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2015.08.21

第15回府中市:環境のイベントならではの特色を打ち出すと同時に、他のイベントの環境面での模範になることをめざす(府中環境まつり)

 当プロジェクトの助成金を活用した都内62市区町村の環境事業の取り組み状況について順番に紹介する「環境事業紹介」のコーナー。
 第15回は、府中市で毎年環境月間の6月に開催している「府中環境まつり」について紹介します。
 2012年に今の形で始まった環境まつりは、今年(2015年)で3回目となりました。市内で実施する他のイベントにとって環境面での模範になることをめざして、環境啓発イベントならではの新たな取り組みも始めました。
 その経緯と併せて、年に一度のこの一大イベントについてご紹介します。ぜひご一読ください。

3つのイベントを統合してはじめた「府中環境まつり」

2015年6月6日(土)に開催した、府中環境まつり2015。晴天にも恵まれ、来場者総数は延べ2万1千人ほどになった。

2015年6月6日(土)に開催した、府中環境まつり2015。晴天にも恵まれ、来場者総数は延べ2万1千人ほどになった。

 府中市のほぼ中央部、京王線府中駅から徒歩約8分の距離にある府中公園は、芝生が広がる面積約2.2haの都市公園。毎年6月の第一土曜日、ここ府中公園を会場に、「府中環境まつり」が開催されている。来場する市民が、地球温暖化防止や自然保護、ごみ減量・リサイクルなど環境について楽しみながら学び、考えることのできるような場と機会をめざす、市内最大の環境啓発イベントだ。
 今年(2015年)も6月6日(土)の晴れ渡る青空の下、ブースの出展者47団体とフリーマーケット出店者98店、さらにステージイベントには8団体からの出演者が入れ替わり登場し、午前10時から午後3時までの5時間のイベントを盛り上げた。来場者数はのべ約2万1千人、にぎわいに溢れた一日となった。
 2012年に第1回を開催した府中環境まつりは、今年2015年で第3回を迎えた。数が合わないのは、前年の2014年が荒天によって中止を余儀なくされたからだ。この年、都内各地で6月の環境月間に合わせて開催を予定していた環境啓発イベントは、荒天による中止や規模縮小が相次ぐ結果となった【1】。府中市では翌日曜日を予備日にしていたが、記録的な大雨に、会場は水浸しとなって、やむなく中止の判断を下したという。

 府中環境まつりでは、公園南側のコンクリートブロック敷きのエリアをフリーマーケット約100店が出店する『リサイクルゾーン』、北側の芝生エリアをブース出展中心の『環境啓発ゾーン』、これらの間に作業スペースを設けた『自然体験ゾーン』と大きく3つにゾーン分けをしている。
 「もともと、2012年に今の形で環境まつりを開催するようになる以前までは、環境フェスタ、リサイクルフェスタ、そしてグリーンフェスティバルという3つのイベントをそれぞれ開催していました。ただ、来場者の方々に環境について知っていただくのに、分野別の取り組みとしてよりも、総合的な環境の取り組みについてお伝えできた方が効果的かつ行財政の効率化も図れるということで、統合して開催することになったのです。このとき新たに「府中環境まつり」という名称を付けました。それまで歴史も参加団体も違って、それぞれのやり方でやってきましたので、各イベントに関わってくださっていた団体を中心に実行委員会を組織して、開催に向けた話し合いを重ねていただきました。そうした中、うまく融合しながらもそれぞれの特色を生かした形で連動していくために、会場内をゾーン分けして全体を構成することになったのです」
 そう説明するのは、府中市環境政策課の神田遼さん。昨年の環境まつりが中止になり、今年こそはという思いで開催準備を進めてきたというが、実は今年も環境まつりの前夜から当日朝にかけて雨に見舞われた。実施判断を下す朝6時半の時点でも雨が止まず、やきもきさせられたというが、日中は雨も上がって、青空が広がる晴天のもと無事に開催できたことに安堵したという。

環境啓発ゾーン。各出展団体による環境活動のPR。
環境啓発ゾーン。各出展団体による環境活動のPR。

環境啓発ゾーン。各出展団体による環境活動のPR。

自然体験ゾーンでの鳥の巣箱づくり。できた巣箱はそれぞれが持ち帰って活用される。

自然体験ゾーンでの鳥の巣箱づくり。できた巣箱はそれぞれが持ち帰って活用される。

リサイクルゾーンのフリーマーケット。

リサイクルゾーンのフリーマーケット。

新たな試みとして始めたリユース食器の導入

府中環境まつり2015ステージプログラム(10:00~15:00)

府中環境まつり2015ステージプログラム(10:00~15:00)※クリックで拡大表示します

 3つのゾーンの他、ステージでは終日、環境啓発に関連した催しを実施した。
 「ステージプログラムは、第1回の頃には音楽演奏などで集客のための効果を期待する部分もありましたが、回を重ねるごとにそれも大事だけど、環境に関連した内容の催しを実施して、それで楽しんでもらい、しかも集客にもつながるような方向に進めていくのがいいのではないかと実行委員会で話し合っていただいています。せっかくの環境まつりですから、他のイベントとは違う環境まつりならではの特色を打ち出し、なおかつ、他のイベントに対しても環境の面で模範になるようなことができないかと模索しながら進めているところです」
 神田さんはそう話す。
 今年のステージプログラムでは、環境啓発標語・ポスターコンクールの表彰式や、リサイクル子どもみこしの練り歩き、都立府中東高校生物部が種から育てたグリーンカーテン苗の育成発表や環境活動の紹介(ステージでの発表後には、アサガオの苗500本が来場者に無料配布された)、市内にある国立東京農工大学の学生サークル「ごみダイエットNOKO」によるエコレンジャーショーなど、開会・閉会式や主催者挨拶等を含む10のプログラムを実施している。

ステージプログラムでは、市のごみ減量キャラクター・リサちゃんも登壇した。

ステージプログラムでは、市のごみ減量キャラクター・リサちゃんも登壇した。

リサイクル子どもみこしを担いで練り歩く子どもたち。

リサイクル子どもみこしを担いで練り歩く子どもたち。

 今年の環境まつりで初めての取り組みとして導入されたのが、リユース食器の利用だった。まさに、環境まつりとしてごみを出さない工夫をするとともに、将来的には他のイベント等の環境取り組みのモデルになることをめざす。
 会場内で食品類を扱う模擬店は、環境のイベントだからそれほど多くはないが、福祉系の団体などの協力によって、リサイクルゾーンに1店舗、環境啓発ゾーンの一番奥のコーナーに4店舗の2か所に開設している。その2か所に隣接してリユース食器の貸出・回収所を設置し、来場者は預り金の100円と引き換えにリユース食器を借り、各模擬店で買い物をする。食事を終えて食器を返却する際に、預けた100円が戻ってくるというシステムだ。使い捨て容器をやめてごみが出ないようにするとともに、食器リユースを実際に体験してみて、環境配慮行動について感じ、考えてもらうことを意図したものだ。
 「会場レイアウトは、なるべく全体をまわっていただきたいということで配置しています。フリーマーケットは、親子連れの方も結構いらっしゃるのですが、なかなか環境活動の紹介ブースまで足を運んでいただけてはいません。フリーマーケットを目的に来場された方々が、そのまま帰るのではなくて、環境啓発ゾーンの方もまわって、覗いていただきたい。環境啓発ゾーンは、縁日のようなにぎやかな雰囲気とは違いますが、それぞれの出展団体さんの創意工夫によって、近くを通りかかった来場者を呼び込んでもらっています。通りかかった親子がおもしろそうだからと覗いてみて、それで環境について知っていただくというのも一つのきっかけになるかなと思います。模擬店を奥の方に配置することで人の流れを作って、回遊性を持たせられればというレイアウトです」

 リユース食器については、100円を預けて返却時に戻ってくるというデポジット制度【2】のわかりにくさや手間に対する意見もあったというが、実際にリユース食器を使った人たちのアンケート回答の中には、「実際にやってみて、環境に配慮したイベントになっていいと思う」「リユース食器を入れたことでごみも減らせる」「こうした取り組みを子どもたちも知ってもらうことで、環境にやさしいことができたり意識が芽生えたりするきっかけになる」といった好意的な意見がほとんどだった。
 環境まつり実行委員会では、8月中に今年度の総括と次年度に向けた反省についての話し合いを予定している。リユース食器についても今回が初の試みだったから、実際にどういう場面でどんな効果や障害等があったかを共有し、次年度以降の環境まつりでの実施や運用について議論していくことになる。
 わかりにくさや手間の煩雑さなどはあるものの、出展者・来場者に理解を呼びかけて今後も継続していくと同時に、そうして継続していくうちに、徐々に浸透して、リユース食器を使うことが普通のこととして受け入れてもらえるようなイベントにしていければと神田さんは話す。

『模擬店は、リサイクルゾーンと環境啓発ゾーンの2か所に開設し、会場全体を歩いてもらうために配置した。

模擬店は、リサイクルゾーンと環境啓発ゾーンの2か所に開設し、会場全体を歩いてもらうために配置した。

今年初めて導入した、リユース食器の取り組み。環境のイベントだからこそ、環境面で他のイベントにとっても模範になるような取り組みを打ち出していきたいという。

今年初めて導入した、リユース食器の取り組み。環境のイベントだからこそ、環境面で他のイベントにとっても模範になるような取り組みを打ち出していきたいという。

会場では、高校生が育てたアサガオの苗を配布

 企業や市民団体の出展に比べると、学校関係の出展はまだまだ少ない。市の環境まつりだから、市内の学校などの出展が増え、学生・生徒たちの環境の取り組みなどを来場者の市民に知ってもらうきっかけにしてほしいと神田さんは話す。
 今回ステージにも登壇した都立府中東高校生物部には、環境啓発ゾーンのブース出展で環境活動の紹介をしてもらうとともに、グリーンカーテンの苗の配布も実施した。この苗は、みどり東京・温暖化防止プロジェクトから毎年提供してもらう種を府中東高校生物部の協力によって苗に育てたものだ。種のまま配るより、苗の状態で渡せた方がアピール性が高いのと併せて、種から苗を育ててもらうことで活動の広がりが持てるのではないかと府中東高校生物部に相談したところ、快く引き受けてもらえることになった。

府中東高校生物部によるステージ発表の様子。苗育成のプロセスや環境活動についてアピールした。

府中東高校生物部によるステージ発表の様子。苗育成のプロセスや環境活動についてアピールした。

認定NPO法人府中PFSと府中東高校生物部の協力によるグリーンカーテン用の苗の配布。グリーンカーテンの育て方についてまとめた独自のチラシとともに配布した。

認定NPO法人府中PFSと府中東高校生物部の協力によるグリーンカーテン用の苗の配布。グリーンカーテンの育て方についてまとめた独自のチラシとともに配布した。

 エコレンジャーショーの実演をした東京農工大の学生サークル「ごみダイエットNOKO」からは、メンバーの1人が実行委員にも参加している。ショーでは、色鮮やかなコスチュームに身を包んで地球の平和と環境を守るヒーローに扮して、子どもたちを対象にしたクイズやアクションショーを実演。ショー以外でも、エコレンジャーの姿で子どもみこしの参加呼びかけや練り歩きの盛り上げなどにも協力してもらった。
 「エコレンジャーは人気で、結構、子どもたちも寄ってくるんですよね。子どもたちにも環境について知って、考えてもらうための一役を買っていただきました。この他、都立府中工業高校自動車整備部には、自作したエコカーを展示していただいていますし、ステージでは環境啓発標語・ポスターコンクールという、市で主催している事業の表彰式を行い、入賞の生徒さんたちにステージにあがってもらいました。今後はさらに若い人たちの力を生かした環境まつりにしていけたらと思っています」

東京農工大の学生サークルによるエコレンジャーショー。

東京農工大の学生サークルによるエコレンジャーショー。

ステージ上で行った、環境啓発標語・ポスターコンクールの表彰。

ステージ上で行った、環境啓発標語・ポスターコンクールの表彰。

 環境イベントは、単に来場者だけでその効果が測れるものではない。来場したことで、環境について知って・考えてもらえたかどうか、家に帰ったあと、普段の生活の中で環境の取り組みが進むきっかけとして実践につながったかどうかが大事になる。
 そんな効果を測るためにも、例えば持ち帰ったグリーンカーテンの苗が大きく育った様子の写真や観察日記、活動レポートを寄せてもらうなど、まつりをきっかけにはじめたことや改めて感じたことなどのフィードバックが取れるような取り組みについても考えていきたいという神田さんだ。


注釈

【1】2014年の荒天
 都内各地で予定した環境啓発イベントは、2014年の荒天で中止や規模縮小が相次いだ。その一つ、八王子市で毎年開催されている八王子環境フェスティバルも中止となったが、その顛末は、本連載の第2回で紹介している。併せてご参照いただきたい。
  • 第2回八王子市:“はちおうじの環境をみる・きく・考える”ためのきっかけの場づくりとして(八王子環境フェスティバルの開催): http://all62.jp/business/02/01.html
【2】デポジット制度
 スポーツイベントの会場や、学園祭、各地の環境イベントなどを中心に、使い捨ての紙製容器やプラスチック容器に替えてリユース食器・容器を導入し、ごみの削減をめざした取り組みがされている。このとき、回収率を高めるため、販売時等に容器代を上乗せした料金を支払い、容器の返却時に返金する仕組みを導入することも多い。この預り金をデポジットという。
 回収した食器・容器は、その場で洗浄して再利用する場合もあり、リユース食器を洗浄しているところをイベント会場で見せたり、洗浄のプロセスを来場者にも体験・協力してもらうことでリユース食器への理解と協力を呼びかけ、環境教育のツールとして位置づけたりする取り組みもされている。
 なお、リユース食器の回収には、デポジット(預かり金)の徴収・返金の他にも、回収時にノベルティグッズを配布するなどの方法を取っている事例も見られる。

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本事業は、公益財団法人 東京都区市町村振興協会からの助成で実施しております。