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2016.01.29

第68回「断片的な知識を関連付け、問題の抽出・解決につなげるアクションの提案・行動を導く ~ICUにおける環境研究のダイナミズム(国際基督教大学)」

E-Weeksの企画を通じて周知を図る

 容器の導入は実現したが、食堂を利用する一般学生にも周知を図り協力を呼びかけていかなければ、返却ボックスに戻されず、ゴミ箱に捨てられてしまう。誤って捨てられてしまう容器を回収するため、SUSTENAの学生たちが定期的に見回ることにした。
 「一つおもしろかったのは、学生たちがゴミ箱を調べていると、清掃業者の人たちが、“そういうことなら、私たちがやってあげるよ”と参加してくれたのです。毎日回収に来られた時にゴミ箱に捨てられていないか確認して、混入していたら返却ボックスに戻してくれることになりました」
 周知のためのキャンペーンを張ろうと考えたのが、E-Weeksの取り組みだ。毎年4月22日のアースデーの前後4週間ほどの環境月間を設けて、SUSTENAのメンバーが中心になり、学生や教職員に向けて環境問題に興味を持ってもらえるよう、企画を組み、実施する。もともと、Environmental Weeksの略称として設定したものだったが、2015年のE-Weeksでは、"Expand(広がる)"や"Education"(学ぶ)、"Enjoy(楽しむ)"など、さまざまなEで始まる言葉をテーマにしたイベントを企画した。
 周知のためのキャンペーンを張ろうと考えたのが、E-Weeksの取り組みだ。毎年4月22日のア  例えば、第1週のExpand(広がる)をテーマにした回では、学内の環境系・社会貢献系サークルを集めて新入生向けの合同説明会を実施した他、サステナブルなキャンパス実現に向けて先進的な取り組みを行っている他大学の環境活動に関するポスターを展示した。第2週は、Ecology(自然環境)をテーマに、上遠先生による自然観察会でキャンパス内の自然を案内。併せて、映画「HOME~空から見た地球」の上映会を実施した。第3週は「Education(学ぶ)」をテーマに、学内の環境系教授、大学職員による講演会を実施。最終週には、「Enjoy(楽しむ)」をテーマに、音楽系サークルに呼びかけて、学食の電気を消してキャンドルのあかりを灯した、キャンドルナイト・コンサートを開催した。たまたま食事に来ていた学生や教職員も含めて大勢の参加で盛り上がった。
 2015年度で4年目の取り組みとなり、学内でも恒例のイベントとして定着している。結果、プラスチック容器の回収率もだいぶ上がってきたという。

E-Weeksの案内掲示
E-Weeksの案内掲示

食堂で実施したキャンドルナイト・コンサートの様子
食堂で実施したキャンドルナイト・コンサートの様子

 

リサイクル容器「リリパック」の回収率の推移

 ゴミ箱への混入は、最近はもうほとんどなくなっている。ただ、毎年新入生が入ってしばらくは混入することもある。しかしこれらも回収して返却ボックスに戻されるから問題はない。
 「キャンパスの中には学生寮が10棟ほどあって、650人くらいが寮に住んでいます。彼らが食堂でテイクアウトの食事を買ってきて、寮に持ち帰って食べているのですが、使い終わった後も、カップラーメンを食べるときなどの容器として使っている学生もいるようなのです。それが回収率の伸びない理由の一つになっていました。うちの大学では、毎年夏休みにサマープログラムといって、外国から日本語研修にやってくる学生を受け入れていて、その学生たちに夏休み期間中は寮を開放しています。そのために寮生たちは夏休み前、春の学期が終わると寮を出ないとならないわけです。このタイミングで、急に返却ボックスがあふれるようになるのです。つまり、寮で使っていた分が、一気に返却されるのですね。普段、回収率は40%~50%になっているようなのですが、寮からドン!と届いたこの時期だけバ~ン!と跳ね上がって、その月の配布量を超えるわけです」
 回収率4~5割といっても半分以上がロスになっているわけではなく、返却するということ自体は認識されているのだろう。
 こうした活動を通して、ゴミの削減や省資源等に取り組むとともに、障碍者の雇用支援につながったり、有事の際には被災地支援の役にも立ったりと、さまざまな切り口があることを学ぶことになった。回収率のデータからは学内の利用状況なども見えてくる。まさに、1粒で2度ばかりか3度もおいしいといったそんな活動が学生たちにフィットしたようだと布柴先生は言う。

 グループごとの研究プロジェクトの一つが発展したこの活動は、当初はレンタル弁当箱というアイデアだったが、具体化するプロセスでもさまざまな学びを得て、結果としてリサイクル可能なリリパックの導入となった。現在は、同じく学生たちの研究プロジェクトから発展した活動に向けて、紙の問題について企画書をまとめて大学当局に提出している。
 「大学ですから、紙はたくさん使っています。減らせない部分ももちろんあります。正式な文書等にはそれに合った紙も必要でしょう。でも、すべてをそうした紙にする必要はありません。例えば、学生に配布するプリント類は、再生紙混入率を高めた紙を使ったり、低質パルプを使った紙にしたりしてもいいんじゃないかということです。ただし、藁半紙のような鉛筆で書いたときに引っかかったりするのは嫌だから、それよりはよいものを使ってほしいなど、コストと品質や導入の効果と影響などについて調べていました。また、授業ではコメントシートといって、学生が授業で学んだことや先生に対する質問などを書いて提出するものがあります。今は紙媒体で提出するようになっていますが、これをタブレットなどの電子媒体に切り替えていくことなども提案に盛り込まれました」

環境研究2015年度のグループ研究のテーマ事例
環境研究2015年度のグループ研究のテーマ事例
※クリックで拡大表示します

 これらのプロジェクトをアイデアから立ち上げ実践するまで、アイデアを企画書にまとめ、交渉し、課題を見い出し、解決法を探り、また企画書を再提出して交渉し…と繰り返して、理解を求め、人を巻き込み、実施にこぎ着ける。さらに、実施したからにはそれを継続させなければならない。それらのプロジェクトを実施できたとき、学生たちは大きな成功体験をする。それと同時に、そのプロセスから、通常の大学での学問や学生生活では体験できない学びが生まれる。
 こうした経験は、学生たちが社会に出てから生きてくる能力になるのではないかと期待する布柴先生だ。

バイタリティあふれ、語学も堪能なICUの学生たち

 前年度のグループプロジェクトでは、地域の農業問題について取り上げたグループがあった。
 「グループ研究の発展として、学内で野菜づくりをしたいという学生がいて検討しました。夏休み期間中の管理をどうするのかという話もあって、いったんは立ち消えそうになったのですが、中に寮生がいて、寮のまわりの空きスペースを畑に耕して、今は大根や白菜などの栽培をしています。2014年のE-Weeksでは、三鷹市内の若手農家を講師に招いて学生たちとのディスカッションをしましたが、その企画を立てたのもこのグループでした。その後、農家の方とタイアップで何かできないかと相談・検討していたのですが、中心になって活動していた学生が交換留学で海外に行ってしまうことになり、頓挫した形です」
 ICUでは、そのように海外に出てしまうことで活動が停滞するケースも少なからずあると布柴先生は言う。元気があって好奇心も強く、積極的にかかわってリーダーシップをとっていくような学生だからこそ、外の世界に飛び出していくことにも躊躇はないと、上遠先生も同意する。
 交換留学にもさまざまなケースがある。例えば、1年生が夏休み期間中に短期の語学留学に行くこともあるし、2年生になってサービスラーニングというプログラムに参加する学生も多い。例えば、環境系の学生なら、アメリカの国立公園でパークボランティアの活動に参加したり、国内でもWWF-Jのサポートで石垣島に行って子どもたち向けの環境教育プログラムの手伝いをしたりする。春学期中の授業で、前もって現地の実践活動について調べたり、自分自身の目標を立ててプレゼンテーションしたり、プログラム参加後にも実際に行って体験したことをレポートにまとめたりプレゼンテーションしたりして、単位を取得することができる。そんな活動が国内だけでなく海外の活動でも認められているため、海外に飛び出していく学生もいる。全学生数2,800人ほどのうち、年間450人ほどが何かしらの形で海外に出ているというから驚きだ。
 冒頭に紹介した31のメジャーの一つでもある環境研究メジャーを専攻する学生の中には、2015年末にパリで開催されたCOP21に向けて各国の大学生が集まって提言をまとめる会合を開いた際に参加した学生もいたという。ここでまとめた提言は、パリの総会でも発表された。
 そんな語学力や国際性を生かしたバイタリティ溢れる行動力も、ICUの校風だと布柴先生と上遠先生は話す。

話を聞いた、右から、自然科学デパートメント講師の上遠岳彦さんと同教授の布柴達男さん、ICUの学生で環境研究メジャーの加木屋菜美さん(4年生、専攻は再生可能エネルギーの経済性)。
話を聞いた、右から、自然科学デパートメント講師の上遠岳彦さんと同教授の布柴達男さん、ICUの学生で環境研究メジャーの加木屋菜美さん(4年生、専攻は再生可能エネルギーの経済性)。


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