トップページ > みどり東京レター > 神秘的なセミの羽化の観察を通じて、身近な自然を捉える ――稲城市「セミの羽化の観察会」

みどり東京レタータイトル

 みどり東京レターは、都内62市区町村が実施するイベントをわかりやすく紹介することを目的に、月に1回程度の更新を予定しています。ぜひご一読ください。

2023.08.10

第41号神秘的なセミの羽化の観察を通じて、身近な自然を捉える―稲城市「セミの羽化の観察会」

背中から殻を割って少しずつ乳白色の身体を出していく、羽化途中のセミ。稲城市では、8月上旬頃にセミの羽化のピークを迎えるそうです。


稲城市 「セミの羽化の観察会」

開催日時
令和5年7月22日(土) 18:00~20:00
会場
城山公園(体験学習館及び芝生広場)
主催
稲城市都市環境整備部緑と環境課
講師
城山トコロジストの会
参加者
8組22名

shiina

公園内の木の幹や葉先にたくさんのセミの抜け殻が見つかったよ!
夜ごとにセミたちが羽化していると想像すると、なんか不思議な気分になるね!

セミの羽化観察に先立って、城山公園体験学習館でセミの生態について学ぶ

 気象庁が関東甲信越地方の梅雨明けを発表した7月22日の土曜日。日中は気温も上がって、各地で30℃を超える真夏日となり、いよいよ夏本番を迎えることになりました。
 夕方18時、まだまだ暑さの残る中、稲城市城山公園体験学習館に総勢20数名の親子が集まってきました。これから夜にかけて開催される、稲城市で定期的に開催している環境講座の中でも人気の高い「セミの羽化観察会」の参加者たちです。
 開催挨拶の後、さっそく「セミ物語」の紙芝居と質疑応答で、セミの生態について紹介・解説します。参加者からは、「セミの抜け殻から白い糸のようなものが飛び出ているけど、あれは何ですか?」「セミは鳥やクモに食べられる以外にはどうやって死んでしまうの?」「カマキリなんかは共食いするけど、セミは?」「セミのオスとメスの違いは?」などと質問が絶えず、この日の観察会を楽しみにしてきた様子が伺えます。
※質問の答えの一部はこの記事の中にも書いてありますが、詳しくはぜひ調べてみてください。

開催のあいさつをする、稲城市都市環境整備部緑と環境課課長の伊東健さん。
左は同課環境政策係の職員の皆さん。

講師の城山トコロジストの会のメンバーたち(左から、篠原さん、檞さん、箱田さん、歳清さん)。トコロジストとは、「所(場所)+ジスト(専門家)」で「その場所の専門家」を意味する造語です。フィールドを決めて通い、昆虫や鳥、植物、歴史など様々なテーマでその場所の専門家になることを目指しています。城山トコロジストの会では、公園で見られる生き物をテーマにした自然観察会を実施しています(コロナ期間中は休止していました)。

セミの一生を紙芝居にした「セミ物語」で、セミの生活や生態を紹介。読み上げを担当したスタッフの檞(くのぎ)さんは、一年ほど前に親子で観察会に参加して以来、毎月の観察会に参加していたところ、スタッフとして参加しないかと声がかかって、今回がスタッフデビューとなりました。この日も小5の長男、年長の長女と3人で参加。

メイン講師を務めた、城山トコロジストの会の歳清勝晴さん。子どもたちにセミ(本物)を見せながら、セミの生態や身体の構造について解説しました。稲城市がちょうど2年前に公開した、稲城市環境動画(YouTube)の第1回「セミの羽化」でも、講師として神秘的なセミの羽化と簡単な生態の解説を担当しています。

芝生広場までの道すがら、木の幹に張り付くセミの抜け殻を見つけてプチ観察会

 体験学習館内で紙芝居とセミの生態解説を聞いた後、まだ明るさの残る城山公園に繰り出して、いよいよセミの羽化観察会の始まりです。
 芝生公園までの道すがら、木の幹に張り付くセミの抜け殻を見つけたり、まだうまく飛べずにいる若いセミの成虫を捕まえたりするたび、城山トコロジストの会メンバーを囲んでのプチ観察会が始まりました。

体験学習館から公園に出ていき、セミの羽化を観察する芝生広場まで移動します。

少し小ぶりで泥を被った鎧のようなニイニイゼミの抜け殻。抜け殻に泥がついているのは、幼虫時代に水分を多く含んだ土中で過ごすためなのだとか。羽化時期は6月末からと早いタイミングで、夏の到来を告げるセミとして知られます。

セミの抜け殻から出ている白い糸のようなものは、セミの幼虫が呼吸するための気管の脱皮跡です。セミは口や鼻で呼吸するのではなく、胸部や腹部に空いた小さな穴(気門)から取り込んだ空気を、この気管を通して全身に届けているんだそうです。

セミ(成虫)のメス(左)とオス(右)。腹部にブラジャーのようにお腹を覆っている「腹弁」と呼ばれる器官があるのがオスで、オスはこの腹弁などの発音器官を使って鳴き声を出しています。先端部の産卵管の有無もオス・メスの違いで、抜け殻でもその違いが見て取れるそうです。

あたりが暗くなってきた頃、羽化するセミの姿を発見

 芝生広場に到着して、参加者それぞれが思い思いにセミを探してまわる中、足元の草の間を歩くセミの幼虫を見つけた歳清さんが、静かに子どもたちに声をかけ、みんなで取り巻くように見守ります。
 「セミの観察会で大事なのは、慌てず急がず、ゆっくりと足元を見ながら歩くことです。土の中から出てきたセミの幼虫を気づかずに踏み潰しちゃったりすると、悲しいよね。何か見つけたときにも、絶対に走らないで、ゆっくりと足元を見ながら移動してくださいね」
 あたりが暗くなってくると、ようやく羽化し始めたセミの姿を発見。時間をかけてゆっくりと体を出していく白く輝くセミの姿は、神秘的な生命の営みを感じさせてくれます。

足元の草の陰にセミの抜け殻を発見。よく見ると、ゆっくりと動いている!?いやいや、中身の入ったセミの幼虫です。これから近くの木などに登って、殻を破って羽化した後に残るのが、セミの抜け殻です。

子どもたちの目線の高さに茂る生垣の葉先にぶら下がって羽化を始めるセミを発見した講師の歳清さんが、子どもたちを静かに呼び集めます。

ぱっくりと背中が割れて、乳白色の身体をせり出していくセミ。

腹部の先端だけを殻に残して、グイっと反り返るように体を出す羽化途中のセミ。足を乾かして固まってくると、腹筋するように上半身を起こして、脚で抜け殻につかまって、おしりを抜いてポジションを変えます。

脚が乾いて固まると、お尻を抜いて、脚で抜け殻につかまります。背中の羽はまだくるりと丸まっています。

すっかり伸び切った羽はまだ白く柔らかく、あと数時間、この姿勢のまま風に当たって乾燥させると、色もついてきて固くなって、空を飛べるようになります。

関連リンク

このページの先頭へ

本事業は、公益財団法人 東京都区市町村振興協会からの助成で実施しております。