トップページ > 環境レポート > 第81回「ぼうぼうに荒れた森に毎月通って、1本ずつノコギリで木を伐っていく。そんな地道な、でも本格的な山仕事を中学校の部活として取り組むことの意義(三鷹市立第二中学校「地球環境部」)」

2017.02.28

第81回「ぼうぼうに荒れた森に毎月通って、1本ずつノコギリで木を伐っていく。そんな地道な、でも本格的な山仕事を中学校の部活として取り組むことの意義(三鷹市立第二中学校「地球環境部」)」

一年間かけて穴を掘って、ビオトープ池を造成

 平日放課後の活動は学内や学校近くで行っている。取材に訪れた日と同様、理科室をベースに部活が始まる。ここでも、基本は実作業を伴う活動だ。たまたま訪れた日は『地球環境部テスト』による話し合いが中心になったが、地球環境部の活動としては珍しい部類だという。作業がメインになり、活動する上で必要な知識があれば、その都度、勉強するというスタンスだ。
 「窓の外に池が見えていますよね。地球環境部の活動で造ったビオトープの池です。池の脇の大きな木があることで、日中、池の半分は木陰になって、半分は日が当たるように造りました。明るい環境を好む生きものもいれば、暗い環境を好む生きものもいますから、同じ池でも違った環境をつくることで、いろんな生きものが暮らせるようになるわけです」
 もともとただの草地だったところに、一年間かけて穴を掘って、そこに遮水シートを敷いて、池を造成した。部員一同、泥だらけになって土木作業に勤しんだ。近くには野川公園があり、神代植物公園や井之頭恩賜公園など大きな緑地がいくつもある。これらをつなぐ緑の回廊の一つにするのが、この小さなビオトープの役割だ。
 ビオトープづくりを始めるにあたって、専門的なアドバイスをしてくれる人を紹介してもらったところ、神代植物公園植物多様性センターの職員がときどき来て、ポイントを教えてくれることになった。池の水深は、浅いところから深いところへと緩やかに変わっていく。水が多くなると、隣に作ってある田んぼに流れていく。そんなポイントごとのアイデアをもらいながら、一からつくりあげていった。
 池ができて、鳥も来ているし、トンボをはじめとする昆虫類もたくさん飛んでくるようになった。
 「なかなか水質が安定しないなど、まだまだ課題は多いんですよ。でもそんな課題をみんなで考えていくのがおもしろいかなと思っています。大人の側ではある程度ストーリーもあるんですけど、そこは結構子どもたちが自分たちでこうしたいああしたいと言ってくるので、任せるようにしています。野川公園で捕ってきたエビを入れたり、水の中に生える植物を植えたりと、自分たちで考えて試行錯誤していますね」
 放したエビは、鳥のエサになってしまったのか、いつの間にかいなくなってしまったという。とりあえず水質を測ってみようということになったが、何をどう調べたらいいのかもわからない。そんなわけで高校の生物のテキストをベースにした『地球環境部テスト(生態系編)』で基礎的な知識を勉強した。ビオトープを造るのに、水質や遷移の基礎を知っておく必要があるからだ。勉強の成果を生かして注文した水質調査のパックテストが、ちょうど届いたところだった。
 ビオトープづくりの作業について、部員たちにも話を聞いた。
 「池を造ったんですけど、自然にあるものを自分たちの手で造りあげるのがすごく楽しかったです」
 作業の楽しさを口にする人がいる一方で、失敗が印象に残っているという人もいた。
 「1学期に田んぼを作って、稲を植えたのが印象的でした。ビオトープに水生植物を植えたり、田んぼを耕したり、今まで本でしか見たことがなかったことだったので、楽しかったです。ただ、残念なことに、収穫の直前に野鳥にやられてしまって…。あっという間に全部食べ尽くされてしまいました」
 防鳥網も買ってあって、そろそろ張ろうと思った矢先の出来事だった。自然界の生存競争の激しさを実感した経験だったという。前年は、発泡スチロールの中で稲を育てた。その時は鳥もまったく来なかったから油断していたと反省する。今年はビオトープができて、普段から鳥も訪れていて、ねらわれていたのかもしれないとみている。
 「稲のこともそうですけど、1回だけでは簡単には成功できないんだなというのがよくわかりました。どうやって水質を改善していくかなど、いろんな対策を考えながら、実際に取り組んできました。今は、太陽光で発電しながら酸素を送り出す装置をつけて、水質の浄化を図っています。そんなふうに一つずつ、こうしたらどうだろうと考えながらやっているのがおもしろいですね」
 そんなふうに話す部員たちの表情からは、自分たち自身で考え、話し合いながら活動をつくりあげていく楽しさを満喫している様子がうかがえた。

一年間かけて穴を掘って造ったビオトープ池(右:ビオトープになる前、左:穴を掘ってシートを張ったところ)。
一年間かけて穴を掘って造ったビオトープ池(右:ビオトープになる前、左:穴を掘ってシートを張ったところ)。

一年間かけて穴を掘って造ったビオトープ池(右:ビオトープになる前、左:穴を掘ってシートを張ったところ)。

池ができて、鳥やトンボもたくさん来るようになった。池にやってきた、ムクドリ(左)とツバメ(右)。
池ができて、鳥やトンボもたくさん来るようになった。池にやってきた、ムクドリ(左)とツバメ(右)。

池ができて、鳥やトンボもたくさん来るようになった。池にやってきた、ムクドリ(左)とツバメ(右)。

3万個の積み木を組み上げてつくってきた、東京駅やアンコールワット

 「平日の放課後の活動は、今日みたいにミーティングをしたり、ビオトープの作業や芝生の管理をしたりしています。それと、間伐材の積み木が3万個あるので、その積み木を使ったイベントもたまにやっていて、イベント前には試作を作ったりもしています。上智大学の先生に教えてもらってアンコールワットを積み木でつくるイベントは5年連続の恒例イベントになっています。3万個の積み木で作るアンコールワットはかなり迫力ありますよ」
 積み木は、板状のもの、ブロック状のもの、台形状のものの3種類があり、板は3枚重ねるとブロックと同じ厚さになる。これらの部材を組み合わせることで、どんな形もつくりだすことができる。過去には、法隆寺を作ったり、東京駅のエキナカで東京駅舎を作ったりするイベントなどもした。
 「東京駅では、ちょうど復元工事が完了した年に、八重洲北口のエキナカで、10日間ほどかけて、通行する人といっしょに積んで東京駅舎を作るという企画を実施しました。通りがかりの子どもたちにも手伝ってもらって完成させました。現実の姿をできるだけ正確に再現するため、いろんな資料を集めてもらいましたが、裏側の写真はいくら探しても見つからなくて。裏は見せなかったんですけど、結局、高さ合わせで積み上げるだけになってしまいました」

間伐材の積み木3万個を組み合わせて作った、東京駅舎。

間伐材の積み木3万個を組み合わせて作った、東京駅舎。

上智大学アジア人材育成研究センターとのコラボで作った、アンコールワットと聖イグナリオ教会。

上智大学アジア人材育成研究センターとのコラボで作った、アンコールワットと聖イグナリオ教会。


国立天文台での竹林整備の活動。

国立天文台での竹林整備の活動。

 歩いて20分ほどのところにある国立天文台でも、竹林整備の作業を手伝っている。
 「月曜日の放課後を中心に、一応は年間スケジュールも立てていますが、雨が降ったりすると流れてしまいますから、まあ目安程度です。だいたい月1回・2回のペースで、竹を切って、ばらして並べてという作業をしています」
 切った竹は学校に運んできて、ビオトープの仕切りに使っている。冬場は日も短く、20分かけて歩いて行ってもすぐに日が落ちて暗くなってしまうため、夏場メインの作業だ。
 春先には、スズメバチの親蜂を捕るトラップを仕掛けたところ、わんさか捕れた。天文台では、一般公開の施設見学や公開観察会も実施しているから、スズメバチは悩みの種になっているようで、喜んでもらえた。
 そんな、山仕事だけにとどまらない、文化面や暮らしの面も含めた関わりができるのが中学校の部活としてのおもしろさだと宮村先生は言う。

スズメバチトラップを設置(左)と、捕獲したスズメバチ(右)。
スズメバチトラップを設置(左)と、捕獲したスズメバチ(右)。

スズメバチトラップを設置(左)と、捕獲したスズメバチ(右)。

体育館跡地にできた芝生地の管理も、地球環境部に任された活動の一つ。いわゆる校庭芝生ではないので、冬は養生シートを張って養生しているため、芝の状態はよい。学校芝生専門のNPOシニアSOHO普及サロン・三鷹の方が指導に来てくれている。

体育館跡地にできた芝生地の管理も、地球環境部に任された活動の一つ。いわゆる校庭芝生ではないので、冬は養生シートを張って養生しているため、芝の状態はよい。学校芝生専門のNPOシニアSOHO普及サロン・三鷹の方が指導に来てくれている。

地球環境部の名称のインパクトと活動の内容に惹かれて

 できて2年目の部活ということもあって、地球環境部の現在の部員は、1・2年生中心に18人が在籍している。
 「2年生が6人、1年生が10人。3年生も今は受験で参加率が低くなっていますが、2人いて、受験が終わったらまた来たいと話しています。塾や家庭の事情で山には来られない子もいますから、前任校の卒業生も入れると、山での実働は毎回20人くらいです。山仕事をするにはちょっと多いかなという感じですね。切った丸太を運んだりするのに、人が多い方が楽にはなりますが、安全面やチームとしての効率からいうと10人くらいの方がちょうどいいんです」
 日曜日の活動は強制してはいない。ただ、山仕事が活動の本筋だという話はしている。事情があって来られないのは構わないけど、でも来なかったら腕は上がらないよというわけだ。普段やっていないことをやる部活だからこそ、1回でも森に来て、1本でも木を切らないとうまくはならない。

 部員たちが、それぞれどんな動機で入部しているのか、一言ずつ話を聞いてみた。
 「地球環境部という名前のインパクトがすごかったんですね。実際に山に行って木を切るということを聞いていて、テレビでしか見たことがないことだったので俄然、興味がわいてきました」
 「私は、奈良の田舎からこっちに越して来て、もともと森が大好きだったんです。他の部活の仮入部にも行きましたが、ここでしかできそうにない課外活動が楽しそうで、入りました」
 小学生の頃から庭に花を植えていたという人もいる。
 「自然とふれあえる部活があったらいいなと思っていたんです。中学生になって、部活発表のときに『地球環境部』と言われて、何それと思って聞いていたら、森で間伐とかをして社会に貢献してという話だったので、入りたいと思いました」

 では、実際に入部して、期待通りの活動はできているのだろうか。
 「木を切っているときにノコギリが噛んじゃうとすごく重くなって大変です。でも、ようやく木が倒れたあと、葉っぱがあったところにぽっかりとあいた空が見えて、そこから光が射し込んでくるんですね。そんなときに、すごい達成感が得られます。ただ、思った通りに倒れてくれず、途中で隣の木に引っかかったりすることもあります。その時の面倒くささといったら!!」
 現地の活動を通じて徐々に積極的なかかわりができるようになったという人もいる。
 「前回森に行きまして、レバーで操作しながらワイヤーロープで引っ張って伐倒方向を決める道具をはじめて使いました。これまでは山に行っても、体力はないしノコギリを使うのも下手なので、木を切り倒すことには全く関与してこなかったんですけど、この道具はレバーを引くだけだったので、自分にもできるかなと思ってやったら、もう楽しくて。最後に木を倒すのが自分だったんですけど、すごく楽しいなと思いました。ただ、扱いに慣れてきたところで、ちょっと失敗もあって、楽しくても、また使い方がわかっても、やっぱり、この活動はまわりを見ることが一番大切で、それを重視しないとやっていけないなと思いました」

作業の合間に…。

作業の合間に…。

 森の活動に参加すれば、現地には教えてくれる人がいて、道具も一通りそろっている。
 「ノコギリやヘルメットなどの道具類も必要ですし、伐倒方向を制御するためのウィンチベルトやロープを購入すればすぐに万単位のお金がとんでいきます。そんなときに、中学生・高校生を応援してくれる助成金も出してもらっていて、助かっています。今年度は、NPO法人22世紀やま・もり再生ネット、東京都公園協会、日本環境協会藤本倫子こども環境活動助成基金の3つをいただきました。実際、彼らの負担は交通費だけで済んでいますからね」
 宮村先生がそう説明する。
 道具はほとんど現地の倉庫に保管してあるが、ヘルメットとノコギリは個人に渡していて、自分で持って来させる。自分の道具として渡すことで、刃に詰まった切りカスを取ったり、錆止めを塗ったり、刃の状態を見たりと、毎回活動の前後に手入れもするし大事にもする。道具に対する愛着を持って活動に臨むことにつながる。
 「今の子はそういう感覚がなくて、壊れたら買い替えればいいんでしょとか平気で言いますけど、そうじゃねえぞと。自分のノコギリだぞ、雑に使って切れなくなって困るのはお前だぞ、と言っています。なので、一生懸命手入れしていますよ、あいつら」

 部として虫などを飼育してみたいという人もいる。山の作業だけでなく、地元の川の外来魚問題についても関わっていきたいという希望もあった。だったら、川の活動をしている人も知っているから、流域つながりで何かできるとおもしろいかもしれないねと話が発展していく。
 ビオトープについて教えてくれている神代植物公園の研究員や、竹林整備で関わっている国立天文台、間伐材積み木では建築物の専門家から図面や写真を提供してもらっての活動もある。もちろん、メインフィールドの山に入れば、頼もしき“先輩”たちの存在が部員たちの憧憬の的になる。そんな、多くの人たちに支えられた地球環境部の活動を引き継ぐ存在として、先輩たちのような存在に成長していきたいという思いは、現部員の共通する思いかもしれない。
 「地球環境部に入って、最初は何もわからなくて──まあ今もわからないんですけど──、先輩たちにやり方を教えてもらいながら活動してきて、すごく頼りになるなと思ったんですね。もうすぐ後輩が入ってくれば、これどうするの?と聞かれることもあると思うんです。今はまだ知識が乏しくてうまく答えられそうにありませんが、テストに書いてあることくらいはマスターして、軽くやり方を教えられるくらいなりたいなと思っています」

地球環境部の部員たちと、顧問の宮村連理先生(右端)。

地球環境部の部員たちと、顧問の宮村連理先生(右端)。


関連リンク

こうした活動が評価され、環境関連のコンテストでの入選も相次いでいる。

  • 2012年には、公益財団法人コカ・コーラ教育・環境財団が実施する『第19回コカ・コーラ環境教育賞』において、全国応募総数185団体の中から選ばれた優秀賞15団体の一つとして、NPO及び前任校の高井戸中学校地球環境部の活動が選ばれている。
    http://www.cocacola-zaidan.jp/news-release/pdf/release0619-12.pdf外部リンク
  • 2016年10月には、東京都市大学環境学部主催の第4回中高生環境・社会活動グループ実践賞において、最優秀賞(環境学部長賞)及び環境コミュニケーション賞((株)環境新聞社賞)を、NPO法人緑のダム北相模地球環境部(東京都三鷹市立第二中学校所属)として受賞。
    http://www.yc.tcu.ac.jp/envstudies/award_judge.html外部リンク
  • 同年12月の第4回グッドライフアワード環境大臣賞(環境省主催)でも、優秀賞4団体の一つに、相模湖・若者の森づくり「NPO法人緑のダム北相模(神奈川県)」として受賞。
    http://www.env.go.jp/press/103269.html外部リンク

このページの先頭へ

オール東京62 事業紹介

  • エコプロダクツ2016
  • みどり東京・温暖化防止プロジェクトパンフレット
  • 62市区町村 温室効果ガス排出量
  • 自治体向けカーボン・オフセット 研究成果の紹介
  • スマートコミュニティ研究会
  • かれんとシーナの『エコ質問箱』

オール東京62市区町村
環境インフォメーション

各62市区町村のホームページから集めたエコ情報を掲載しています。

エコアカデミー一覧

第69回
海外事例
花粉媒介者の保護を目指して:カナダ、オンタリオ州ゲルフ市
第68回
宇郷 良介
[持続可能な社会への変革に対する「スマートハウス」への期待]
第67回
海外事例
シェアリングエコノミーの最先端都市:韓国、ソウル特別市
第66回
藤本 亜子
[ESDでつくる地域社会の未来]
第65回
海外事例
『メルボルンに参加しよう』-「路地をグリーンに」プロジェクト:オーストラリア、メルボルン市
第64回
岡崎 修司
[「仮想発電所」構想始動!公民連携で展開します(横浜市)]
第63回
海外事例
カーフリーハウジング(車を所有しない集合住宅)という選択:オーストリア、ウイーン市
第62回
福山 研二
[虫からながめた都会のすがた]
第61回
海外事例
全米2万3400都市のエネルギー関連データを提供:アメリカ エネルギー省
第60回
堀口 敏宏
[東京湾における環境の変化と生物相の変遷]
第59回
海外事例
エネルギー消費正味ゼロの図書館:ヴァレンヌ市、ケベック州、カナダ
第58回
一方井誠治
[地球温暖化対策計画」の閣議決定を受け、改めて私達の地球温暖化対策を考える]
第57回
海外事例
[世界初、道路で発電する「ソーラーロード」:オランダ、北ホラント州]
第56回
小堺 千紘
[ニッポンの夏支度「緑のカーテン」。その効果と育て方3つのポイント~自然の力を使って楽しみながら快適に暮らそう~]
第55回
海外事例
[「食」をテーマにした環境への取り組み:スウェーデン、マルメ市]
第54回
竹ケ原 啓介
[低炭素社会の創出等に向けた金融のありかた]
第53回
海外事例
[アート(芸術)で環境問題を普及啓発する:イギリス、ブリストル市]
第52回
幸丸 政明
[鳥類から見る都市の生物多様性]
第51回
海外事例
[野生生物に優しい「裏庭(Backyard)生物多様性プロジェクト」:オーストラリア、ボルーンダラ市]
第50回
崎田 裕子
[「みんなで創る水素社会」2020年とその先をめざして、水素エネルギーと私たちのくらし・地域]

本事業は、公益財団法人 東京都区市町村振興協会からの助成で実施しております。