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2016.03.28

第71回「活動の担い手を求める地域の保全団体と、ボランティアに関心のある人たちをマッチング ─(認定NPO法人自然環境復元協会「レンジャーズ・プロジェクト」)」

“作業開始前は落ち葉に埋もれて花壇っぽくなかったのが、どんどんきれいになっていった”

 落ち葉溜めから堆肥班の人たちが土嚢袋に詰めた落ち葉堆肥を運んで戻ってくると、さっそくその堆肥を肥料や土壌改良剤とともに撒いてすき込んでいく。さっとならしてきれいになった花壇に、全員で手分けしてへメロカリスの株を植え戻していく。花壇の手前にスッと立つスイセンを境に、その後ろにヘメロカリスを植え、併せてスイセンの手前に、公園の近所にある球根輸入代理店から寄付してもらったクロッカスとチューリップの球根を植えていく。
 「球根は、冬の寒さに当てないと開花しないので、今の時期だとギリギリのタイミングなんですが、土に入れてあげればあっという間に花が咲きます。球根の大きさの3倍くらいの深さの穴を掘って埋めてください。大きい球根は地上に出てくる茎も高く生長するため、支えるためにも根を深く張り出していくことが必要なんです」
 大量の球根を何袋ももらっているから、溝を掘って、その中に並べて植えていくような感じでどんどん植えていく。通常のガーデニングではそんな乱暴な植え方はしないというが、ここでは、これくらいどんどん埋めていかないと作業が終わらないまま植え時を逃してしまうことになる。

 一方、スイセンの奥の花壇一面に植え戻すヘメロカリスは、まずは全体のバランスを見ながら配置していくところからはじめる。置くときに、まっすぐ一列に置くのではなく、ジグザグに置いていくときれいに見えるという。
 「スコップがある人は、スコップの方が楽だと思います。今置いたところに、穴を掘っていきます。掘るときに、スコップの肩のところにぐっと体重を乗せて力を入れると、普段重たくていやだなという体重も、役に立ってくれますよ」
 冗談も交えながら、軽妙なトークでクラブのメンバーが植え方の説明をする。
 土は一度掘り起こしているからフカフカで、穴を掘るのもそれほど力を要しない。ヘメロカリスを入れてちょうど地面が平らになるくらいの穴をあけ、土をかけ戻していく。
 「植えるときに、斜めにならないよう茎をまっすぐ立ててください。まわりの土を平らにしたら、最後ギュッと押さえてあげると、土と苗が活着【1】して安定しますから、押さえて平らにしておしまいにしてくださいね」
 手前から植えると踏みやすいため、花壇の内側から外側に向かって植えていくと、踏まずに植えていくことができる。そんなアドバイスに沿って、レンジャーズ隊員たちも黙々と作業をこなしていく。

堆肥班の人たちが袋に詰めた落ち葉堆肥を抱えて戻ってくる。(レンジャーズ・プロジェクト事務局提供)

堆肥班の人たちが袋に詰めた落ち葉堆肥を抱えて戻ってくる。(レンジャーズ・プロジェクト事務局提供)

堆肥班の人たちが袋に詰めた落ち葉堆肥を抱えて戻ってくる。(レンジャーズ・プロジェクト事務局提供)

花壇班が花壇の掘り起こしをしている間、堆肥班の人たちは公園の端の落ち葉溜めへ向かい、土嚢袋に落ち葉堆肥を詰める作業を行った。成熟したよい土になっていないところもあって、選びながら詰めていくのが大変だったという。(レンジャーズ・プロジェクト事務局提供)

花壇班が花壇の掘り起こしをしている間、堆肥班の人たちは公園の端の落ち葉溜めへ向かい、土嚢袋に落ち葉堆肥を詰める作業を行った。成熟したよい土になっていないところもあって、選びながら詰めていくのが大変だったという。(レンジャーズ・プロジェクト事務局提供)

花壇班が花壇の掘り起こしをしている間、堆肥班の人たちは公園の端の落ち葉溜めへ向かい、土嚢袋に落ち葉堆肥を詰める作業を行った。成熟したよい土になっていないところもあって、選びながら詰めていくのが大変だったという。(レンジャーズ・プロジェクト事務局提供)

掘り起こした花壇に堆肥を撒いて土づくり。レーキや熊手、スコップなどでならしていく。

掘り起こした花壇に堆肥を撒いて土づくり。レーキや熊手、スコップなどでならしていく。

掘り起こした花壇に堆肥を撒いて土づくり。レーキや熊手、スコップなどでならしていく。

堆肥をすき込んでならした後、ヘメロカリスの株を植え戻していく。
堆肥をすき込んでならした後、ヘメロカリスの株を植え戻していく。

花壇手前で一列に並ぶスイセンの根元には、クロッカスとチューリップの球根を埋めていく。やや時期遅れだが、1週間ほどもすると花が咲くという。
花壇手前で一列に並ぶスイセンの根元には、クロッカスとチューリップの球根を埋めていく。やや時期遅れだが、1週間ほどもすると花が咲くという。

 ミッションを終え、クールダウンのストレッチで体をほぐした後、隊員及び講師陣全員が輪になって、まとめの会で一言ずつ感想を言う。
 レンジャーズ隊員の一人から、「作業開始前は落ち葉に埋もれて花壇っぽくなかったのが、どんどんきれいになっていったのがうれしかった」という正直な感想もあった。確かに、花壇というよりは落ち葉の吹き溜まった雑木林の林床という雰囲気だったといえる。

 公園外周のフェンス沿いに整備されたこの花壇は、「花の小径(こみち)」と呼ばれて整備されている。水やりもせず雨水だけで育つが、まわりを囲うようにケヤキが伸びているため、春から秋にかけて木々が葉を茂らす季節になると日当たりが悪くなり、必ずしも条件のよい花壇とはいえない。とはいえ、初夏の頃に花が咲くと、雑木林の中の自然な感じがよい雰囲気を醸し出す。この日の作業で植え戻したヘメロカリスも、7月~8月にかけて開花するだろうという。花の時期にはぜひ訪ねてみたいと、隊員たちも口々に話す。

   今回集めてきた落ち葉堆肥は、合計22袋分になった。そのうち、この日花壇に撒いたのは3袋分。残りは、今後、クラブが管理する他の花壇も含めて季節ごとの植え替え時期に土に混ぜて使っていく。22袋分でほぼ一年分はもちそうだというから、今回のミッションはまさにレンジャーズの面目躍如といえるだろう。

22袋のうち今回使わなかった19袋は倉庫の端に積み上げ、今後、季節ごとの植え替え時期に土に混ぜて使っていく。

22袋のうち今回使わなかった19袋は倉庫の端に積み上げ、今後、季節ごとの植え替え時期に土に混ぜて使っていく。

22袋のうち今回使わなかった19袋は倉庫の端に積み上げ、今後、季節ごとの植え替え時期に土に混ぜて使っていく。

ミッション完了後、シートに座ってお昼を共にするレンジャーズ隊員たち。
ミッション完了後、シートに座ってお昼を共にするレンジャーズ隊員たち。

レンジャーズ・プロジェクトの持続的な活動に向けて

 レンジャーズ・プロジェクトの登録者数は、2016年2月現在で2,350人にのぼる。毎年400~600人ほど増えていることになる(下表参照)。登録してすぐ毎週のように出動してくる人もいれば、長年登録したまま地元開催の今回を期にようやく初出動を果たしたという人もいるなど、参加の仕方は人それぞれだ。
 それでも、年間のミッション要請回数と人数は、2010年度の19回・146人から、2011年度には44回・489人、2012年度は62回・688人、2013年度に56回・688人と推移してきて、昨2014年度は52回・649人となった。ほぼ毎週のように開催していることになる。

レンジャーズ・プロジェクトの実施エリア
レンジャーズ・プロジェクトの実施エリア

登録者数の推移。年に400~600人ほど増えてきた。(レンジャーズ・プロジェクト事務局提供)
登録者数の推移。年に400~600人ほど増えてきた。(レンジャーズ・プロジェクト事務局提供)

 順調に発展し続けるレンジャーズ・プロジェクト。今後の課題は、保全活動の現場の需要と、実働部隊としてサポートするレンジャーズ隊員側の供給とをバランスしながら、いかに広げていくかというところにありそうだ。
 登録人数が増えて、活発に活動に参加する隊員が増えていけば、保全現場の抱える課題の解決もより多くこなすことができることになる。その反面、各団体との連絡調整や隊員たちへの出動要請と事後の報告など事務作業も増えていく。現在はスタッフ2人と現場リーダー5人という体制でまわしているというが、年間60日の出動を維持するだけでギリギリの状況だというのも頷ける。
 立ち上げ当初は地球環境基金を活用してプロジェクトの基盤づくりを行ってきたが、今後、持続的な活動にするための資金調達も大きな課題となるだろう。

 活路の一つとして、ここのところ増えてきているのが、企業の社会貢献事業とのタイアップだ。レンジャーズ・プロジェクトのネットワークを生かして、社員が参加するオリジナルのプログラムを提供する。
 他方、個人が参加するレンジャーズ・プロジェクトについては、担い手不足の解消と同時に普段なかなかみどりとかかわる機会のないオフィスワーカーを大量に抱える首都圏ならではの新しく・効果的なボランティアニーズの掘り起こしと受け皿提供として意義深い。こうした公益的な活動に理解を示す行政機関との協働・協力は一つの方向性になり得るだろう。実は、今回の代々木公園でのサポート事業は、渋谷区からの委託事業として、オール東京62市区町村共同事業の助成金を活用して実施している。レンジャーズ・プロジェクトと連動した緑の保全事業としては、代々木公園ガーデニングクラブの活動の他、渋谷駅前のモヤイ像花壇で活動するシブハナの活動サポートとして花ガラとごみ拾い及び花壇保護のための柵の取り付け作業を行ったりと合計4回の活動を実施してきた。この他、NPO法人渋谷川ルネッサンスの協力で唱歌「春の小川」の舞台・渋谷川を歩いてビルピットからの下水臭の調査なども行っている。

 都市近郊の自然は特に人の手が入ることで維持されてきた自然だ。保全のためには人の手を入れていく必要がある。伊藤さんは、このプロジェクトを通じて「住民総レンジャーズ化」をめざしたいと意気込む。そこまではいかずとも、地域で担い手不足に悩む保全団体の活動の社会的意義やその魅力をアピールしつつ、レンジャーズ隊員のサポートにより活動を支えていこうというレンジャーズ・プロジェクトの可能性と期待は決して小さくはないといえよう。

話をお聞きした、「レンジャーズ・プロジェクト」コーディネーターの伊藤博隆さん。
話をお聞きした、「レンジャーズ・プロジェクト」コーディネーターの伊藤博隆さん。


注釈

【1】活着
 花壇やプランターなどに植えた苗や、挿し木や接ぎ木した植物が根付いて生長すること。
 うまく活着させることが植物を育てる上で重要なポイントとなる。

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