トップページ > 環境レポート > 第75回「魚を追いかけ、命をいただく体験を、地元の川との“出会い”のきっかけに(青梅・多摩川水辺のフォーラム『ガサガサ水辺の探検隊』)」

2016.08.10

第75回「魚を追いかけ、命をいただく体験を、地元の川との“出会い”のきっかけに(青梅・多摩川水辺のフォーラム『ガサガサ水辺の探検隊』)」

魚は追いかけて捕るのではなく、網に追い込んで捕る ~水辺のガサガサ探検

 続いてのプログラムは、河原の草地を歩いて2分ほどのところにある池で、水辺のガサガサ探検をする。魚が焼けるまでの間のプログラムでもある。
 川の伏流水が溜まってできたこの池には、小魚やエビ・カニなどの水生生物が草陰などに隠れ住んでいる。草が覆う岸辺などにタモ網を差し込んでガサガサとかく乱して、驚いて逃げ出すところを捕獲するわけだ。

特大のタモ網を背にした山ちゃんを先頭に、草原を分け行って、ガサガサ探検の舞台となる池に向かう。

特大のタモ網を背にした山ちゃんを先頭に、草原を分け行って、ガサガサ探検の舞台となる池に向かう。

特大のタモ網を背にした山ちゃんを先頭に、草原を分け行って、ガサガサ探検の舞台となる池に向かう。

 池の前で、大きな網を抱えた山崎さんが、ガサガサのやり方について説明をする。
 「みんな、ガサガサで魚を捕ったことはあるかな? 初めてという子のために、山ちゃんが捕り方を教えます。魚がいる!と思って追いかけても、魚が逃げる方が絶対に早いです。だから、網に向かって魚が逃げ込むように、人間が追い込みます。魚たちは、どこに隠れていると思う? そう、草の隙間や石の下などにいます。この草の陰にもひょっとしたら隠れているかもしれません。だから、草の前に網を置いたら、足でかき混ぜて魚を追い出すんです。それだけで…ほら、絶滅危惧種のシマドジョウが捕れました。人間が追いかけても絶対に捕れないよ! 網を置いて、追い込むんだ!!」

 魚の捕まえ方についての説明が終わると、カウントダウンの合図で子どもたちは一斉に池の中へと踏み込んでいく。目標は、1人1匹以上捕まえること。池の中央で子どもたちを見守る山崎さんをはじめ、スタッフも池の中に入って子どもたちをサポートする。すでに前年などに参加して慣れている子は、すぐにタモ網を掲げて「山ちゃん! これなに?」と大きな声をあげる。

川の伏流水が溜まってできた池で“ガサガサ探検”。絶滅危惧種や外来種など思った以上にたくさんの生きものが捕れる。

川の伏流水が溜まってできた池で“ガサガサ探検”。絶滅危惧種や外来種など思った以上にたくさんの生きものが捕れる。

川の伏流水が溜まってできた池で“ガサガサ探検”。絶滅危惧種や外来種など思った以上にたくさんの生きものが捕れる。

 1時間ほど、池の中で生き物を追いかけた後、そろそろ魚が焼けた頃だよと声がかかり、河原の草地をたどって、広場に戻る。
 ライフジャケットを脱ぐ前に、多摩川の本流に入って、プカプカと浮かびながら流れに漂う。熱く火照った体を冷やすとともに、ライフジャケットの汚れを落とす目的もある。下流にはサポーターの大人たちが待機して、漂ってくる子どもたちを待ち受け、安全対策を図る。
 川からあがると、いよいよお待ちかね、こんがりと焼き上がった串焼き魚を味わう。ちょうど昼時に差し掛かり、身体も存分に動かしたから、お腹も空いてきた。

多摩川の川流れで遊ぶ。子どもたちは、川の流れに身を任せてプカプカと浮きながら、川の流れに漂う。

多摩川の川流れで遊ぶ。子どもたちは、川の流れに身を任せてプカプカと浮きながら、川の流れに漂う。

多摩川の川流れで遊ぶ。子どもたちは、川の流れに身を任せてプカプカと浮きながら、川の流れに漂う。

こんがりと焼き上がった串焼き魚。まずは1人1串ずつを手渡していく。

こんがりと焼き上がった串焼き魚。まずは1人1串ずつを手渡していく。

こんがりと焼き上がった串焼き魚。まずは1人1串ずつを手渡していく。

「食べるときは、必ず座って、歩きながら食べない!」と注意があった。串がのどなどに刺さって危険だからだ。

「食べるときは、必ず座って、歩きながら食べない!」と注意があった。串がのどなどに刺さって危険だからだ。

1人1匹ずつ食べた後、おかわり希望者が再び列に並ぶ。最終的にあまった魚は、じゃんけんによる争奪戦が繰り広げられた。

1人1匹ずつ食べた後、おかわり希望者が再び列に並ぶ。最終的にあまった魚は、じゃんけんによる争奪戦が繰り広げられた。

子どもたちが着用したライフジャケットは、川を流れてざっと汚れを落とした後、サポートスタッフが1着ずつ川で洗って、広げたシートに並べて乾かしていく。

子どもたちが着用したライフジャケットは、川を流れてざっと汚れを落とした後、サポートスタッフが1着ずつ川で洗って、広げたシートに並べて乾かしていく。

青梅市に水辺の楽校を作るために設立された、青梅・多摩川水辺のフォーラム

 青梅・多摩川水辺のフォーラムでは、この日のガサガサ探検隊のあと、9月にも同じく山崎充哲さんの指導によって『多摩川まるごと遊び塾』を予定している。ライフジャケットを着て川に浮いたり泳いだり、川の中に立てた脚立から飛び込んだり、ゴムボートで川下りをしたりと、川を遊び尽くす。
 今回のガサガサ探検は、“魚に触れ”、“命をいただく”ことが目的だったが、9月のイベントでは“安全な川遊び”の仕方について実地で教えるとともに、午後からは『移動水族館』と称して多摩川の下流にいる魚を講師の山崎さんが水槽に入れて持ってきて、その日捕った魚とともに、上流と下流の魚の違いについても観察する。
 青梅・多摩川水辺のフォーラムでは、これらの2事業を、「おうめ水辺の楽校」【1】の年間プログラムの中で、青梅市及び構成団体との協働事業として実施している。

「おうめ水辺の楽校」の年間プログラム
美しい多摩川フォーラム炭焼き体験と水辺の交流会
特定非営利活動法人奥多摩川友愛会がんばれあゆっ子 奥多摩川の魚を釣ってみよう 子供の昔ながらの釣り体験教室と多摩川魚類生息調査
親子魚釣り教室
青梅・多摩川水辺のフォーラムガサガサ水辺の探検隊~達人と一緒に楽しく安全な川遊び教室~多摩川まるごと遊び塾~水辺はぼくらのワンダーランド~
霞川くらしの楽校じゃぶじゃぶ川であそんじゃおー!かすみ川であそぼ!いかだあそび
魚つり「僕も私も釣り名人」

 もともと青梅・多摩川水辺のフォーラムは、青梅市に「水辺の楽校」を作ろうと集まった人たちが母体になってできた団体だったという。2006年5月に発足した同会は、昨年(2015年)でちょうど10周年を迎えた。2012年3月には、同会を含む4団体によって構成した「おうめ水辺の楽校」を登録して、市との協働による親水事業として、今の形で実施するようになった。
 「当時、多摩川でも水辺の楽校をはじめている地域がすでにいくつもありましたから、青梅市でも作りたいと話していました。多摩川を管轄している国土交通省の京浜事務所と交渉を重ねてきましたが、青梅市全域で水辺の活動をしている団体に呼びかけて運営協議会を作ったらどうかという市からの呼びかけもあって、4団体による運営協議会を組織することになりました。今では、それぞれの会合やイベントなどに他の会の事務局メンバーが参加したり協力したりと、横の連携が少しずつできてきている状況です。それによって、私たちの団体だけではなかなかできないことも協力してできるようになっています」
 会の設立時からのメンバーでもある顧問の渡邉勇さんが、設立の経緯について説明する。今年5月の総会で代表を退くまで代表として6年間務めてきた。顧問になって少し肩の荷が下りたというが、今でも「おうめ水辺の楽校運営協議会」の会長として、より広い立場で関わっている。
 学校を始めとした地域の人たちの関わりと協力も欠かせない。小学生以下を対象にしたイベントだから必ず保護者にも参加してもらい、近くの学校の先生やPTAからも多数のサポートを得ている。自然の川が相手の活動のため、安全が最優先だ。学校や地域の人たちのサポートがなければ成り立たない規模のイベントになってきたと渡邉さんは話す。

 青梅市環境政策課課長の細金慎一さんも、地域の協力によって実施しているこの事業の意義を実感すると言う。
 「ガサガサ水辺の探検隊をはじめとした水辺の楽校の活動は、青梅市の子どもたちにとって貴重な自然体験になっています。今の親御さんの世代だと、なかなか川での遊びをする機会もないような生活をされていると思いますから、子どもたちが自然と触れ合う機会が少なくなってきていることは実感としてあります。そうした中で、学校も含めて地域の皆さんの協力によって、非常に大きな広がりのある中で事業が実施できていることをうれしく思います。川での遊びを体験し、自然に触れていただくいい機会になっていますから、今後もぜひ継続的に実施していきたいと市としても思っています」

青梅・多摩川水辺のフォーラムの前代表で現顧問の渡邉勇さん(左)と、青梅市環境政策課課長の細金慎一さん(右)。青梅市役所にて。

青梅・多摩川水辺のフォーラムの前代表で現顧問の渡邉勇さん(左)と、青梅市環境政策課課長の細金慎一さん(右)。青梅市役所にて。

子どもの水辺登録証と、昨年7月28日付で東京都建設局長より授与された感謝状。これまでの活動が実を結んでいることの証だと渡邉会長、細金課長ともに喜んでいる。

子どもの水辺登録証と、昨年7月28日付で東京都建設局長より授与された感謝状。これまでの活動が実を結んでいることの証だと渡邉会長、細金課長ともに喜んでいる。


注釈

【1】水辺の楽校プロジェクトと、「おうめ水辺の楽校」
 水辺の楽校は、文部科学省、国土交通省、環境省の連携による「子どもの水辺再発見プロジェクト」の一環として、市民団体や河川管理者、教育関係者などが一体となって、地域の身近な水辺(「子どもの水辺」)における環境学習や自然体験活動を推進するために、市区町村が国土交通省河川局長に登録申請を行って実施するもの。
 おうめ水辺の楽校は、平成20年に市内の河川に関わる活動をしている団体との間で設立した「水辺の連絡会」を前身にして、23年度には「青梅子どもの水辺協議会」として、さらに24年2月に河辺市民球技場前の河原を「おうめ水辺の楽校」して登録、「おうめ水辺の楽校運営協議会」による親水事業を開始している。
 なお、おうめ水辺の楽校の全体の運営等については、環境事業紹介(第12回)「青梅市:地域で親しまれている川における幼少時の体験が、大人になって次代へ引き継ぐ意思と行動につながることを願って(おうめ水辺の楽校(がっこう)の取り組み)」: http://all62.jp/business/12/01.html をご参照いただきたい。

関連リンク

このページの先頭へ

オール東京62 事業紹介

  • エコプロ2017
  • みどり東京・温暖化防止プロジェクトパンフレット
  • 62市区町村 温室効果ガス排出量
  • 自治体向けカーボン・オフセット 研究成果の紹介
  • スマートコミュニティ研究会
  • かれんとシーナの『エコ質問箱』

オール東京62市区町村
環境インフォメーション

各62市区町村のホームページから集めたエコ情報を掲載しています。

エコアカデミー一覧

第75回
海外事例
ハロウィンをグリーンに!:アメリカ、ナッシュビル市
第74回
今藤 夏子
[水に漂う生き物の情報 ~環境DNAを利用した生物調査~]
第73回
海外事例
市民参加型予算で持続可能な都市を:フランス、パリ市
第72回
竹本 和彦
[「持続可能な開発目標」(SDGs)の達成に向けて ──世界につながる地域の取組み]
第71回
海外事例
トランジション・ムーブメント発祥の地:イギリス、トットネス
第70回
下村 彰男
[東京都の自然]
第69回
海外事例
花粉媒介者の保護を目指して:カナダ、オンタリオ州ゲルフ市
第68回
宇郷 良介
[持続可能な社会への変革に対する「スマートハウス」への期待]
第67回
海外事例
シェアリングエコノミーの最先端都市:韓国、ソウル特別市
第66回
藤本 亜子
[ESDでつくる地域社会の未来]
第65回
海外事例
『メルボルンに参加しよう』-「路地をグリーンに」プロジェクト:オーストラリア、メルボルン市
第64回
岡崎 修司
[「仮想発電所」構想始動!公民連携で展開します(横浜市)]
第63回
海外事例
カーフリーハウジング(車を所有しない集合住宅)という選択:オーストリア、ウイーン市
第62回
福山 研二
[虫からながめた都会のすがた]
第61回
海外事例
全米2万3400都市のエネルギー関連データを提供:アメリカ エネルギー省
第60回
堀口 敏宏
[東京湾における環境の変化と生物相の変遷]
第59回
海外事例
エネルギー消費正味ゼロの図書館:ヴァレンヌ市、ケベック州、カナダ
第58回
一方井誠治
[地球温暖化対策計画」の閣議決定を受け、改めて私達の地球温暖化対策を考える]
第57回
海外事例
[世界初、道路で発電する「ソーラーロード」:オランダ、北ホラント州]
第56回
小堺 千紘
[ニッポンの夏支度「緑のカーテン」。その効果と育て方3つのポイント~自然の力を使って楽しみながら快適に暮らそう~]
第55回
海外事例
[「食」をテーマにした環境への取り組み:スウェーデン、マルメ市]
第54回
竹ケ原 啓介
[低炭素社会の創出等に向けた金融のありかた]
第53回
海外事例
[アート(芸術)で環境問題を普及啓発する:イギリス、ブリストル市]
第52回
幸丸 政明
[鳥類から見る都市の生物多様性]
第51回
海外事例
[野生生物に優しい「裏庭(Backyard)生物多様性プロジェクト」:オーストラリア、ボルーンダラ市]
第50回
崎田 裕子
[「みんなで創る水素社会」2020年とその先をめざして、水素エネルギーと私たちのくらし・地域]

本事業は、公益財団法人 東京都区市町村振興協会からの助成で実施しております。