第1号 東大和市狭山緑地雑木林の会
里山を保全してもうすぐ30年!
継続の秘訣は「安全に、楽しく、仲良く」
東大和市狭山緑地雑木林の会
活 動 日
毎月4回ほど(土日どちらか)
活動場所
東大和市立狭山緑地(東京都東大和市奈良橋1丁目249)
活動人数
約30名
活動内容
【作業】間伐、下草刈り、外来種の駆除、竹林の整備、巣箱の調査・管理、植樹など
【イベント】市主催の体験講座への協力、炭焼きなど
設立年月日
1997年10月

緑地観察から見えてくるこれから
五月晴れのからりとした空気と暖かな日差しの中、狭山緑地に一人また一人と集まってきます。ここは、狭山緑地の管理事務所、通称「どんぐり小屋」。この日は会員25名で朝礼を済ませると、緑地の植生観察に出かけます。
雑木林の会は、狭山緑地の環境保全のために活動しているボランティア団体です。市の緑地でありながら、主体的に作業を決めて間伐や下草刈り、外来種の駆除などを行います。この日は、どこにどう手を加えるかを考えるための事前の調査というわけです。

狭山緑地の面積は東京ドーム約3.1個分の広さにあたる14.6ヘクタール。緑地の中を歩き、珍しい植物が生えている保全箇所には赤い目印を立て、刈り取らないようにマークし、他にも異変がないか、危険箇所がないかなどを確認していきます。作業範囲は狭山緑地全体の3分の1ほどですが、新緑の季節は樹勢が増し、夏の猛暑では作業中止もあり、手入れが追いつかないこともあるといいます。
歩いていると、「この花の名前は?」「あ!ここにギンランが咲いている!」などいつの間にか会話が飛び交っています。BGMにはウグイスなどの野鳥の鳴き声が響き、青々とした緑とふんわりとした風の中、ずんずんと歩を進めると自然と一体になるような心地よさです。


自分の好きを行動に
緑地を歩いていると、率先して皆さんと植物の話をしている方がいらっしゃいました。山田綾子さん(82)は自然の中で何かしたいと、会の存在を知人に教えてもらい、加入から十数年が経過。「育てている花が無事に咲いたり、保護している植物を残せたりすることが喜び」と目をほそめます。
本日参加した皆さんにやりがいや魅力をきいてみると、「健康のため」「タケノコや山野草など自然の恵みが楽しみ」「緑地を整備していると通りすがりの方に感謝される」など理由はさまざま。植物や鳥に詳しい人もいれば、チェーンソーなどの機械に強い人もいます。年代は60歳以上を中心に、小学生、大学生、会社員と幅広く、性別も個性もバラバラですが、共通するのは“自然が好きだ”という気持ちでした。
近年は、狭山緑地でナラ枯れが蔓延し、2019年から業者が入って1,000本以上のコナラが伐採されました。山田さんは「昔と風景が変わり、寂しい気持ちもありますが、林が生まれ変わっていると考えると感慨深い」と話します。木が切られるということは、それだけ地面に日光があたり、下草が生え、別の植物や生き物が動き出すことを意味します。
雑木林の会の活動人数も幸か不幸か、2020年のコロナウイルス感染症の流行をきっかけに十数名だったのが、現在では30名ほどに増えたといいます。変わっていないようで、時とともに刻一刻と自然も人も変わっていきます。

代替わりしながら約30年
今回は、会社員とボランティアの二足の草鞋で駆け抜ける嶋田一成会長と、山登りが趣味の山本尚幸副会長に、雑木林の会のことやご自身の想いを伺いました。

同期のお二人の出会いは2015年、市の公民館で開かれた「市民大学・東大和グリーンカレッジ」。一年間、市の歴史や自然を学ぶ中で、講師として訪れていた雑木林の会と関わり、活動に参加するようになりました。
会長職3年目の嶋田さんは、年4回の市役所との平日の会議には休暇をとって出席しています。「自身の仕事が町づくりでありながら、居住地では何もしてきませんでした。地元の力になりたいと考えていたとき、雑木林の会に出会い、あれよあれよと会長にまでなっていました。社会実験のようなものです」とさわやかな笑顔で応じます。
山本副会長はすでに2期4年の会長職を経て、現在は対外広報やブログ更新などを担当して会を支えています。
活動を通じて連携する、東大和市まちづくり部都市基盤課の鈴木達也係長は、雑木林の会への思いをこう話します。
「狭山緑地の雑木林を守り育てるために、萌芽更新・落葉清掃・下草刈り・樹木の剪定などを担い、市にとってなくてはならない存在です。市民とのふれあいの場を設けるため、間引きした竹やコナラを利用した炭焼き、ミニ門松・竹細工づくりといった体験講座も実施。身近な自然とふれあう楽しさ、狭山緑地の魅力の積極的な発信など、随所で力を発揮してくださっています。」
市との連携事業では、環境省のレッドリストで絶滅危惧Ⅱ類に分類されている、トウキョウサンショウウオの産卵池の整備にも取り組んでいます。産卵場所が水辺のため、新たに湿地2か所を池に整備。2025年1月、池の掘削、泥の運搬、ソダ柵づくりなどを地元小学生とともに作業しました。
雑木林の会は1997年の設立以来、20年以上にわたるボランティア活動が評価され、2019年に「緑化推進運動功労者 内閣総理大臣賞表彰」を受賞。当時の皇后陛下と直接話す機会もあり、活動に弾みをつけました。その後も2023年には、「令和4年度ふるさとづくり大賞団体表彰」や「ニッセイ生き生きシニア活動顕彰」を受賞され、地域づくりや高齢者の活動の場としても表彰されています。
目玉行事は炭焼き
年間通じて精力的に活動していますが、皆が声を揃えて心待ちにしているのが、冬の「炭焼き」。木炭と竹炭をつくる丸一日がかりの作業です。早朝から夜遅くまで交代で窯の温度を測定しながら、火の番をして語らいます。(詳しくはブログ参照)


さて、ここまで読んでいただいた読者の皆さん。メンバーは絶賛募集中です。
年代も様々で、好きなこと、できることをやれる環境です。現場の作業はちょっと・・・という方も、会報誌の発行担当、宴会を盛り上げる人、イベントのみ参加などさまざまに活動されています。
嶋田会長は「市外在住の方もいらっしゃいます。やりたいことを見つけて、一緒に森で遊びましょう」と呼びかけます。まずは、ふらっと覗いてみませんか。きっとそこには、今まで気づかなかった自然の美しさと、純粋に活動を楽しんでいる柔らかな笑顔が待っています。