【第53回】アート(芸術)で環境問題を普及啓発する:イギリス、ブリストル市

1. ブリストル市:2015年欧州グリーン首都

 賞の趣旨に沿い、2015年の活動を円滑に行うために、市では新会社「ブリストル2015(Bristol 2015 Ltd.)」が設立されました。同社は、ブリストル市議会やグリーン首都パートナーシップ(ブリストル市をより持続可能な都市にするための、市内700を超える各種組織・団体のネットワーク)、さらにEUや国際パートナーなどと緊密に連携して、グリーン首都としての一年間、多岐にわたる活動を推し進めたのです。そのなかの一つのユニークな取組が「アート(芸術)を利用して変化を起こす」ことでした。

2.「アート(芸術)を利用して変化を起こす方法」

 本プロジェクトの趣旨はブリストル市の市長ジョージ・ファーガソン(George Ferguson)の以下の言葉に端的に表れています。「芸術家は人々に興味を抱かせることができます。その上、私たちに新しい方向から物事を考えさせる力があるのです。個人として、あるいは市として、必要な変化を起こそうとするならば、私たちは自ら変わっていかなければならないのです」※。グリーン首都の期間、市民や旅行者がまちの中で作品に出合い、ふと立ち止まり、持続可能性について考えるために各種芸術作品がまちの中に設置されました。そのいくつかご紹介します。

※3「アート(芸術)を利用して変化を起こす方法」の冊子、p.3

 2015年2月に、「異常気象の魔術師」の異名を取る日本人アーティスト中谷芙二子氏を招き、ブリストルのペロの橋が10日間人工の霧のベールで覆われました。中谷氏は40年にわたり、彫刻の媒体として霧を使用しており、これまでも、東京、サンフランシスコ、ニューヨークなど世界各地の公共スペースで制作されています。霧の中では人々は突然”白い闇”に覆われ、何も見えなくなります。そのとき視覚以外の五感を働かせようとするのです。この作品の意図は、ペロの橋を訪れた人々が霧の中で一瞬立ち止まり、変動する気候を意識することで、いつもの暮らしが異常気象によりどのような混乱に陥る可能性があるかを考えさせることでした。

霧の橋 写真左写真右

 「エネルギーの木」は、人々にエネルギーについて考え、この問題に関与してもらうことを目的とした画期的な展示品です。およそ4.6メートルの金属の彫刻には、自然の木の形を再現するためにバイオミミクリー(自然界の生物が有する構造や機能を模倣し、新しい技術を開発すること)が使用され、葉が太陽光発電パネルで作られました。「エネルギーの木」は、パブリック・アートであると同時に、再生可能な電源でもあるのです。この木を使って、携帯電話の充電や無線LANなどの機能が市民に提供されました。

「エネルギーの木」写真

3.ブリストル2015・ネイバーフッド・アート・プロジェクト

4地区
住民参加のワークショップ

6.緑の宝さがし:子供たちは5つの課題の書かれた冊子を持って、まちの中を歩き回り、その課題に関連したアート作品(緑の宝物)を探してあてるというプロジェクト。子どもたちは自分たちの創造性を駆使して、その探すべきアート作品を見つけ出す。

8.不法投棄ゲーム:不法投棄が社会に及ぼす影響を考えるゲーム・プロジェクト。若者と住民が一緒になってゲームをやり、話をして、相互に不法投棄に関する考えを伝えあうプロジェクト。

4.ブリストル・メソッド

「ブリストル・メソッド(Bristol Method)」の7つのテーマ
 都市の変革(Transforming the city)
 欧州グリーン首都(European Green Capital)
 経済(Economy)
 エネルギー(Energy)
 輸送(Transport)
 資源(Resources)
 食料と自然(Food and nature)

参考