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第3回「頭で考えてはじめるよりも、熱中して取り組む中で感じ・気づくことを大事にする ~スポーツGOMI拾いの挑戦」(日本スポーツGOMI拾い連盟)

大会の自立と、地域のコミュニケーションの広がり

写真:チームメンバーの作戦会議の様子

作戦会議。その日発表される競技エリアをもとに、街の情報を出し合いながら、戦略を練る。

スポーツゴミ拾い大会は、地域に根ざしたスポーツ大会をめざしている。自分たちの住んでいる街をステージにしているため、改めて街を見つめ、街を知るきっかけになっている。
いろんな街でスポーツゴミ拾いを開催していると、“ゴミから見える街の特徴”のようなものが見えてくるという。
例えば、東京のある区では、タバコの吸い殻が他の大会に較べてもかなり大量に出てきていた。それを自治体の担当者との話の中でふと話題にすると、「そのタバコの吸い殻って、どこに多かったですか?」と敏感に反応してきたという。自治体ではゴミの総量は把握していても、どんなゴミがどういうふうに他の自治体と違うのかというところまではわかっていないことが多い。審判員を集めて協議した結果、飲屋街でのタクシー待ちのポイ捨てが多かった。区からタクシー協会に協力を要請して、具体的な対策につながったケースだ。

一方で、主催者側にとっても、手づくりの大会を通じて得るものは大きい。
大会ごとに地元の実行委員会が組織され、参加者集めから、ゴミの処理、会場の決定など、すべての行程の企画準備を担う。本部の連盟からはアドバイスはしても、実際に汗を流して動くのは、実行委員会の面々だ。
連盟が請負って運営すれば効率よくこなすことはできても、まったく根付かない。地元の実行委員が汗して動くことで、「大変なんです! 大変なんです!」と本当に苦労をしている様子が伺える反面、終わった後や途中の経過で、スポーツゴミ拾いを通じたさまざまな人たちとの出会いや新たな関係性が築かれていることがわかるという。お互いに刺激を与えあって、スポーツゴミ拾い以外での連携・協力がはじまることも少なくはない。「環境×スポーツ」という2軸をもつ、スポーツゴミ拾いの特徴だといえる。

元々は街をきれいにするという活動としてはじめた「スポーツゴミ拾い」。参加する人たちの意識が少しでも変わって、結果的に街がきれいになっていくことはとても大切な要素だ。それと同時に、どうユニークに、仲間と楽しくやるかと考えてきた中で、たまたま参加した人同士の交流や、チームのメンバーと審判員との交流、大会開催までのプロセスの中での町内会や企業との連携・協力だったりが、実はとても大きな成果になっている。
スポーツゴミ拾いという競技のユニークさを、関係者皆がおもしろがってくれることで、同じモチベーションでのコミュニケーションが生まれてくる。すでに何度も開催しているある地域では、大会を盛り上げるために婦人会が豚汁をつくってきてくれたり、区長も出てきて挨拶をしたり、地元商店街からは入賞者への副賞に招待券を提供してくれたりと、いろんな人が自分のできることでそれぞれ楽しんで関わっている。実行委員の人たちも大きな手応えを感じているらしく、大会が終わるたびに「次の大会では大使館にも声をかけて、外国人チームの参加をお願いしよう…」などとアイデアも湧いてくる。

ちょっとした壁やハードルを乗り越えるモチベーションを、“スポーツ”が与えてくれる

写真:優勝した子どもチーム

子どもチームが優勝することも珍しくはない。

2010年から11年にかけて、国立環境研究所との共同研究で、スポーツゴミ拾い大会の参加者を対象にした意識調査を実施しているという。スポーツゴミ拾いに参加する前と参加した直後と、参加1ヶ月後の追跡調査だ。
きっかけは、ある大会の閉会後に見られた印象的な光景だったと、馬見塚さんは目を細める。
「大会の閉会式のあと、子どもたちが街のゴミを拾いながら帰っていくのを見たんですよ。『ゴミ拾いはスポーツだ!』と叫びながら。この子たち、朝会場に来たときには、多分、ゴミを拾いながらはきていなかったはず。大会での経験が、何かしらゴミに対してユニークな向き合い方や意識付けをすることになり、その結果として、ゴミを拾いながら帰っていくあの子どもたちの姿があったんじゃないでしょうか」
そうした意識や行動を可視化できるようなデータにしていくのが目的だ。

調査の中で、子どもたちには「環境」への意識とともに、「楽しかった」という思い出が強く残っていることがわかってきている。
環境意識は、普通のゴミ拾い活動でも同じように伸びるものの、スポーツゴミ拾いの楽しさや競技性がその後の環境意識の持続などにつながる部分でより強く根付いていることが、データとして現れてきた。

集まったゴミを分析すると、大人の捨てたものが9割方以上だ。子どもは、もともと捨てるゴミも持たないし、捨ててもいない。それが成長の過程で、いつしかゴミを捨てるような大人に育っているわけだ。小学生や若年層の時代に、スポーツゴミ拾いを経験するなどして、ゴミに対するユニークな意識付けができると、ゴミを捨てない大人が増えていって、街も自然ときれいになっていく。究極的には、そうしてゴミがなくなってスポーツゴミ拾いが必要なくなっていくことが目標だ。

スポーツゴミ拾い大会は、平成23年11月末現在で、73回の実施を数える。
2008年5月に第1回を開催した後、10月にも開催する機会があった。翌2009年には5大会。メディアの取材や口コミなどで引き合いも多くなって、2010年には30大会ほどを開催。品川区の大会では商店街活性化のために開催したりと、内容もさまざまだ。
2011年も11月末時点で30数大会を開催してきた。地方の大会が多くなってきていて、北海道や山形、広島、長崎、愛知など全国に広がりをみせている。ここ数年で一気にブレークした感もある。
延べ人数では、第71回大会までの累積で9,271人と、やがて1万人に達する勢いだ。ゴミの総量は、同期間で10トンを超えている。

ゴミ拾いの活動は、環境啓発の取り組みとして、もっともやりやすい事業の一つと言える。一方で、それがゆえにどこでもやっていて、もうひとつ訴える力が弱くなってきていると言えるのかも知れない。関心のある人を集めることはできても、それを越えてより広い層に訴求できるようなものには、なかなかなっていかない。
もうちょっと、何か工夫ができないかと、多くの人たちが考えているタイミングで、本気でまわりを巻き込んで、参加者も熱中できるスポーツゴミ拾いが現れたことで、多くの共感と関心を集めたのかも知れない。

「スポーツ史上、もっとも環境にやさしいスポーツ」「環境貢献活動史上、もっともエキサイティングな活動」──そんなスポーツゴミ拾いに参加した子どもたちが大人になっていく10年先、20年先に、街が、また人々がどんなふうに変わっているか。とても興味深い。

写真:スポーツゴミ拾い大会の集合写真
写真:スポーツゴミ拾い大会の集合写真

スポーツゴミ拾い大会の集合写真

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