【第33回】東村山市:地球温暖化対策の推進に向けて、“市民ができること”を支援(住宅用太陽光発電システム設置費補助事業)

※本記事の内容は、2017年3月掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。あらかじめご了承ください。

再生可能エネルギーの利用推進に向けて、市民ができること

 東村山市は、狭山丘陵を背に、荒川から多摩川にかけて広がる武蔵野台地のほぼ中央部に位置する、面積約17km2・人口15万人の自然豊かな都市。高田馬場駅まで西武新宿線の特急に乗れば最短20分ほどという地の利から、都心部に通う通勤者のベッドタウンとして開発が進められてきた。現在の昼夜人口比率は約0.8と日中に市外に通勤・通学で出ていく人が多いことがわかる。
 そんな東村山市で住宅用太陽光発電システム設置費補助事業が開始したのは平成18年度のこと。23年度からは、高効率給湯器や家庭用燃料電池といった省エネ機器を対象とした補助事業も開始している。
 「当市では、2002年に制定した『東村山市環境を守り育むための基本条例』に基づいて、2004年に『東村山市環境基本計画』を策定し、2011年からは第二次計画として、市が目指す環境像の実現のため、近年の国内外の社会動向や市域の状況変化を踏まえ、現在の課題や新たに必要となる施策を再検討してきました。重点目標として地球温暖化対策の推進や省エネルギー・省資源の推進を掲げています。計画では、主体別の取り組みとして、市が率先して取り組むこと、事業者ができること、市民ができることに分けて整理していますが、本補助事業は、市民の皆さんに再生可能エネルギーの利用推進をお願いしていくための施策として実施しているものです。実際に居住目的で使っている住宅に、新たに太陽光パネルを設置する市民の方を対象にして、設置工事費の一部を助成しています」
 東村山市環境・住宅課環境対策係長の今井由子さんがそう説明する。

東村山市環境基本計画の表紙
東村山市環境基本計画の施策体系図
地球温暖化対策の推進に向けて、“市民ができること”(東村山市環境基本計画より)

これまでの交付等実績の推移

 同市が毎年実施している環境基本計画推進状況点検評価によると、太陽光発電システムの設置費補助事業については平成18年度の事業開始以来27年度までの合計で435件の交付を行ってきた。一方、平成23年度から開始している住宅用省エネルギー機器設置費補助事業では、5年間の実績として373件の申請に対して219件の交付を行ってきている。
 省エネ機器の対象機器は、CO2冷媒ヒートポンプ給湯器(補助額:25,000円)、潜熱回収型給湯器(補助額:15,000円)、ガス発電給湯器(補助額:25,000円)、家庭用燃料電池(補助額:50,000円)の4機種で、導入に当たってはカッコ内の金額が定額で補助される。

住宅用太陽光発電システム設置費補助事業
年度申請件数交付件数
平成18年度先着順35件
平成19年度先着順30件
平成20年度先着順24件
平成21年度(休止)(休止)
平成22年度116件62件
平成23年度147件62件
平成24年度183件64件
平成25年度84件64件
平成26年度79件61件
平成27年度34件33件
住宅用省エネルギー機器設置費補助事業
年度申請件数交付件数
平成23年度43件41件
平成24年度62件44件
平成25年度80件41件
平成26年度96件51件
平成27年度92件42件

※平成23年度より、住宅用省エネルギー機器設置費補助事業を開始。
平成24年度に補助制度の見直しを行い、先着順から抽選に変更。

抽選による交付者の決定

 表を見ればわかるように、限られた予算の中ではあるものの、これまでコンスタントに設置費補助を交付して、再生可能エネルギー設備及び省エネルギー機器の利用促進につなげてきた。ただ、近年は特に太陽光発電システムの設置費補助の申請・交付件数がともに減少傾向にある。
 平成22年度から26年度の申請件数と交付件数の差は、予算の上限を超える申請があったため抽選によって交付先を決定したことを意味する。22年度から24年度までは2~3倍前後の申請があり、25年度及び26年度も1.3倍ほどに達した。省エネ機器も24年度から27年度にかけて2倍前後の申請があって、抽選により交付者を選定してきた。ところが、太陽光発電システムでは27年度の申請・交付件数は30数件と半減。1件申請の取り下げがあったため差が生じているが、実質的には申請者全員に交付している。28年度は、省エネ機器の設置費補助とともに上限には達さず、抽選はなかったという。
 「古い家屋に設置するのは構造的にも難しかったりしますから、建て替えやリフォームの時につける方が多いようです。そうなると、タイミングが難しいんですね。補助が抽選によって決まるため、設置へのインセンティブが低下するとの指摘もあります。申請者全員に交付できるとよいのですが。余剰電力の買い取り価格低下の影響もあるかもしれません」
 今井さんはそう話す。

設置費補助事業による太陽光発電システムの設置事例。

市の率先取り組みとして、公共施設での太陽光発電パネルの設置も進めている

 設置費補助事業は、地球温暖化対策の推進に向けて『市民ができること』を市として支援するための施策で実施している事業だが、当然、『市が率先して取り組むこと』も計画には書き込まれている。公用車として低公害車や低燃費車を導入したり、移動時には公共交通機関を活用したりすること、またCO2吸収効果およびヒートアイランドの緩和を目的として屋上・壁面緑化等を行うことなどがあげられている中で、公共施設への太陽光発電や太陽熱利用設備等の導入による自然エネルギーの活用も位置づけられている。
 「当市では、平成27年度末時点で市内8か所に合計51.3kWの太陽光発電設備を設置しています。経費がかかるため、毎年増やせているわけではありませんし、予算の範囲内での設置になっていますが、こうした率先取り組みを通じて、太陽光発電システムの普及を進めていくことで、市民の皆さんにも啓発していくことがねらいです。設置費補助の件数もここ数年減ってきてはいますが、市民の皆さんは関心を持って設置を検討してくださっていますので、当面は継続的に実施していきたいと思っています。それに向けた広報の仕方などが検討課題です」

市内公共施設に設置した太陽光発電システム(いきいきプラザ)。
市内公共施設への太陽光発電パネルの設置
いきいきプラザ10kW
秋水園ふれあいセンター10kW
美住リサイクルショップ4kW
萩山児童クラブ4.9kW
消防団第五分団詰所2.5kW
秋津児童館4.4kW
秋水園リサイクルセンター10kW
秋津東児童クラブ5.5kW

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