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2019.05.31

第59回江戸川区:日本一のエコタウンをめざし、環境の大切さを楽しみながら学習する場を提供(環境フェア)

 「みどり東京・温暖化防止プロジェクト」の助成金を活用した都内62市区町村の環境事業の取り組み状況について順番に紹介する「環境事業紹介」のコーナー。第59回は、江戸川区で毎年開催している「環境フェア」について紹介します。
 毎年環境月間の6月に合わせて開催し、約3万人の来場がある環境フェア、平成30年度にはちょうど区切りの第30回を迎えたことから、江戸川区の自然と環境の歴史をふりかえる特別企画も実施されました。そして年度が明けた第31回は、昨年(2018年)10月に葛西海浜公園がラムサール条約湿地に登録されたことを受けて、「生物多様性を考える~ラムサール条約湿地登録を受けて~」をメインテーマに、2019年6月1日(土)の開催を予定しています。
 イベントの特徴や概要について、担当者にお聞きしましたので、ご一読ください。

 ※本記事の内容は、2019年4月取材時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。あらかじめご了承ください。

2018年10月にラムサール条約湿地として登録された、葛西海浜公園

 東京湾に面し、江戸川区臨海町にある面積約400万m2の都立公園・葛西海浜公園は、2018年10月18日に都内では初となるラムサール条約湿地に登録された【1】。同公園は、旧江戸川と荒川の水が海水に流れ込む「汽水域」を公園区域に含み、「西なぎさ」及び「東なぎさ」と呼ばれる2つの人工干潟の先には、三枚洲と呼ばれる自然干潟が広がっている。登録エリアには数万羽の渡り鳥が滞在する都内有数の野鳥観察スポットとなっているのに加えて、準絶滅危惧種のトビハゼを含む多種多様な生物が生息している。

 毎年6月の環境月間に合わせて開催され、令和元年6月1日(土)の開催で第31回を迎える江戸川区環境フェアでは、この葛西海浜公園のラムサール条約湿地登録を受けて、「生物多様性を考える~ラムサール条約湿地登録を受けて~」をメインテーマに開催することが決まっている。環境フェアのこれまでの経緯や第31回の概要について、環境部環境推進課調査係長の渡邊俊明さん、推進係の石川拓之さんと神野淳一さん、認定NPO法人えどがわエコセンター事務局次長の佐藤正史さんと主任の望月厚志さんに話を伺った。
 「毎年、メインテーマに合わせた特別展示を行っていますが、今回は、葛西海浜公園の野鳥をパネル形式で紹介するほか、江戸川区内のいきもの展示や、生物多様性について目で見て学べるコーナー等を用意しています。海の問題として注目を集めている海洋プラスチックゴミ問題についても、パネル展示として取り上げるのに加えて、2019年3月に西なぎさを舞台に東京2020オリンピック競技大会500日前イベントとして実施した『スポGOMI大会in葛西』で拾い集めたマイクロプラスチックの実物展示も予定しています。スポGOMI【2】では、拾ったごみの量を得点化して順位を競うのですが、大きなごみは管理業者が清掃していることもあってそれほど残っていなかったため、マイクロプラスチックの得点を高く設定するローカルルールで競う形式で実施しました。昨年11月に行われた登録報告イベントでは、江戸川区立新田小学校の5年生全員が寄せてくれたメッセージボードの寄贈や東京都知事が揮毫した登録記念碑の除幕式も行いました」

江戸川区では、「葛西海浜公園」のラムサール条約湿地登録を記念した特集を、平成30年11月1日号及び11月20日号の2号にわたって掲載した。 江戸川区では、「葛西海浜公園」のラムサール条約湿地登録を記念した特集を、平成30年11月1日号及び11月20日号の2号にわたって掲載した。

江戸川区では、「葛西海浜公園」のラムサール条約湿地登録を記念した特集を、平成30年11月1日号及び11月20日号の2号にわたって掲載した。

2019年3月16日に東京2020大会500日前イベントとして実施した『スポGOMI大会in葛西』(主催:東京都、東京都環境公社、協力:江戸川区)では、101名(26チーム)が熱戦を繰り広げた。

2019年3月16日に東京2020大会500日前イベントとして実施した『スポGOMI大会in葛西』(主催:東京都、東京都環境公社、協力:江戸川区)では、101名(26チーム)が熱戦を繰り広げた。

今なお受け継がれる、区内三大公害問題を契機に高まった環境意識

環境フェア2018のチラシ

環境フェア2018のチラシ

 三方を川と海に囲まれた江戸川区は、東京都の最東端に位置し、自然とふれあえる水と緑に恵まれた地域性を持つ。江戸川区公式サイトに紹介されている「データから江戸川区の魅力を再発見!これって何の数字?」によると、区内の公園の総面積は23区で最大の約765万m2を整備しており、区民1人当たりの公園面積も約10m2と、こちらも23区No.1を誇る。加えて、江戸川の流れを取り入れて整備した古川親水公園は、昭和48年に国内初の親水公園として誕生し、現在までに5つの親水公園が整備されるなど、自然と触れ合える水と緑に恵まれた地域といえる。
 一方で、陸域の7割が海抜ゼロメートル地帯と、地球温暖化による気候変動の影響で起こる水害などの影響を真っ先に受ける地域として、環境問題への危機意識は他の地域と比べても高いといえる。
 こうした環境意識の高さには、地域的な要因だけでなく、歴史的な背景もある。
 「かつて江戸川区では、昭和30年代後半からの急激な都市化の進行に伴って、さまざまな環境問題が発生してきました。昭和45年以降になると、区内三大公害問題と呼ばれる『葛西地区ごみ公害問題』『航空機騒音問題』『成田新幹線区内通過問題』が発生します。いずれの問題も、区民と行政の一体的で根強い活動が繰り広げられたことで解決に至っていますが、そのプロセスで、環境対策への意識の高まりが醸成され、快適な環境を守り育てる活動への機運が高まったのです。こうした機運の高まりを受けて、昭和46年5月に第1回『環境をよくする運動中央大会』が開催され、以来毎年開催して、行動指針の発表を行うとともに、環境をよくする運動に貢献した功労者表彰を行ってきています」
 環境推進課の神野さんが、江戸川区の環境の歴史経緯について、そう説明する。
 そうした中、環境の大切さを楽しみながら学習する場とすることを目的に、平成元年の環境をよくする運動中央大会と同時開催としてスタートしたのが、今回紹介する「環境フェア」だ。毎回、その時々に見合った内容の催しとするためにメインテーマを掲げているが、共通するのは、サブテーマにしている「めざそう!日本一のエコタウン」で、恵まれた自然環境の一方で、環境問題に対する強い危機意識も失わずにきた同区における環境の総合イベントとして、毎年約3万人が集まるなど、区内で定着してきている。
 昨年(平成30年)の環境フェアは、ちょうど節目の第30回を迎えたことを記念し、江戸川区における環境の取り組みを振り返る特別企画として、区内三大公害問題について取り上げた当時の区報の誌面や写真などを探し出して、パネル展示を展開した。
 「短い期間に立て続けに起きた区内三大公害問題は、江戸川区の環境問題の一つの山場だったといえます。そうした歴史経緯を踏まえて、今、まさにこの環境フェアが、江戸川区が取り組んでいる環境の取り組みを集約したものになっています」

江戸川区総合文化センターの入り口に掲示された「めざそう!日本一のエコタウン ~環境フェア2018」の看板

江戸川区総合文化センターの入り口に掲示された「めざそう!日本一のエコタウン ~環境フェア2018」の看板

小ホールホワイエでは、特別展のパネル展示とともに、ミニセミナーも実施。

小ホールホワイエでは、特別展のパネル展示とともに、ミニセミナーも実施。

「日本一のエコタウン」第2次エコタウンえどがわ推進計画に基づく「日本一のエコタウン」

 環境フェアのサブテーマとしても掲げられている、江戸川区がめざす「日本一のエコタウン」について、地球温暖化対策推進のための「第2次エコタウンえどがわ推進計画(地域エネルギービジョン)」では、SDGs(持続可能な開発目標)の理念を踏まえて、特に積極的に取り組むべき最大の環境問題ともいえる地球温暖化への対策を中心に捉えた「エコタウン」の構築をめざすとしている。“誰一人取り残さない”社会として、すべての関係者の「参加」、実質的な温室効果ガス排出量の「削減」、持続可能なエネルギーへの「転換」の視点を掲げている。
 参加促進の取り組みでは、区民に対する「もったいない運動」や事業者に対する「エコカンパニーえどがわ」への参加を呼びかけており、環境フェアでも毎年区民のすぐれた取り組みを「もったいない運動えどがわ」区長賞として表彰し、制度や取組アイデアのPRにつなげている。
 「削減」については、家庭やオフィスのCO2及びごみの排出削減を呼びかけ、「転換」では小中学校での教育や取組、事業者のエコカー導入や再生可能エネルギーの導入などを進めている。
 「転換」をイメージしてもらう仕掛けとして環境フェアで実施していることの一つに、屋外イベントの電力をすべて電気自動車や燃料電池自動車から給電する取り組みがある。昨年(2018年)は電気自動車から電力供給したが、今年(2019年)は9kW/hの発電能力を持つ燃料電池自動車からの電力で、屋外電気をすべて供給する計画だ。大きな変換器とともに、自動車から伸びるコードが屋外イベント全体につながる様子は、目に見えないエネルギーのことを意識してもらうきっかけとしても効果的と言える。このほか、グリーン電力証書も活用して環境配慮型イベントをPRする。

「もったいない運動えどがわ」区長賞の表彰式の様子

「もったいない運動えどがわ」区長賞の表彰式の様子

会場に掲示したグリーン電力証書

会場に掲示したグリーン電力証書

屋外会場の様子

屋外会場の様子

屋外会場の様子

 推進計画で進める区の環境施策について、環境フェアでは、実際に目の当たりにしてもらいながら、区民自らが“もったいない精神”をもって地球温暖化対策を中心とした環境行動に取り組んでもらうきっかけづくりを提供したいと渡邊係長は言う。
 「環境フェアでは、環境部環境推進課調査係でもその時々の環境施策について紹介するためのブースを出展しています。一昨年(平成29年)は水素・LEDのブースを作って、実際にLEDの体験コーナーも作って、目で体感してもらうようにしました。昨年(平成30年)は、エコタウンえどがわ推進計画の紹介をメインにした展示をしました。推進計画では、新エネルギーに着目していまして、特に策定作業を進めていた当時にはまだそれほど大きな話題にはなっていなかった水素のエネルギー利用についてPRするため、「スイソマン」というキャラクターを作って、推進計画の表紙や中身にはもちろん、環境フェアのポスター・チラシにも登場させています。こうしたかいもあって、現在、江戸川区内には5台の水素バスが路線バスとして走行していて、区役所の前にも通っていますし、順調にいけば今年度中に江戸川区内で水素ステーションができる予定です」

 推進計画をもとに進めている江戸川区の環境施策を中心に、環境フェアの場と機会を活用してPRと参加の促進を図っていこうとしている様子がよくわかるお話だった。

平成30年の環境推進課のブースでは、第2次エコタウンえどがわ推進計画のPRをした。
平成30年の環境推進課のブースでは、第2次エコタウンえどがわ推進計画のPRをした。

平成30年の環境推進課のブースでは、第2次エコタウンえどがわ推進計画のPRをした。

第2次エコタウンえどがわ推進計画の表紙。手をつないで並ぶ人たちの端に「スイソマン」が加わっている。

第2次エコタウンえどがわ推進計画の表紙。手をつないで並ぶ人たちの端に「スイソマン」が加わっている。

注釈

【1】ラムサール条約
  • 正式には「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」と称するラムサール条約は、1971年にイランの都市・ラムサールで開催された国際会議に由来して呼ばれ、その目的は、多様な生態系を持つ湿地の保全と活用にある。条約では、湿地の「保全(・再生)」と「ワイズユース(賢明な利用)」、これらを促進する「交流、学習(CEPA)」の3つを基本理念に掲げている。
    (参考)
    ・都立葛西海浜公園が東京都で初めてのラムサール条約湿地に登録されました!(東京都):
    http://www.metro.tokyo.jp/tosei/hodohappyo/press/2018/10/19/07.html
【2】スポGOMI
  • 企業や団体が取り組む従来型のごみ拾いに、「スポーツ」のエッセンスを加え、今までの社会奉仕活動を「競技」へと変換させた日本発祥の新しいスポーツ。予め定められたエリアで、制限時間内に、チームワークでごみを拾い、ごみの量と質でポイントを競い合う。
    日本スポーツGOMI拾い連盟では、スポーツの持つ特有のキーワード(同じ目標に立ち向かうチームワーク、達成感や爽快感、負けた時の悔しさなど)が、競技者自身のごみ拾いへの価値観を一新させる効果を持つとしている。
    (参考)
    ・活動紹介(第3回)「頭で考えてはじめるよりも、熱中して取り組む中で感じ・気づくことを大事にする:
    http://all62.jp/ecoreport/03/01.html

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