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2013.12.06

第43回「普段の暮らしの中からできる環境保護・国際協力をめざして ~フェアトレードを通じた国際協力・交流の取り組み(グローバル・ヴィレッジ)」

フェアトレード・ファッションの取り組み ~学生が起こすムーブメント“School of Fair Trade”キャンペーンの事例より

 グローバル・ヴィレッジは、代表のサフィア・ミニーさんが1990年に日本に移り住んできて直面した違和感から始まっている。欧米では1960年代から環境保護や国際協力に関心を持つ人たちが多く、フェアトレード製品も当たり前のように店に並んでいた。一方、当時の日本ではまだそれほど環境、特に地球環境問題への社会的関心は高くはなかった。ブラジルのリオデジャネイロで地球サミットが開催されたのは1992年。これを受けて地球環境問題への必要性や関心が高まって環境基本法が制定されたのは翌1993年のことだ。日本でも環境保護と途上国支援の活動をしたかったサフィアさんだったが、周囲を見渡しても満足のいく情報や活動の機会は得られなかった。
 そうした中、なければ集めて発信しようと、環境保護や国際協力に関する情報及び活動機会の提供を目的に始めたのが、グローバル・ヴィレッジだった。以来、20年以上にわたって地道な活動を続けている。

 グローバル・ヴィレッジのフェアトレードブランド「ピープル・ツリー」で扱う製品には、チョコレートやコーヒー豆、ドライフルーツといった食品から、雑貨や工芸品など幅広いが、なかでも力を入れているのが衣類。これは、実は日本独自の傾向らしい。
 理由について、グローバル・ヴィレッジ事務局長の川村菜海さんは、次のように話す。
 「欧米のフェアトレード団体では、主に食料品を取り扱うところが多いんです。農産物はフェアトレード基準に沿った生産にも比較的取り組みやすいのですが、加工品になると生産工程も多く、その分、煩雑で困難になります。なかでも衣類は消費者からの品質要求も強いため、高品質な製品の安定供給は管理がしづらいのです。代表のサフィアが日本に住むようになった当時、若い女性たちが欧米に比べて衣服に相当のお金を使っていることに驚きを感じたと言います。物持ちのよい欧米では、そんなふうに頻繁に買い替えたり買い増したりすることはないそうなんです。そんな日本だからこそ、フェアトレードの衣服を取り扱えば、需要が見込めると期待できたのです」

ピープル・ツリー自由が丘店に並ぶフェアトレード製品の数々。
ピープル・ツリー自由が丘店に並ぶフェアトレード製品の数々。

 フェアトレード・ファッションの普及活動の一環として、2010年3月から2012年2月まで取り組んでいたのが、“School of Fair Trade”キャンペーンだ。フェアトレード・ファッションの購買動機を高めるには、背景を知ってもらうことが大事になる。フェアトレードの認知を高めつつ、背景情報も併せて発信していくため、学生が起こすフェアトレード・ムーブメントに取り組んだ。
 きっかけは、当時18歳だったイギリスの女優、エマ・ワトソンとの特別コラボレーションで発売することになった若者向けのコレクション「People Tree, Love from Emma」だった。クリエイティブ・アドバイザーのエマ・ワトソンと、ピープル・ツリーのデザインチーム及び代表のサフィアが協力して作り上げたこのラインは、2010年春に始まり、同年秋と翌年春の3期にわたって、これまであまりなかった若者向けのフェアトレード・ファッションを提供していった。
 同時期に日本で展開した“School of Fair Trade”キャンペーンは、エマ・ワトソンと同世代の学生たちが中心になって取り組んだもの。各大学でファッションショーなどのイベントを開催したり、若い世代によるフェアトレードに向けた声を発信したりと、活発な活動が展開するとともに、各大学での活動をつないで点から線への広がりをめざした。それまでは、環境問題や国際協力などの課題(issue)に関心を持って参加する人が多かったのに対して、このキャンペーンでは、ファッション系の学生など、従来とは異なる層の参加が得られたことも成果の一つだった。
 ピープル・ツリーでは、各地で開催するファッションショーに貸し出すためこのコレクションのキットを作成。中には、数百人規模の集客があったイベントもあった。

“School of Fair Trade”キャンペーンのきっかけになった、女優のエマ・ワトソンとの特別コラボで作り上げた若者向けコレクション「People Tree, Love from Emma」のカタログの表紙。
“School of Fair Trade”キャンペーンのきっかけになった、女優のエマ・ワトソンとの特別コラボで作り上げた若者向けコレクション「People Tree, Love from Emma」のカタログの表紙。

東京・代官山で開催した2010年11月にファッションショー・イベント“Be Fair Fashion”の運営スタッフたち。
東京・代官山で開催した2010年11月にファッションショー・イベント“Be Fair Fashion”の運営スタッフたち。若いパワーで“フェアトレードの未来”を作り出していった。右側にある大きな木のイラストは、ライブペインティングで描かれたもので、来場者に葉っぱ形のカードを貼ってもらって完成した。カードには今回のイベントやフェアトレードへの思いが書かれている。(写真提供:ピープル・ツリー)


フェアトレード製品をファッション界のメインストリームへ

グローバル・ヴィレッジ代表のサフィア・ミニーさん。フェアトレード製品がファッション界でメインストリーム化していけるようにしたいと力強く話す。
グローバル・ヴィレッジ代表のサフィア・ミニーさん。フェアトレード製品がファッション界でメインストリーム化していけるようにしたいと力強く話す。

話を伺った、グローバル・ヴィレッジ事務局長の川村菜海さん。
話を伺った、グローバル・ヴィレッジ事務局長の川村菜海さん。

 エマ・ワトソンとのコラボで作り上げた特別コレクションは、2011年春のカタログを一つの区切りとして終了することになった。メインのコレクションの中で若者にも着られるような衣服等を強化することで統合することになったのだ。“School of Fair Trade”キャンペーンも、2012年2月のイベントを一つの区切りとしてプロジェクトを終了した。学生たちも代替わりしていく中で、プロジェクトとして維持していくことが難しくなったのと、何かしたいけどどうしたらよいのかわからないという学生たちにある程度の方向性を示すことができ、自分たちでできるだけのノウハウも蓄積できた。そこから先は、学生たちの自立的な活動に任せた方がよいという判断だ。

 エマ・ワトソンとのコラボで作り上げた若者向けのコレクションの手法は、今も別の形で進んでいる。
 サフィア・ミニーさんは、フェアトレード製品を特別なものではなく、普段使いするための買い物として購入できるようなものにしていきたいと力を込める。
 「フェアトレード製品というと、エスニックなイメージも強いと思います。伝統的な技術を使って作られたものに美しさはありますが、それだけでは日常的な暮らしの中で使われるものになっていきません。私たちピープル・ツリーブランドでは、著名デザイナーとコラボレーションして、ファッション業界で競争できるようなトレンドを意識した製品を開発して、パートナー団体に作ってもらうための製品企画及び品質管理ワークショップをしたり、日本に招いて日本のファッションや販売の状況を見てもらったりしています。フェアトレード製品をファッション界でメインストリーム化していくのが、私たちのめざすところです」

 今年(2013年)の5月にブラジルのリオデジャネイロで開催された世界フェアトレード機関(WFTO)の年次総会で、新たなフェアトレードの認証制度の始動が決議された。これを受け、2014年春のコレクションからWFTOによって認証された製品ラベルを表示することができるようになった。これまでも加盟団体に対する認証制度を設けて、認証された団体はWFTOの団体マークをウェブサイトやカタログなどの広報物に表示することはできたが、製品の一つ一つには表示されないため、消費者にとっては店舗に並ぶ製品のどれがフェアトレード製品なのか見分けるのが難しい状況にあった。
 この認証制度は、ピープル・ツリーをはじめとする各加盟団体が、今後もフェアトレードの取り組みを振り返り、よりよい活動にしていくための新たな出発点になると期待を寄せる川村さんたちだ。

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