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2016.11.15

第77回「日々の消費行動を通じた身近な環境行動を実現するための仕組みづくり(EVI環境マッチングイベント2016)」

イベントに華を添えた、環境パフォーマンスユニット『Cheeky』 ──ダンボール製パーカッション楽器「ボルカホン」によるライブパフォーマンス

 基調講演など国内外の最新の動向を知る“ためになる”内容とはまた違ったアプローチによって会場を盛り上げ、カーボン・オフセットの身近な取り組みについて紹介したのが、ボルカホンラインダンスユニット『Cheeky』による環境パフォーマンスや春風亭柏枝(しゅんぷうていはくし)師匠による環境落語「改作落語 和尚(おしょう)とちん念」だ。

ダンボール製の打楽器を使った、ボルカホンラインダンスユニット『Cheeky』による環境パフォーマンス。

ダンボール製の打楽器を使った、ボルカホンラインダンスユニット『Cheeky』による環境パフォーマンス。

ダンボール製の名刺を手に挨拶をするCheekyのメンバーと、マスコットキャラクターのボルンとボルカ。

ダンボール製の名刺を手に挨拶をするCheekyのメンバーと、マスコットキャラクターのボルンとボルカ。

 ペルー発祥の打楽器「カホン」をダンボール製にしたボルカホンを使ったライブパフォーマンスを披露したのは、ボルカホンラインダンスユニット『Cheeky』の面々。
 「ぜひ叩く姿を見てもらいたいと思って、叩き手を連れてきました」と話すのは、プロデューサーの糸賀徹さん。ボルカホンを手掛けるようになって2年半が経つ。
 箱型のボルカホンは、座面に座りながら、座面や側面を叩いて音を鳴らす。叩く場所によって少しずつ違う音が響くように設計され、ロー(打面の中心部)とハイ(打面の上部)を叩き分けてリズムを作る。裏面には丸い穴が開いていて、中に仕込んだスナッピーというバネが共鳴して音を震わせる。オリジナルの木製カホンと同じ作りだが、ダンボール特有のあたたかな音が特徴だ。ライブパフォーマンスのほか、子ども向けのワークショップなども企画して、まずは広める活動をしていきたいと糸賀さんは言う。
 現在リーダーを務める鶴田まこさんのアイデアで始まった、打楽器演奏とラインダンスを融合させたパフォーマンスやワークショップの活動も、もうすぐ丸2年を迎える。この日は欠席の2人を加えた7人ユニットとして活動しており、振付などはメンバー自身が考えている。1ステージ当たり500円のクレジット購入によって森の支援をする、“カーボン・オフセットパフォーマー”でもある。
 Cheekyのメンバーも、「ワークショップでは、子どもたちのダイレクトな反応が返ってきて、目に見えて楽しんでくれているのがわかってとても楽しいです」と笑顔を見せる。子ども用のボルカホンは組み立て式で、表面に絵付けするなどオリジナルなものを作れるのが人気を呼んでいるという。

環境落語でカーボン・オフセットを知る

 春風亭柏枝師匠による環境落語『改作落語 和尚(おしょう)とちん念』は、古典的な落語の演目『転失気(てんしき)』をもとにアレンジしたもの。もとの演目では医学用語の「てんしき」がキーワードになるが、ここでは「カーボン・オフセット」に置き換えて話が進む。そのさわりだけを紹介したい。

 “あるお寺でのお話。ある日、寺を訪ねてきた環境省のお役人から「カーボン・オフセットをお願いできないか」と頼まれる和尚さん。知らないとは言いたくない性分ゆえに知ったかぶりをして承知するものの、あとから気になって気になって仕方がない。これまで見たことも聞いたこともない『カーボン・オフセット』について、何とか自然に知れる方法がないものかと頭を悩ませ、お寺の小僧・ちん念を使いに出して、街の人たちに聞きに行かせることを思いつく。一言教えてくれれば済むのにと不満げに漏らすちん念に、そんなことではいかんとお為ごかしの和尚さん…。”

 そんな設定で和尚と小僧の対話によって話が進む。この後に登場してくる街の人たちも、それぞれにその場しのぎの作り話で知ったかぶりをするから、翻弄されるのはちん念だ。
 やがて、カーボン・オフセットの本当の意味と和尚の無知を知ったちん念は、うその情報で和尚に仕返しをする。ちん念の策略で早合点する和尚が、お寺を訪ねてきた環境省の役人に自慢げに話すも、2人の話は当然ながらうまく噛み合わない。そんなボタンの掛け違ったような対話を面白おかしく真面目に披露する噺家ならではの話術と、最後にポンと膝を叩きたくなるオチが決まって、会場内は笑いに包まれた。
 ちょっとした考えのきっかけにしてもらうため、いろいろな機会で披露していると話す柏枝師匠。1高座当たり150円をEVIの仕組みを通じて森に還元する取り組みも行う、日本初の“カーボン・オフセット落語家”を宣言している。ぜひ、機会があれば寄席に行って噺を聴いていただきたい。

壇上に設けた即席の高座では春風亭柏枝師匠による環境落語『改作落語 和尚(おしょう)とちん念』が披露される
壇上に設けた即席の高座では春風亭柏枝師匠による環境落語『改作落語 和尚(おしょう)とちん念』が披露される

壇上に設けた即席の高座では春風亭柏枝師匠による環境落語『改作落語 和尚(おしょう)とちん念』が披露される

高校生によるカーボン・オフセットの取り組みも、『もっと、身近に。』の具体事例の一つとなった

 活動紹介(第67回)「生徒たちの委員会活動を通じて全校生徒に呼びかける環境への意識と行動が、作法として身に付いていく」で紹介した都立つばさ総合高校のISO委員会も、今回のマッチングイベントに登壇した。あいにく中間試験直前に重なって出席できない高校生に代わって、同校教諭の荘司孝志さんが高校生たちのビデオレターを紹介した。
 2004年に開始した同校のISO14001の取り組みでは、年を経るにつれて、電気使用量やごみ排出量の削減効果は頭打ちになっていった。限界まで取り組んでいるからこそ、その後はその水準を維持することに力を注いでいくのが重要となる。ただ、それだけでよいのか、もっとできることはないだろうかと模索する中で出会ったのが、カーボン・オフセットの取り組みだったと、学生たち本人がビデオレターを通じたメッセージとして語りかけた。
 同校が排出するオフセット対象のCO2排出量を算出し、クレジット購入について情報収集を重ねてきたISO委員会は、実際に現地の状況を知り、クレジットを生み出す森などの現場でかかわる人たちの思いを知ることの重要性を実感していったという。初年度の反省を踏まえ、3か所の購入候補地を実際に訪ねてまわり、同校主催の高校生環境サミットなどの場で全校生徒を中心に投票してもらったそのプロセスについては、第67回記事をご参照いただきたい。

都立つばさ総合高校の事例発表では、顧問教諭の荘司孝志さんが登壇。試験直前のため来場できなかった高校生たちはビデオレターを通じてメッセージを寄せた。

都立つばさ総合高校の事例発表では、顧問教諭の荘司孝志さんが登壇。試験直前のため来場できなかった高校生たちはビデオレターを通じてメッセージを寄せた。

愛知県立南陽高校『Nanyo Company部』の発表。元気な高校生たちの声が会場中に響き渡った。

愛知県立南陽高校『Nanyo Company部』の発表。元気な高校生たちの声が会場中に響き渡った。

 また都立つばさ総合高校の発表と前後して、第5回カーボン・オフセット大賞特別賞を受賞した愛知県立南陽高校『Nanyo Company部』によるカーボン・オフセットの取り組み事例の報告もあった。若い世代の代表として、元気な声が会場内に響き渡った。

 これらの事例等発表を通じて、今年のテーマ『もっと身近に。』の具体的な事例について語ってもらうことが今回のねらいと話す、主催者代表の加藤幸一さんだ。

会場をバックにするEVIの加藤孝一さん(カルネコ株式会社代表取締役社長)。

会場をバックにするEVIの加藤孝一さん(カルネコ株式会社代表取締役社長)。


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