【第55回】「食」をテーマにした環境への取り組み:スウェーデン、マルメ市

地図:グーグルマップ
マルメ市

1. マルメ市の概要

2. 持続可能な発展及び食料政策(Policy for sustainable development and food)

 この政策実現のために市がは、ストックホルムの保健研究所(Institute for Public Health)の開発した「賢く食べる(Eat S.M.A.R.T.)」モデルを採用しました。このモデルは、食物の栄養的側面に配慮した取り組みによって環境目標を達成しようとするもので、気候や環境対策のための新たなコストをかけることなく、健康と環境の両方の実現を目指します。
 「S.M.A.R.T」の各アルファベットは以下の頭文字を表します。

S:Smaller amount of meat(食肉消費の削減)
 スウェーデンの食肉消費は1990年から2005年の間に35%増加。食肉は野菜に比べて生産するのにより多くのエネルギーと資源を使用し、さらに、食肉生産のほうが野菜よりもはるかに多くの温室効果ガスを排出します。そこで、肉の消費を減らし、豆類で良質なタンパク質を摂取することを奨励しています。

M:Minimize the intake of empty calories(高カロリー低栄養食品の摂取を最小限に)
 高カロリー低栄養食品は、健康問題を引き起こすだけではなく、不必要に環境に影響を与えます。学校のカフェテリアでの甘いデザートやソーダ飲料の代わりに適切な代替食品を提供すること、また保健施設等ではこのような食品の摂取による低栄養への注意が喚起されています。

A:An increase in organic(オーガニックフードの増加)
 オーガニックフードの生産では農薬や化学肥料を使用しません。また、オーガニック(有機)農法では、家畜の飼育管理に高い基準が設けられます。環境認証を受けた魚を使用することは、漁業資源の保護にもつながります。オーガニックフードの生産を増やすことは、危険物質や化学物質による健康リスクを軽減すると同時に環境も保護することにつながるのです。
 学校のカフェテリアでオーガニックフードを採用したのはスウェーデンではマルメ市が最初で、市は2020年までに学校で提供する食べ物すべてをオーガニックにすることを目指しています。

R:Right sort of meat and vegetables(正しく飼育・栽培された肉や野菜を選択)
 肉は鉄、亜鉛、ビタミンの摂取に重要ですが、牛肉や羊肉の生産は大量の温室効果ガスを排出します。また、食肉の飼育に必要な飼料は、人間が摂取すれば高いタンパク源になります。オーガニック農法の認証を受けた農場からの食肉を選択することや、肉と野菜をバランスよく摂取することが健康にも環境にも重要です。また、また旬の野菜と温室栽培の野菜などでは、栄養価も環境に与える影響も違います。したがって市は肉や野菜をできる限り「正しく」調達することを推奨しています。

T:Transport efficient(効率的な輸送)
 食料の多くは、長距離輸送により調達されています。交通手段、包装、燃料などの要因はすべて気候と環境候に影響を及ぼします。マルメ市では可能な限り、季節の食材を、地産地消で調達する取り組みを進めています。

4.取り組みの具体的事例

持続可能な取り組みトップ10

 マルメ市では毎日、学校で約35,000食、幼稚園(pre-school)で約15,000食の給食を無料で提供しています。献立は上記で紹介したS.M.A.R.T.モデルに従った、良質で身体に良いものであると同時に、環境にも優しい食材から作られます。毎日、たくさんの野菜を使った料理が並ぶのは、健康に良いだけでなく、温室効果ガス排出の観点からも、肉よりもはるかに推奨されるべき食材だからです。  2020年までには、市ではすべての学校、幼稚園、保健施設で提供される食事がオーガニックで環境に良いものになる予定です。

 以上、気候変動や環境保全への「食」をテーマとしたユニークな取り組みを紹介しましたが、マルメ市では、持続可能な取り組みトップ10を含め、さまざまな取り組みが実施されており、多様な角度からのアプローチがそれぞれ相互に作用して大きな成果が得られることが期待されています。

注釈

Info

参考