第16号 都市部でも身近な問題に?クマ出没の背景とその対策
杉並区立環境活動推進センター(杉並区)

「すぎなみエコ路地フェスタ2026」でクマのトークショー
37日連続の雨模様からようやく晴れの日となった10月3日(土)、京王井の頭線の高井戸駅から徒歩2分、杉並区立環境活動推進センターで、「すぎなみエコ路地フェスタ2026」が行われました。
同フェスタは、区内で活躍している環境団体のパネル展示や、ワークショップなどを行う環境イベントで、今回で10回目を迎えました。杉並区が主催し、環境団体で構成するすぎなみエコ路地フェスタ実行委員会が企画運営を担い、環境活動推進センターを運営するNPO法人すぎなみ環境ネットワークが協力しています。
目玉企画は「山でなくてもクマに会う!?クマ出没と私たちにできること」と題したトークショーでした。クマが出没していない杉並区という土地柄にもかかわらず、定員36名を上回る応募があり、関心の高さがうかがえました。近年のクマの報道を見て危機感が増しているようで、趣味が登山の方、祖父母の家が秋田県の方など、クマとの接触の可能性を感じている区民が多く参加していました。
講師は、国立大学法人東京農工大学野生動物管理教育研究センター特任助教の稲垣亜希乃さんが務めました。稲垣さんは狩猟免許を持ち、ハンターとして活動しながら、移住した栃木県日光市を拠点に野生生物に関する研究をされています。
今回はクマの生態や出没が増えている理由、人身事故につなげない対策などをわかりやすく説明してくださいました。

クマの生態と出没が増えている背景
報道などでクマの出没や人身事故を目にすることが増えていますが、東京都内では西側の八王子市付近まで姿が確認されています。
まず参加者の興味を引きつけたのが、ツキノワグマの毛皮や頭蓋骨などです。本物の毛皮からは獣臭が漂い、何やら場を支配する力強さを感じます。




クマは基本的に人間を避ける生きものですが、人里で出没するのは、里山等の環境が変化しているからです。かつて本州のツキノワグマは、地域によって生息数の減少や分布域の縮小がみられ、保護政策がとられてきました。近年は個体数が回復するにつれて、2006年頃からドングリなどのエサが不作の年に人里に出没するようになりました。
不作が原因とはいえ、里山や田畑が放置されたことで人とクマの緩衝地帯がなくなり、市街地に出てきやすくなっています。狩猟人口の減少もあり、少しずつ人は怖くないという警戒心の低下を招いています。
クマは非常に嗅覚が優れ、3km先の食べ物のにおいを嗅ぎつけるとも言われています。雑食なので、春は渋みの少ない山菜、夏はアリやハチ、秋はヤマブドウ、ドングリなど、多様なものを食べます。しかし、人とクマの距離が近くなった結果、山の中にエサがあっても人為的な食べ物を覚えてしまうと、人里に繰り返し出没するようになることがあります。
ツキノワグマは九州では絶滅していますが、森での役割があります。クマは植物を食べて種子を運び、生きものの死体を食べたり、枝を折ったりして自然に影響を与えています。人間がむやみに個体数を減らしては、自然のバランスが崩れてしまう可能性があるのです。
クマとどう付き合っていくか、どの程度の距離を保てるのか、私たち人間が問われています。稲垣先生は「知ること・対策することで気持ちが変わるかもしれません」と共存の方向性を示唆してくれました。
クマを知って近づかない・近づかせない
これまでは山で出会い頭にクマと遭遇することが主な危険でしたが、今、警戒心が低下して行動が大胆になっているクマが増えてきています。クマの人身事故を防ぐための対策がいくつかあります。
| 対策 | 例 |
| クマの居場所を知って避ける | 山菜やキノコのある場所に1人で行かない。 |
| 山の中では人がいることを知らせる | ホイッスル、鈴を身に着ける。手をたたく。 |
| クマを誘引しない | 農作物・果樹を放置しない。食べ物を放置しない。 |
| クマが潜める場所をなくす | 草刈り、倉庫や家屋の戸締りを徹底する。 |
クマ被害は駆除で解決するものではないので、クマを強くひきつける魅力的なものを見せないようにすることが重要です。飲み終わったジュースの空き瓶・空き缶を放置しない、スライド式のドアや冷蔵庫は簡単に開けることができてしまうため、しっかり戸締りするなど、クマが人に近づく理由を作らないようにします。
万が一遭遇してしまったときは、静かに落ち着きゆっくり離れるようにします。稲垣先生は、絶対に「叫ぶ、走る、近寄る」はしないことが重要だと呼びかけました。
最後の質疑応答では多くの質問が寄せられました。
Q. クマの数はどうやって把握しているのでしょうか。
稲垣先生:概ね都道府県単位で個体数を推計しています。調査方法は、カメラに映ったクマの個体識別や、ヘア・トラップで採取した毛のDNAによる個体識別、捕獲数など、さまざまです。
このほかにも質問があり、終了後も熱心に稲垣先生に個別に話を聞く参加者もいました。
参加者は「わかりやすくて面白かった」「人もクマも尊重している話だった」「今日知った対策を今後に活かせそう」と大満足の様子でした。
ここからは、杉並区立環境活動推進センターと運営するすぎなみ環境ネットワークに迫るよ!

活動の柱は、リユース・自然保全・持続可能な暮らし方
杉並区立環境活動推進センターは、2014(平成26)年に誕生しました。
同センターの運営を受託するNPO法人すぎなみ環境ネットワークは、2003(平成15)年、市民が行政や事業者と協働して、生活環境の向上と地球環境の保全に寄与することを目的に設立された組織です。前身の杉並リサイクル協会の時代から数えて、足かけ32年以上、市民とともに持続可能な社会の発展に寄り添ってきました。
同センターは1・2階がリユース品を展示販売する「リサイクルひろば高井戸」、3階が講座室と資料・展示スペース、4階が環境団体活動スペースと事務室です。
1階では食器・生活雑貨などを販売し、食器の年間取扱点数は5万9000件を超えています。ブランド品などの掘り出し物もあり、低価格で価値ある品が見つかると人気です。2階の衣類・雑貨には、子ども服・スーツ、着物、おもちゃなどもあり、品ぞろえが豊富でした。2階フロアに限っては全てボランティアスタッフのみで運営しているといい、その善意と使命感にゆるぎないものを感じます。


これら常設の展示販売や定期開催のフリーマーケットなどのリユース事業のほかにも以下の事業を展開しています。
・森林保全活動や自然観察会といったみどりや生きものに関する事業
・講座や講演会を通して環境を意識した暮らしを学ぶ事業
・広報事業
職員11名が4つの委員会を運営・サポートし、約170名いる会員の中から得意分野を生かした講師やコーディネーターが現場で活躍しています。また、講師を育成するための講座も年4~5回開催しています。会員の多くは60代以上で、社会貢献への思いを持って活動してくれています。
すぎなみ環境ネットワークの髙沢正則事務局長は「若い方の参加も歓迎しています。講座や講演会を年130回程度開催していますが、今後はさらに小中学生とその保護者を対象にした企画を増やし、ゆくゆくは会員として活躍していただければと思っています」と強調します。
まずは興味のある講座やバス見学会に参加してみてはいかがでしょうか。今年は新たに30代の方が広報委員会に加わり、活躍に期待を寄せているといいます。すぎなみ環境ネットワークのHPには豊富なイベント情報が掲載されているので、ぜひご覧ください。

杉並区立環境活動推進センター
住 所
杉並区高井戸東3丁目7番4号
利用時間
午前9時から午後5時
※リサイクルひろば高井戸2階(エコマーケット)は、午前10時から午後3時まで
休館日
毎週水曜日・年末年始(12月29日から1月3日)
開設
2014(平成26)年
登録団体
20団体
アクセス
京王井の頭線「高井戸駅」徒歩2分
関東バス(荻窪・芦花公園駅間、荻54)「高井戸駅」下車徒歩2分
関東バス(荻窪・北野間、荻58)「高井戸駅」下車徒歩2分
NPO法人すぎなみ環境ネットワーク(杉並区立環境活動推進センター運営者)
設 立
2003(平成15)年
会員数
約170名(2026年度)

