【第31回】「かいぼり」 で守る、池の生態系

佐藤 方博(さとう まさひろ)

写真1 井の頭池 ※写真はすべて生態工房撮影

湧水が育んだ井の頭池の自然

 7か所の湧水口があったことから「七井(なない)の池」 と呼ばれていた井の頭池。かつては一日1万トンの水が湧き、明治時代までは東京(江戸)の水道水になっていました。この豊富な湧水が、ムサシトミヨやミヤコタナゴといった関東平野の固有種を育んでいました。水生植物も多く、地名を冠したイノカシラフラスコモという藻もみられました。しかし戦後、周辺地域で地下水が大量に汲み上げられるようになり、地下水位が急激に低下します。湧水は枯れ、1963年には池が干上がってしまいました。湧水に依存していた生きものたちは、この頃に姿を消したようです。その後の井の頭池では、毎日4,000トンの井戸水を汲み上げて池を維持しています。かつては池水が入れ替わる日数は6日ほどでしたが、今では16日ほどを要しています。水が滞留している間に植物プランクトンが増殖するので、池水が緑褐色に濁っています。井の頭池に棲む生きものは、低い透明度・酸素不足・夏期の高水温、さらには水生植物のない単純な生態系の構造 、という環境に耐えられる種類が生き残っています。

写真3 井の頭公園の景観1

クチボソが絶滅する!?

写真5 都会にも生息しているモツゴ

かいぼりの効果とは?

 井の頭池のかいぼりには、水質改善と在来種回復という2つの目的がありました。

 かいぼりをすると池水がきれいになることが知られています。その仕組みは、水槽の水を入れ替えるのとは少々違います。ポイントは池底の干し上げです。池の底泥を空気にさらして乾かすと、泥中にあるチッ素やリンが、水中に溶け出しにくい状態になります。その結果、池に水を入れた後は、水中の栄養分が少ないので植物プランクトンが増殖しにくく、水がきれいな状態が続きます。かいぼりは底質を改善して水質をよくするという、自然の理に適った伝統技術なのです。

 井の頭池でわずかに生き残っている在来種が減少した要因は、オオクチバスなどによる捕食と、数で圧倒的多数を占めるブルーギルとの競合です。これらの外来魚を排除すれば、在来種はおのずと回復してくると考えられます。水中から逃げられない外来魚を捕るのに、かいぼりはとても効果的な方法です。

水の中は外来魚だらけ

写真7 オオクチバスは在来魚に大きな影響をおよぼす
写真8 圧倒的に数が多かったブルーギル
写真9 外来魚のハクレンを捕獲

ボランティアの活躍

写真10 魚を捕るボランティア
写真11 来園者にかいぼりについて伝えるボランティア
写真12 作業を終えたボランティアたちレンを捕獲

脚注

Info

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