【第11回】東京における夏季の高温化とその対策

一ノ瀬 俊明(いちのせ としあき)

1.都市高温化の人間生活への影響

2.都市における高温化対策

3.ヒートアイランドへの適応

 古来より日本人は暑さから身を守るため、おのずと適応策を実践してきました。家屋の西側に落葉樹を植えることや夕方の打ち水などです。西側の落葉樹は夏には夕刻の西日をさえぎります。図4は埼玉県熊谷市石原小学校のゴーヤによる壁面緑化です。壁面緑化を施した部屋は1年中冷房が必要ないとのことです。夕方の打ち水もまた然りです。日中は日差しが強いので打ち水をしてもすぐに干上がってしまいます。そこで日中は暑さに耐え、しのぐかわりに、夕方以降を快適に過ごすためにおのずと開発された適応策といえます。そのほか、熱中症の予防対策のうち、ヒートアイランドへの適応にもとづくものとして、以下のような内容があげられます。①着衣による調節、②屋外での作業を控える、③運動時間(作業時間)をずらしたり短くする、④水分をこまめに取れる環境を用意する、⑤睡眠を含めた体調管理、⑥熱中症そのものに対する啓発。着衣による調節については、それを実行することによる暖房費・冷房費の節減、ひいては排熱量の減少にもつながる点で意義があります。また、上記の予防をより推進していくために必要なのが、現実の都市環境に即した環境下での熱中症予報の向上です。

4.環境共生型のまちづくりに向けて

 顕在化するヒートアイランドの問題への対応として環境省は、予防的措置としての環境共生型のまちづくりや新しいライフスタイルなどを模索しています。都市住民側に熱環境保全の重要性、メリットを訴えること、さらには都市計画やまちづくりへの住民参加も必要になってきます。たとえば、①街路樹の下で人が休めるような空間やクールスポットの設置(トイレ、あずま屋など)、②子供が川辺で水遊びができるような空間、③風通しのよい空間の確保や室内気候環境の改善、④人体にやさしい舗装素材(保水性素材など)、といった取り組みが必要と思われます。
 つまり、国や地方自治体が積極的に大気・熱環境に配慮した環境政策とまちづくりの計画を進めていくために望まれる方向性とは、都市のアメニティー(快適性)と暑熱緩和を同時に目指すものであるべきなのです。