トップページ > みどり東京レター > 都会の喧騒から離れた“島じかん”が、普段の生活や仕事にもたらすもの ――アンテナショップ「東京愛らんど」内展示 令和6年度第4回「東京諸島フォトセッション」写真展
みどり東京レターは、都内62市区町村が実施するイベントをわかりやすく紹介することを目的に、月に1回程度更新しています。ぜひご一読ください。
2025.03.21
アンテナショップ「東京愛らんど」がある竹芝客船ターミナル(ボードウォークから中央広場を望む)
伊豆諸島・小笠原諸島は静岡県じゃなくて、東京都の島なんだよね!
島の何気ない暮らしや風景を切り取ったミニ写真展、機会があればぜひ見に行ってみて!
日本の最南端に当たる沖ノ鳥島(東京都心から南に約1,700km)も、最東端に当たる南鳥島(東京都心から南東に約1,950km)も、東京都の島です。これら最果ての島を含めて、東京には太平洋に浮かぶ大小数百の島々が連なる東京諸島(伊豆諸島、小笠原諸島)が属しています。このうち、11ある有人島ではそれぞれ東京都の町村として島民の生活が営まれています。
そんな東京諸島の玄関口になるのが、竹芝ふ頭再開発事業で海上公園やオフィスビルなどが一体的に整備された竹芝客船ターミナルです。JR浜松町駅から旧芝離宮恩賜庭園を越えて徒歩約8分の臨海部にあります。
ターミナルからは、大島~利島~新島~式根島~神津島を巡る「さるびあ航路」、三宅島~御蔵島~八丈島を巡る「たちばな航路」、そして小笠原の父島に向かう「小笠原航路」などの定期船が就航しています。ターミナルの最奥にあるのが、島の情報や特産品を扱うアンテナショップ「東京愛らんど」で、売り場を抜けた奥の情報発信スペースの壁で四半期に一度、「東京諸島フォトセッション」写真展が開催されています。
竹芝客船ターミナルの切符売り場や待合所を通り抜けて奥に進むと、アンテナショップ「東京愛らんど」の入り口があります。
島に向かう定期船に乗る前に島の情報を得るために寄ったり、島から戻ってきた船から降りて買い忘れたお土産品を購入したり、あるいは島が恋しくなって特産品を覗きに来たりとさまざまな利用がされています。
アンテナショップ「東京愛らんど」の店内。島の特産品やパンフレットなどが置かれた棚がレイアウトされています。
東京愛らんどでの写真展は、今年度で3年目を迎えました。令和4年度の第2期から四半期ごとに開催してきたので、11回目の開催です。1回のフォトセッションで、2つのテーマを設定して、8枚ずつ合計16枚を掲示していますので、トータルでは200枚近くの写真を紹介してきたことになります。これまで取り上げてきたテーマは、「島盛夏」と「島の鳥居」(令和6年度第3回)、「島の狛犬くん」と「島を去る」(令和6年度第2回)、「島花ワールド」と「島ポートレート」(令和6年度第1回)、「島路地」と「島アワード」(令和5年度第4回)、「島DISH」と「島FRIENDS」(令和5年度第3回)、「島色 海八景」と「島色 島八景」(令和5年度第2回)などバラエティに富みます(それぞれの写真は、関連リンクから閲覧できます)。令和6年度第4回の今回は「さるびあ航路2024」と「たちばな航路2024」をテーマに、それぞれの航路が向かう島々(さるびあ航路は大島~利島~新島~式根島~神津島、たちばな航路は三宅島~御蔵島~八丈島)の写真のうち今年度の写真展で紹介しきれなかった写真を集めてみたと、すべての写真を撮影したフォトグラファーでディレクターの田辺久弥さんは言います。
1回の写真展で2つのテーマ、8枚ずつ掲示しています。今回の写真展は、左が「さるびあ航路2024」(大島~利島~新島~式根島~神津島)、右が「たちばな航路2024」(三宅島~御蔵島~八丈島)。それぞれの航路が向かう島々の写真を掲示しています。
八丈島のフリージアまつりで踊るおばあちゃんたちの姿をモノクロ写真で紹介しました。イベントとしてとらえると物足りないところもあるようですが、もともと地域の祭りをもとにしたイベントなので、島の人たちによる島の人たちのための催しという側面が強いのです。(出典:東京愛らんど)
重要無形民俗文化財になった「新島の大踊(にいじまのおおおどり)」の一コマ。祭り会場の提灯(左)と、踊り手を務める島民が被る布を垂らした大きな笠が暗闇に浮かぶ幻想的な写真(右)。島に行かないと見ることができない特徴的な踊りは、曜日に関係なく8月14日にしか開催されず、荒天時にはなくなってしまう、島時間豊かな風物詩です。ここ数年はコロナで開催が見合され、昨年は台風直撃で中止になったため、5年ぶりの開催となりました。(出典:東京愛らんど)
八丈島の伝統工芸の黄八丈の工房(左)と、伝統を守っている人の手をクローズアップした一枚(右)。
観光用もしくは記録用の写真としてではなく、島で暮らす人の営みを切り取った写真とすることを心掛けています。(出典:東京愛らんど)
三宅島の路地で出会った野生趣あふれるネコ。今風の、きれいな飼い猫の顔とは一味違う、案外ぶさいくな表情は、最近では見かけなくなったような気もすると田辺さんは言います。
そんな何気ないけど今やあまり見られなくなっている光景が、島に渡ると普通にみられるのだと言います。(出典:東京愛らんど)
東京諸島の島々には、豊かな自然環境で育まれた海の幸、山の幸がたくさんあります。
近海で獲れた鮮度抜群の魚介を使った島寿司、海鮮・創作料理、島とうがらしや椿油、火山の蒸気と黒潮の海水で生み出された塩、日差しをいっぱい浴びて育った島野菜やトロピカルフルーツなど、島ごとに受け継がれてきた独自の食文化があります。
島を訪れてこそ堪能できる島の歴史や風土、ぬくもりなどの一端に少しでも触れてもらいたいと、アンテナショップ「東京愛らんど」では、どこか懐かしいようで新しい、旅に出かけたくなったり旅の思い出がよみがえってきたりする、そんな島々の特産品を並べています。
また、売り場カウンターや商品棚を通り抜けた奥に位置する「情報発信コーナー」は、単に物産品販売をする店舗としてだけでなく、島とのヒト・モノ・コトをつなげてさらに魅力ある島々にしていくためのハブ(関係拠点)になるための機能をめざしたスペースとして開設しています。
ショップの役割や、取り扱う特産品の一部を、店長の金井友香さんに案内してもらいました。
小笠原特産の小笠原島レモンの果皮からできた「さくピー」は、これまで廃棄されていたレモン果皮をバキュームフライ製法でサクッとした食感に仕上げた柑橘チップスです。
レモン果汁100kgを搾り取るのに、130kgもの量が発生する果皮まで余すことなく使うことで、廃棄を減らすフードロス対策として開発されました。加えて、売り上げの一部は小笠原諸島の自然保護などに充てられています。
島に自生しているアシタバは加工食品に用いられるほか、生葉も定期的に入荷しています。
島だけで楽しんでいたアシタバが味わえると、入荷するとすぐに売り切れる人気の商品です。
島の新鮮な魚(アオムロアジやトビウオなど)を使って漬け込む「くさや」は、冷蔵のパックのほか、常温の瓶詰も扱っています。
くさや液は古いものほど旨味が増すとされ、島ごとに秘伝の製法により漬け継いでいると紹介しています。
東京の島しょ地域の豊かな自然に育まれた、魅力的な食材を積極的に活用している島の飲食店を紹介するガイドブック「東京 島じまん 食材使用店」(ピンク色の右が日本語版、オレンジ色の左は英語版)。
東京都産業労働局のサイトからも閲覧・ダウンロードできます(関連リンク参照)。
写真展で掲示する写真は、いわゆるリゾート地などによくある風光明媚な絶景写真などとは一味違った雰囲気を醸し出しています。
「もともと島で撮った写真で個展を開いたときに、観光写真ではない島のくらしを切り取った写真を評価してもらいました。『身近な、島のそこら辺にある光景を素敵に撮ってください』とおっしゃっていただいたのです」
そう田辺さんは回想します。
島に渡る定期航路は、本来観光船というよりも生活の汽船として、島民の生活の足に使われてきました。観光地ではない、普通の何気ない暮らしが息づく魅力が島にはあるから、そんな魅力を伝えたいという思いで、田辺さんは島に通って写真を撮り続けてきました。
島民と知り合いになって、街の中を歩いて、自分なりの世界を切っていきます。島の路地のふっとしたところに素敵なものを見つけては夢中でシャッターを押してきました。
ポートレートも、島生まれ・島育ちの人にモデルになってもらって、島で生きてきた人生がにじみ出るような写真をめざして撮っているのだそうです。
アンテナショップでは、島のポストカードを扱っていますが、これまでの風景写真に加えて、写真展で取り上げてきた、何気ない島の写真をラインアップする話が具体化していて、すでに何枚かセレクトしていると言う田辺さんでした。
アンテナショップ「東京愛らんど」の金井友香店長(右)と、フォトグラファー・ディレクターの田辺久弥さん(左)
竹芝埠頭から望む東京湾
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