トップページ > エコアカデミー一覧 > 第76回 東京オリンピック・パラリンピックのメダル製作に協力を

2017.12.18

第76回東京オリンピック・パラリンピックのメダル製作に協力を

田中 勝(たなか まさる)

田中 勝(たなか まさる)

 (公財)廃棄物・3R研究財団理事長。岡山大学名誉教授
米国ノースウェスタン大学大学院博士課程修了、博士(Ph.D)。1976年国立公衆衛生院、廃棄物工学部長、2000年岡山大学教授、2008年公立鳥取環境大学教授、同大学サステイナビリティ研究所所長。2007年に株式会社廃棄物工学研究所を設立。2011年より現職。
ダイオキシン類など有害化学物質のリスクマネジメント、廃棄物発電などの研究課題に取り組む。50年間にわたり廃棄物分野で教育・研究に従事。

1.小型家電から5,000個のメダル

 2020年まであと2年余、いよいよ東京で2回目のオリンピックが開催されます。公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(東京2020組織委員会)は、東京2020大会で使用するメダルを使用済み携帯電話等の小型家電から製作する「都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト」を推進しています。このプロジェクトを通じて、オリンピック・パラリンピック合わせて金・銀・銅合計で少なくとも5,000個のメダルを製作する予定で、それは日本全国の国民が参加してメダル製作を行う国民参画により実現されます。また、日本の高度なリサイクル技術を活用することで、リサイクル金属をメダル製作に活用し環境に配慮したリサイクル率100%メダルを目指しているそうです。
 過去にもメダルの原材料としてリサイクル金属が含まれた例はありましたが、国民が参画し、メダル製作を目的に小型家電の回収を行い、回収された金属でメダルの製作を行うプロジェクトは、オリンピック・パラリンピック史上、東京2020大会が初めてだそうです。

小型家電に含まれる金・銀・銅(1台あたり)
携帯電話ノートPC
0.05g0.3g
0.26g0.84g
12.6g81.6g

(出典:環境省えこじん2017年10月・11月号)

オリンピックメダル製作に必要な金属の量
メダル五輪で必要な枚数必要な重量メダル製作に必要な金属量を
含む小型家電の台数
携帯電話ノートPC
各メダル
1,666枚
40kg80万台約13.3万台
4,900kg約1,885万台約583万台
3,000kg約24万台約3.7万台

(出典:環境省えこじん2017年10月・11月号)

2.使用済み家電製品は金、銀、銅等を埋蔵する都市鉱山

 金、銀、銅などレアメタルは、液晶テレビ、スマートフォンや高付加価値・高機能製品の製造に必須の素材で需要が拡大しています。しかしながら、資源に乏しい日本では、それらを輸入に頼っているのが現状です。
 私たちの生活で排出される使用済家電製品の中には原材料として使用された有用金属が多く含まれており、総量は下図に示すように金では約7,000トン、銀では約60,000トンが含まれており、海外の大鉱山に匹敵するので都市鉱山とも言われています。それら有用金属を多く含む使用済小型家電を資源と捉え、日本の高度なリサイクル技術を用いて、有用金属の回収・リサイクルが推し進められています。これまで、小型家電に含まれる金属回収には高度な技術が必要とされるため、埋立処分され最終処分場を逼迫してきました。1年間で発生する国内の使用済小型家電はおよそ65万トンで、そのうち有用金属は約28万トン(金額換算すると844億円)と推計されており、これらの多くは埋立処分されていて、使用済小型家電からは十分な資源が回収されていないのが実情です。

日本の都市鉱山と世界の天然鉱山の埋蔵量の比較(出典:(独)物質・材料研究機構)

日本の都市鉱山と世界の天然鉱山の埋蔵量の比較(出典:(独)物質・材料研究機構)

3.オリンピックで近代化したごみ処理

 世界の廃棄物は人口増と経済成長で急増しています。その大半は空地にそのまま投棄処分されるオープンダンピングです。開発途上の国々ではそのような廃棄物の処分場で多くの市民が生活の糧を稼ぐために金属類や、プラスチックなど有価物を回収して生活しています。しかし最近そのようなウエストピッカーと呼ばれる人たちが処分場の廃棄物崩落で廃棄物に埋まって亡くなる事故が発生しています。2017年4月にはスリランカのコロンボ市の処分場で32名が死亡しました。このようなレベルの低い廃棄物処理が、オリンピックを開催するタイミングで近代化された例があります。1988年に韓国で開催された時には、キンポ国際空港の近くにあったナンジドと呼ぶオープンダンピング処分場が衛生管理埋立処分場に改善され、本格的に焼却施設が韓国に導入されました。2008年に中国北京オリンピックが開催された時にもレベルの低いオープンダンピング処分場が改善され、廃棄物発電を伴う焼却施設の建設ラッシュが始まりました。日本でも1964年のオリンピックの開催時にも、レベルの低い埋立処分が衛生的な埋立処分場に改善され、焼却施設の整備が始まりました。

スリランカ・コロンボ近郊のごみ山が崩落した現場を視察する日本から派遣された国際緊急援助隊(出典:livedoorNEWS)

スリランカ・コロンボ近郊のごみ山が崩落した現場を視察する日本から派遣された国際緊急援助隊(出典:livedoorNEWS)

ネパールの首都カトマンズの最終処分場

ネパールの首都カトマンズの最終処分場

4.創意工夫を引き出す小型家電リサイクル法

 使用済小型家電の再資源化を促進し、廃棄物の適正処理と資源の有効利用を図り、資源確保・廃棄物減量化・有害物質管理を含む循環型社会の形成を推進することを目的として平成25年4月小型家電リサイクル法は施行されました。この法律の施行により、今まで回収に高度な技術を必要としていた有用金属類の回収技術が向上し、リサイクルが可能になることで、資源が有効利用され、自治体の廃棄物が減量化され、最終処分場の延命化にもつながると期待されます。
 使用済小型家電は自治体による回収がメインであり、回収方法や回収品目は各自治体によって異なります。主な回収方法は、いつもごみを集積しているステーションでの「ステーション回収」、地域単位で行われる「集団回収」、商店などに設置された箱へ投入する「ボックス回収」、不燃ごみ等の回収物の運搬先である清掃工場やリサイクルセンターなどで回収した廃棄物から小型家電等を選別回収する「ピックアップ」方式などがあります。各自治体は地域の特性に沿って創意工夫し、地域市民が出しやすいように、事業採算が良く効率の良い回収方法を選んでいると思います。また私たちがこの活動に積極的に参加することによって、2020年東京オリンピックで選手に贈呈されるメダルの一部が自分から出した小型家電から回収したものだと誇りに思うことが出来るでしょう。

小型家電ボックス回収(左:台東区、右:練馬区)(出典:各自治体ホームページ)

小型家電ボックス回収(左:台東区、右:練馬区)(出典:各自治体ホームページ)

小型家電ボックス回収(左:台東区、右:練馬区)(出典:各自治体ホームページ)

5.おわりに

 2012ロンドン大会用に英国王立造幣局が造ったメダルは4,700個、2016リオ大会用にブラジル造幣印刷局が鋳造したメダルは5,130個です。2020東京大会では、野球、空手、スケートボード、スポーツクライミング、サーフィングの5競技が追加されるので、メダルも5,200個以上必要ではないでしょうか。メダルに必要な金銀銅を回収するためには携帯電話だけであれば約2,000万台、ノートPCだけであれば、約600万台が必要となります。
 国内で使用済みとなる小型家電の多くは、今は埋立処分されていますが、この様な状況を放置すれば、パソコンや携帯電話に必要な部品が作れなくなります。国が設定した小型家電の回収目標は、一人当たり年間1kgです。回収の対象は携帯電話、カーナビ、ノートパソコン、デジカメ、ゲーム機、携帯音楽プレーヤ、ラジオ、小型テレビ、電卓、ACアダプター、リモコンなどです。身の回りで使っていないこれら小型家電を探して自治体が採用している回収方法に従って回収に協力しましょう。そうすれば東京2020大会の成功と私たちの埋立処分場の延命に貢献出来るのです。

減少傾向にある最終処分量の推移(出典:環境省資源循環局・廃棄物適正処理推進課)

減少傾向にある最終処分量の推移(出典:環境省資源循環局・廃棄物適正処理推進課)
※クリックで拡大表示します


三多摩の日の出町二ツ塚廃棄物広域処分場

三多摩の日の出町二ツ塚廃棄物広域処分場

身近な使用済み小型家電製品

身近な使用済み小型家電製品


参考

  1. 公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会
    https://tokyo2020.jp/jp/外部リンク

このページの先頭へ

オール東京62 事業紹介

  • エコプロ2017
  • みどり東京・温暖化防止プロジェクトパンフレット
  • 62市区町村 温室効果ガス排出量
  • 自治体向けカーボン・オフセット 研究成果の紹介
  • スマートコミュニティ研究会
  • かれんとシーナの『エコ質問箱』

オール東京62市区町村
環境インフォメーション

各62市区町村のホームページから集めたエコ情報を掲載しています。

エコアカデミー一覧

第79回
海外事例
コミュニティパワーで100%自然エネルギーの島から次のステップへ:デンマーク、サムソ(市)島
第78
飯田 陳也
葛西「三枚洲」のラムサール条約登録の取り組み
第77回
海外事例
食物ロスを減らして、「5000人に食事を」
第76回
田中 勝
東京オリンピック・パラリンピックのメダル製作に協力を
第75回
海外事例
ハロウィンをグリーンに!:アメリカ、ナッシュビル市
第74回
今藤 夏子
[水に漂う生き物の情報 ~環境DNAを利用した生物調査~]
第73回
海外事例
市民参加型予算で持続可能な都市を:フランス、パリ市
第72回
竹本 和彦
[「持続可能な開発目標」(SDGs)の達成に向けて ──世界につながる地域の取組み]
第71回
海外事例
トランジション・ムーブメント発祥の地:イギリス、トットネス
第70回
下村 彰男
[東京都の自然]
第69回
海外事例
花粉媒介者の保護を目指して:カナダ、オンタリオ州ゲルフ市
第68回
宇郷 良介
[持続可能な社会への変革に対する「スマートハウス」への期待]
第67回
海外事例
シェアリングエコノミーの最先端都市:韓国、ソウル特別市
第66回
藤本 亜子
[ESDでつくる地域社会の未来]
第65回
海外事例
『メルボルンに参加しよう』-「路地をグリーンに」プロジェクト:オーストラリア、メルボルン市
第64回
岡崎 修司
[「仮想発電所」構想始動!公民連携で展開します(横浜市)]
第63回
海外事例
カーフリーハウジング(車を所有しない集合住宅)という選択:オーストリア、ウイーン市
第62回
福山 研二
[虫からながめた都会のすがた]
第61回
海外事例
全米2万3400都市のエネルギー関連データを提供:アメリカ エネルギー省
第60回
堀口 敏宏
[東京湾における環境の変化と生物相の変遷]
第59回
海外事例
エネルギー消費正味ゼロの図書館:ヴァレンヌ市、ケベック州、カナダ
第58回
一方井誠治
[地球温暖化対策計画」の閣議決定を受け、改めて私達の地球温暖化対策を考える]
第57回
海外事例
[世界初、道路で発電する「ソーラーロード」:オランダ、北ホラント州]
第56回
小堺 千紘
[ニッポンの夏支度「緑のカーテン」。その効果と育て方3つのポイント~自然の力を使って楽しみながら快適に暮らそう~]
第55回
海外事例
[「食」をテーマにした環境への取り組み:スウェーデン、マルメ市]
第54回
竹ケ原 啓介
[低炭素社会の創出等に向けた金融のありかた]
第53回
海外事例
[アート(芸術)で環境問題を普及啓発する:イギリス、ブリストル市]
第52回
幸丸 政明
[鳥類から見る都市の生物多様性]
第51回
海外事例
[野生生物に優しい「裏庭(Backyard)生物多様性プロジェクト」:オーストラリア、ボルーンダラ市]
第50回
崎田 裕子
[「みんなで創る水素社会」2020年とその先をめざして、水素エネルギーと私たちのくらし・地域]

本事業は、公益財団法人 東京都区市町村振興協会からの助成で実施しております。