トップページ > みどり東京レター > 食と環境問題のつながりを知ろう 練馬区「環境講演会 ―気候変動と私たちの食生活」
みどり東京レターは、都内62市区町村が実施するイベントをわかりやすく紹介することを目的に、月に1回程度の更新を予定しています。ぜひご一読ください。
2022.04.15
環境講演会の会場となったココネリ(Coconeri)の外観 ココネリは練馬駅に隣接し、公的施設・医療施設・商業施設が入った複合の施設。
ていねいに食べることが、気候変動などの改善につながることを学んだよ
サクラの花の便りが各地から届きはじめた3月26日、練馬区で恒例となっている環境講演会が開かれました。今年度のテーマは、「気候変動と私たちの食生活」です。講師の近藤惠津子さんから、日本の食料自給率、フードマイレージやバーチャルウォーター、食品ロスとそれらの背景など、さまざまな角度から日本の食の現状を説明していただき、消費者として、「食の向こう側の世界を考えること」を学ぶ機会となりました。
開会の挨拶をされるねりまエコ・アドバイザー協議会会長の中村 忠さん(中央)
講師の近藤惠津子さん(右端)。学校やJA、自治体などを中心に、年間100回近い講演を行い、「食」をテーマに環境や食の安全を考える活動をしている。
近藤さんは、「食農共育」と呼ぶオリジナルプログラムに沿って話を進められました。これは、食と農のつながりを考えることを通して、共に育んでいく気持ちをこめて命名したとのこと。一人ひとりの食べ方が未来の地球環境を決めているのだから、食べものの選択と食べ方について、もっと大切に考えていこうよ、というメッセージをこめたプログラムだそうです。
講座のところどころに3択クイズが用意され、参加者を飽きさせない仕掛けが施されていた。ここでは日本の食料自給率が問われ、参加者は自給率が①27%ならグー、②37%ならチョキ、③47%ならパーの手を挙げて答える。
日本の現在の食料自給率は、カロリーベースで37%。肉や野菜などの生鮮食品は国産だと思っていても、飼料や肥料などは輸入に頼って生産されています。
そんな話を糸口にして、食料の輸入には運搬のためのエネルギーをたくさん使いCO2をたくさん出すこと、それだけでなく、生産地である外国の土地や労働力、水をたくさん日本人が消費していること、それが環境や温暖化に影響を与えていることなどに話が進みます。子どもたちは、こうした食の向こう側にある事情を知るとショックを受けるそうです。
では、どうしたらいいのか。共に解決策を考えるのが講演の目的です。
日本の農業政策については、一見積極的な政策が打ちだされているが、一方で、農地面積の減少や担い手の高齢化など、問題は山積している。
目に見えない輸入食品の例としてパームオイルを取り上げて、詳しいお話がありました。パームオイルはアブラヤシというヤシの実や種から取れる油です。使い勝手が良く生産効率が高いため、近年、インドネシアやマレーシアなどで生産が増えています。生産を増やすために森林の伐採、地下水の汚染といった環境問題を引き起こしています。
また、日本では食品ロス、食品廃棄が大きな問題になっています。これをどう解決したら良いか。小中学校での授業では、子どもたちが話し合いの中からさまざまな解決策を考えだしているとのことでした。大人も共に考え、実行していく社会をつくりたいものです。
食用油はさまざまな植物を原料とするが、近年は、アブラヤシから取れるパームオイルの消費量が年々増えている。食品表示では「植物油脂」と記され、あまり聞き馴染みがないかもしれない。このため、パームオイルは「目に見えない油」とも言われる。
「地球にやさしい食べ方」について、小学生が皆で話し合って導き出された方法が紹介された。食品ロスを防ぐために参考になりそうなアイデアもある。
講演の最後に「地球と身体にやさしい食生活」として『一人ひとりの行動が地域を元気にし、社会を変える!』というまとめが掲げられた。
練馬区では平成21年度に「ねりまエコ・アドバイザー協議会」を設立し、令和3年度現在53名の皆さんが区長からねりまエコ・アドバイザーとして委嘱されています。協議会は、区が主催する環境啓発事業への参加、小学校や学童クラブでの環境学習など、環境に関するさまざまな活動を区と協力して行っています。
環境という言葉は、非常に広く多様な分野を含むため、アドバイザーとして活動するには常に広く知識を深め、情報を更新して行くことが大切だそうです。そのため、ねりまエコ・アドバイザーのフォローアップ研修を主な目的として、環境講演会が毎年開催されています。
同時に、一般の区民にも講演会への参加を募り、環境問題への理解を深めていただく機会としています。過去には、省エネをテーマにした「家電は暮らしの玉手箱」や気象防災を扱った「待ったなし! 気候変動と異常気象」など、ユニークな切り口で参加者を増やし、一般区民への啓蒙の役割も果たしているようです。
講座の参加者のほぼ半数が、ねりまエコ・アドバイザーとして活躍している皆さんだということで、熱心にメモを取る姿から、さらなるレベルアップを目指す意欲が感じられた。
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