第3号 多摩市立グリーンライブセンター
「みどりの拠点」から「みどりと環境の拠点」へ

リニューアルして初めての夏
うだるような灼熱の暑さから一転、薄曇りの8月の3連休。多摩センター駅から徒歩7分の場所にある「多摩市立グリーンライブセンター」は、入場無料で、花とみどりに関する相談や講座・イベントへ参加でき、温室やガーデンを散策できる施設です。この日は夏休み中の子どもたちに楽しんでもらおうと、夏祭りが行われていました。
はたらくくるまの展示、ダンボールコンポスト実践相談会、打ち水体験、土壌改良材の詰め放題など、多種多様なイベントを目当てに多くの親子が訪れました。
開始10分前から来場した親子の目的は、アクアリウムづくり体験。土と水草を入れた瓶に、サワガニやメダカ、エビを泳がせ、世界に一つのオリジナル水槽をつくります。体験コーナーには行例ができ、用意した30セットは正午を前にあっという間に終了する人気ぶりでした。


はたらく車は、ごみ収集でお馴染みのパッカー車、大きなショベルがついたバックホー、土を掘って移動させるホイールローダーの3台が並び、近くで見ると迫力満点。座席に乗ったり、車の前でかわるがわる記念撮影していました。

同センターは、施設が立地する多摩中央公園の改修工事に併せて、老朽化対応と機能改善の改修工事を実施し、2025年4月にリニューアルオープンしました。2025年度からイベントを年6回ほど計画し、これまで行ってきた園芸や緑化に関する講座や緑化相談に加えて、環境啓発にも少しずつ力を入れています。
ガーデンが一新!リニューアルオープン
イベントに訪れた地元の方は「以前は鬱蒼とした印象で入りにくいイメージでしたが、庭がとても素敵で開放的になった。毎日でも通いたいくらい変わった」と話します。
敷地面積は、5,679m2。1000m2のスーパーが5店舗分ほどのイメージの規模です。建物とガーデンに分かれた園内では約600種類の植物が育てられ、植物のほか、市内の生き物の展示も目にすることができ、楽しみながら憩い、学べる施設となっています。

新たに建物としては講座やワークショップができる「多目的室」を増設し、屋根には太陽光発電パネルが設置されました。モニターで発電状況を来館者に伝え、自然エネルギーの力や魅力を感じてもらえるようになっています。

ガーデンは以前は木が生い茂っていましたが、散策しやすいよう舗装部分が増えました。椅子やテーブルが各所にあり、手入れの行き届いた花壇の草花を眺めながらゆっくりと過ごせる空間となっています。

屋外のコミュニティガーデン、コミュニティファームと呼ばれるエリアでは、植えつけや種まきの体験ができるようになりました。ヒマワリ、コスモス、サトイモ、サツマイモがすくすくと育っています。初夏や秋には体験のお知らせがあるので、希望者は要チェックです。

小さいながら山野草エリアでは、開放的なガーデンとは対照的に土の上を歩くことができます。地下の空洞に水滴が落ちて音を奏でる、直径30~40センチほどの「水琴窟(すいきんくつ)」があり、しずくが落ちて反響するくぐもった微かな音に耳を澄ましてみるのも一興です。
リニューアル前から健在するのは、園内でひときわ特徴的なガラス張り温室「ピラミッドギャラリー」です。改修前は加温していましたが、改修に伴い環境に配慮し加温なしで育つ、観葉植物や熱帯・温帯地域の花、実のなる木を見ることができます。夜香木(ヤコウボク)や夜来香(イエライシャン)、ホテイカズラ、コウモリラン(ビカクシダ)など、聞きなじみのない南国生まれの植物に出会えます。散策路があり、植物館というよりガーデンルームといった雰囲気です。

ここからは多摩市立グリーンライブセンターの運営についてご紹介します。

若い力と専門集団が加わって
同センターは1990年4月に開園し、2011年からは多摩市、多摩グリーンボランティア連絡会、恵泉女学園大学の3者で企画運営してきました。四季折々の草花を楽しんだり、植物に関する相談ができる施設として歩んできましたが、2025年4月からは環境啓発の機能が加わり「みどりと環境の拠点」として再構築され、運営には、恵泉女学園大学に代わり、「MichiLab・多摩市緑進会共同企業体」が加わりました。
合同会社MichiLabは、2017年に多摩市事業でスタートした「多摩市若者会議」の参加者有志によって2020年に設立された法人であり、地域での世代を問わない場づくりを得意としている組織です。
市内の造園業者による一般社団法人多摩市緑進会は、ガーデンや温室の管理、市民向けの緑化講座などの企画運営を担います。
それぞれが得意分野を生かし、講座やワークショップを運営することで、多摩市は施設管理に注力できる体制となっています。定期的に3者で集まり、イベント・運営の会議が行われています。
一方で、常駐の専門の相談員が、植物の育て方や病害虫の困りごとなど園芸全般の質問に答えてくれる「花とみどりの相談」は、人気コーナーとして継続しています。緑あふれ、ファミリー層が多く居住する土地柄、ガーデニングなどの需要も高く、年間1300件ほどの相談が寄せられています(2023年度)。専門の相談員は、恵泉女学園大学の卒業生とあって、地域のことにも詳しく、親身に応えてくれます。
ボランティアの力、ボランティアをライフワークに
14年前に発足した多摩市グリーンボランティア連絡会は、多摩市立グリーンライブセンターの持続的な運営管理を目的とした市民ボランティアグループです。多摩市と協働し緑と水の保全等に関わる14の市民ボランティア団体により構成され、同センターの市民利用の増進に寄与することを目的として、運営・有効利用・市民のグリーンボランティア活動の促進も目指しています。
ボランティア人材を育成する「多摩市グリーンボランティア講座」を企画し、一年または半年にわたって、雑木林の育成管理、竹林整備などの実習を主体とした講座を実施しています。受講者は修了後、地域の自然保全に参加する方も多く、企画を担当する団体である「多摩グリーンボランティア森木会」には250名以上が所属し、自然保全に関わるボランティアを始める入り口として大きな役割を果たしています。
その他、同連絡会では、市民企画によるさまざまな講座、イベント、自然観察会を企画運営しています。
同連絡会の松澤朋子事務局長は、43歳のときに初級講座を受けてボランティアを始めた一人です。友人の誘いで何気なく受講した講座から10年以上活動を続けている理由を松澤さんはこう語ります。
「雑木林には里山の四季の移ろいがあり、同じ場所でも毎年景色が違います。初めは手道具(カマ)を使った下草刈りを行っていましたが、次第に動力機械(刈払機・チェンソー)が使えるようになり、自然と活動の範囲や知識が増えていきました。様々な年代の仲間との出会いもあり、続いているのは学びと変化があるからだと思います。」
多摩市環境部公園緑地課の今野敏行さんに同センターの今後の方針を伺いました。
「今までは園芸や緑化に関する講座や園芸相談を行ってきましたが、これからは環境に関することを学べる講座なども実施します。新たな環境啓発の拠点として充実させていきたい」と話します。
同センターとともに活動を続けてきた松澤さんは「ここは市民と市民ボランティアが共に影響し合い学びあう施設。これからもそのような場所であってほしいし、よい循環が続いていくことを願い、活動に邁進していきます」と曇りのない笑みを浮かべました。
開設年月日
1990年4月(リニューアル:2025年4月)
住所
東京都多摩市落合2-35 多摩中央公園内
開館時間
9:30~17:00
休館日
月曜日(祝日の場合は次の平日)、年末年始(12月29日〜1月3日)
入館料
無料
花と緑の相談
水~土曜日の10:00~12:00、13:00~15:00
運営
多摩市、多摩市グリーンボランティア連絡会、MichiLab・多摩市緑進会共同企業体