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2013.07.01

第33回「目的は、ゴミを拾う人たちを増やし、ゴミのない街を実現すること ~ゴミ拾いアプリ『ピリカ(PIRIKA)』の挑戦(株式会社ピリカ)」

『ピリカ』を使ってできること

 シンプルな機能ながら、『ピリカ』を使ってできることは意外に応用の範囲が広い。自分の拾ったゴミは、ビン・缶、ペットボトル、ビニール袋、タバコの吸い殻、燃えるゴミ、燃えないゴミなど種類ごとにカウントして登録することができるから、過去に拾ったゴミの数や傾向も如実に見えてくる。
 自宅や職場の近くでのゴミ拾いだけでなく、出張先や旅先など、ちょっとした時間でも気軽にできるのがゴミ拾い行動の特徴といえる。いろんな場所でゴミを拾うことで、自分のゴミマップの広がりが目に見えてくるから、ちょっとした達成感も得られる。
 これまでに拾ったゴミの数々が写真アイコンで一覧表示され、各地のゴミ拾い仲間たちから届いた“ありがとう”のメッセージやコメントの数も一目でわかるようになる。

 現在、2万を超えるユーザーが、一日に2,000~3,000個のゴミを拾っている計算になる。その累積総数は、65か国で30万個以上のゴミが拾われてきたことになる。

拾ったゴミの種類ごとのアイコンを選んで登録し、種類ごとにゴミの数をカウントできる。
拾ったゴミの種類ごとのアイコンを選んで登録し、
種類ごとにゴミの数をカウントできる。

ゴミを拾えば拾うほど、自分のゴミ拾いマップが広がっていく。
ゴミを拾えば拾うほど、
自分のゴミ拾いマップが広がっていく。

これまでに拾ったゴミの数々。
これまでに拾ったゴミの数々。

自分が過去に拾ったゴミの数や傾向がわかる。
自分が過去に拾ったゴミの数や傾向がわかる。

個人が拾うゴミの数を増やして、団体・企業向けのサービス提供も開始

 『ピリカ』のめざすところは、開発当初も今も一切変わってはいない。小嶌さん曰く、「目的は、拾われるゴミをいかに増やすかに尽きます」と明瞭だ。
 「これまでゴミ拾いや清掃活動をしていて、ともすると月に何回実施して、何人が参加したというだけで終わっているケースも少なくなかったと思います。『参加者の皆が笑顔になったからそれで十分』という考え方も確かに素晴らしいし大切なことだと思うのですが、ぼくらはより問題の本質的な解決をしたくて、この『ピリカ』を作りました。『ピリカ』によって、拾ったゴミの量を定量化して、その成果が可視化できれば、目標に向けて一歩一歩進んでいくことができますよね。単純な話、捨てられる以上に拾えばいいわけじゃないですか。ただ、捨てられているごみが膨大ですから、追いつくのはなかなか大変です。ここのところ年に10倍のペースで増えていっていますから、このままのペースで右肩上がりにしていくのが今の目標です」
 個人向けに提供しているサービスだから、まずは個人のユーザーを増やすこと。同時に、一人一人が拾うゴミの数を増やしていければ、ゴミの数は幾何級数的に増えていく。実際に、ユーザーの増加以上に、1人当たりが拾うゴミの数が増えているという。
 「『ピリカ』を使うようになって、ゴミ拾いという行為にのめり込むようになったとか、これまで朝の10分ほど拾っていたのが20分続けるようになったとか、週に数日だったゴミ拾いが毎日の習慣になったとか、そんな声も寄せられていますから、ゴミ拾いを後押ししたり、継続させたりするためのモチベーション向上の面では割とうまくいっていることを感じます。一方で、まったくゴミ拾いに興味のない人たちに対して訴求する部分では、まだ十分な成果は得られていません。そちらの方がハードルが高いというのが、ここ1~2年の活動でわかってきました」

株式会社ピリカのCEO、小嶌不二夫さん。 株式会社ピリカのCEO、小嶌不二夫さん。

 こうした個人向けの対策に加え、団体や企業等に向けたサービス提供も開始している。ゴミ拾いの活動は、個人だけでなく、団体や企業等が地域の清掃・社会貢献の一環として取り組むケースも多いからだ。
 団体・企業等が取り組むゴミ拾いの活動は、定期的に実施している場合も多いが、その実情を十分に把握できていないことも少なくはない。特に、各地の工場や事業所などで分散して実施している活動の場合、本部のCSR【2】担当が把握しきれていないケースは多い。イベントとして実施・運営するだけで手一杯となり、活動の成果を可視化したり、より広く情報を届けたりするところまではなかなか手がまわっていないこともある。
 こうした課題に対応するために始めたサービスとして、団体・企業等の活動状況が一目でわかるWEBサイトの提供がある。
 作り方は非常に簡単になっていて、ゴミ袋の容量と集まった袋の個数、参加人数、実施時間など定型の記入欄を埋めて、簡単なコメントと写真を位置情報とともに送信するだけで、自動的にページが作成されるというシステムだ。スマートフォンなどのモバイル機器があれば活動が終わってすぐに現場から送信することができる。後日、月々の活動のまとめなどを取り寄せるのにも、ボタンひとつの操作でできるようになっている。
 しかも、ここで投稿された情報は、すでに2万件以上のダウンロード実績がある『ピリカ』にも連動していて、逐次情報が表示されるようになっている。企業のCSRのページなどは、なかなか一般の人たちに見てもらえない階層の深いところにあることが多いが、『ピリカ』を通じてゴミ拾いや清掃活動に関心を持つ人たちの目に触れる情報提供ができることになる。ユーザーは、他の投稿と同じように“ありがとう”のメッセージやコメントを寄せてくるから、担当者や活動している人たちにとっても励みになるし、評価の指標として社内外に報告することもできる。
 このシステムは、フリーミアム・モデル【3】での提供を予定していると小嶌さんは言う。つまり、広告枠を設けて、かつベーシックな機能に絞って、無償で提供するサービスだ。表示される広告は、ピリカのパートナー企業。その露出を図ることで、無償のサービス提供を実現するわけだ。しかも、ユーザーの興味とのマッチングも良好な企業が多い。広告を外したり、追加機能を設定してカスタマイズする場合は、有償での提供となるというのが、そもそもフリーミアム・モデルのキモだ。それでも、一からサイトを構築・運用するのに比べたらはるかに格安で設置することができる。

 今後、『ピリカ』に蓄積されていくゴミのデータがさらに増えていくことで、地域のゴミの現況分析や解決策の立案への活用も期待される。しかもこれらのデータは、『ピリカ』の利用の拡大・増大に伴って、全国のデータとの比較で捉えることができるわけだ。
 大きな可能性を秘めた『ピリカ』の今後が期待される。

注釈

【2】CSR(Corporate Social Responsibility)
 企業の社会的責任。文字通り、企業が社会的な存在であり、自社の利益や経済合理性を追求するだけではなく、利害関係者(ステークホルダー)全体の利益を考えて行動するべきであるとの考え方。社会的な責任の中には、行動法令の遵守、人権擁護、環境保護や消費者保護などの義務と責任が含まれるとされる。
【3】フリーミアム(Freemium)
 基本的なサービスや製品を無料で提供し、高度な機能や特別な機能を望む場合もしくは継続利用を望む場合に課金する仕組みのビジネスモデル。「フリー(Free、無料)」と「プレミアム(Premium、割増)」の2つの側面を組み合わせて作られた混成語。
 WEBサービスをはじめとするデジタルコンテンツは、無償提供によるコストを小さくできるため、フリーミアム・モデルによる提供との親和性が非常に高く、さまざまな場面での利用が普及している。
 なお、高機能化等による課金の他、無償提供に付ける広告からの収入が収益の大きな柱となっているケースも多い。

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