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第4回「公共空間に向けてエコの情報を発信 ~コミュニティFMのエコ番組『Rainbow Earth』の取り組み」(「Rainbow Earth」制作チーム)

活動を続けるため、今中心になって関わる人たちが興味を持てる方向にシフトしていけることを大事にしたい

写真:番組で呼びかけた「キャンドルナイト」の様子。電気を消してロウソクの灯り時を過ごす。

番組で呼びかけた「キャンドルナイト」の様子。電気を消してロウソクの灯り時を過ごす。ほのかな灯が心落ち着かせてくれる。

番組開始当時は、福田さんがパーソナリティも兼ね、ほぼ一人で始めることになった。内容も、福田さんの環境に対する専門知識を生かして、環境にさほど興味のなかった人たちをターゲットに、環境問題の解説をしたり、環境のニュースを紹介したりと、情報の伝達要素が高い番組構成をとっていた。
3~4年間ほど、福田さんとアシスタントのトークで番組を進め、レポーターやスタッフとしてかかわってくれる人たちが徐々に集まってきた。参加する人たちはボランティア的な関わりで、主に「環境」に関心がある人たちか、あるいはラジオ放送を作ったりラジオでしゃべることに興味がある人たちのどちらかだった。
「こういう言い方が適切かどうかわかりませんが、日曜日の昼に集まってくる部活動のようなノリで、興味のある人、やりたい人がそれぞれのモチベーションを持って番組づくりに関わるという感じでした」

訪ねていった日の放送は、番組開始以来、実に302回目の放送だったという。2年前に福田さんが本業の都合で番組に出演できなくなって、アシスタントだった女性がメインに話す1年間を挟んで、2011年4月より、声を仕事にしている「えこめん」たちによる放送が始まった。
「環境について、イベントを実施したりプロモーションをしたりするのはそれほど難しくはないと思うんです。でも大事なのは、それを続けていくこと。だからこの番組も続けていくことを一番の目標にしています」
環境に限らないが、活動が続いていくには、中心になって牽引していく人たちの活力や求心力が大きな要素を担う。ただ、その人たちが抜けたり力を発揮できなくなると、活動そのものが停滞したり休止したりすることもよくある。
「そういう状況って、もったいないですよね。活動を続けていくには、今メインで関わってくれている人たちの興味の方向に、フレキシブルに内容を変えていくのがよいと思っています」
今の放送は、がっつり環境寄りの番組というよりも、FM番組色が強くなっている。環境に対する専門的な知識や経験があるわけではない「えこめん」たちがパーソナリティーとなって放送を作っていくことで、リスナーといっしょに学んでいくような姿勢で番組づくりをしているそうだ。
「関わる人が変わって、『環境』へのアプローチの仕方は変わっても、お昼の12時にラジオを付けると、何かしら『エコ』とか『環境』『ロハス』といったキーワードの番組が流れているということを続けていきたいんです」

公共空間に向けて情報発信していくことの責任感

たまたま枠が空いて始めたラジオ番組だったというから、なぜラジオだったのか、理由はそれほどないのかも知れない。ただ、偶然に得た機会をうまく捉えて必然へと転じていったことはあったのかも知れない。だからこそ、多くの人が関わってくれたり、注目される活動になっていったとも言える。
なぜ「ラジオ」だったのか──。「ラジオ」で環境について発信していくことの意味について、福田さんに聞いてみた。
「『環境』についていろいろと知識が増えていって、『大事だよね』ということは賛同してもらえるようになっても、なかなか実際の行動に結びつかないことが多いと思うんです。そうしたとき、情報を発信する立場に立ってみると学ぶことが多いと思うんです。『環境』についての情報って、雑誌でもテレビでもそうですけど、だいたいが受け取るばかり。インプットは増えてもアウトプットする機会がないし、何か行動を起こすきっかけもない」
ラジオに出て話すために調べたり、自分の話したことが公共電波に乗って広がっていくことで生じる責任感が重くのし掛かったりする中で、福田さん自身も関わるスタッフたちも、より明確で強い目的意識を持って生活様式や行動を変えていけるようになった実感があるという。

「スタッフは結構入れ替わりがあって、学生さんもたくさん参加してくれているんですが、少し前に卒業していった学生さんの一人で、もともと法学部で将来弁護士か法曹関係に就きたいという子がいて、でもラジオも好きでボランティアとして関わってくれていたんです。環境についてそれほど特別な興味はなかったようですが、番組のコーナーでアマミノクロウサギ訴訟とかジュゴンの問題など環境法関係のトピックスを調べてくれたり、番組に出てレポートしてくれたりする中で、将来の進路として環境法の分野も視野に入れて決めていきたいと話してくれるようになった。そんな効果も実際にありました」

手軽だけど本格的なメディアとしてのコミュニティFMラジオ

環境活動をしている人や団体にとって、情報を発信することは大事な活動の一つだ。今の時代、ホームページやメールマガジンなど、手軽に発信できる手段が増えてきている。インターネットを通じて音声や映像を流すこともほんの数年前に較べても驚くほど簡単にできるようになった。その分、情報を発信することに対して、構えるところがなくなってきているのかもしれない。
いわゆるマスメディアに乗せようとするとき、地域発信型のメディアとしては、ケーブルテレビかコミュニティFMということになる。映像は、撮るのも、編集するのも、放映するのも素人には敷居が高いが、ラジオならスタジオに来てその場でしゃべればいいだけだ。
それでも、小さいながらも放送局に出演することは、インターネットなどでの情報発信とは心構えが違っていて、どこかハレの日感があるといえる。

情報発信がしやすいし、地域密着型ではあるものの、公共空間を流れるメディアに乗せて環境情報を発信できるのは、取り組む人たちの責任感や自己肯定感を向上させる。そこが、ラジオという媒体のおもしろさの一つなんだと、福田さんは話す。もっとも手軽な、でも本格的なメディア──それがコミュニティFMなのだろう。

『環境』に対する興味以外からアプローチしていけるのがメディアのおもしろみであり、強みでもある

発信する側にとってのおもしろ味や強みがある一方で、リスナーにとってはどうなのだろう。どんな人たちが聴いていて、あるいは逆にどんな人たちをターゲットに番組を作っているのだろうか。
「番組が届く範囲は、電波の弱いコミュニティFMの場合、江東区を中心とした周辺の隣接区域になります。江東区全体と、墨田、江戸川、葛飾など辺りまで。まずはそこに住む地域の人たちに向けて、環境に関するニュースや、地域の環境についてPRする機能を持っていきたい。でも、それだけだとおもしろくないですよね。今はちょうど番組パーソナリティが声優の人たちだから、ラジオドラマ仕立てにしてエンターテインメント風に味付けしたりもしています。この番組から環境情報を得ようと思って聴くというよりも、楽しみながら聴いていく中に『環境』の話があって、『へえ、そんなことがあるんだ』『ああ、なるほどね』などと思ってもらえるといい。それと同時に、地域に住んでいる人たちだけでなく、例えば、番組のパーソナリティをやっている声優さんたちのファンの人たちも聴いてくださっているので、そういう人たちにも楽しんで聴いてもらいながら、少しは環境のことも知って、考えてもらいたいのです」
番組宛てに届く手紙やメールには、「自分はどこそこでこんな環境活動をしていて、とても共感を覚えた」とか「こんな番組があるのは知らなかったけど、たまたま聴いておもしろかった。うちでもゴーヤで緑のカーテンを作っています」など、地元のリスナーからの共感のおたよりがあったり、「これまで環境活動には全然興味がなかったけど、これからは少し考えていきたい」といったパーソナリティのファンからのメールが届いたりしているそうだ。

コミュニティFMという地域に根ざした番組を習慣的に聴いている人が、たまたま耳にした『環境』の話を印象深く聞いて興味を持ったり、新たな気づきを得たりする。これは、コミュニティFMの“コミュニティ”機能の発現といえる。
一方、FM番組の側面としては、さまざまな出演者が登場する中で、パーソナリティやゲストのミュージシャンやアーティストのファンの人たちが、『環境』に興味も意識もないまま聴いていて、好きな人たちの言動に触発されたり広まったりしていくこともある。
さらに、生放送で番組を作るコミュニティFMにはいろんな人たちがやってくる。地元企業の社長、自治会の役員など、地域の名士がゲストで出演することで、いろんなつながりができたり、番組に興味を持ってくれたりすることもある。その人たちの口コミなどで広がっていくこともコミュニティ放送局ならではの特徴といえる。

写真:プロデューサーの福田さん

「今後は同じ志を持つ人たちとのネットワークを通じて新たな可能性を探っていきたい」と語る、番組プロデューサーの福田寛之さん

環境についての発信はあまたあるものの、多くの場合、興味がない人たちには読んでも開いてももらえない。それでは広がりが持てないから、どうやってより広い層へとアプローチしていくかというところでいろんな工夫がされているわけだが、こうしたいわば偶然の広がりが、ラジオ番組を通してエコ情報を発信するおもしろ味といえるのだろう。

コミュニティFM局という限られた人たちに向けた環境情報の発信。でも、だからこそできることがたくさんある。
福田さんたちの活動は、いわばラジオから環境情報を発信する“草の根活動”の試行錯誤といえる。その実験的な取り組みを通じて、地域の環境活動を掘り起こしたり、参加している人たちが自らの活動を省みる場や自己肯定感をプラスする場にしたり、純粋に楽しむための場を作っていく。
さらに、いろんな地域のコミュニティFM局の中で同じ志を持って活動していこうとする人たちとのネットワークを組んでいければ、地域という制約を超えた新たな可能性を見出していくこともできるかもしれない。そんなラジオ番組を通した環境情報の発信と伝搬の可能性は、実に興味深い。

【基礎データ】「Rainbow Earth」とは
江東区木場より発信するコミュニティFM局「レインボータウンFM 大江戸放送局」(周波数79.2MHz)で、日曜日の昼12:00~13:00に放送している環境ラジオ番組。
番組開始から6年目を迎え、「声でエコ」をテーマにした声優・ナレーター・ミュージシャンのユニット「えこめん」をメインパーソナリティに迎えて、エコ情報満載な放送を届けている。
  • インターネットのUstream配信では、音楽は流れないものの、スタジオの様子を見ることができる。
    http://www.ustream.tv/user/RainbowtownFM外部リンク
  • サイマルラジオによる配信では、スタジオ内の映像は流れないものの、音楽も含めてラジオ番組そのままに聴くことができる。
    http://www.simulradio.jp/#kantou外部リンク

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