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 みどり東京レターは、都内62市区町村が実施するイベントをわかりやすく紹介することを目的に、月に1回程度の更新を予定しています。ぜひご一読ください。

2022.02.08

第22号瑞穂町からみえる天体をロマンたっぷりに紹介―瑞穂町郷土資料館 けやき館 講演会「瑞穂町の星空」

通称「けやき館」の名の由来となった庭のケヤキは樹齢300年を経ていると伝えられ、枝には見事なヤドリギの株をいくつもつけている。2014年11月に開館。


第164回 温故知新の会 自然に関する講演「眼でみることのできない 瑞穂町の星空」

開催日時
令和4年1月23日(日)午後1:30から3:00まで
会場
瑞穂町郷土資料館 けやき館 多目的室
講師
瑞穂町在住アマチュア天文家 長岡薫氏
主催
中瑞穂町郷土資料館 けやき館
参加者数
36名(新型コロナウイルス感染防止のため人数制限しています)

shiina

企画展「瑞穂の天体写真」、きれいだよ!

瑞穂町の自然や歴史、生活や産業などを、コンパクトながらわかりやすく展示

 曇り空におおわれた冬の日、講演会場となる瑞穂町郷土資料館けやき館をめざしました。JR八高線の箱根ケ崎駅から日光街道に出てしばらく歩くと、板塀に囲まれた大きな邸宅やきれいに刈り込まれた植木が見えてきて、どことなくおおらかな雰囲気が漂い気分が和らぎます。やがて前方に大きなケヤキが見えてきました。枝にヤドリギをいくつもつけて高くそびえています。けやき館の名前の由来になった樹齢300年を超える資料館のシンボル・ツリーです。

 瑞穂町郷土資料館けやき館は、2014年にオープンしたとのこと。けやき館の隣は、江戸時代から続いた豪農の邸宅をリノベーションして耕心館と名づけられた一角で、こちらも社会教育施設として活用されています。

瑞穂の自然や歴史、生活や産業などに関する資料が、コンパクトながらわかりやすく展示されている

 けやき館の中に入ると、ガイダンスホールを囲んで正面に企画展示室、左手に常設展示室が見えます。常設展示は「瑞穂の自然と歴史」をテーマに、狭山丘陵の自然を模したジオラマや旧石器時代から現代までの歴史・文化、主要な産業などに関わる展示物がコンパクトかつ身近に感じられるように展示されています。館内でタブレット端末を借りて展示物の写真を撮ると、端末に詳しい解説が表示されたり「多摩だるま」の制作風景が現れたりと、楽しく学べる工夫がされています。

遺跡から出土した土器や古文書、生活や生業に使われた民具などの展示で、瑞穂町の歩みを旧石器時代から現代までたどれるようになっている。


多摩地域の産業の一つ「多摩だるま」。タブレット端末をかざすと制作風景が現れる。

瑞穂町の自然をジオラマで紹介している。木にとまった鳥はカービングだが、キツネやタヌキ、昆虫などは本物の剥製や標本を使っている

瑞穂町の上に広がる星空を見よう

 一方、企画展室では現在「瑞穂の天体写真」というテーマで、同町に住むアマチュア天文家 長岡薫氏が撮影した天体写真が展示されています。長岡氏の写真は天文ファンの専門誌『天文ガイド』に何度も掲載されたとのこと。今回は数ある写真から24点を厳選して展示していて、いずれも目を見はる美しさで来館者を魅了していました。何よりもまず、照明にあふれた市街地で、このように鮮明な星雲や星団が見られるのかと驚かされます。今日の講演は、この展示に併せて企画されたそうです。

JAXAから提供された展示によって、太陽系の惑星探査の歴史がわかりやすくまとめられている。

瑞穂町在住のアマチュア天文家長岡薫氏の撮影した鮮明な天体写真が展示され、来館者を魅了していた。

 講演会では、講師の長岡氏が撮影した天体写真をスクリーンに投影しながら、星空を見る楽しさ、ロマンを語ってくれました。

「瑞穂町の星空」と題して、瑞穂町のご自宅の屋上で撮影された天体の写真を紹介しながら、星空を観測する楽しみを語ってくださった、第164回温故知新の会の講師 長岡薫氏。

 夜空に輝く星は、肉眼ではどれもほぼ白色に見えますが、実際には赤色や青色、白色など星によって光が異なり、中には暗黒星雲といってまったく光を発しない星雲もあります。それを撮影するためにはカメラにフィルターを取りつけて不要な色を取りのぞいたりパソコンで加工して光の色を強調したりして、星団や星雲の存在を際立たせた美しい写真に仕上げるのだそうです

「バンビの首飾り」と愛称される星雲や星団の集まりで、夏の夜、いて座の近くで見られる。右は長岡氏がイメージを線で示したもの。

いっかくじゅう座にある「バラ星雲」。冬の夜空で明るく輝き、比較的小型の望遠鏡でも見えるので初心者にも見つけやすいという。

 星空を見る楽しみについて、長岡氏は、こんなふうにおっしゃっています。
 「今見ている星の光は、5000年前とか、ときには1億年前にピカッと光ったもの。それが何千年、何億年も宇宙を旅して、今自分の目に届いている、そう思うとロマンを感じませんか? しかも、今、世界中でこの星を見ているのは、ぼく一人かもしれない。そう考えると、すごくぜいたくで貴重な時間に思えるんですよ」

 星座や星雲の名前はなかなか覚えにくいのですが、何かよい方法はないですかとたずねると、「想像力を働かせてみることと、星座の由来の解説を読んだりすると興味がわいて役に立ちますよ」とアドバイスをいただきました。

 長岡氏をはじめ、天文ファンを悩ませているのは、都会の過剰な照明だそうです。とくにLEDは省エネで環境に良いとされますが、意外なことに天文観測にとっては厄介なものだとのこと。LEDの光は太陽光に近く、ほぼあらゆる波長の光が含まれるため、撮影の際のフィルターだけでは光の調節がうまくいかないそうです。「街灯は上空を照らす必要はないので、せめて街灯に傘をつけていただけるとありがたいんですが」とおっしゃいます。また、近年は、気候変動の影響か、夏の天候不順で夜空を観察できない日が増えていると感じるそうです。

月面のクレーターの写真を前に解説する長岡氏。小学3年生のときの担任の先生から星空の魅力を教えられ、双眼鏡で星を観察し始め、小学生で東大和天文同好会に入会。2013年に瑞穂町へ移住したのを機に、自宅での天体写真の撮影にこだわって活動を続けているそうです

「温故知新の会」は、楽しいイベントが盛り沢山

 今回の講演は、けやき館が企画する「温故知新の会」の1つとして開催されました。この会は、歴史や文化、自然など、多様な分野から瑞穂町について楽しく学べるテーマを選んで開かれるそうです。講演だけでなく、ワークショップなどもあり、過去には『教育講演会「大人も楽しめる 算数教室」』というユニークなものも行われました。次回の『第165回 郷土の食文化「打ち入れうどん」』は、残念ながら新型コロナウイルス感染防止のため中止になってしまいましたが、参加者とともに打ち入れうどんを調理・試食する予定でした。

 日光街道沿いに並び建つけやき館と耕心館では、武蔵野の自然がもたらす豊かな恵みを大切にし、古くからの伝統や文化を次代に引き継ぐ拠点として活発な活動が行われているようです。

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