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 みどり東京レターは、都内62市区町村が実施するイベントをわかりやすく紹介することを目的に、月に1回程度の更新を予定しています。ぜひご一読ください。

2023.07.28

第40号野鳥の楽園を守ろう―江戸川区「葛西海浜公園 東なぎさクリーン作戦」

クリーン作戦が行われた葛西海浜公園の東なぎさ。沖に見えている帯状の陸地が東なぎさで、人の立ち入りが原則禁止され、野生生物のサンクチュアリとなっています。


江戸川区 「葛西海浜公園東なぎさクリーン作戦」

開催日時
令和5年6月24日(土) 9:00~12:00
会場
都立葛西海浜公園東なぎさ
主催
認定NPO法人 えどがわエコセンター
共催
公益財団法人東京都公園協会
葛西海浜公園パートナーズ
協力団体
NPO法人荒川クリーンエイド・フォーラム、葛西東渚・鳥類園友の会、日本野鳥の会東京、東京東部漁業協同組合、江戸川区子ども未来館
参加者
50名

shiina

東なぎさと西なぎさは人工の砂浜だよ。
西なぎさは自由に出入りして水遊びなどができるけど、
東なぎさは原則立ち入り禁止の環境保護ゾーンになっているよ。

野鳥のサンクチュアリをごみから守ろう

 梅雨の晴れ間となった6月24日に、葛西海浜公園の東なぎさで、漂着ごみを拾う東なぎさクリーン作戦が行われました。葛西海浜公園は、葛西臨海公園の岸側から約2km沖合まで広がる海上公園で、浅瀬と干潟、東なぎさと西なぎさの2つの人工砂浜があります。東なぎさは、開園当初から人の立ち入りを禁止して野鳥の保護区として自然環境の保全が行われており、葛西海浜公園は2万羽以上の水鳥が集うようになりました。2018年10月、葛西海浜公園は都内では初となるラムサール条約(特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約)湿地に登録されました。
 この公園は、主に旧江戸川と荒川が東京湾に流れこむ間に位置するため、台風や大雨の時期を中心に、さまざまなごみが流入してきます。現在、東なぎさはヨシを中心とする植物に覆われて、野鳥の食料となる魚類や甲殻類、底生生物も棲みついています。渡りの中継地や繁殖、越冬のため多くの野鳥が東なぎさを訪れます。生態系の保全のためにも漂着ごみを取り除く活動が欠かせません。
 認定NPO法人えどがわエコセンターでは、東なぎさの自然環境保全を主な目的として、東なぎさクリーン作戦を定期的に実施しています。この日は24回目ということで、参加者の中には2回目、3回目という参加者もいました。
 開会式のあと、遊漁船に分乗して約5分で東なぎさに到着。説明の後すぐクリーン作戦がスタートしました。

開会の挨拶をする、えどがわエコセンターの理事長岩瀬耕二さん。一般の区民とともに地元企業のほかラグビーチーム、法政大学高田ゼミの学生も参加していました。

東なぎさへは遊漁船で渡りました。船が岸近くに着くと、波打ち際に停泊したより小型の船に乗り移り、舳先から岩場に降ります。岩には水ゴケが着いていてすべりやすく慎重に上陸しました。

東なぎさの陸地はほぼヨシ原に覆われていて、ところどころ枯れたヨシが層を成しています。枯れたヨシやヨシ原の中に漂着したごみがたまっていました。

人の入らない砂浜でいきづく生き物たち

 東なぎさではヨシの間から絶えず鳥の鳴き声が聞こえてきました。同行していた野鳥の専門家によると、オオヨシキリがヨシ原に巣をつくって繁殖しているとのことです。
 クリーン作戦のあとは、生き物の専門家を囲んで、鳥類や魚類、甲殻類などの自然観察会が行われました。望遠鏡を使って沖で休む水鳥を観察したり水辺にいたカニや魚を水槽に入れて間近に観察したり手で触れたりしていました。6月末は野鳥の種類が少なくなる時期でしたが、それでも沖の干潟ではカモメやウミネコ、コサギ、ダイサギなどが羽を休める姿や、獲物をねらって低く飛びまわる日本で一番小さな猛禽類のツミやトビ、一斉に飛び立つツバメの群れなどが見られました。
 ヨシ原ではクロベンケイガニやアカテガニ、アシハラガニ、シラタエビやテッポウエビなどの甲殻類、ハゼやボラなどの魚類、カエルなど十数種類の生き物が観察できました。
 東なぎさは人工的に作られた砂浜ですが、人が入らないことで徐々に自然生態系が形成され、多くの生き物が生活できる環境となっていました。野鳥のサンクチュアリと同時に東京湾の中の貴重な生き物たちの楽園となることを期待したいものです。
 自然観察会のあとは、集めたごみをリレーで船まで運び、帰りの船に乗せて陸まで持ち帰りました。公園管理者の話では、毎回ペットボトルを中心としたプラスチック製品のごみが多く、特に東京湾に流れこむ河川の上流でゲリラ豪雨などが起こったときなどに漂着ごみが増えるとのことでした。ごみが川に流れ出ないように日々の生活の中で注意することが大切なのだと実感しました。

枯れたヨシの下から出てきたクロベンケイガニ。この日見られたカニ類ではいちばん数が多く、あちこちで姿を見せてくれました。

午前10時を過ぎた頃にはかなり潮が引いて、三枚洲は沖の方まで広く干潟が現れ、その先で羽根を休める水鳥の姿が見られました。

東なぎさでははじめての発見となるヌマガエルと思われるカエル。東なぎさに定着できるか楽しみです。

えどがわエコセンターの活動

 今回、東なぎさクリーン作戦を主催した認定NPO法人えどがわエコセンターは、江戸川区を舞台に区民、事業者、行政が連携・協働するというパートナーシップのもと、多くの人々に環境にやさしい生活を広げるため設立された組織です。高度経済成長期に江戸川区民と行政が中心となって始めた「環境をよくする運動」を母体とし、その後、オール江戸川で環境づくりへの参加を進める団体として組織され、2004年にNPO法人として発足し、2019年には認定NPO法人になっています。活動は多岐にわたりますが、地球温暖化防止、循環型社会づくり、自然環境保全、環境教育・人材育成の4つの分野を主な柱とし、年間約250にも及ぶ事業を行い、約2万人が参加しています。
 東なぎさクリーン作戦は2004年の設立当時から始めている取り組みで、年2回開催していましたが、今後は年3回に増やしていく予定です。東なぎさの魅力は何より多くの野鳥が見られることですが、野鳥が集まるためには食料となる生き物が多く、多様な生態系が必要です。
 クリーン作戦に参加し、さまざまな干潟の生き物に接して、生態系の多様性を守ることの重要性を改めて実感することができました。

集めたごみは手際よくバケツリレーで船に乗せて、陸まで運んで処分します。

集めたごみといっしょに記念撮影。今回は、例年より若干少ないごみの量でしたが、いつかごみゼロの日が来ることを願っています。

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