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2018.02.13

第94回駒場野公園の自然を、子どもたちの感性や情操を育む原体験の場として、守り伝えたい(目黒区、駒場野公園自然クラブ)

皆の健康を祈り、春の七草でおかゆをつくる

 若菜摘みを終えたら、公園の中にあるデイキャンプ広場に集まり、七草がゆづくりに取りかかる。
 まずは、摘んできた若葉をテーブルに広げ、1つずつ名前を確かめながら、種類ごとに分けていく。この日の収穫は例年に比べて少ないそうだ。
 テーブルのまわりを囲んだ子どもたちも「これなに?」、「これは?」と聞きながら自分の摘んできた若葉を仕分けていく。その後、大人たちの手で、ごみなどを取りのぞいて水洗いしたら、沸騰した湯に入れ、湯通ししてあくを抜く。
 あく抜きの後、野の花クラブの瀬戸さんが、
 「ここが今日の最も大切な作業です。七草がゆをつくるときには歌を歌いながら、湯通しした若葉を刻みます。この作業は、皆の健康を祈る神聖な儀式なのですよ」
 と言いながら、
 「七草なずな 唐土の鳥が 渡らぬ前に 引き寄せ かき寄せ トントントン トントントン トントントントントントントン」
 と、七草がゆの歌を教えてくださった。「トントントン」と唱えるときに、包丁でゆでた若葉を刻むのだという。
 子どもたちが中心になって、皆で歌いながら刻んでいく。こんな素朴な風景が、昔はどこの家庭でも見られたのだろうか。思わず、折々の行事の意味も忘れがちな慌ただしい日常を振り返る。
 おかゆが炊きあがったら、刻んだ若葉と塩、餅を入れて七草がゆができあがった。あとは揃って皆でおかゆをいただく。小さな子どもたちも、2杯、3杯とおかわりしておいしそうに食べていた。
 ハロウィーンやクリスマス、街のライトアップといった華やかな行事もいいけれど、歌を歌いながら皆の健康を祈って七草を刻み、皆で揃っておかゆをいただくのもいい。日本の伝統的な行事も大事にしたいと素直に思えるひとときだった。

摘んできた若葉をテーブルの上に広げ、名前を調べて種類ごとに仕分ける。今年摘んだ若葉は、いつもより少ないという。

摘んできた若葉をテーブルの上に広げ、名前を調べて種類ごとに仕分ける。今年摘んだ若葉は、いつもより少ないという。

ごみや食べられない草を除いてから、沸騰した湯に入れて湯通しをする。

ごみや食べられない草を除いてから、沸騰した湯に入れて湯通しをする。

ゆでた若葉を刻む。七草がゆの歌を歌い、皆の健康を祈りながら刻むのが習わし。

ゆでた若葉を刻む。七草がゆの歌を歌い、皆の健康を祈りながら刻むのが習わし。

炊きあがったおかゆに、刻んだ若葉を入れる。

炊きあがったおかゆに、刻んだ若葉を入れる。

七草がゆのできあがり。黒米が入っているので、少しあずき色がかっている。

七草がゆのできあがり。黒米が入っているので、少しあずき色がかっている。

駒場野公園の自然を舞台に、多彩な活動を展開し、子どもたちの情操を育む

 駒場野自然クラブは、昭和61年の公園のオープンと同時に活動を始めたという。すでに32年の歴史がある。その最初からメンバーとして活動してきたリーダーの麻生敬さんは、
 「小さいころに参加していた子どもたちの中には、今、大学生になっていて、ときどきやってくる子もいますよ」
 と話してくださった。
 駒場野公園を舞台に活動しているグループは、自然クラブのほかに、公園内にある「野草園」をおもに管理している野の花クラブ、ヘイケボタルの幼虫の世話やロックガーデンの手入れをしている駒場野ホタルの会、スミレの調査や雑木林の手入れなどをしている森のみどり人、家庭から出る生ごみの堆肥化に取り組んでいるこまばリボンクラブなどがある。
 自然クラブのほかは、徐々にサークルとして結成されてきたものだということで、現在はそれぞれのグループが連携を取り合って活動しているという。七草さがしでは、自然クラブと野の花クラブが連携していた。
 野鳥の巣箱づくりや巣箱かけ、巣箱の中身調べなどもしている。目黒区の担当者の白取温子さんは、
 「昨年は取りつけた巣のうちの5個の巣箱が利用されていました。猛禽のツミが公園内で繁殖した年は巣箱の利用も少なかったのですが、毎年5個くらいの巣箱が利用されているようです。シジュウカラが多いですね」
 と説明してくださった。
 駒場野自然クラブの1年間の活動計画を見てみると、草刈りや炭焼き、木こり体験など雑木林の管理作業もあれば、お茶摘みや野いちご摘み、七草さがし、キノコ発見隊など里山の恵みを生かしたプログラムなども並び、実に多彩だ。子どもたちに伝統を伝えたいという自然クラブの思いがわかる。
 この日も午後からは、お正月クラフトとしてムクロジの実を使って羽根突きの羽をつくり、羽根突き大会をするという。
 自然と遊ぶことが自然を愛する心を育み、植物や動物など生きものを身近に感じることで大人も子どもも感性はさらに豊かになるだろう。
 自然を通じて、感性や情操を育みたいという駒場野自然クラブの活動がこれからも長く続くことを祈りたい。

公園内の木にかけられた野鳥の巣箱。巣箱づくりや巣箱の中身調査も自然クラブの活動の1つ。

公園内の木にかけられた野鳥の巣箱。巣箱づくりや巣箱の中身調査も自然クラブの活動の1つ。

七草がゆを食べ終わった後は、この日の活動に参加して感じたことを書く。

七草がゆを食べ終わった後は、この日の活動に参加して感じたことを書く。

野の花クラブが管理する野草園。毎月第1・3日曜日の午前10時から午後2時まで、野草の観察や手入れなどを行っている。その時間は野草園を開放して、自由に見てもらっている。

野の花クラブが管理する野草園。毎月第1・3日曜日の午前10時から午後2時まで、野草の観察や手入れなどを行っている。その時間は野草園を開放して、自由に見てもらっている。

毎月発行している「こまばの自然クラブニュースレター」。自然観察舎内にはバックナンバーもファイルされている。

毎月発行している「こまばの自然クラブニュースレター」。自然観察舎内にはバックナンバーもファイルされている。

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