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 みどり東京レターは、都内62市区町村が実施するイベントをわかりやすく紹介することを目的に、月に1回程度更新しています。ぜひご一読ください。

2024.09.06

第51号省エネと創エネの建物「ZEB(ゼブ)」ってなに?―品川区「ZEBツアー 夏休みSpecial!」

屋上には太陽光パネルがびっしり!

屋上には太陽光パネルがびっしり!


「ZEBツアー 夏休みSpecial!」環境負荷ゼロを目指した建物を学ぼう!

開催日時
令和6年7月29日(月) 10:00~11:30
会場
品川区立環境学習交流施設 エコルとごし
講師
エコルとごし館長 中藏康之氏
参加者
6名(小学4~6年生)

 じりじりと太陽が近づいてくるような、最高気温38度の猛暑の中、学習意欲旺盛な小学生6名が集まりました。今回は「ZEBツアー 夏休みSpecial!」と題して、一般来館者を対象に毎週土日に開催している「エコルとごしの魅力とZEB関連設備を巡るツアー」(略して「ZEBツアー」)とは異なり、小学4~6年生を対象にZEBを学びます。夏休みの宿題で訪れたのかと思いきや、純粋にZEBを知りたい!という熱心な子たちばかりでした。
 講師は、子どもたちにも大人気のエコルとごしの中藏館長が務め、「ZEBってなんだろう」「どんなしかけがあるか」など、図を見せながらわかりやすく解説してくださいました。

ZEB(ゼブ)ってなんだろう?ランクは4つあります

「ZEB」には4つのランクがある(※画像をクリックすると拡大表示されます。)

shiina

建物での消費エネルギーゼロを目指したZEBって
どんな仕組みなんだろう?

都内の公共建築物で初となる「Nearly ZEB」認証を取得

 「ZEB」は、「Net Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)」 の略で、年間の一次エネルギー消費量の収支がゼロになる建物として、建築物省エネ法に基づく第三者評価機関が認証するものです。消費エネルギーを減らしながら、太陽光パネルなどでエネルギーを創りだす、まさにエネルギーの自給自足です。ZEBにはランクが4つあり、エコルとごしは、上から2番目の「Nearly ZEB」認証を取得しています。省エネ+創エネで、従来の建物で必要なエネルギーの75%以上を削減すると認められる認証です。2023年度は、エネルギー削減率98.5%を達成し、設計時に設定した削減率91%を大きく上回りました。

 どうしてこれほどまでにエネルギー使用量を減らすことができたのでしょうか。エネルギーを創りだす技術に目を向けがちですが、中藏館長は建物の工夫による省エネ効果が大きいと話します。
 直射日光の室内への侵入を考慮した3メートルの深い庇(ひさし)、熱を通しにくいエコガラス、春や秋には自然風を取り入れる換気窓などです。目新しい最先端の特殊な技術ではなく、すでに一般にも普及している技術を組み合わせてエネルギー削減を実現しています。
 建物の方角にも注目です。南向きに大きな窓のあるコミュニティラウンジ、北側には光を不要とする映像展示、西日が差し込む面は窓をなくして機器類を設置、と省エネ効果を高める最適な配置となっています。

建物の模型を確認する子どもたち

建物の模型を確認する子どもたち

 講義のあとは、いよいよ見学ツアー!熱中症にならないように、みんなマイ水筒を持参しています。(館内には無料のマイボトル用給水機もあります。)

省エネ技術が詰まったエコハウス

 おやっ!?早速、何やらみんなで床を触っています。

床のひみつ

床のひみつ

 床には「居住域空調」といって、空間全体ではなく、人が活動する高さ2メートル程度までを空調でコントロールする工夫があります。床面から生じる放射熱を使った「放射空調」と、床からの「吹出空調」の組み合わせです。天井の高いところなど、必要のない無駄な空調は減らして、省エネにつなげています。
 その他、LED照明、断熱性能の高い壁など、使うエネルギーをとことん減らす仕掛けがあります。人感・昼光センサーによって、人がいないときは自動で照明を消したり、屋外の光が強いときには自動で照明を弱めたり、必要な分だけエネルギーを使うような工夫もされています。
 直接的にZEBの省エネ計算には寄与していませんが、雨水はトイレの排水に利用し、身近な水資源も有効活用しています。
 建物には、品川区と木材協定(木材利用促進等に関する協定)を締結した高知県の木材をはじめ、区が交流をもつ全国の自治体や東京都多摩地域から仕入れた国産の木材が多く使われ、ぬくもり溢れる空間になっています。

国産のスギが床や壁の材木に

国産のスギが床や壁の材木に

キッズスペースには紙製人工芝

キッズスペースには紙製人工芝

マイクロプラスチック削減に寄与

マイクロプラスチック削減に寄与

太陽光と地中熱の再生可能エネルギーも活用

 太陽光パネルは、品川区の区有施設としては最大級の288枚を屋上に設置。冒頭の写真にある見学場所から奥に見えた白いロッカーのようなものが蓄電池です。猛暑だったこの日は、午前中の時点で、一般的な住宅の消費電力量9軒分に相当する電気をぐんぐん発電していました。

 外観からはわかりませんが、地中熱も利用しています。地中熱は、年間を通じて一定である地中の温度を生かしたエネルギーです。地下100m付近は、平均18℃といわれ、夏は気温より低く、冬は気温より高い特徴があります。これを空調のエネルギーとして利用し、夏季や冬季は2~3割の省エネに貢献しています。屋上の配管は、10℃以下の冷温水管と30℃ほどの熱源水管がそれぞれ往・還の合計4本が配管され、水温表示が確認できるようになっていました。

地中に向かう空気と戻る空気の管がある。右はヒートポンプ

地中に向かう空気と戻る空気の管がある。右はヒートポンプ

エントランスのモニターでは、地中の温度や太陽光の発電量をリアルタイムで表示

エントランスのモニターでは、地中の温度や太陽光の発電量をリアルタイムで表示

 見どころ盛りだくさんのツアーも以上で終了しました。参加者は「ZEBについて学べてよかった。楽しかった」「普段は見られないところをたくさん観察できて勉強になりました」「エコルとごしはいつも快適で便利で、そのために色々な工夫をしていることがわかった」と話していました。

shiina

エコルとごしは2022年5月に誕生。
設立について紐解いていくよ。

利用者数は年間約22万人!想定の6倍以上(2023年度)

 エコルとごしでは、年間70以上の講座を開催しています。実験や工作をはじめ、戸越公園の自然を活用した探検ツアーなど多彩なテーマを取り上げ、ほぼすべての講座が抽選となる人気ぶりです。区内小学校の社会科見学をはじめ、全国各地の自治体や議会視察なども多く、環境に配慮した施設への注目度の高さが伺えます。
 エコルとごしは、環境教育の推進とともに、コミュニケーションの充実も目的とした施設として開設されました。施設見学や講座受講者以外の区民にも日常的に利用してもらうため、戸越公園に面した開放的な1階部分にはコミュニティラウンジが設置され、朝から晩まで幅広い年代の方が利用しています。放課後に友だちと集まって勉強する小学生、公園のお散歩ついでや避暑地として利用する高齢者、通勤・通学前後の学生や社会人などが思い思いに過ごします。コミュニティラウンジ内には未就学児向けのキッズスペースもあり、赤ちゃん連れのご家族も多く利用しています。

映像展示「いきものタッチ」

映像展示「いきものタッチ」

 環境学習展示の中でも特に人気の高い映像展示「バランスプラネット」「いきものタッチ」は、空間全体に映し出された映像にタッチして、生き物とのふれあいを楽しんだり、ゲームを通して環境について学んだり、自分のアクションで演出が変わります。区外から親子で繰り返し訪れる方も多いそう。1秒・1日・1年・10年などの時間軸で起こる環境への影響などを疑似体験できる常設展示「トイカケのジカン」と合わせて、身近な視点で楽しみながら環境について学べます。(詳しくはこちら

 品川区は2018年、「品川区環境基本計画」を策定。その中で、「次世代につながる『日常的に実践する人』を育てる」という共通目標があり、それを実現するための施設として環境に配慮した建築物を構想しました。ZEB建築のコストは、一般的に通常に比べ2~3割増といわれる中、環境面に最大限に配慮したフラッグシップ施設として、民間施設への波及や環境保全に対する区民の意識の変化等につながることを期待し、整備することを決めました。

公園の景観にも溶け込む壁面緑化が美しい外観

公園の景観にも溶け込む壁面緑化が美しい外観

 実際にエコルとごしへ「自宅をZEH(ゼッチ)にしたい」と勉強しにくる方もいるなど、環境配慮型の建物への関心度は高まっています。訪れたら、自宅を省エネにしたくなること間違いなし!省エネしつつ快適に過ごせるエコな建物を体感してみませんか。

■品川区立環境学習交流施設 エコルとごし
〒142-0042 東京都品川区豊町2-1-30(戸越公園内)
開館時間 7:00~21:30 *3階 環境学習展示・菜園デッキと1階 キッズスペースは9:00〜18:00
休館日  毎月第4月曜日(祝日の場合は開館し、翌平日休)、年末年始(12月29日~1月3日)

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本事業は、公益財団法人 東京都区市町村振興協会からの助成で実施しております。