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2014.01.06

第45回「たべる(お皿)とつくる(土)をつなげる試み ~生活者の意識と農の現場がつながることで、“自分たちの食”を取り戻す(つながってミール)」

畑を訪ねて体験と交流の機会をつくる ~“畑に行ってミール”

 イベントは、協力農家の畑を訪問して、緑の中、青空のもとで実施するものもある。『畑に行ってミール』シリーズと名付けているこれらのイベントでは、土にまみれて収穫を楽しんだり、もぎたて野菜にかぶりついたりする、生の体験が売りのイベントだ。夏にはトウモロコシ狩り、秋にはイモ掘り&イモ煮会などを企画して、好評を博してきた。参加者は、主にfacebookなどのSNSツールを通じて呼びかける。知り合いがその友達や家族を連れて参加したりと、自然な広がりをみせている。
 2013年7月の七夕の日に実施したトウモロコシ狩りには総勢70名が参加した。もぎたてのトウモロコシを生でかじってみたり、枝豆の剥き方を教えてもらったり、流しそうめんをやったりと大いに盛り上がる。七夕にちなんで、スタッフが事前に準備した野菜の形に切り抜いた短冊を用意。参加者それぞれが書き込んだ七夕の願い事が竹を飾り、畑の緑と青空に映えた。
 一方、11月のイモ煮会は20人くらいのこじんまりしたイベントになった。回ごとに参加人数もまちまちだが、人数なりの楽しさがある。

裏庭には、平たく仕立てた果樹を2列に配して、間を通れるようにした、“緑の小路(こみち)”をつくってある。
夏の“畑に行ってミール”は、トウモロコシ狩りの企画。もぎたてのトウモロコシを生でかじる。「あまい!」。(写真提供:つながってミール)

野菜型に切り抜いた短冊に願い事を書いて吊るす。(写真提供:つながってミール)
野菜型に切り抜いた短冊に願い事を書いて吊るす。(写真提供:つながってミール)

竹を割った樋(とい)で、流しそうめん。(写真提供:つながってミール)
竹を割った樋(とい)で、流しそうめん。(写真提供:つながってミール)


総勢70人が集まって大盛況の一日となった“畑に行ってミール”の一日。(写真提供:つながってミール)
総勢70人が集まって大盛況の一日となった“畑に行ってミール”の一日。(写真提供:つながってミール)

秋に開催したイモ煮会。この日は、里芋の収穫体験から始まった。(写真提供:つながってミール)
秋に開催したイモ煮会。この日は、里芋の収穫体験から始まった。(写真提供:つながってミール)

畑で採れたばかりのみずみずしい野菜たち(イモ煮会にて)。(写真提供:つながってミール)
畑で採れたばかりのみずみずしい野菜たち(イモ煮会にて)。(写真提供:つながってミール)


バレンタインデーの直前に開催した、野菜を使ったお菓子づくりのイベント「ベジスイーツをつくってミール」。(写真提供:つながってミール)
バレンタインデーの直前に開催した、野菜を使ったお菓子づくりのイベント「ベジスイーツをつくってミール」。(写真提供:つながってミール)

 「『畑に行ってミール』シリーズのほか、シェフと消費者をつなげて、採りたて野菜を使った料理を楽しむ、少しプレミアムな感じの会もやっています。また、『ベジスイーツをつくってミール』というイベントでは、野菜を使ったお菓子作りの料理教室もやりました。スタッフの中から湧き出てくる、“こんなことやってみたい!”という思いをサポートしながら、楽しむことを大事にやっています。それと、必ず生産者さんを呼ぶので、そのときに使っている野菜の話をしてもらって、“たべる(お皿)”と“つくる(土)”をつなげることを意識した会にしています。農家さんの他にも、ベジスイーツの会では、砂糖問屋の人を招いてお菓子に使った砂糖の話をしてもらったり、ちょうどバレンタインデーに向けたスイーツづくりでもあったので、ラッピングの業者の方に講師になってもらってラッピング講座も企画したりしました。協力していただいている農家さんからも、消費者と直接かかわれる機会ができたことを喜んでもらっています」
 近年は、“マルシェ”と呼ばれる直売の市場のような催しも開催されるようになり、消費者と直接かかわる機会に参加する農家も増えてきた。ただ、商品である農産物等について話をしても、その背後にある農家の思いやこだわりについて深く話をする機会も時間もあまりない。まして、個人的なつながりに発展していくことはなかなか難しい。つながってミールのイベントは、体験や交流を通じて、食や農を自分ごととして捉えてもらうことを重視している。そうして農家と生活者が相互に理解を深めていくことで、“たべるとつくる”が自然なかかわりの中でつながっていくことをめざすわけだ。

農家と生産者が直接的につながる仕組みを構築したい

話を伺った松澤巧さん。もとは都会派で、土いじりなんて泥臭いことはできないと思っていたが、いつの間にか土を触るのが好きになっていたと笑顔を見せる。
話を伺った松澤巧さん。もとは都会派で、土いじりなんて泥臭いことはできないと思っていたが、いつの間にか土を触るのが好きになっていたと笑顔を見せる。

 つながってミールの活動を通じてより多くの人たちに伝えていきたいことは、野菜の価値だと松澤さんは言う。
 「農家さんによって思いもそれぞれ違いますが、ともかくちゃんとした野菜の味を知ってほしいとか、本物を知ってほしいということがまずはありますね。それと、畑に来てほしいという人も少なくありません。ぼくらの活動では、野菜の価値というのをどう伝えるかが課題かなと思っています。値段でしか見られないと、安さだけで選ぶことになりますよね。でも、高い野菜は高いなりの理由があるわけです。それとともに、その高さもどういう値段が適正なのかを含めて、作られている過程だったり味の違いだったりを、もっといろんな人に知ってほしいと思っています」
 震災の混乱も一つの契機となって、農業や食の安全に対する関心は、以前より格段に上がっている。農家とつながりたいというニーズもでてきている。イベントを中心に思い切り楽しんでいく『つながってミール』の取り組みも、めざすところは、農家と生活者が直接的な関係の中でいろいろなつながりを構築していくための仕組みづくりだと松澤さんは言う。
 「生協とか宅配業者なども増えてきて、JAだけでない流通のあり方が増えてきていますが、まだまだ農家と生活者との関係はそれほど直接的とは言えません。ぼくらがやりたいのは、もっと直接的なつながりができるような仕組みです。それが具体的にどういう形になるのかはまだ模索中ですが、今ぼくらがキーワードにしているのは、“『自分たちの食』をコモンパッション【2】に”ということです。おいしい食べ物って人をつなげられるものだし、みんな関心があります。それをきっかけにして、生産者とつなげられないか。それと、六次産業【3】的なことにも発展していきたいと思っています。例えば、農家さんとシェフがつながることを生かして新しいメニューを開発したり、地域の食の新しい楽しみ方を発信していけたりすると、これまでにない価値が生まれてくるかもしれない。そんな取り組みがうまくいけば、イベント以外の収入源も生まれる可能性がある。そうして収益が生みだされていけば、今の持ち出しレベルでしかできていないことも、より大きな規模の挑戦をはじめるための資金にもできると思うんです」

注釈

【2】コモンパッション
 「common:共有できる」と「passion:情熱」を合わせた造語。
【3】六次産業
 第1次産業(農林水産物の生産)に食品加工(第2次産業)や流通販売(第3次産業)を融合し、農業者自身が付加価値を得ることのできる地域ビジネスの展開と新たな業態の創出を行う取り組み。雇用の確保と所得の向上による農産漁村の活性化を目的としており、具体例としては農業のブランド化、レストラン経営などがある。
 六次産業という名称は東京大学名誉教授の今村奈良臣氏の造語で、当初は「第1次産業+2次産業+第3次産業=第6次産業」としていたが、単純な寄せ集め(足し算)よりも、それぞれの有機的・総合的な結合(掛け算)の必要性から「第1次産業×第2次産業×第3次産業=第6次産業」に改められている。なお、第四次産業及び第五次産業は存在しない。

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