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 みどり東京レターは、都内62市区町村が実施するイベントをわかりやすく紹介することを目的に、月に1回程度更新しています。ぜひご一読ください。

2023.10.24

第44号写真で感じるいきものたちの姿――調布市いきものフォトコンテスト2023「感じよう!生物多様性」

調布市いきものフォトコンテストの受賞作品は、調布市多摩川自然情報館に展示されます。選考期間には応募作品が掲示され、来館者による投票で受賞作品を選びます。


調布市いきものフォトコンテスト2023「感じよう!生物多様性」

募集期間
令和5年8月5日(土)~令和5年11月30日(木)
選考期間
令和5年12月16日(土)~令和6年2月18日(日)
結果発表
令和6年3月17日(日)予定
主催
調布市多摩川自然情報館

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調布市のいきものたちはどんな姿を見せてくれるかな?
写真を撮って応募してみよう!

市民と共に生き物を見つけるコンテスト

 夕景を泳ぐ鳥や跳ね上がる魚、飛び回る昆虫やきらめく植物。生き物たちの姿を切り取った見事な写真の数々は「調布市いきものフォトコンテスト」の受賞作品です。調布市多摩川自然情報館で毎年開催されているこのコンテストについて、同館の解説員を務める竹内江利子さんにお話を伺いました。
 いきものフォトコンテストが始まったのは2010年。多摩川自然情報館の開館に伴い、市民の方々と一緒に生き物の情報を集める方法としてフォトコンテストが考案されたそうです。調布市内の自然環境の再発見と、生物多様性への理解を深めてもらう目的で開催が続けられ、2023年で14回目を迎えます。

 コンテストでは野生生物を主体とした写真を募集しており、飼育や栽培など人の手が掛かっていない自然のままの姿の写真が対象です。応募部門は撮影場所によって「多摩川部門」と「市内部門」に分かれています。一時期はスマホや携帯電話・携帯ゲーム機のカメラ機能やトイカメラなどを使って、子どもたちにも手軽に撮影して応募してほしいと「スマフォト部門」を設けていたことがあったそうですが、携帯電話のカメラの性能が向上してデジタルカメラと遜色なくなったことから現在は「多摩川部門」と「市内部門」で実施されています。
 応募作品は多摩川自然情報館に掲示され、来館者の投票や専門家の評価などにより受賞作品が決まります。来館者は生き物の勉強に訪れる小中学生が多く、迫力のある写真や馴染み深い生き物の写真が注目を集めているそうです。受賞作品は多摩川自然情報館に展示されるほか、館内のパネル資料や調布市の広報資料にも活用されています。

前回の受賞作品のほか、歴代の大賞作品も展示されています。新型コロナウイルス感染症の流行時も、遠くへ出かけない分、近くを散歩して写真を撮る調布市民が多く、例年通りの開催となったそうです。

建物全体は、福祉施設や地域コミュニティ施設を併設した複合施設になっていて、2階部分が調布市多摩川自然情報館です。
魚や昆虫を見られる展示室と、生き物の関連書籍を読める学習室が備えられ、廊下にも様々な展示があります。土日は解説員の方が在館し、生き物に関するお話を伺うことができます。

野生の姿を写真に収めてみよう

 いきものフォトコンテストには毎年70~100作品ほどの応募があり、その多くは調布市民による写真です。中でも普段から野鳥撮影を行う大人の作品が多いそうですが、小中学生からの応募も毎回あり、上は70代~80代まで多岐に渡る年代の方が参加しています。最も応募が多い野鳥写真の他には、身近なカメラで撮影しやすい植物・昆虫の写真が多く集まります。
 元々生き物に関心がある市民はもちろん、たまたま家の前で目を引く生き物を発見して撮影してみたという応募者も多いそうです。写真に撮ることがきっかけとなって、生き物に関する新たな興味をかき立てられている様子を竹内さんは感じています。

 野生の生き物を撮るコツは、回数を重ねることに尽きるといいます。プロの写真家の方に聞いても、「まずはよく出歩き、その中で運良く近付ける生き物や、良いシチュエーションで佇んでいる生き物に出会えるかどうかなので、沢山出かけてください」とおっしゃるそうです。
 多摩川自然情報館では、調布市在住の野鳥写真家・叶内拓哉先生による写真講座も開催されており、野鳥の観察と撮影のコツを学ぶことができます。撮影の手法は生き物によって異なるため、今後は昆虫など他の生き物の撮影講座も行ってみたいとのことです。

2010年度の最優秀賞を獲得したのは、当時小学生の女の子が撮影したオオタカの写真でした。猛禽類は飛んでいることが多く良い写真を撮りづらい中、川の中州でエサを持って休憩している姿を見事にとらえています。
このシャッターチャンスに小学生が気付いたことへの驚きと、写真の雰囲気の良さが相まって、スタッフの皆さんの印象に残っているそうです。

2022年度多摩川自然情報館賞「ジャンプ」
水中を泳ぐ魚は捕獲せずに撮影することが難しいため、野生の姿を募集しているこのコンテストでは応募がほとんどないそうです。そんな中、川面からコイが跳ね上がった瞬間を撮影したレアな一枚。

2022年度多摩川自然情報館大賞「夕景」
鳥は逆光で撮る場合、鳥側から撮影者が見えやすいため、気付かれて飛んで行ってしまうリスクが高いそうです。なるべく順光で撮るのがコツですが、多摩川の調布側の河川敷は逆光になりやすいため、逆光を活かしたこのような印象深い写真を目指す手段もあります。

2022年多摩川自然情報館大賞「あしたを生きる」
カワセミの綺麗な姿は来館者の子供たちにも人気です。鳥の撮影では他にもかわいい写真が撮れる小鳥や、太陽の光で芸術的に輝く白いサギ類を狙って撮る方が多いそうです。白い鳥は写真の中で白くなりすぎてしまう「白飛び」を起こしやすいため、撮影には工夫が必要となります。

調布の自然の中で生き物を見つめる

 調布市は都心に近い土地でありながら、豊かな自然に恵まれています。石がゴロゴロと転がっている場所、湧水があり湿地状になっている場所、崖線のように樹林地がある場所、大河川の多摩川や野川など様々な自然環境があり、それらを一度に楽しめることが調布市の魅力だといいます。
 多摩川周辺には広がった草地が多いため、草地が好きな生き物が集まっています。東京都内でもかつては草地や畑に生息する生き物たちが観察されましたが、各地で草地が減少し、今では多摩川の周りでしか見られない生き物もいるそうです。
 例えば、2023年に発行された「東京都レッドデータブック(本土部)2023」に絶滅の恐れがある野生生物種として新たに掲載されたホオジロ、オナガなども調布市では多く見られます。多摩川自然情報館では、そのような生き物たちの様子を定期的に確認する取り組みも行っています。

 調布市の生き物にフォーカスした「いきものフォトコンテスト」を通して、市民や来館者は「こんな生き物がいたんだね」と新たな発見をしているようです。作品応募や受賞をきっかけに家族で多摩川自然情報館を訪れる応募者も多く、解説員と話す中で別の生き物にも興味を持ってくれるそうです。
 「写真撮影を通じて、身近な生き物を見つめるきっかけになってくれたら」と竹内さんは期待します。「珍しい生き物をあえて撮ろうとしなくても、意外と自分の足元の10メートル以内にいる生き物を見て観察することはできます。いきものフォトコンテストが生き物に目を向けるきっかけとなり、色々な生き物や自然環境に興味を持ってくれたら嬉しいです」。
 生物多様性の損失を止め、回復軌道に乗せる「ネイチャーポジティブ」の実現が2030年までの国際目標として急がれる中、市民一人一人が足元の生き物に目を向け、地域の自然環境に関心を持つことは大切なアクションになります。写真を通して生き物について考える機会を持つことで、生き物たちの明るい未来に繋がることを願います。

調布市多摩川自然情報館の学習室では、様々な生き物の塗り絵を自由に楽しむことが出来ます。リクエストのあった生き物や、注視すべき外来生物などの塗り絵を随時追加しているそうです。
小中学校の受け入れ授業や課外授業、インタビューや職場体験の受け入れも行っています。最近は学校でも生物多様性などについて学習していて、子どもたちも詳しくなっているそうです。

目の前に多摩川が流れる調布市多摩川自然情報館では、多摩川の特定外来生物アレチウリ(生育速度が非常に速いウリ科のつる性外来植物)の駆除活動を年二回開催するほか、定期的に参加を募集する観察会や、個人で楽しめる月替わりプログラムの資料配布などを行っています。
常連の参加者もいる一方、熱心に学ぶ初心者も多く、初心者の方々は生き物について知れば知るほど面白いと感じているようです。

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本事業は、公益財団法人 東京都区市町村振興協会からの助成で実施しております。