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みどり東京レタータイトル

 みどり東京レターは、都内62市区町村が実施するイベントをわかりやすく紹介することを目的に、月に1回程度の更新を予定しています。ぜひご一読ください。

2023.05.26

第38号身近ないきものを撮ってデータベースをつくろう─立川市「みんなでつくろう!立川いきものデータベース」

「みんなでつくろう!立川いきものデータベース」は、立川市内で撮影したいきものの写真を投稿し、みんなで作り上げていくデータベースです。投稿した写真は分類上の所属や種名が調査されたのち、掲載されます。


みんなでつくろう!立川いきものデータベース

開設
平成28年
URL
https://www.ikimono-tachi.jp/
運営
立川市環境対策課
ムシムシ探検隊・立川(特定非営利活動法人(NPO法人)教育支援協会東京西)

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立川市にはどんないきものが棲んでいるのかな?
写真を撮って投稿してみよう!

市民がいきものに触れる場をつくる

 立川市では「みんなでつくろう!立川いきものデータベース」を運営しています。立川市内で撮影されたいきものの写真を募集しており、立川市民はもちろん市外からの来訪者も投稿できます。立川市に生息する多様ないきものを見ることができるデータベースは、ウェブ上の図鑑として投稿数約1万件という充実のボリュームを誇ります。市民でなくとも興味を惹かれるこの取り組みについて、立川市環境下水道部環境対策課環境推進係長の名和憲甫さんと、同じく環境推進係の橋野友斗さんにお話を伺いました。

 立川いきものデータベースは、「ムシムシ探検隊・立川」(運営主体:特定非営利活動法人教育支援協会東京西)と立川市環境対策課が協働で立ち上げた事業です。「市民がいきものに触れる機会や場を作ろう」という目的で平成28年に開設されました。

 データベースは一般の市民がデジカメやスマホで撮影した写真データの投稿で成り立っており、数多くの投稿を続けてくれる方々もいるそうです。小学校の学習支援や市のいきもの観察会などでもデータベースの紹介を行っており、環境学習や自然観察の一環として活用されています。

みんなでつくろう!立川いきものデータベースのトップページ。野草、昆虫などのカテゴリに分かれており、それぞれ検索や投稿ができる。

話を伺った立川市役所。周辺は緑にあふれている。

いきものを見極める同定団

 立川いきものデータベースには、立川市内で撮影した野草、昆虫、野鳥、魚貝、両生・爬虫類、哺乳類(野生)の写真を投稿することができます。生きている様子をとらえた生体画像だけでなく、採集した標本や脱皮殻、落葉や果実等の写真も投稿可能です。撮影もしくは採集した日付と場所を明記して投稿しますが、いきものの名前はわからなくても構いません。

 投稿された写真は「同定団」と呼んでいるいきものの専門家やその分野に明るい方々の協力によって、分類学上の所属や種名など、投稿者が撮ったいきものの正体を解き明かしていきます。同定の難しさはいきものの種類によって異なるため、投稿から掲載までに掛かる時間もまちまちです。最近はこれまで掲載されていない変わったいきものを撮る方も多くなり、同定に時間がかかるケースも増えているそうです。

 データベースに掲載された写真はカテゴリごとに日付順や名前順などで閲覧したり、それぞれの「和名別さくいん」から探したりすることができます。これまでに投稿された写真は約1万件に及び、9千件ほどが掲載されています。そのうち「昆虫」カテゴリが最も多く全体の8割ほどを占めており、次に「野草」「野鳥」の投稿が多いとのことです。

「野草」の投稿画面。撮影日または採集日と、立川市内のどこで見つけたかを明記して投稿する。マイページを作ると自分の投稿を振り返ることができる。

「野草」の和名別さくいん。野草に限っては「科名別さくいん」もあり、植物の科ごとの特徴を学ぶこともできる。

未来へつなげていくデータベース

 自分が撮ったいきものの名前を専門家等が調べて見つけてくれる―写真を投稿する市民にとって、その喜びが大きな魅力になっていると橋野さんは話します。市民の力で充実していくデータベースは、市内のみならずいきものに携わる業界でも活用されています。掲載されている昆虫などの写真を本に載せたいと依頼を受け、全国的に出版される書籍へ提供することもしばしばあるそうです。

 7年間に渡りデータを積み重ねてきた立川いきものデータベースは、1万件に及ぶ投稿数の多さが最大の強みであると言います。今後は豊富なデータの新たな活用方法を探る必要があると名和さんは考えます。

 令和4年12月に開催された生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)では、2030年までの世界目標「昆明・モントリオール生物多様性枠組」が採択され、日本でも令和5年3月に「生物多様性国家戦略2023-2030」が閣議決定しました。立川市では、現在のところ生物多様性地域戦略を策定していませんが、立川いきものデータベースの蓄積を生かした基礎データとしての活用も期待されます。

多くのいきものが暮らす国営昭和記念公園。玉川上水や多摩川など、豊かな自然を有する立川市の取り組みに注目したい。

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本事業は、公益財団法人 東京都区市町村振興協会からの助成で実施しております。