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第5回「公立の学校で環境の取り組みを続けていくこと ~『緑檜原省エネ隊』の挑戦」(檜原村立檜原小学校)

転章 持続的な教育活動にするために

2009年度の「緑檜原省エネ隊」の取り組みは、手探りの中で試行錯誤して作り上げていった活動だった。大変だった反面、岡田先生にも当時の4年生たちにとっても思い入れや充実感は大きかったという。ただその分、費やす時間と労力も大きくなり、基礎学習の充実とのバランスなど難しい面もあったとふりかえる。
新しいことへのチャレンジは、一見すると充実感にあふれていて、得られる学びも大きいように思われる。でも、それと同じようなモチベーションや熱い想いを持って続けていけるか、次々とクリエイティブな活動をつくっていけるかというと、現実的にはなかなか難しい。教員の独り善がりな強い思いだけで突っ走ってしまうことになると、子どもたちも息切れしてしまいかねない。
コンテストへのエントリーと1位入選という、いわば“ハレ”の活動は、非日常の活動だったがゆえに大きな手間と時間を割いてできたともいえるが、日常に戻ったときに、一過性の活動として立ち消えてしまうことにもなりかねない。大きな成果の裏側で、岡田先生はそんな難しさも感じていた。
 
ここで生まれた“芽”をどう継続的な活動へと育んでいくか。この年の4年生の子どもたちが5~6年生に進級していく中で活動を発展させていったり、学校全体に広げていったりするのは、学校全体のバランスからすると必ずしもプラスに働くわけではなかった。
むしろ、3年生から6年生の4年間で取り組む総合的な学習の時間の中に、環境の重点学年を設けて、毎年4年生の2学期に実施する活動として「緑檜原省エネ隊」を位置づけていった方が、誰が担任することになっても続けていける教育活動になっていく。そうして堅実に続けていくことが、結果として一つの大きな力になっていくのではないか。
このため、段ボールコンポストによる生ごみ堆肥化を「起」とし、できた堆肥を使って野菜をつくって、給食で食べる「結」までの一連の流れだけに活動を絞り込み、4年生の2学期の中で完結できるようにカリキュラムを組むことにした。「省エネ」の名前は残しているものの、電力等消費量の計測・集計と比較などのCO2削減など直接的な省エネの学習や活動をカリキュラムに盛り込むことはあえてしなかった。
 
2010年度と2011年度の2年間、緑檜原省エネ隊の活動は岡田先生の手を離れて、4年生の総合的な学習の時間の一カリキュラムとして取り組まれてきた。2学期が始まってすぐ、9月・10月に堆肥づくりと野菜づくりを平行して進めることで、寒さ対策もできた。2学期中にすべてのカリキュラムをまとめあげることで、他の教科等への影響も抑えられる。できた野菜の収穫や、その野菜を使った給食も2学期中に完結できるようにスケジュールを組んでいった。
学習目標も実施する内容も明確に位置付けられ、初年度のファジーな試行錯誤の取り組みに較べると自由度は大幅に減ったといえる。でも、それは逆に言えば決められた枠の中で、どうすれば学習効果の高い活動にしていけるかというところに、工夫と苦労を集中できるようになったのだといえる。
作る野菜は、毎年変わっている。毎年の野菜づくりに協力・指導してくれる4年生の家族の提案等も受けて、いろんな野菜づくりに挑戦している。去年は、あきる野市辺りを中心に作られている「のらぼう」と呼ばれる地場野菜を作った(注3)。強い野菜で、江戸時代には飢饉の時にも収穫できて、飢え死にしないですんだと、石碑も建っているという。そんな新たな出会いと発見もできている。
 
なによりも、この緑檜原省エネ隊の活動は、新4年生となる子どもたちにとっては──先輩たちの取り組みは目にしてきたものの──、未知への挑戦だ。先輩たちの悪戦苦闘を見たり聞いたりしながら、4年生になっていよいよぼくたち・私たちの番だと取り組んでいき、その中で新鮮な思いとさまざまな気付きを得てきている。目新しいことに次々と飛びついていくのではなくて、予見できる枠組みの中で子どもたちの偶然の気付きを捉えながら意欲を盛り上げ、効果的な学習をつくっていくことの大切さ。
 
山里の小さな学校のこの小さな活動が、5年・10年と月日を重ねていって、学校の“文化”として定着していったとき、また新たな展開が見えてくるのかも知れない。

注釈

(注3)のらぼう
ノラボウナ(野良坊菜)とも言う。学名:Brassica napus
あきる野市を中心に首都圏西部で作られるアブラナ科の秋まき地野菜。菜の花のようにトウ立ちした蕾を摘んでおひたしや和え物にして食べる。
あきる野市小中野の子生神社境内に建つ『野良坊菜之碑』には、江戸時代には救荒野菜として栽培推奨され、天明と天保の大飢饉で多くの人命を救ったなど、のらぼう菜の歴史が刻まれている。

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