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第43回「エコ・オープン・ハウス」―市内十数軒のエコ・ハウスを公開:イギリス、ブライトン・アンド・ホーブ市

春。家の外に出て散歩やサイクリングなどに出かけたくなる季節。そんな時に、「まちの中に点在する様々な工夫をこらしたエコハウス【1】を訪ね歩く」というような企画があると楽しいかもしれません。そんな試みを2008年から毎年実施している、イギリスのブライトン・アンド・ホーブ市の「エコ・オープン・ハウス」という、住民たちが自分の家を一般の人々に公開する取り組みを紹介します。

ブライトン・アンド・ホーブ市は、ロンドンの南約85キロに位置する人口約24万人の、海と丘陵に囲まれた自然豊かな街です。数千に及ぶ多くの歴史的建造物を抱え、かつ大学も2校ある、文化と教育の都市でもあります。市が2013年に発表した持続可能性行動計画(Sustainability Action Plan)【2】には、市が目指す長期的ビジョンとしてOne Planet Living【3】が掲げられており、それをどう実現していくかを示したロードマップを短期、中期とに分けて具体的施策を挙げて解説しています。バイオリージョナル(持続可能な社会の実現を目指す、英国の著名な環境団体)は、2013年に同市を世界初のワンプラネットリビング市に選定しています。「エコ・オープン・ハウス」も、そんな中の活動の一つです。

1.エコオープンハウスとは

そもそもこのオープンハウスの目的は、自宅をエコハウスにしようとしても、どうすればいいのかわからない上に、多額の費用が掛かるのではないかとの懸念から二の足を踏んでいる人、実際にどれほどの効果があるのかを経験者から聞いてみたいと思っている人などに向けて、実際にエコハウスを訪問して所有者と話をしたり、具体的な方法や知識を得てもらい、エコハウスを建てたり住み替えたりする人を増やそうとするものです。エコオープンハウスの公式サイトには、「エコな暮らしを目指す人、光熱費を節約したい人、エコハウスを建てることに興味のあるビルダーも、さらにはただ興味があるという人も、近くのエコハウスを訪れて刺激を受けよう!」と書かれており、人々が参加しやすいように工夫をこらしたパンフレットを、市内各所で配布している他に、公式サイトからもダウンロードすることができるようになっています。

2.2014年の実施概要

本稿ではブライトン・アンド・ホーブ市とロー・カーボン・トラスト (低炭素トラスト)、ブライトン・パーマカルチャー・トラストの3者の共催で実施された、2014年(10月第三、第四の週末に開催)のエコオープンハウスの内容を、公式パンフレットから紹介します。
(以下、写真及び資料はすべてEcoOpenHouseの公式サイトからhttp://www.ecoopenhouses.org外部リンク

<場所>

市内に点在しているオープンハウスの所在地は、以下のような地図でわかりやすく紹介され(公共交通機関での行き方を含む)、人々はそれを見ながら市内を巡ることができます。

場所

<公開方法>

公開の仕方や時間は家ごとに異なります。特定の時間だけ公開している家、家の中を巡る解説付きツアーを実施している家、予約が必要な家、また、エコハウスに関するレクチャーが行われる場所もあります。

公開方法

<エコハウスの省エネ特性>

どの家にどのような省エネ機能や設備があるかについては、一目でわかるように23の項目について以下のような一覧表で提供されており、その主なものは以下の通りです:
気密性、耐熱仕様、雨水リサイクル設備、窓の二重・三重サッシ、太陽光発電、外張・内張断熱、薪ストーブ、床暖房、自然素材、省エネ照明器具など。

エコハウスの省エネ特性

3.エコハウス事例

 2014年に公開された全22のエコハウスは、一軒一軒詳しくパンフレットや公式サイトの中で紹介されています。大半が住宅ですが、アパートや事務所も含まれます。そのどれもが所有者の思いの詰まったユニークな家や建物で、多くがエコハウスや省エネに関する賞を取得しています。

その中のいくつかを次にご紹介します。

[1] 家族のための家:
家族のための家

1960年に建設された一軒家をエコハウスに改修したオリバー氏が目指したのは、家族が健康に快適に暮らせる家だ。そして家のカーボンフットプリント【4】をできる限り減らすことだった。高性能サッシや、LED照明、断熱材や換気に配慮し、改修後は排出量は75%減少、電気代も劇的に減少した。持続可能性を家の機能面だけではなく、美意識の部分でも重視し、地元材を用いた外壁や、自然素材をふんだんに使った内装、自然光を最大限取り入れて、住んでいて気持ちのいい家が生まれた。ソーラーパネルで発電し、自宅と電気自動車用の電力を賄っている。

[2] 木の家:
木の家

エコ建築家の手による究極の省エネハウス。太陽光をできるだけ家の中に取り込めるように設計されており、断熱材を含め、太陽エネルギーを逃がしにくい素材が用いられている。気密性が非常に高い一方、冬期は空気の入れ替えがスムーズに行われるよう換気にも最大限の配慮がされている。給湯は太陽熱発電で行い、冬場にはガスや薪ストーブを追加的に活用する。雨水はタンクに貯められ、トイレや家庭菜園の水やりに使われる。外壁に用いられている栗の木は地元産のものを用い、屋根は緑化され、昆虫などの格好の棲み家になっている。

[3] ワンプラネット・アパート
ワンプラネット・アパート

2010年に完成した173戸のアパート。ワンプラネット・コミュニティとして建設され、温室効果ガスの排出を極限まで低くすることを目指して以下の性能を揃えている:バイオマス暖房と給湯、太陽光パネル、呼吸する珪藻土けいそうどの壁、屋上緑化、高性能複層サッシ(ガラス)、持続可能性認証を受けた木材の利用、換気、ゼロカーボンなど。その結果、一般的なイギリスの家に比べて、温室効果ガス排出量は6割減、2020年には8割減にまで達する予定だ。緑化された屋上では、カフェが開かれるなど、コミュニティセンターの役割も果たしている。

[4] 廃棄物ハウス
廃棄物ハウス

ブライトン大学芸術学部の敷地に建てられた廃棄物ハウスは、「世の中に『廃棄物』というものは存在しない。ただ、モノが不要な場所にあるだけだ。5軒の家が建てられるたびに、一軒の新しい家を建てることのできるだけのものが廃棄される。だから、純粋に廃棄物だけで家を建ててみたらどうだろう?」という発想から生まれた。例えば、壁の断熱財は古いカセットや歯ブラシ、壁紙などの混合素材で作られている。この家は今後ブライトン大学工学部の学生によってモニターされ、改良が加えられ、リサイクルや廃棄物削減のための拠点となっていく予定だ。

上記以外にも公衆トイレを事務所に改修したものや、最先端のIT(情報技術)を使って家庭内のエネルギー消費を最適に制御するスマートハウスなど、様々なエコハウスが紹介されている上に、現場でレクチャーを聞くこともできるなど、エコハウスを身近に感じるための工夫が満載の企画になっています。

公式サイトにはさらに、エコハウスを実際に建てようとする人のために、各種補助金や助成金に関する情報、さらには太陽光発電による売電のインセンティブなどを紹介する「How to Pay(どうやって資金を工面するか)」についてのページも用意されています。

天気のいい日に太陽の光を浴びながら、それを最大限に生かして暮らす生活を、エコハウス巡りの散歩で経験できれば、環境に優しい暮らし方がもっと身近に感じられそうです。

注釈

【1】エコハウス
エコハウスとは、地域の気候風土や敷地の条件に応じて、自然エネルギーの活用、身近に手に入る地域の材料の利用などを含む、環境に負担をかけない方法で建てられている住宅を指す。
【2】持続可能性行動計画(Sustainability Action Plan)
持続可能性行動計画は同市の公式サイトで見ることができる:http://www.brighton-hove.gov.uk/sites/brighton-hove.gov.uk/files/PandR%20version%20OPL%20SAP(3)%20with%20Forewords.pdf外部リンク
【3】One Planet Living
ワンプラネットリビングとは、世界自然保護基金(WWF)とバイオリージョナルが推奨している考え方で、現代の先進国で営まれている生活では、地球数個分の資源がなければ実現せず、いずれは破綻を来たすという認識に立ち、一つの地球で間に合う資源の利用で持続可能な社会・生活を実現することを目指すもの。2012年のロンドンオリンピックでも大会のテーマの一つとされていた。
【4】カーボンフットプリント
CO2の排出量(正確には他の温室効果ガスを含めたCO2換算量)

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