【第45回】住民の取組を資金面から応援する、「世界で最もグリーンな都市基金」:カナダ、バンクーバー市
太平洋に面したブリティッシュコロンビア州の最大都市、バンクーバーは、前面には景色の良い港を、背には雄大な山々をいだく美しい都市です。これまでもフォーブス誌やエコノミスト誌の「世界で最も住みやすい都市」調査の上位に入っていましたが、今度は「世界で最もグリーンな都市」を目指して、「グリーネストシティ2020行動計画」(Greenest City 2020 Action Plan)を2009年に採択しました。その計画では、2020年までに取り組む目標分野として、以下の10項目が掲げられています。
- Climate Leadership: 気候変動への適応及び再生可能エネルギー戦略
- Green Buildings: 建物のエネルギー消費の低減
- Green Transportation: 公共交通機関の活性化
- Zero Waste: 堆肥化、再利用、リサイクルの促進
- Access to Nature: 生息地及び自然環境確保のための都市林の拡大
- Lighter Footprint: 環境に優しい食べ物や購買行動の促進
- Clean Air: 電気自動車
- Clean Water: 飲み水の保全
- Local Food: 地産地消の拡大
- Green Economy: 社会的企業やグリーンビジネスの拡大
「世界で最もグリーンな都市基金」(Greenest City Fund)の創設
この夢を叶えるためには、あらゆる世代の住民の強い意志と関与が必要だと考えた同市は、バンクーバー財団※1と共に、上記の目標分野における取組を資金面から応援する、「世界で最もグリーンな都市基金」を設置しました。これは、2012-2015年度の4年間で総額200万カナダドル(1カナダドル=99円程度)を、以下の3種類のプログラムに拠出するものです。
出典:http://neighbourhoodsmallgrants.ca/greenest-city-neighbourhood-small-grants
(1)世界で最もグリーンな「ネイバーフッド(近所)」のための少額助成金 (Greenest City Neighbourhood Small Grants)
対象:
自分たちの「ネイバーフッド」をグリーンにするために、住民個々人が応募するプロジェクト。
地区別に申し込み、応募した地区内で実施する。上限:年間7万カナダドル。
(2)世界で最もグリーンなコミュニティのための助成金(Greenest City Community Grants)
対象:
コミュニティをグリーンにするための、非営利組織によるプロジェクト。上限:年間30万カナダドル。
(3)グリーンを生み出すための助成金(Generation Green Grants)
対象:
市内の若者・子どもたちの発案した若者や子どもたちのためのプロジェクト。団体や組織で応募。上限:年間10万カナダドル。
では、以下、それぞれのプログラムごとにどのようなプロジェクトが実施されているのかを紹介します。
世界で最もグリーンな「ネイバーフッド(近所)」のための少額助成金(Greenest City Neighbourhood Small Grants)
自分の住むネイバーフッドのために、個人が応募できるプログラムです。例えば、「鶏小屋見学」というプロジェクトがあります。自宅で鶏を飼っている人が、地域の人々とともに鶏を飼うことの楽しみや、卵料理をシェアしようと、庭を開放したものです。


その他のプロジェクト例:
- 食べ物でつながろう2014(The Food Connection 2014):地域の人が集まって、地域の食材を使った料理を楽しもうというプロジェクト。自称「食べること大好き人間」の集まりで、地産地消ワークショップなども開催。
- 幸せなハチ(Happy Bees):養蜂家が応募したプロジェクト。近所のコミュニティガーデンのメンバーにも協力してもらい、蜂蜜のテイスティング、養蜂見学などのイベントを実施。子どもたちからも地元の蜂蜜はいい匂いがすると好評。また、蜂を呼び寄せるための果樹を植えるなど、活動の広がりを見せている。
- 小さな無料図書館(Little Free Library):自宅前に小さな本棚を設置し、誰でも、本を無料で持ち帰ることのできる試み。本は返却しても、または自分の本を寄贈してもいいが、必ずそうしなければいけないということでもない、というルール。地域の人の集まる場所となっている。
世界で最もグリーンなコミュニティのための助成金(Greenest City Community Grants)
このプログラムに応募できるのは、非営利の団体や組織。バンクーバー以外の地域の団体も応募することができますが、あくまでも、市内で実施することが条件となっています。例えば、「バンク―バーの「鳥」戦略」(Vancouver’s Bird Strategy)は、市内のどの地域や公園にも在来の鳥が生息できる環境を保全することを目的にしたプロジェクトです。(写真は環境整備前後のバニエル公園内の池)
出典:http://vancouver.ca/files/cov/vancouver-bird-strategy.pdf

その他のプロジェクト例:
- 食べ物でつながろう2014(The Food Connection 2014):地域の人が集まって、地域の食材を使った料理を楽しもうというプロジェクト。自称「食べること大好き人間」の集まりで、地産地消ワークショップなども開催。
- 幸せなハチ(Happy Bees):養蜂家が応募したプロジェクト。近所のコミュニティガーデンのメンバーにも協力してもらい、蜂蜜のテイスティング、養蜂見学などのイベントを実施。子どもたちからも地元の蜂蜜はいい匂いがすると好評。また、蜂を呼び寄せるための果樹を植えるなど、活動の広がりを見せている。
- 小さな無料図書館(Little Free Library):自宅前に小さな本棚を設置し、誰でも、本を無料で持ち帰ることのできる試み。本は返却しても、または自分の本を寄贈してもいいが、必ずそうしなければいけないということでもない、というルール。地域の人の集まる場所となっている。
グリーンを生み出すための助成金(Generation Green Grants)
このプログラムの特徴は、なんといっても、若者や子供たち発案のプロジェクトを実現するプログラムであるという点です。例えば、ロードキッチナー(Lord Kitchener)小学校で実施された「屋外教室」プロジェクト。これは学校の敷地内に、植物や食べ物について学ぶためのガーデンを、生徒や教師、保護者で作ってしまおうというものでした。子どもたちはガーデン建設から始め、その後植物を植え、育てるまでの全プロセスを学びます。「教室内ではほとんど話さない生徒が生き生きと関わっているのを見て、感動します。また子どもたちは植物とふれあう作業を通じて、優しくなり、いろんなことに気が付くことも増えています。」(一年生担任マルグエリタ・リーヘイ先生の談話)


その他のプロジェクト例:
- オーガニックガーデン(Windermere Organic Garden):ウインドメア中学校の生徒によるオーガニック野菜畑の管理。野菜作りを学ぶだけではなく、それによって人的関係を築き、地域の人々と触れ合い、さらに、育てた野菜を学校のカフェテリアに食材として販売するなどの、普段できない経験を積むことを目的としている。
以上、3つのプログラムの様々な取り組みを紹介しましたが、バンクーバー財団のCEO、ケビン・マッコートはこれまでの成果を次のように話しています。「4年目に入ったこのプログラムから、草の根のプロジェクトが数多く生まれています。そして、これまでの3年間でグリーン関連の仕事は19%増加しました」。バンクーバー市では、この基金の創設により、住民による小さなプロジェクトが数多く生まれ、それが団体や組織による多くの人を巻き込んだプロジェクトと重層的に繋がって、グリーンな都市づくりが着々と進められているようです。