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第39回「楽しいことが、世の中を前向きに動かしていく ~アキバのメイドさんたちと取り組む打ち水や屋上菜園の活動(NPO法人リコリタ)」

序章:アキバのメイドがすなる“打ち水”の事始め

リコリタのロゴマーク(NPO法人リコリタ提供)
リコリタのロゴマーク(NPO法人リコリタ提供)

 近年、“世界有数の電気街”というだけでなく、“ヲタクの聖地”とも呼ばれるようになって久しい秋葉原の街。JR秋葉原駅周辺を中心にメイド服姿のコスプレをしたウェイトレスが来客を待つメイド喫茶が乱立し、独特の賑わいを見せる。
 そんな秋葉原の地を舞台に、この街の風合いを生かしたユニークな活動を展開しているのが、『NPO法人秋葉原で社会貢献を行う市民の会 リコリタ』(以下、リコリタ)。といっても、“社会貢献”の文字が持つお堅く真面目なイメージはあまりなく、むしろ社会貢献の活動とは感じさせない、遊び心にあふれた活動を企画・展開している。メンバーは皆、会社員など本業の仕事を別に持ち、リコリタへはボランティアとして関わっている。あいた時間にできることをして、予算も基本は会費だけで回せる規模に抑え、それ以上必要な場合にはその都度協賛企業を募るなどしてまかなっていく。理事長の真田武幸さんも、平日の日中は広告制作会社に勤めるサラリーマンだ。
 名称のリコリタとは、“利己のためにすることが利他的な行動につながる”という意味を込めた「利己利他(りこりた)」をカナにしたものだというから、まさに自分たちのやりたいことを実現するための活動が、結果として人のためにもなることをめざした活動という体を表す名になっている。アルファベット表記では、"Licolita"と書き、ここから"ic"の文字を取り外すと、"Lolita(ロリータ)"となって、秋葉原の地で取り組むこの活動を象徴するようだ。ちなみに、ロゴマークは小さな「利己」(赤)が大きな「利他」(青)に変わる様子を表現している。

 リコリタを始めるきっかけになったのが、秋葉原の街を舞台にアキバのメイドさんたちが打ち水をするという『うち水っ娘大集合!』の企画。今夏(2013年夏)でちょうど10回目となったこの企画が始まったのは、2004年8月のこと。当時からリコリタという団体があったわけではなく、秋葉原で打ち水を実施するために集まった有志による、いわば勝手連が事の始まりだった。

国立市谷保にある、「くにたち蜜源ガーデン」。(NPOみつばち百花提供)

第30回で紹介した「みんな畑」は、すぐ近所にある。写真は、クローバーを食べに遊びに来た、羊のアマエルくん。(NPOみつばち百花提供)

秋葉原を舞台に始まった『うち水っ娘大集合!』。アキバのメイドさんたちが桶とひしゃくを手にして、一斉に水をまく。(NPO法人リコリタ提供)


“燃える東京、萌えて冷却”

第1回『うち水っ娘大集合!』
2004年8月25日、秋葉原駅近く、裏通りにある小さな公園で産声を上げた、記念すべき第1回『うち水っ娘大集合!』。公園では、翌週に控えた納涼祭の準備が進んでいて、テントなども貸してもらえた。いろいろな偶然と出会いに恵まれて実現できた企画だった。(NPO法人リコリタ提供)

 『うち水っ娘大集合!』は、江戸開府400年に当たる2003年に“江戸の知恵に学ぼう”と始まった『打ち水大作戦』【1】の参加企画の一つとして実施しているもの。今年ちょうど10周年を迎えた親企画の『打ち水大作戦』は、決められた時間にみんなで一斉に打ち水をすることで、ヒートアイランド現象で猛暑にさいなまされる都市空間の気温低下効果を検証しようという壮大な社会実験として始まった。
 初年度の2003年当時から、すでに打ち水大作戦のことを聞き知っていたという真田さん。当日は、自宅前に一人水をまいて参加していた。
 「2003年の社会実験で大きな反響を呼んだ打ち水大作戦は、翌年から全国に規模を拡大して、各地で様々な主体による打ち水の取り組みが始まりました。そんな中の一つに、銀座の歩行者天国で打ち水をするという企画があって、私が勤めている広告制作会社が業務委託を受けて、私が担当することになったのです。具体的にどう進めたらよいか、『打ち水大作戦』の本部に相談に行ったのですが、そこではボランティアの学生さんたちが自分で企画していろんなことを始めていたのに直面して、大きな衝撃を受けました。例えば、国会議員が打ち水をしたら話題を呼んで広まるんじゃないかと国会議事堂で政治家を巻き込もうと企画を立てたり、大学のある街の商店街にかけあって打ち水を実施してみたりと、すごい熱気で一喜一憂しながら進めているのです。ぼく自身は仕事でお願いされたからやっていたんですけど、そうじゃなくて自発的にやっている人たちがいることを知って、触発されたんですね。自分でもやってみたいなあと思うようになっていました」
 どこでやろうかと考えた時、学生時代に遊んでいた秋葉原の街のことがすぐに頭に浮かぶ。かつていっしょに遊んでいた仲間たちに声をかけて、集まった。ほどなく“燃える東京、萌えて冷却”というキャッチコピーを考え出し、友人のアニメーターの協力を得て地球の気温を2℃下げるのが趣味という設定の『2℃ちゃん三姉妹』というマスコット・キャラクターも作った。ただ、肝心の打ち水のイベント自体にも“萌えて冷却”するための工夫がほしかった。ちょうどその頃ブームになりかけていたメイド喫茶のコスプレ店員さんたちといっしょに打ち水ができたらおもしろいよねと、企画書を作って秋葉原にあるメイド喫茶をまわった。勢いだけで盛り上がっていた真田さんたちの企画に、4店舗が協力を約束してくれた。
 最初に昔の仲間たちと語らい集ったのが8月の初旬。ふりかえると、8月25日の当日までのわずか3週間ほどで、すべての準備をしていたことになる。

『うち水っ娘大集合!』のマスコット・キャラクター、『2℃ちゃん三姉妹』。秋葉原上空に位置する水の2℃星に住み、地表の温度を2℃下げるのが趣味。(NPO法人リコリタ提供)
※クリックで拡大表示します

『うち水っ娘大集合!』のマスコット・キャラクター、『2℃ちゃん三姉妹』。秋葉原上空に位置する水の2℃星に住み、地表の温度を2℃下げるのが趣味。(NPO法人リコリタ提供)
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『うち水っ娘大集合!』のマスコット・キャラクター、『2℃ちゃん三姉妹』。秋葉原上空に位置する水の2℃星に住み、地表の温度を2℃下げるのが趣味。(NPO法人リコリタ提供)


急速に規模拡大していった『うち水っ娘大集合!』のプロジェクト

 初年度は、結果として200人ほどの参加者が集まった。わずか3週間の準備期間、チラシも作ったがあまり置いてもらえるところもなかった中で、成功裏に終えることができた理由の一つに、アキバ界隈で有名なマンモスブログサイトに取り上げられたことがあげられる。メイド喫茶の店長に企画趣旨を説明するために作って渡しておいた企画書が、なぜかお店の掲示板にそのまま張り出されてしまっていた。たまたまそれを見たブログの主宰者が「おもしろい企画があるよ」と取り上げたことで話題になったのだ。
 当日、打ち水に使う水は、真田さんが仕事で進めていた銀座のプロジェクトのあまり水をもらえることになり、ポリタンクに入れて車まで搬送した。桶とひしゃくも打ち水大作戦の本部から借りてきた。会場は、秋葉原駅からほど近い裏通りの小さな公園が借りられた。当初は歩行者天国で打ち水をしたいと思っていたが、さすがに許可も取れず、千代田区に相談すると、近隣住民の了解が得られるなら公園を使用して構わないとの了承を得た。1軒1軒あいさつにまわった。ちょうど翌週に納涼祭が控えていて、その準備で設置してあったイベントテントを借りることもできた。いろいろな偶然と出会いに恵まれて迎えた当日だった。

2005年の打ち水当日の様子。初年度の約4倍に当たる800人の参加者が集まった。(NPO法人リコリタ提供)
2005年の打ち水当日の様子。初年度の約4倍に当たる800人の参加者が集まった。(NPO法人リコリタ提供)

 翌年には、『2℃ちゃん三姉妹』が『打ち水大作戦』の公式キャラクターに採用され、PR用のアニメ制作の話まで持ち上がった。有名ミュージシャンのPVやアニメ映画などを手がけてきたプロダクションが制作する本格的なものだった。声優には、メジャーデビュー直前で後に大ブレークすることになったアイドルユニットのPerfume(パフューム)が参加。打ち水当日にも駆けつけてくれた。参加者は膨れ上がり、前年比4倍の800人ほどが集まった。


千代田区長も参加した2006年の打ち水。(NPO法人リコリタ提供)
千代田区長も参加した2006年の打ち水。(NPO法人リコリタ提供)

 3年目の2006年はさらなるスケールアップを呈した。大手映画会社から、最新映画の上映記者発表を『うち水っ娘大集合!』といっしょにやりたいとオファーが入り、特別協賛の形でその年の『うち水っ娘大集合!』を実施。映画の主演俳優・女優も、打ち水に参加した。地元の千代田区が正式に参加してくれたのも同じ年だった。コラボ企画を実施したり、打ち水当日には千代田区長も水をまきに登壇してくれたりした。


自分たちのやりたいこと・できることを徹底的に追及して、実験的な企画を仕掛けていった2007年の『うち水っ娘大集合!』。過去最も楽しかった『うち水っ娘大集合!』だったと振り返る。(NPO法人リコリタ提供)
自分たちのやりたいこと・できることを徹底的に追及して、実験的な企画を仕掛けていった2007年の『うち水っ娘大集合!』。過去最も楽しかった『うち水っ娘大集合!』だったと振り返る。(NPO法人リコリタ提供)

 予想をはるかに超えて急速に拡大していった『うち水っ娘大集合!』プロジェクト。期待や要望が膨れあがっていったことで、“本当に自分たちのやりたいイベントができていたか?”という葛藤もあった。翌2007年の実行委員会は、そんな議論をスタートに立ち上がり、自分たちの“やりたいこと”や“できること”を精査しながら、分相応なイベントとして実施していくことを基本に据えることにした。協賛や共催の要望があっても、対等な関係として展開できる企画のみコラボレーションしていく。そんな活動にしていくためにも、任意組織の実行委員会ではなく、NPO法人を立ち上げてやっていくのが望ましいと考えるようになっていった。
 そうした中ではじまった2007年の打ち水は、メンバーそれぞれの思いで、さまざまな実験的な企画を仕掛けていった。例えば、自転車好きのメンバーの一人が「桶とひしゃくなどの資材等を運搬するのに車を使ったのではエコのイベントにはそぐわない」と、台車をつけた自転車を走らせて、イベント中に桶と水を運搬する係を買って出た。桶そのものも、実行委員会側でたくさん用意するよりも、参加者みんなに思い思いの容器を持ってきてもらうことを呼びかけたらどうかとの提案も出された。持ち寄った容器のコンテストも開催し、大いに盛り上がった。


注釈

【1】打ち水大作戦
 日時を決めて残り湯などの二次利用水を使って、みんなで一斉に打ち水をする活動。エコアクションをテーマに世代を超えた地域コミュニケーションを活性化させるねらいもある。
 2013年で10周年を迎えた「打ち水大作戦」。毎年推定600万人以上が全国各地で打ち水を実施していて、今や夏の風物詩といえる様相を呈している。

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