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 みどり東京レターは、都内62市区町村が実施するイベントをわかりやすく紹介することを目的に、月に1回程度の更新を予定しています。ぜひご一読ください。

2023.07.07

第39号目黒川を通して人と生き物とのつながりを考えよう─目黒区「いきもの発見隊」

「いきもの発見隊」の会場となった目黒川船入場。昭和初期に船着き場として建設されましたが、今は船の発着はなく、サクラの名所として知られます。川では淡水生物のほか東京湾から海水に乗って遡上してくる生き物が観察できます。


目黒区「いきもの発見隊」

開催日時
令和5年6月17日(土) 10:00~12:00
会場
目黒区 目黒川船入場
対象
区内在住・在勤・在学者
主催
目黒区 みどり土木政策課
参加者
15組38名

shiina

普段は船入場から川に入ることはできないよ。
この日は特別で、大人も子どもも川に入って魚やカニを観察したよ。

目黒川にはどんな、生き物がいるんだろう?

 梅雨の中休みとなった6月17日は、朝から気温が上昇し、真夏のような暑さになりました。この日、中目黒駅から徒歩6~7分という都会の真ん中にある目黒川船入場で「いきもの発見隊」が開催されました。目黒区の「いきもの発見隊」は今年で26年目を迎える息の長い活動で、毎年、春と秋の2回開催されています。春の発見隊は5月~6月に目黒川で行われ、年々応募者が増え、今年は前年の倍近い780名を超える応募がありました。目黒区みどり土木政策課の職員は、「毎年春に目黒川で行う発見隊は応募者が多く、目黒川や生き物に対する関心の高さを感じます」と話しました。

 まずは簡単な開会式を終えると参加者は3つの班に分かれての活動です。この日は、生物多様性についての解説、川に入って行う生き物の観察、目黒川の自然環境についての解説の3つのコーナーが準備されていて、各班の行動が重ならないように順番と時間をずらして実施しました。

発見隊の参加者が集まる前、区職員と協力者が広場で準備を進めていました。右の広場の下には巨大な地下貯水池があり、雨水を一時的に貯めておき、洪水を防ぐ仕組みになっています。

会場には生物多様性や区内で見られる生き物の解説パネルのほか、川で捕まえた生き物を観察するための水槽も準備されていました。捕獲した生き物は、一部を除き観察後、川に戻されました。

開会式。午前10:00にはすでに真夏のような暑さで、保護者とともに集まった就学前の幼児から小学生までの参加者たちは、川に入れるのを楽しみにしていました。

川の生き物にふれてみたい

 第1班は幼児と低学年中心のグループで、まず目黒川に入って生き物を観察しました。保護者も子どもたちも、タモとバケツを手にして、張りきっていました。

 はじめに、魚のいそうな場所やタモの使い方、追い込み方などを教えてもらい、いよいよ川の中に入っていきます。親子で協力してタモを構えたり魚を追い込んだり、魚がひそんでいる場所を探したりして、観察会を楽しんでいました。

 実際に川に入った参加者からは「魚がすばしっこくてつかまらなかった」「思ったよりいっぱい魚がいた」「コンクリート貼りの川底にコケが生えていてすべりやすかった」「川の水が温かかった」といった声が聞かれました。

 この日川で見つかった生き物は、ウキゴリの仲間のスミウキゴリ、オイカワ、東京湾から来たマルタウグイ、マハゼ、アユ、モツゴ等の魚類と、ゴカイやヌマエビ、クロベンケイガニ、アメンボ、ミミズのほか、外来種のアメリカザリガニ1匹とミシシッピアカミミガメ1匹でした。

川では、はじめに魚の捕り方の説明がありました。魚は岩陰などに隠れているので、タモ網を川下に置いて、足などで追い込みます。

投網の実演。網を丸く広げるのはなかなか難しそうです。投網自体も珍しいのか、参加者は皆真剣に見入っていました。

高学年を中心にした3班は、それぞれが川の中にちらばって、魚がひそんでいそうな場所で生き物の観察、捕獲に挑戦していました。

川の中での活動は20分ほどでしたが、参加者は小さな魚をそれぞれ数匹ずつ捕まえていました。

アユの稚魚。このアユは多摩川に戻るルートから外れて目黒川に迷いこんできたものですが、アユがすめるのは川がきれいになっている証拠です。

目黒区の生物多様性への取組

 生物多様性を学ぶコーナーでは、区内で見られる動物や植物の紹介と、目黒区で取り組む生物多様性について説明がありました。目黒区では生き物とともに暮らせる街づくりを目指しています。具体的には、目黒川や碑文谷公園の池、駒場野公園の田んぼ、神社の森といった生き物が生息・生育する場である生態系の多様性を守ること、それぞれの生態系にすむ生物種を守ること、一つ一つの種がもつ遺伝子の多様性を守ることの3つを重点的に取り組んでいます。

 この日の発見隊で参加者を驚かせたのは10数匹も捕れたアユの稚魚でした。アユが泳いでいることは目黒川がきれいになってきた証拠なのです。しかし、講師を務めた君塚先生からは、「アユの稚魚は、川を下って下流で産卵しますが、今日見つかったアユは子孫を残せません。河口までの間に水質が悪くて無酸素状態の場所があるため稚魚はそこで死んでしまうのです」という説明があり、参加者の中にはショックを受けた様子の方もいました。

 目黒川の自然環境についての解説コーナーでは、目黒川は区民にとって特別に愛着のある川ですが、人口稠密地帯を流れる川のため下水処理水が多く流れこみ、浄化が難しく水温が高めになっているという話がありました。アユが子孫を残せないという事実はその話を実感させるものでした。このコーナーでは、目黒で生まれ育ったという環境保全課の職員から、目黒川の成り立ちや歴史なども学びました。高度経済成長期の目黒川は汚染による臭いがひどく近寄れないほどだったことや、洪水が頻発したため雨水を一時的に貯める貯水池がつくられていること、目黒川をさらにきれいにするには区民の協力が必要なことなどの説明があり、小さな子どもたちも真剣に聞いていました。

 閉会式では、最後に目黒区から、下流で川の水を汲み上げて酸素を入れる施設を建設し、アユが産卵できるようなきれいな川にするための事業が進んでいるという説明もありました。目黒川に自然のきれいな水を増やすにはどうしたらいいのか、一人一人できることがまだまだあることがうかがえます。

 目黒川で生まれ育ったアユが産卵して、次の世代のアユが戻ってくる日が訪れることを願いたいものです。

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