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2018.03.13

第45回東大和市:あるがままの里山を維持し、保全していく(東大和狭山緑地管理事業)

  「みどり東京・温暖化防止プロジェクト」の助成金を活用した都内62市区町村の環境事業の取り組み状況について順番に紹介する「環境事業紹介」のコーナー。第45回は、東大和市のシンボルとして市民のやすらぎの場、憩いの場となっている「東大和狭山緑地」の管理事業について紹介します。
 この緑地は、市北部、埼玉県との境に広がる狭山丘陵の南面に位置する雑木林。豊かな自然を次世代に引き継ぐため、地域のボランティア団体との協働で維持管理事業が実施されています。
 同緑地の概要と、管理事業の実施内容について、担当者より話を聞きました。ぜひご一読ください。

 ※本記事の内容は、2018年3月掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。あらかじめご了承ください。

東大和市のシンボル、東大和狭山緑地

 東大和市の北部、狭山丘陵南面の住宅街の間を抜けていくと、明るく開けた雑木林が広がっている。面積約15ha、東大和市のシンボルとして市民のやすらぎの場、憩いの場として親しまれるこの雑木林は、「東大和狭山緑地」として昭和60年に開園した緑地公園だ。
 西武多摩湖線「武蔵大和駅」や多摩モノレール「上北台駅」から、路線バスやコミュニティバスに乗って、最寄りのバス停(八幡神社バス停)まで10分弱、下車後、徒歩10分ほどで木漏れ日の中に降り立つ。駐車場も整備されているから車や、市内からなら自転車が便利だが、上北台駅から歩いても、20分ほどで到着する。
 東大和狭山緑地にはいくつか入り口があるが、電車とバスを乗り継いで南側から入る場合、東端に隣接して建つ東大和市郷土博物館に寄って、かつての狭山丘陵の暮らしについての予備知識を得るのも一案だ。
 ドーム状のプラネタリウムが設置された郷土博物館のメインテーマは「狭山丘陵とくらし」。館内展示だけではなく、狭山丘陵全体を活動の舞台として、郷土の歴史、民俗、雑木林との関わりなどについての展示・事業を展開している。
 博物館の入り口近くに、大きな輪切りの年輪が置かれている。「八幡神社の大杉」と書かれている。昭和60年(1985年)初頭に道路の拡幅のために伐られた当時の樹齢は約270年。歴史を感じさせる大きさだ。
 壁際には、平成18年(2006年)10月の大雨と風で倒れたヤマザクラの幹を生かしたベンチも設置されている。狭山緑地で100年以上生きてきた木をそのまま朽ちさせてしまうのはしのびないと、ボランティアメンバーが作ったものだ。
 狭山丘陵を含む周辺の雑木林で最近問題になっているのが、外来種のクロジャコウカミキリだと紹介する展示が壁に貼り出されている。桜や梅の害虫として知られ、東京都では平成27年(2015年)に初めて見つかった。桜の花見ができなくなると心配されるほど大きな被害を及ぼしているという。大きく拡大した写真や新聞の地方版の記事切り抜きとともに解説し、成虫の他、幼虫が出す木くずなどの痕跡を見つけたら教えてほしいと呼びかけている。
 ちょうどこの日、館内には地元の小学校から3年生が社会科見学に訪れていた。学習プリントを手に、展示物を見てまわりながら熱心にメモを取っている。先生に聞くと、この日の社会科見学で緑地を歩く予定はないというが、市内の小学校の多くが、五感を使った体験を通じて、自然と人間のかかわりについて学ぶ学校教育の場として東大和狭山緑地を活用している。近所にある幼稚園では、園児たちが日常的に森の中を散歩しているという。

ドーム状の屋根のプラネタリウムが特徴的な東大和市郷土博物館。

ドーム状の屋根のプラネタリウムが特徴的な東大和市郷土博物館。

この日は、地元の小学校から3年生が社会科見学に訪れ、学習プリントをもって展示物を見て回る子どもたちで賑わっていた。

この日は、地元の小学校から3年生が社会科見学に訪れ、学習プリントをもって展示物を見て回る子どもたちで賑わっていた。

八幡神社の大杉の年輪。昭和60年に道路拡張のため伐り倒された。

八幡神社の大杉の年輪。昭和60年に道路拡張のため伐り倒された。

壁際には大雨と強風で倒れたヤマザクラを加工して作ったベンチが置かれた休憩スペースが設けられている。

壁際には大雨と強風で倒れたヤマザクラを加工して作ったベンチが置かれた休憩スペースが設けられている。

昭和60年に都市計画緑地として都市計画決定し、用地の公有地化によって保全をめざす

 賑やかな子どもたちの喧騒を後に、郷土博物館を出て緑地に向かう。宅地の間の路地を抜けて、足を踏み入れた東大和狭山緑地は、平日の昼も近い中途半端な時間帯ということもあって、人一人見当たらない、静寂の中に包まれていた。適度な間隔を保つ木々の中は開放感にあふれ、葉を落とした枝の間からは暖かな陽光が射し込む。数日前に降った雪が地面を真っ白に覆い、黒褐色の木肌と枝先の上空に透けて見える青空とのコントラストが映えていた。

 東大和狭山緑地は、クヌギやコナラなどを主体とした薪炭林として使われてきた、いわゆる里山林だ。かつて、薪や炭の材料やシイタケのほだ木などに使うため15~20年周期で切られてきた木々は、切り株から伸びてくる萌芽を生長させることで、森が循環整備されてきた。ところが昭和30~40年代に入って薪炭が日々の燃料としては使われなくなったことで全国各地の里山林が荒廃していったのと同様、ここ狭山緑地でも人手が入らなくなって、暗く鬱蒼とした藪地と化していたという。
 「東大和狭山緑地は、昭和60年に都市計画緑地として都市計画決定しました。市の重点施策の一つにみどりを位置付け、その柱事業として打ち出したものです。荒れた森を整備して、園路もつくりました。当初は借地も多い中で開園しましたが、徐々に用地の買取を進めて、現在は8割ほどを公有地化しています」
 東大和市環境課緑化推進係長が緑地の保全・管理の経緯について、そう説明する。
 現在、緑地の維持管理はボランティア団体「東大和市狭山緑地 雑木林の会」と協働して実施している。郷土博物館内にあったヤマザクラのベンチも同会のボランティアが作ったものだ。緑地を歩いていると、同会が設置した看板がそこかしこにみられるのに気づく。萌芽更新を進めるエリアや竹林は柵で区域分けして、通常は立ち入れないようになっている。一方、コナラ広場という休憩スペースを設けて、同じく台風で倒れたヤマザクラの木を使ったイスとテーブルを置いて自由にくつろいでもらう。季節に応じて、木の伐倒もすれば、枝打ちや下草刈りもする。竹林の整備や遊歩道の補修などの作業もある。自然観察会や里山の作業など来園者向けに季節のイベントを実施して、緑地に親しんでもらう取り組みも雑木林の会の大事な役割だ。
 管理事務所の前には、炭焼き窯も設置され、来園者とともに炭焼きイベントを実施している。管理事務所の壁には、炭焼きイベントの予定表が貼り出され、参加をいざなっていた。
 1月末にコナラ炭材の窯詰作業から始動する炭焼きイベントは、土曜日の朝6時に火入れし、夜22時に窯を密閉する。翌日煙突を取り外したあと、1週間置いて炭が焼き上がり、窯の温度が下がったところで、完成した炭を窯から出すとともに、新たに竹材を詰め込む。翌週の朝6時に再度火入れして、同じように22時に窯を密閉する。1週間後に窯出しをして炭焼きの片づけを終えるまで、毎週炭焼き関連のイベントが開催されるわけだ。

東大和狭山緑地の看板(東口駐車場近く)

東大和狭山緑地の看板(東口駐車場近く)

緑地内に設置された案内マップ。

緑地内に設置された案内マップ。

萌芽更新について説明する看板。

萌芽更新について説明する看板。

陽光が差し込む雑木林の景色が楽しめるのも、木を伐ったり、草を刈ったり、落ち葉を掃いたりといった里山管理の作業が日々行われているからこそだ。

陽光が差し込む雑木林の景色が楽しめるのも、木を伐ったり、草を刈ったり、落ち葉を掃いたりといった里山管理の作業が日々行われているからこそだ。

ヤマユリが咲く中、雑木林の会のメンバーたちが下草刈りの作業にいそしむ。

ヤマユリが咲く中、雑木林の会のメンバーたちが下草刈りの作業にいそしむ。

大きく生長した木を伐倒。エリアを設けて萌芽更新を実施している。

大きく生長した木を伐倒。エリアを設けて萌芽更新を実施している。

伐倒した材の玉切り。

伐倒した材の玉切り。

雑木林の中の遊歩道。

雑木林の中の遊歩道。

春になると野の花が咲く斜面緑地に設置した看板。

春になると野の花が咲く斜面緑地に設置した看板。

コナラ広場と名付けられた休憩スペース。台風で倒れたヤマザクラを活用したイスとテーブルが並ぶ。テーブルの天板は、竹林から切り出してきたと説明がある。

コナラ広場と名付けられた休憩スペース。台風で倒れたヤマザクラを活用したイスとテーブルが並ぶ。テーブルの天板は、竹林から切り出してきたと説明がある。

東門近くにある管理事務所。園内マップも配布して、訪れる人たちを案内している。

東門近くにある管理事務所。園内マップも配布して、訪れる人たちを案内している。

大谷石と耐火セメントを使って、雑木林の会の会員たちが手づくりした炭焼き窯。幅120cm、奥行き180cm、高さ130cmで、コナラ材なら600kg、竹材は360kgほど詰めて炭にする。15mの煙突をつけて煙を引き出す。

大谷石と耐火セメントを使って、雑木林の会の会員たちが手づくりした炭焼き窯。幅120cm、奥行き180cm、高さ130cmで、コナラ材なら600kg、竹材は360kgほど詰めて炭にする。15mの煙突をつけて煙を引き出す。

四季折々の色彩豊かな里山景観が楽しめる狭山緑地

 明るく整備された現在の緑地では、四季折々の自然の姿が楽しめる。早春にはカタクリなど里山の草花が咲き始め、やがて若葉の淡い緑色に緑地全体が色づくと、野鳥のさえずりが盛んになる。夏は木々の葉が色濃く茂り、セミの大合唱が始まる。カブトムシやクワガタムシがコナラやクヌギの樹液に集まって夜会が開かれる。夏が終わりに近づき秋色に染まり始めると、鳴く虫の合唱が響いてくる。ドングリが落ちはじめると、木々の葉は紅葉・黄葉してきて、彩り豊かに衣替えする。冬になると、すっかり葉を落とした林の中で、野鳥の姿も見やすくなる。葉が落ちた後の模様は「葉痕」と呼ばれ、動物や人の顔にも見える不思議な形が見られる。次の春に備えてつける冬芽は色も形も多彩だ。

クサギ。日当たりがよい山野の林縁などに生えている、低木性の落葉樹。名前の通り、葉を揉むと独特の臭気がする。

クサギ。日当たりがよい山野の林縁などに生えている、低木性の落葉樹。名前の通り、葉を揉むと独特の臭気がする。

満開のヤマツツジ。

満開のヤマツツジ。

ヤマユリは、夏に花を咲かせる大型の日本特産のユリ。1年に1つずつ花を増やすといわれ、年数を重ねた株は花をたくさんつける。

ヤマユリは、夏に花を咲かせる大型の日本特産のユリ。1年に1つずつ花を増やすといわれ、年数を重ねた株は花をたくさんつける。

赤く鮮やかに熟した実がびっしりと付くウメモドキ。葉の形や枝ぶりはウメに似ているが、モチノキの仲間だ。

赤く鮮やかに熟した実がびっしりと付くウメモドキ。葉の形や枝ぶりはウメに似ているが、モチノキの仲間だ。

明るく整備された竹林。竹垣で区切ってある。

明るく整備された竹林。竹垣で区切ってある。

鮮やかに色づいたイロハモミジ。青空によく映える。

鮮やかに色づいたイロハモミジ。青空によく映える。

 そんな四季折々の植物や昆虫類、鳥類などを身近に観察するため、緑地内には、雑木林の自然を生かした木道や園路が約1500mにわたって整備され、散策できるようになっている。
 また、緑地の東側には木製遊具を並べたアスレチックコースも整備されている。まずは緑地に来て、森の中で過ごしてもらうことで、狭山緑地の自然を感じ取ってもらう。無料で開放していることもあって、週末には親子連れを中心に多くの人で賑わうという。

 東大和市では、第二次東大和市環境基本計画(平成29年度~平成38年度)でめざす“望ましい環境像”として、「人と自然が共生する豊かな環境を育み、次の世代に引き継げるまち」を掲げる。その実現に向けた5つの基本目標の第1には、「狭山丘陵をはじめ水と緑を保全・活用し、生きものと共生するまち」を定め、恵まれた豊かな自然環境を、市民の貴重な財産として保全・継承し、人と自然が共生する社会の実現をめざすとしている。

 「これまで共有面積の約8割まで公有地化が進みました。残り2割の公有地化を進めるとともに、緑地自体は、あるがままの里山を守って、保全していくことを大事にしていきます」  緑化推進係長は、緑地の今後の保全と活用について、そんなふうに話す。

アスレチックコースの木製遊具。週末になると親子連れでにぎわう。
アスレチックコースの木製遊具。週末になると親子連れでにぎわう。

アスレチックコースの木製遊具。週末になると親子連れでにぎわう。

緑地内には、総延長約1500mの木道や園路が整備され、四季折々の緑地の自然を楽しめる。

緑地内には、総延長約1500mの木道や園路が整備され、四季折々の緑地の自然を楽しめる。

オール東京62市区町村共同事業助成金によって、補修・整備された園内の木道について説明する看板が掲示されていた。

オール東京62市区町村共同事業助成金によって、補修・整備された園内の木道について説明する看板が掲示されていた。

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