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2015.04.20

第44回 東京湾大感謝祭で見えてきた官民連携による東京湾再生

木村 尚(きむら たかし)

木村 尚(きむら たかし)

昭和31年神奈川県横浜市生まれ57歳。
NPO法人海辺つくり研究会理事(事務局長)・東京湾の環境をよくするために行動する会幹事、(株)MACS取締役、(株)森里川海生業研究所取締役、(株)joyF取締役、NPO法人共存の森ネットワーク理事、東京湾再生官民連携フォーラム委員他多数の市民活動団体に参加。
 主な著書として「森里川海をつなぐ自然再生」(共著)「ハマの海づくり」(共著)「海辺の達人になりたい」(共著)「江戸前の魚喰いねえ 豊饒の海 東京湾」(共著)がある。 現在、日本テレビ系「ザ!鉄腕!ダッシュ!!:ダッシュ海岸をつくりたい」にレギュラー出演中。

そろそろ限界になってきた東京湾

 近年、東京湾の水質が良くなってきていると言われています。これは、下水道の整備などによる陸域からの流入負荷の削減、海底にたまったヘドロの浚渫(しゅんせつ)など行政の努力のおかげで、窒素やリン等の濃度が漸減傾向にあることも確かめられています。また、新たに造成された海浜や浅場(例えば、東京都の葛西臨海公園、横浜市の金沢八景海の公園、千葉県の船橋海浜公園等)や残された干潟(多摩川河口、盤洲(ばんず)干潟等)では、多くの生物が生息しています。
 ただし、こうした生き物の生息場は限られており、全体として漁獲量は激減しており、「赤い魚青い魚が減り、今は黒い魚ばかり※1」と称されています。水質で見れば、東京湾奥では赤潮が年間100日以上記録され、貧酸素水塊が5月から10月まで海底付近に広がり、大規模な魚の大量へい死を引き起こす青潮も年数回程度発生しています。東京湾に住んでいる生き物たちの「毎日が地獄です」という声が聞こえるようです。なにより、東京湾岸に住む人々の多くが「東京湾は臭い・汚い」「東京湾で取れた魚は食べられない」といった先入観を持ち、海から意識が遠ざかっているようであれば、いつまでも東京湾は再生に向かいません。
 東京オリンピックも近づいてきています。目の前の海が、これでは恥ずかしくありませんか?誰かが、良くしてくれるわけではありません。

あらたな枠組み「東京湾再生官民連携フォーラム」の発足

 そうした東京湾の再生を推進するために、東京湾再生推進会議※2は、2003年に「東京湾再生のための行動計画」を策定し、10年計画で海域での対策、陸域での対策、モニタリングを官主導で推進してきました。まだまだ未解明な部分は多く研究課題も多いものの、成果は少しずつ上がっています。一方で、民への活動の広がり、具体的に良くすることは誰がやるのか、などが課題となりました。2013年にスタートした第2期の行動計画では、第1期の反省を踏まえ、多様な主体が連携して問題の解決に向けた提案や提言を行うフォーラムの設置が提案されました。
 これを受けて、同年11月に「東京湾再生官民連携フォーラム(以下フォーラムという。)」が発足しました※3。そのメンバーには、官側である東京湾再生推進会議メンバーの他、企業、漁業、歴史文化、市民活動などの多様な民の関係者を含み、特定の問題にはプロジェクトチーム(PT)を編成して審議する体制が構築されました。現在、7つのPTが活動しており、東京湾再生に意欲を持つ多様な人々が有するあらゆる英知を結集し、連携や協働を行うこと、また、それらの活動を通して生み出される東京湾再生に向けた総意をとりまとめ、「東京湾再生推進会議」へ提言すること等の役割を担うことを期待されています。

東京湾大感謝祭って何?

 その中で、東京湾大感謝祭PTは「東京湾の恵みを再生するのであれば、まずはその恵みに感謝することから始めたらどうか」という素朴な思いからスタートしたPTです。官民連携という固いイメージを払拭する親しみやすさに多くの賛同者を得て、フォーラムの設置総会を兼ねた第1回東京湾大感謝祭を2013年11月に東京にて開催しました。トークショーや、東京湾を見て味わう出店などが企画され、約1200名が参加する盛会となり、東京湾の再生に向けた官民連携のひとつが具体的に動き出した記念すべきイベントとなりました。

今年の大感謝祭の目指すもの

 第2回目の東京湾大感謝祭では、開催地を横浜に移し、日程も2日間に拡大し実施しました。2回目ということもあり、民の方々が大胆かつ柔軟に、しかもフットワーク良く、献身的なボランティアとして主体的に動いて、多様なイベントが実施されました。2日間の総来場者数は82,000人であり、アンケート結果から見ると、その3分の1は、通りすがりではなく大感謝祭を目指した来場であったことは、予想外の出来事でまったく驚きです。
 フォーラム総会では、指標PTからの東京湾再生の推し量る指標に関する提言がまとめられ、フォーラムの本来の役割である東京湾再生推進会議への提言といった活動にも進展が見られたほか、東京湾パブリック・アクセス方策検討PTや、東京湾での海水浴復活の方策検討PTなどが新たに設置され、より市民よりの視点での東京湾の再生に向けた取り組み体制が充実してきました。
 室内のホールでは、各種体験型展示や自治体による展示やワークショップ、ミニシンポなどが開催されるとともに、野外のメインステージでは、セレモニーや各種パフォーマンス、ゆるキャラ®クイズ大会、歌と踊りでゲリラ的に会場を練り歩く「なんじゃらもじゃら」の出現など、お祭り的な賑やかさも少しずつ増えてきました。メインステージに面する広場では、企業を中心に充実した展示の他、東京湾の多様な海の幸「江戸前」を目で舌で実感してもらおうと、ホンビノス貝※4の試食や、江戸前弁当などを提供するテントが並び、来場者が江戸前を堪能しました。体験型メニューとして、東京湾岸を普段見られない海から見てもらおうと、実行委員長でありヨット雑誌「KAZI」編集長の田久保雅己氏の尽力で実現した東京湾クルーズや、東京湾を皆で楽しく使うため、防波堤での釣りマナー教室も兼ねたハゼ釣り教室やキャスティング教室なども、釣り関係の実行委員の努力で実施されました。それぞれの得意分野を活かした充実の企画が実施され、参加者に新しく楽しい東京湾をアピールできたという手ごたえがありました。今後もさらに充実した展示が行われていることと思います。
 「THE!鉄腕!ダッシュ!!」の「DASH海岸」の高視聴率や、今回の来場者数を見ても、東京湾の環境に対する潜在的な関心の高さが伺えます。海の魅力、課題、それに向けた取り組み、みんなで行動すべきことを、もっともっと伝え、共に活動できる機会を増やしていく必要があります。大感謝祭の内容の充実だけでなく、自ら動く人たちを集め、有機的かつ拡大的に動くようなきっかけを作り、紡ぎ出していくことが東京湾大感謝祭PTの今後の使命と考えています。
 東京湾大感謝祭は、本年も10月24日・25日に横浜赤レンガパークで開催します。出展やスポンサーとしての支援も含め、ご協力いただければと考えています。そうした活動を継続することで「流域人口3,000万人総出の東京湾再生」を目指していきます。


脚注

  1. 赤い魚:タイ・メバルなどの根魚、青い魚:アジ・サバなどの回遊魚、黒い魚:ボラ・スズキなど水質悪化に強い魚
  2. 東京湾再生推進会議=4省庁8都県市が参画 http://www1.kaiho.mlit.go.jp/KANKYO/TB_Renaissance/外部リンク
  3. 東京湾再生官民連携フォーラム http://tbsaisei.com/外部リンク
  4. ホンビノスガイ
    ホンビノスガイ(英: Hard clam、学名: Mercenaria mercenaria)は、二枚貝綱マルスダレガイ科1種。1998年以降、原産地である北米大陸から船舶のバラスト水に混ざり運ばれ、東京湾に定着したと考えられている。ハマグリと同様に、焼き貝や酒蒸し、バター蒸しとして供される。


  5. (出典:pdphoto.org)


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