【第59回】江戸川区:日本一のエコタウンをめざし、環境の大切さを楽しみながら学習する場を提供(環境フェア)

※本記事の内容は、2019年4月掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。あらかじめご了承ください。

2018年10月にラムサール条約湿地として登録された、葛西海浜公園

江戸川区では、「葛西海浜公園」のラムサール条約湿地登録を記念した特集を、平成30年11月1日号及び11月20日号の2号にわたって掲載した。

2019年3月16日に東京2020大会500日前イベントとして実施した『スポGOMI大会in葛西』(主催:東京都、東京都環境公社、協力:江戸川区)では、101名(26チーム)が熱戦を繰り広げた。

今なお受け継がれる、区内三大公害問題を契機に高まった環境意識

環境フェア2018のチラシ

 「かつて江戸川区では、昭和30年代後半からの急激な都市化の進行に伴って、さまざまな環境問題が発生してきました。昭和45年以降になると、区内三大公害問題と呼ばれる『葛西地区ごみ公害問題』『航空機騒音問題』『成田新幹線区内通過問題』が発生します。いずれの問題も、区民と行政の一体的で根強い活動が繰り広げられたことで解決に至っていますが、そのプロセスで、環境対策への意識の高まりが醸成され、快適な環境を守り育てる活動への機運が高まったのです。こうした機運の高まりを受けて、昭和46年5月に第1回『環境をよくする運動中央大会』が開催され、以来毎年開催して、行動指針の発表を行うとともに、環境をよくする運動に貢献した功労者表彰を行ってきています」
 環境推進課の神野さんが、江戸川区の環境の歴史経緯について、そう説明する。

江戸川区総合文化センターの入り口に掲示された「めざそう!日本一のエコタウン ~環境フェア2018」の看板

 そうした中、環境の大切さを楽しみながら学習する場とすることを目的に、平成元年の環境をよくする運動中央大会と同時開催としてスタートしたのが、今回紹介する「環境フェア」だ。毎回、その時々に見合った内容の催しとするためにメインテーマを掲げているが、共通するのは、サブテーマにしている「めざそう!日本一のエコタウン」で、恵まれた自然環境の一方で、環境問題に対する強い危機意識も失わずにきた同区における環境の総合イベントとして、毎年約3万人が集まるなど、区内で定着してきている。
 昨年(平成30年)の環境フェアは、ちょうど節目の第30回を迎えたことを記念し、江戸川区における環境の取り組みを振り返る特別企画として、区内三大公害問題について取り上げた当時の区報の誌面や写真などを探し出して、パネル展示を展開した。
 「短い期間に立て続けに起きた区内三大公害問題は、江戸川区の環境問題の一つの山場だったといえます。そうした歴史経緯を踏まえて、今、まさにこの環境フェアが、江戸川区が取り組んでいる環境の取り組みを集約したものになっています」

小ホールホワイエでは、特別展のパネル展示とともに、ミニセミナーも実施。

「日本一のエコタウン」第2次エコタウンえどがわ推進計画に基づく「日本一のエコタウン」

 環境フェアのサブテーマとしても掲げられている、江戸川区がめざす「日本一のエコタウン」について、地球温暖化対策推進のための「第2次エコタウンえどがわ推進計画(地域エネルギービジョン)」では、SDGs(持続可能な開発目標)の理念を踏まえて、特に積極的に取り組むべき最大の環境問題ともいえる地球温暖化への対策を中心に捉えた「エコタウン」の構築をめざすとしている。“誰一人取り残さない”社会として、すべての関係者の「参加」、実質的な温室効果ガス排出量の「削減」、持続可能なエネルギーへの「転換」の視点を掲げている。
 参加促進の取り組みでは、区民に対する「もったいない運動」や事業者に対する「エコカンパニーえどがわ」への参加を呼びかけており、環境フェアでも毎年区民のすぐれた取り組みを「もったいない運動えどがわ」区長賞として表彰し、制度や取組アイデアのPRにつなげている。
 「削減」については、家庭やオフィスのCO2及びごみの排出削減を呼びかけ、「転換」では小中学校での教育や取組、事業者のエコカー導入や再生可能エネルギーの導入などを進めている。
 「転換」をイメージしてもらう仕掛けとして環境フェアで実施していることの一つに、屋外イベントの電力をすべて電気自動車や燃料電池自動車から給電する取り組みがある。昨年(2018年)は電気自動車から電力供給したが、今年(2019年)は9kW/hの発電能力を持つ燃料電池自動車からの電力で、屋外電気をすべて供給する計画だ。大きな変換器とともに、自動車から伸びるコードが屋外イベント全体につながる様子は、目に見えないエネルギーのことを意識してもらうきっかけとしても効果的と言える。このほか、グリーン電力証書も活用して環境配慮型イベントをPRする。

「もったいない運動えどがわ」区長賞の表彰式の様子
会場に掲示したグリーン電力証書
屋外会場の様子
会場に掲示したグリーン電力証書

 推進計画で進める区の環境施策について、環境フェアでは、実際に目の当たりにしてもらいながら、区民自らが“もったいない精神”をもって地球温暖化対策を中心とした環境行動に取り組んでもらうきっかけづくりを提供したいと渡邊係長は言う。
 「環境フェアでは、環境部環境推進課調査係でもその時々の環境施策について紹介するためのブースを出展しています。一昨年(平成29年)は水素・LEDのブースを作って、実際にLEDの体験コーナーも作って、目で体感してもらうようにしました。昨年(平成30年)は、エコタウンえどがわ推進計画の紹介をメインにした展示をしました。推進計画では、新エネルギーに着目していまして、特に策定作業を進めていた当時にはまだそれほど大きな話題にはなっていなかった水素のエネルギー利用についてPRするため、「スイソマン」というキャラクターを作って、推進計画の表紙や中身にはもちろん、環境フェアのポスター・チラシにも登場させています。こうしたかいもあって、現在、江戸川区内には5台の水素バスが路線バスとして走行していて、区役所の前にも通っていますし、順調にいけば今年度中に江戸川区内で水素ステーションができる予定です」

 推進計画をもとに進めている江戸川区の環境施策を中心に、環境フェアの場と機会を活用してPRと参加の促進を図っていこうとしている様子がよくわかるお話だった。

平成30年の環境推進課のブースでは、第2次エコタウンえどがわ推進計画のPRをした。

第2次エコタウンえどがわ推進計画の表紙。手をつないで並ぶ人たちの端に「スイソマン」が加わっている。

注釈

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