施設では、どれくらいのエネルギーが消費されているのか。ソーラーパネルを設置するのに適した場所はどこにあるのか。公園やレジャー施設はどこにあるか。空きオフィスや空き家はどこにあるかなどまで、様々な質問に答える73種類もの地図が、2014年に公開され(http://maps.amsterdam.nl/)、誰でも自由に利用できるようになっています。地図を通して現状と課題の可視化を図り、市民の意識を喚起すると同時に、政策立案上の有益なツールとして活用することも視野に入れています。

エネルギー地図

エネルギー地図

 以上、5種類のテーマごとに実施されている各種プロジェクトを紹介してきました。「アムステルダム・スマートシティ」プロジェクトで実施されているプロジェクトはすべてASCのHPで動画と共に見ることができます.各分野の最新技術と知恵を結集させたこれらのプロジェクトは、動画を見ているだけでもワクワクします。

参考サイト


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